地方企業のスカウト運用|「地元の人」と「戻りたい人」と「移れる人」を分けて設計する
拠点が都市部から離れている会社のスカウトは、役割や条件より先に、勤務地で判断されます。「良い役割だが、そこには住めない」で、返信が来ない。結論を先に書くと、地方企業のスカウトは、対象を「地元にいる人」「地元に戻りたい人」「地方に移れる人」の三つの層に分け、層ごとに文面と訴求を変えてください。全員に同じ文面を送ると、勤務地の壁で全部が止まります。そして、リモートを含めた働き方の設計が、対象の広さを決めます。知名度の問題は知名度のない会社のスカウトに、給与の問題は給与で負ける会社の訴求にまとめています。この記事では、地域の統計や相場は扱いません。地域の情報を書くなら、都道府県や労働局などの一次情報で確認してください。
地方企業で起きること
拠点が都市部以外にある会社のスカウトでは、次のことが起きます。
勤務地で、開かれる前に閉じられる。 件名や一段落目で勤務地が分かると、住めない人は読みません。
母数が少ない。 その地域に住んでいて、その職種の経験があり、媒体に登録している人。三つの条件が重なると、母数は大きく減ります。
都市部の候補者に送っても、移住の壁がある。 経歴が合う人は都市部に多いが、移住を伴う転職は、候補者にとって大きな判断です。
給与と知名度で、都市部の会社と比べられる。 地方企業は、都市部の同業より給与水準が低く、知名度も無いことが多い。二重、三重の壁になります。
代行の担当者が、地域を知らない。 都市部の代行会社の担当者は、その地域の生活や、地域内での会社の位置づけを知りません。文面に地域の実態が書けません。
これらは、対象の層を分け、層ごとに設計することで、一つずつ乗り越えられます。
対象を三つの層に分ける
地方企業の対象は、三つに分けます。
一.地元にいる人。 その地域に住んでいて、転職を考えている人。移住の壁はありませんが、母数が少ない。その地域の同業や、隣接する業種の人が対象になります。地域内では自社が知られていることもあり、知名度の壁は小さい。
二.地元に戻りたい人(Uターン・Iターン)。 その地域の出身で、いまは都市部にいて、戻ることを考えている人。家族の事情、生活の変化、地元への思い。経歴は都市部で積んでいるので、母数は一より多い。「戻る理由」に、自社の役割が乗れるかどうかです。
三.地方に移れる人。 その地域に縁は無いが、働き方や生活の変化を求めて、地方への移住を考えている人。都市部の生活から離れたい、自然の近くで暮らしたい、生活のコストを下げたい。この層には、地域そのものの魅力と、役割の両方を伝えます。
三つの層は、経歴の読み方も、文面の一段落目も、訴求も違います。同じ文面では、どの層にも届きません。
層ごとの文面と訴求
地元にいる人への文面。 勤務地は壁になりません。一段落目は、通常のスカウトと同じく、役割と「なぜあなたに」。地域内での自社の位置づけ(地元での知名度、取引先)が、信頼の材料になります。「地元で〇〇を決める役割」という訴求が効きます。
戻りたい人への文面。 一段落目で、「〇〇(地域)のご出身で」「〇〇に戻ることをお考えでしたら」と、戻る可能性に触れます。経歴から出身地を読める場合(出身校、最初の勤務先)に限ります。訴求は、「都市部で積んだ経験を、地元で活かせる役割」。戻る理由(家族、生活)に、役割が乗る形です。給与が都市部より低いことは、幅を示して率直に。生活のコストの違いに触れるなら、一次情報で確認できることだけ。
移れる人への文面。 一段落目で役割と「なぜあなたに」を書いたうえで、二段落目で「勤務地は〇〇で、移住を伴います」と明示します。隠すと、面談で離れます。訴求は、役割に加えて、地域の生活(自然、住環境、通勤)と、移住の支援(住居、引っ越し、家族の仕事)。支援の制度があれば事実として書き、無ければ書きません。
三つの層に、それぞれの文面を用意します。担当者が、経歴から層を判断して振り分けます。
リモートを含めた働き方の設計
対象の広さは、働き方の設計で決まります。
フルリモート可なら、勤務地の壁は消える。 対象は全国になり、母数は大きく増えます。ただし、役割によっては現地での業務が要り、社内の体制がリモートに対応している必要があります。
一部リモート(月に数回の出社)なら、近隣の都市部まで広がる。 通える範囲の都市部の候補者が対象に入ります。「月に〇回の出社で、それ以外はリモート」と、事実を明示します。
出社が基本なら、三つの層に絞る。 地元、戻りたい人、移れる人。母数は少ないが、地域に根ざした採用になります。
役割ごとに、働き方を変える。 全部の役割を同じ働き方にせず、リモートで担える役割はリモート可に、現地が要る役割は出社基本に。役割ごとに対象の広さが変わります。
働き方の設計は、社内の判断です。「地方だから採れない」の多くは、「出社が基本だから対象が狭い」であることがあります。役割ごとにリモートの可否を見直すだけで、対象は広がります。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「都市部の候補者に、勤務地を後ろのほうに書いて送る」というものです。一段落目は役割で引きつけ、最後に「勤務地は〇〇」。候補者は役割に関心を持ち、返信し、面談の前に勤務地を確認して「そこには住めない」で離れます。面談者の時間が消え、担当者は「勤務地で断られた」と落胆します。勤務地は、二段落目までに明示し、移住を伴うなら、そう書きます。
見ていて差がつくのは、担当者が「三つの層に分けて、文面を変えましょう」と提案できるかどうかです。全員に同じ文面を送る担当者と、経歴から出身地や移住の可能性を読んで、層ごとの文面を使い分ける担当者がいます。後者は、地方企業でも面談を組めます。
