採用代行 / 採用KPIの設計
採用KPIの設計の進め方|自社でやる場合の手順
採用KPIを自社で設計しようとして、「採用人数を月ごとに割る」から始めると、人数以外に見る数字が無く、未達のときに「頑張ろう」以外の言葉が出ず、他社の例を借りて応募数や面接設定率を置いても自社の詰まりと合わず、年度初めに決めたKPIは半年後には誰も覚えていません。KPIで最初にやるべきは、指標を選ぶことではなく、「いまの数字を並べて、どこで止まっているかを一つ特定する」ことです。詰まりが分かれば、動かす指標は自然に決まり、目標は自社の数字から逆算でき、月に一つ動かす行動につながります。結論を先に書くと、進め方は、いまの数字を経路ごとに並べる→止まっている段階を一つ特定する→動かせる指標の候補を出して三つに絞る→採用人数から目標を逆算して幅で置く→月次の一枚の型を作る→月に一度の見る場を決める→月に一つ動かして記録する→三か月ごとに三つを見直す、の八つの手順です。代行に出す場合の切り分けは採用KPIの設計は代行に出せるかに、何を置くかの考え方は採用KPIに何を置くべきかに書いていますので、ここでは自社で進める手順に絞ります。
手順の全体
| 手順 | やること | 誰が | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 一 | いまの数字を経路ごとに並べる | 人事 | 最初に一度 |
| 二 | 止まっている段階を一つ特定する | 人事と責任者 | 最初に一度、三か月ごと |
| 三 | 動かせる指標の候補を出して三つに絞る | 経営者と責任者 | 最初に一度 |
| 四 | 採用人数から目標を逆算して幅で置く | 人事が案、経営者が承認 | 最初に一度 |
| 五 | 月次の一枚の型を作る | 人事 | 最初に一度 |
| 六 | 月に一度の見る場を決める | 経営者 | 最初に一度、以後毎月 |
| 七 | 月に一つ動かして記録する | 経営者と人事 | 毎月 |
| 八 | 三か月ごとに三つを見直す | 経営者と責任者 | 四半期に一度 |
手順の要点は、三の「三つを決める」が二の「詰まりの特定」の後にあることです。多くの会社は詰まりを見ずに指標を選び、詰まりと関係ない数字を追っています。
手順一:いまの数字を経路ごとに並べる
直近の数か月の、応募・一次面接・内定・承諾・辞退の数と、応募から各段階までの日数を、経路ごとに並べます。数字が無ければ、この手順は「取る仕組みを作る」に変わります。取り方は採用データの分析の進め方に書いています。
| 経路 | 応募 | 一次 | 内定 | 承諾 | 辞退の段階 | 応募→一次の日数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 媒体A | ||||||
| スカウト | ||||||
| 紹介 | ||||||
| リファラル |
止まりやすいのは、数字が複数の場所に散っていて、並べるのに時間がかかるときです。完璧に揃えず、あるものだけで並べ、無いものは空欄にして「取っていない」と分かる形にします。
手順二:止まっている段階を一つ特定する
並べた数字から、「どこで一番減っているか」「どこで一番日数がかかっているか」を見て、止まっている段階を一つに絞ります。応募が少ないのか、書類で落としすぎか、一次から二次で減るか、内定後に辞退が多いか、日数が長いか。
| 見えること | 止まっている段階 |
|---|---|
| 応募が少ない経路ばかり | 応募(経路と文面) |
| 応募は多いが一次に進む数が少ない | 書類(基準か、文面が合わない人を呼んでいる) |
| 一次から二次で大きく減る | 一次(観点か面接官) |
| 内定は出るが承諾が少ない | 内定後(速さ、条件、接点) |
| 応募から一次まで日数が長い | 日程調整(枠) |
止まりやすいのは、「全部が問題」と複数を挙げるときです。一つに絞ります。複数あるなら、最も採用人数に効くものを先にします。
手順三:動かせる指標の候補を出して三つに絞る
手順二の詰まりに合わせて、「自社で動かせる」「毎月取れる」「結果につながる」を満たす指標を候補に挙げ、三つに絞ります。採用人数は目標として別に置き、KPIには入れません。
| 詰まり | 候補の例 |
|---|---|
| 応募 | 経路ごとの応募数(面接に進んだ数で見る)、文面の変更回数 |
| 書類 | 書類から一次に進む率、応募から連絡までの日数 |
| 一次 | 一次から二次に進む率、面接官ごとのばらつき |
| 内定後 | 承諾率、内定から承諾までの日数、内定後の接点の回数 |
| 日程調整 | 応募から一次までの日数、面接官の枠の数 |
止まりやすいのは、「動かせない数字」を置くときです。市場の求人倍率や、他社の提示年収は動かせません。自社の行動で動く数字だけにします。
エラベルの見解
これをやる前に、先に手順二の詰まりを一つに絞っておかないと、手順三の三つは散らばります。相談で多いのは、「KPIを三つに絞ったが、どれも動かない」というご相談です。聞くと、三つが「応募数」「面接設定率」「承諾率」と、入口から出口まで一つずつで、詰まりは内定後の辞退なのに、行動は応募を増やすことに向いていました。詰まりを「内定後」に絞り、三つを「承諾率」「内定から承諾までの日数」「内定後の接点の回数」に寄せたところ、行動が内定後に集中し、承諾率が動きました。三つは入口から出口に散らすのではなく、詰まりの周りに寄せるものです。エラベルでKPIの設計を担当する人には、三つを出す前に、詰まりを一つに絞ることを責任者と合意してもらっています。
