人事副業 / 採用要件の整理
採用要件の整理の副業の実務|1案件の流れ
採用要件の整理を初めて受けるとき、見えにくいのは「聞き取りの前に何を決め、聞いたあとに何を渡すか」です。募集文には「採用要件の整理」「ペルソナの設計」とだけあり、実際には、「なぜ採るか」の確認、決める人の確定、別々の聞き取りの日程、食い違いの一覧、決める場、要件シートと文面への落とし込み、面接官への引き渡し、選考の結果からの見直しと、聞き取りの前後に工程が並びます。順番を知っていれば、契約前に決めておけます。結論を先に書くと、1案件は「契約前→聞き取り→整理→決める場→落とし込み→見直しと終了」の六つの段階で進み、契約前に範囲と職種の数・「なぜ採るか」の有無・決める人・別々の聞き取りの時間・基準にしてはいけない項目・成果物の形・見直しの有無を決め、聞き取りは経営者と現場といまうまくやっている人に別々に「最初に困ること」を軸に行い、整理で食い違いの一覧と必須と歓迎の案と経歴と面接の切り分けと緩める順を作り、決める場で会社が優先を決めて書面にし、要件シートと文面と面接で確かめる項目に落とし、選考の結果から見直して引き継げる形で終えます。案件の型と求められる経験は採用要件の整理の副業案件に書いていますので、ここでは「1案件の流れ」に絞ります。
契約前:決めておくこと
要件の整理は、「話を聞いて人物像を書く」と軽く見られやすく、聞き取りの回数と決める場の有無で稼働が数倍変わります。契約前に決めます。
| 決めること | 確かめる中身 | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 範囲と職種の数 | 一職種か複数か。食い違いの整理だけか、シートと文面への落とし込みまでか、見直しを含むか | 「この職種もついでに」が足される |
| 「なぜ採るか」の有無 | 欠員か増員か新しい仕事か、採れないと何が困るかが言葉になっているか。無ければ先に決めてもらう | 聞き取りが「良い人が欲しい」で止まる |
| 決める人 | 経営者と現場が食い違ったら誰が決めるか。決める場に自分が出るか、一覧を渡すだけか | 板挟みになり、必須が十個の要件ができる |
| 別々の聞き取りの時間 | 経営者、現場の責任者、いまうまくやっている人に、別々に聞く時間が取れるか | 一緒に聞いて本音が出ない |
| 基準にしてはいけない項目 | 会社の一覧があるか。無ければ作るか | 法令上の論点に触れる項目が要件に入る。専門家にご確認ください |
| 成果物の形 | 要件シートの型、求人票とスカウトの文面への落とし込み、面接で確かめる項目の一覧、のどこまでか | 「人物像」の一枚で終わり、運用に使われない |
| 見直しの有無 | 選考の結果(面接でのずれ、辞退、入社後)から見直す回を含むか。記録を誰が出すか | 一度作った要件が古いまま使われる |
| 評価 | 何で評価されるか(要件が面接で使われているか、面接でのずれの減り方か。採用の人数か) | 動かせない数字で評価される |
止まりやすいのは、「まず現場の人と話してみてください」で始めるときです。「なぜ採るか」と決める人だけは、聞き取りの前に確かめます。範囲の決め方は業務範囲の決め方に、見積もりの出し方は見積もりの出し方に書いています。
聞き取り:別々に、「最初に困ること」を軸に
聞き取りは、三者に別々に行います。経営者、現場の責任者、その職種でいまうまくやっている人。一緒に聞くと、現場は経営者の前で本音を言わず、いまうまくやっている人は上司の前で自分の仕事を小さく言います。
| 相手 | 聞くこと | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 経営者 | なぜ採るか。この先の事業でこの役割に何を期待するか。最初に困ることは何か。譲れない条件と、実は譲れる条件。条件の数字 | 「良い人」「即戦力」で終わる。「この先」の話だけで「最初」が出ない |
| 現場の責任者 | いま何が回っていないか。入った人に最初に任せることは何か。最初に困ることは何か。前に合わなかった人は何が合わなかったか | 「いま一緒に働いて困らない人」の話だけになる |
| いまうまくやっている人 | 自分の仕事のうち、入ってすぐできたことと、時間がかかったこと。前の職場との違い。何が分かっていれば楽だったか | 上司の前で聞く。謙遜で小さく言う |
三者に共通して聞くのは「この役割で最初に困ることは何か」です。この一問が、必須と歓迎を分ける軸になります。聞き方はヒアリングの技能に、問いの立て方は質問の仕方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この仕事は「いまうまくやっている人に聞けるか」で、要件の質が決まります。経営者と現場の責任者だけに聞いた要件は、「欲しい人」の話で、実際の仕事の中身が薄い。いまうまくやっている人に「入ってすぐできたことと、時間がかかったこと」を聞くと、必須と歓迎の境目が具体になります。「〇〇はすぐできたが、〇〇の調整は半年かかった」と分かれば、〇〇の調整の経験が必須で、〇〇は入ってから覚えられる歓迎です。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「経営者と現場の責任者に加えて、いまその仕事をうまくやっている方に三十分ください」と、私たちから先に伝えています。受ける側がその場で使える判断としては、聞き取りの日程を組むとき、いまうまくやっている人の枠を最初に押さえること。後回しにすると、忙しくて取れないまま要件が固まります。