発注側にできるのは、三つの層それぞれに、自社が提供できるもの(地元での役割、戻る理由に乗る役割、移住の支援)を整理して、担当者に渡すことです。整理が無いと、担当者は層を分けても、層ごとの訴求を書けません。
地方であることを訴求に変える
地方であることは、見方を変えれば訴求になります。
「地元で決める側に回れる」。 地域内で、その役割を担える会社は限られます。地元にいる人にとって、「地元で、この役割」は都市部には無い選択肢です。
「都市部の経験を、地元で活かせる」。 戻りたい人にとって、経歴を活かせる役割が地元にあることは、戻る決め手になります。
「生活と仕事の距離」。 通勤の短さ、自然の近さ、住環境。移れる人にとっての訴求です。事実として書きます。
「地域での存在感」。 地域内での取引先、地域の課題に関わる事業。都市部の会社では得にくい、地域に根ざした仕事。
「競争の少なさ」。 都市部の同業と比べて、社内の競争が少なく、役割の幅が広い。ただし「幅広く」と抽象的に書かず、「〇〇から〇〇まで」と具体的に。
これらは、都市部の会社には書きにくい訴求です。地方であることを隠すのではなく、地方だからこそ書けることを書きます。ただし、地域の魅力を書くときは、事実に基づき、誇張しません。移住した後に「聞いていた話と違う」は、地方企業では特に重い辞退の理由になります。
代行に頼むときの確認点
地方企業がスカウト代行に頼むなら、次を確認します。
地域の理解。 担当者が、その地域の生活、通勤、住環境、地域内での自社の位置づけを、どこまで知っているか。知らないなら、社内から伝える時間を取ります。
三つの層への対応。 経歴から出身地や移住の可能性を読み、層ごとに文面を変える運用ができるか。
リモートの設計への関わり。 「出社基本のままでは対象が狭い」と言える担当者か。働き方の設計は社内の判断ですが、担当者が母数の見立てから提案できると、判断しやすくなります。
移住の支援の伝え方。 支援の制度があれば、事実として文面に書く。無ければ書かない。担当者が、あるものと無いものを分けて書けるか。
地域の情報の扱い。 地域の統計や生活のコストを文面に書くなら、一次情報で確認する。担当者が、根拠の無い地域の情報を書かないか。
面談のオンライン対応。 戻りたい人、移れる人は、都市部にいます。面談はオンラインが基本で、来社は最終段階に。担当者が、オンラインを前提にした日程調整をできるか。
地域を知らない担当者でも、三つの層の設計と、社内からの地域の情報があれば、運用できます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、地方企業の案件で最も困るのは「勤務地の壁を、文面で何とかしてほしいと言われる」ことです。出社が基本で、移住の支援も無く、給与も都市部より低い。それで「都市部の良い人を連れてきてほしい」と言われても、文面で乗り越えられる壁ではありません。
文面で乗り越えられるのは、「勤務地を隠さず、三つの層のどれに向けて書くか」までです。壁そのものを低くするのは、働き方の設計(リモートの可否)と、移住の支援と、役割の魅力で、どれも社内の判断です。
発注側にできるのは、「地方だから採れない」と諦める前に、役割ごとにリモートの可否を見直し、三つの層それぞれに提供できるものを整理することです。それを担当者に渡せば、担当者は層ごとの文面で、届く人に届けられます。
まとめ
- 地方企業では勤務地で閉じられ・母数が少なく・移住の壁があり・給与と知名度で比べられ・担当者が地域を知らない
- 対象を地元にいる人・戻りたい人・移れる人の三つに分ける。経歴から層を読む
- 層ごとに文面を変える。地元は役割と地域内の位置づけ、戻りたい人は戻る理由に乗る役割、移れる人は勤務地を明示し地域の生活と支援を事実で
- 対象の広さは働き方の設計で決まる。役割ごとにリモートの可否を見直す
- 地方であることを地元で決める側・都市部の経験を活かす・生活と仕事の距離・地域での存在感・競争の少なさの訴求に変える。誇張しない
- 代行には地域の理解・三層への対応・リモート設計への関わり・支援の伝え方・地域情報の扱い・オンライン面談を確認する
- 地域の情報は一次情報で確認し、統計や相場は根拠なしに書かない
よくある質問
都市部の候補者に送っても、勤務地で断られます
勤務地を一段落目か二段落目で明示し、移住を伴うことを隠さないでください。隠すと面談で離れ、面談者の時間が消えます。都市部の候補者に送るなら、「戻りたい人」(出身地が読める人)と「移れる人」(移住の意思がある人)に絞り、それぞれの層に合う訴求を書きます。全員に送っても、勤務地の壁で止まります。
リモートにすれば採れるのは分かりますが、社内が対応できません
役割ごとに分けてください。全部をリモート可にする必要はなく、リモートで担える役割だけをリモート可にすれば、その役割の対象は全国に広がります。現地が要る役割は出社基本のまま、三つの層に絞ります。社内の対応は、リモート可にする役割の範囲で整えれば足ります。
移住の支援制度がありません。書けることがないのですが
無いものは書かないでください。「移住をご検討いただける方」と率直に書き、地域の生活の事実(通勤、住環境)と、役割の魅力を書きます。支援が無くても、役割と地域の生活で決める候補者はいます。支援を作れるなら、住居の紹介や引っ越しの費用など、小さなものからでも、事実として書ける材料になります。
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