手順四:採用人数から目標を逆算して幅で置く
採用の目標人数から、いまの通過率で逆算して、各段階に必要な数を出します。KPIの目標は、その逆算と、いまの数字の差から「動かす幅」で置きます。他社の率は使いません。目標は一点ではなく幅で置き、三か月で見直します。
| 段階 | いまの数字 | 目標人数からの逆算 | 目標(幅) |
|---|---|---|---|
| 承諾率 | いまの値 | 必要な内定数から | いまの値から少し上の幅 |
| 内定から承諾までの日数 | いまの値 | ― | いまより短い幅 |
| 内定後の接点の回数 | いまの値 | ― | 一人あたり数回 |
止まりやすいのは、目標を「理想」で置くときです。いまの数字から遠すぎる目標は、最初の月で未達になり、誰も見なくなります。いまの数字から「動かせる幅」で置きます。
手順五:月次の一枚の型を作る
三つのKPIと先月との比較、止まっている段階、「今月一つ動かすなら」の案を、一枚にまとめます。三つ以外の数字は載せません。読み方を一言添えます。
| 一枚の並び | 書くこと |
|---|---|
| 三つのKPI | 今月の値、先月の値、目標の幅 |
| 止まっている段階 | 変わっていないか、動いたか |
| 先月動かしたこと | 何を変えたか、どう動いたか |
| 今月一つ動かすなら | 案と選択肢 |
手順六:月に一度の見る場を決める
経営者と責任者と人事が、月に一度、三十分で一枚を見て、一つ決める場を決めます。日時を固定し、一枚は前日までに配ります。場では「今月一つ動かすこと」を決めて終わります。
止まりやすいのは、場が無く、一枚がメールで送られて終わるときです。読まれず、決まりません。場を先に決めます。
手順七:月に一つ動かして記録する
場で決めた一つを実行し、「いつ、何を変えたか」を記録します。同時に複数を変えると、どれが効いたか分かりません。未達でも責めず、「何を変えるか」に話を向けます。
止まりやすいのは、未達を責めて、数字を良く見せる動機が生まれるときです。KPIは評価ではなく、行動を決めるための数字です。
手順八:三か月ごとに三つを見直す
三か月分の一枚を並べ、詰まりが動いたかを見ます。動いていれば、次の詰まりに三つを置き換えます。動いていなければ、行動を変えるか、目標を見直します。目標を下げることも選択肢です。KPIは固定しません。
止まりやすいのは、年度初めに決めたKPIを一年間変えないときです。詰まりは動くので、三か月ごとに置き換えます。
外の人に頼む場合の境目
八つの手順のうち、三の決定、四の承認、六の場、七の決定、八の見直しの決定は会社が持ちます。一の整理、二の特定の案、三の候補、四の逆算、五の一枚、七の記録、八の材料は、外の人に出せます。切り分けの詳しい話は採用KPIの設計は代行に出せるかに書いています。
外に出す判断の目安は、「決める場は持つが、数字の整理と候補と一枚に人事の時間が取れない」ときです。決める気が無いまま外に出すと、代行のKPIを会社が追う形になります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、KPIで会社ごとに差がつくのは、手順七の「月に一つ動かしているか」です。数字の整理も三つの候補も一枚も、担当者が作れます。しかし、一枚を見て何も動かさない会社では、KPIは数字のままで、三か月たっても詰まりは動きません。月に一つ動かして記録している会社では、三か月で「効いたこと」が分かれ、KPIが次の詰まりに置き換わり、採用の形が変わっていきます。エラベルでは、KPIの設計を担当する人に、最初の一週間で数字を並べて詰まりを一つ特定し、候補を三つと理由を添えて出し、会社が決める場を持ってもらい、逆算して幅で目標を置き、一枚の型を作るところまでをお願いしています。ここまでできると、担当者は毎月の一枚と記録と三か月ごとの材料を回し、会社は月に一度、三十分で一つ決めるだけになります。
まとめ
- KPIは「人数を月で割る」ではなく、数字を並べて詰まりを一つ特定するところから始める
- 手順は数字を並べる→詰まりを一つ→候補を三つに→逆算して幅で目標→一枚の型→見る場→月に一つ動かす→三か月で見直すの八つ
- 三つは入口から出口に散らさず、詰まりの周りに寄せる
- 目標は他社の率ではなく自社の数字から逆算し、幅で置く。理想で置くと最初の月で誰も見なくなる
- KPIは評価ではなく行動を決める数字。未達を責めない
- 三か月ごとに置き換える。年度初めに決めたまま固定しない
よくある質問
採用人数をKPIにしてはいけないのですか
採用人数は目標として別に置きます。KPIには入れません。人数は結果であり、「人数を増やす」と言われても何を動かせばよいか分かりません。人数の一つ手前にある「動かせる数字」を三つ置くことで、行動が決まります。人数は毎月の一枚の上に、目標として載せておきます。
求人ごとにKPIを変えるべきですか
詰まりが求人ごとに違うなら、変えます。営業は応募が詰まり、エンジニアは内定後が詰まる、ということはよくあります。ただし、求人ごとに三つずつ持つと数が増えるので、主要な求人に絞るか、共通の三つに求人ごとの補足を添える形にします。
代行と契約するとき、このKPIをそのまま契約に入れてよいですか
会社のKPIと、代行との契約の指標は、分けて考えます。契約に入れる指標は、代行が制御できる工程に絞り、会社側の指標(面接官の枠、決裁の日数)も一緒に置きます。会社のKPIをそのまま代行に課すと、会社側の要因で未達になったときに議論が噛み合いません。考え方は採用代行の契約にKPIを入れるべきかとKPIの合意のしかたに書いています。