整理:食い違いの一覧・必須と歓迎の案・切り分け・緩める順
聞き取りが終わったら、決める場に出す材料を作ります。ここで自分で裁定しないことが、この仕事の中核です。
| 作るもの | 中身 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 食い違いの一覧 | 欲しい人、最初に困ること、必須と思っている項目、条件、について、三者の言ったことを並べ、食い違っている箇所に印。「誰が言ったか」と「最初に困ることとの関係」を分けた欄 | 人の意見の対立として書く。どちらが正しいかを書く |
| 必須と歓迎の案 | 「無いと最初に困る」を必須、「あれば助かる」を歓迎、「面接で確かめる」を要件に書かない、の三つに分けた案。必須は経歴で読める言葉で(年数や学歴ではなく、担った仕事の中身) | 必須が多い。「経験〇年」のまま |
| 経歴と面接の切り分け | 必須のうち経歴で読める項目と、面接で確かめる項目(性質、価値観、決まりの無い環境での動き方)を分ける | 性質の言葉を必須に置く |
| 緩める順 | 対象が少なかったとき、どの必須から歓迎に落とすか、の順の案 | 緩める順が無く、相談の往復が増える |
| 基準にしてはいけない項目の確認 | 三者が口にした項目のうち、法令上の決まりがあると整理されている項目を外し、その旨を一覧に書く | 口にされたまま要件に残る。専門家にご確認ください |
止まりやすいのは、食い違いの一覧を作らずに、三者の話を混ぜて「人物像」にまとめるときです。混ぜた人物像は、誰の意見も反映していないので、面接で使われません。整理の型は課題の言語化に、シートの中身は要件シートの作り方に書いています。
決める場:会社が優先を決め、書面に
食い違いの一覧と案を、決める人に出します。自分が場に出るか、一覧を渡すだけかは、契約前に決めた範囲に従います。
| 順 | やること | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 一 | 食い違いの一覧を見せ、「最初に困ること」の軸を確認する | 案から先に見せて、軸の確認を飛ばす |
| 二 | 食い違っている箇所を一つずつ、「どちらを優先しますか」と会社に決めてもらう | 自分の見立てで裁定する |
| 三 | 必須と歓迎の案を見せ、決めた優先に沿って直す | 案をそのまま通す |
| 四 | 緩める順を確認する | 緩める順を決めないまま終わる |
| 五 | 決めたことと理由を、決めた人の名前で書面に残す | 書面が無く、面接で覆る |
止まりやすいのは、決める場で経営者が「現場に任せる」と言い、現場が「経営者が決めてください」と言って、決まらないことです。決めない選択も書面に残し、「決まるまで要件は仮」と明記して、いつ決めるかの期限を取ります。書面の残し方は議事録の残し方に書いています。
エラベルの見解
同じ料金・同じ職種でも、結果が分かれるのは、決める場で「裁定しないでいられるか」です。経営者と現場が食い違ったとき、担当者が「その職種なら現場の言うほうが正しいです」と裁定すると、その場は早く決まります。しかし経営者は納得しておらず、面接で自分の基準で通し、要件は無いのと同じになります。「現場は最初に困ることに近く、経営者はこの先の事業に近い。どちらを先に取るかは御社の判断です」と並べて待つ担当者は、時間はかかりますが、決まった要件が面接で使われます。裁定しないことは頼りなく見えますが、外の人が裁定した要件は会社の中で生きません。エラベルで長く続いている担当者は、決める場で意見を言うときも「私の見立ては〇〇ですが、決めるのは御社です」と、見立てと決定を分けて話しています。受ける側がその場で使える形としては、決める場に出す資料の表紙に「決めていただくこと」の一覧を書き、決まったら決めた人の名前を書き込む欄を作っておくことです。
落とし込み:要件シート・文面・面接で確かめる項目
決まった要件を、運用の文書に落とします。要件シートは社内向けで率直に書け、求人票とスカウトの文面は候補者向けで、面接で確かめる項目は面接官向けです。三つは同じ要件から出ますが、書き方が違います。
| 成果物 | 中身 | 渡す先 |
|---|---|---|
| 要件シート | 職種と役割、なぜ採るか、最初に困ること、必須(経歴で読める言葉)、歓迎、採らない層、条件、優先、緩める順、更新の担当と履歴 | 人事、スカウトや書類選考を担う人 |
| 求人票とスカウトの文面への落とし込み | 必須を応募者が読む言葉に。「採らない層」は書かない。訴求の一点 | 求人原稿やスカウトの担当 |
| 面接で確かめる項目 | 経歴で読めない項目(性質、価値観、決まりの無い環境での動き方)を、面接で聞ける形(過去の行動の質問)に | 面接官 |
止まりやすいのは、要件シートを作って終わり、文面と面接に落とさないときです。シートだけでは、スカウトの検索条件も面接の質問も変わらず、採用は変わりません。文面への落とし込みは求人原稿のライティングの副業案件に、面接の型は面接代行の副業案件に書いています。
見直しと終了:選考の結果から直し、引き継ぐ
見直しを範囲に含んでいる場合、月に一度か採用の区切りで、選考の結果から要件を見直します。
| 見ること | 直すところ |
|---|---|
| 書類で通した人が面接でずれた | 必須の書き方が経歴で読めていない。言葉を直す |
| 面接で通した人が入社後にずれた | 面接で確かめる項目が足りない。項目を足す |
| 対象が少なすぎる | 必須が多い。緩める順に沿って歓迎に落とす(決めるのは会社) |
| 辞退が多い | 条件か、選考の速さか、文面と実態のずれ。要件の問題でないことも多い。会社に返す |
| 経営者が面接で要件と違う人を通す | 優先が経営者の決定になっていない。決める場をやり直す |
終了時は、要件シート(更新の履歴付き)、食い違いの一覧と決定の書面、面接で確かめる項目、緩める順、見直しの記録を残し、更新の担当を会社に決めてもらいます。聞き取りで聞いた個人の事情は、書面に残さず、自分の手元にも残しません。引き継ぎの型は引き継ぎの仕方に書いています。
聞いた事情の扱い
要件の聞き取りでは、現場が経営者について、経営者が現場について、率直に話します。「前の人が合わなかった理由」には、個人の評価が混じります。それらは、食い違いの一覧には「構造」(この先の事業と、いまの現場の困りごとのずれ)として書き、人の評価として書きません。聞いた個人の事情は、会社の外で話さず、他の依頼側や本業に持ち込みません。基準にしてはいけない項目が口にされても、書面に残しません。個別の判断は専門家にご確認ください。利益相反の見分け方は本業と利益相反になる案件に書いています。
稼働時間は何で決まるか
一職種にかかる時間は、「聞き取りの人数×一回の時間」「整理(一覧と案)」「決める場(出るなら)」「落とし込み(三つの成果物)」「見直し(含むなら月次)」の合計で決まります。聞き取りが三者で別々なら、それだけで三回の会議です。「なぜ採るか」が無い会社では、先に決めてもらう工程が足され、長くなります。受ける前に「職種の数」「聞き取りの人数」「決める場に出るか」「成果物の範囲」「見直しの有無」を決めておけば、見込みが立ちます。数値は案件ごとに違うので、最初の一職種の実績で見直します。稼働の管理は稼働時間の管理に書いています。
まとめ
- 1案件は契約前→聞き取り→整理→決める場→落とし込み→見直しと終了の六つの段階
- 契約前に範囲と職種の数・「なぜ採るか」の有無・決める人・別々の聞き取りの時間・基準にしてはいけない項目・成果物の形・見直しの有無・評価を決める
- 聞き取りは経営者・現場の責任者・いまうまくやっている人に別々に、「最初に困ること」を軸に。いまうまくやっている人の枠を最初に押さえる
- 整理は食い違いの一覧(誰が言ったかと軸との関係を分ける)・必須と歓迎の案・経歴と面接の切り分け・緩める順。裁定しない
- 決める場では会社が優先を決め、決めた人の名前で書面に。見立てと決定を分けて話す
- 落とし込みは要件シート・文面・面接で確かめる項目の三つに。シートだけで終えない
- 見直しは書類→面接のずれは必須の言葉、面接→入社後のずれは面接の項目、対象が少なければ緩める順で直す
- 聞いた個人の事情は構造として書き、人の評価として書かず、外に持ち出さない
よくある質問
経営者が「要件は現場に任せている」と言って、聞き取りに出てくれません
「なぜ採るか」と「この先の事業でこの役割に何を期待するか」は、現場からは出ません。三十分でよいので、経営者に「なぜ採るか」「採れないと何が困るか」「譲れない条件」の三つだけを聞きます。それも取れないなら、現場の要件を「経営者の確認待ち」と明記して仮に置き、決める場で経営者に確認してもらいます。経営者に聞かずに作った要件は、面接で経営者に覆されることが多いので、その旨を書面に残しておきます。
聞き取りで、現場が前の担当者の悪口を長く話します
「前の人が合わなかった理由」は要件の材料になるので、聞きますが、記録には人の評価としてではなく、「合わなかった構造」(任せた仕事と持っていた経験のずれ、決まりの無い環境への向き不向きなど)として書きます。悪口の部分は書面に残さず、会社の外でも話しません。話が長くなるときは、「その方に足りなかったものは、経歴のどこで読めたと思いますか」と、要件の言葉に戻す問いを入れます。
要件シートを作りましたが、スカウトも面接も変わりません
シートを作って終わりにしている状態です。シートの必須をスカウトの検索条件と文面に落とし、面接で確かめる項目を面接官に渡し、面接官が使う質問の形にするところまでが落とし込みです。それを範囲に含んでいなければ、次の範囲として提案します。含んでいて変わらないなら、スカウトと面接を担う人が、シートの存在を知らないか、読んでいないことが多い。渡した先で使われているかを確かめます。