口コミを見られる前提の設計|消せないものに、文面と面談でどう向き合うか
スカウトの文面を読んだ候補者は、会社名で検索します。検索の結果に、口コミサイトが出ます。退職者が書いた不満、数年前の評価、事実と違う記述。それを読んだ候補者が、返信をやめる。文面も採用サイトも整えたのに返信が来ない原因が、口コミにあることは珍しくありません。結論を先に書くと、口コミは消せないものとして、「見られる前提」で文面と面談を設計してください。低い評価がある点には、文面か面談で先に触れ、変わったことと変わっていないことを率直に伝えます。隠すより、先に言うほうが信頼されます。採用サイトへの導線は採用サイトへの導線に、広報との連携は採用広報とスカウトの連携にまとめています。口コミへの法的な対応(削除請求など)は、この記事では扱いません。専門家にご確認ください。
口コミが与える影響
口コミサイトは、候補者にとって「会社が言わないこと」を知る場です。文面と採用サイトは会社が書いたもので、口コミは第三者が書いたもの。候補者は、後者を「本音」として読みます。
影響が出るのは、次の点です。
返信の前に、離脱する。 文面を読み、検索し、口コミを見て、返信をやめる。担当者には「返信が来ない」としか見えず、原因が口コミだとは分かりません。
面談で、口コミの内容を確かめられる。 「口コミに〇〇と書かれていましたが」と聞かれる。答えられなければ、口コミが本当だと受け取られます。
内定後に、口コミで迷う。 内定を受けた候補者が、承諾の前に改めて口コミを見て、迷う。承諾率に影響します。
入社後に、口コミと実態を比べる。 口コミに書かれた不満が実態と合っていれば、「やはり」となり、定着に影響します。
口コミの影響は、返信率だけでなく、選考の全段階に及びます。
消せない前提で向き合う
口コミは、事実と違う記述であっても、簡単には消せません。削除の請求には条件があり、時間もかかります。法的な対応は専門家に確認する事項で、この記事では扱いません。
運用の側でできるのは、「消す」ではなく「見られる前提で設計する」ことです。
まず、自社の口コミを読む。 何が書かれているか、どの点の評価が低いか、いつ書かれたか。社内で読んでいない会社は多く、候補者のほうが詳しいことがあります。
低い評価の点を、事実と照らす。 書かれている不満が、いまも事実か、当時は事実だったが変わったか、当時から事実でないか。三つに分けます。
変わったことを、言葉にする。 「当時は〇〇だったが、〇〇を変えた」。変えたことがあれば、それは文面と面談で伝えられる材料です。
変わっていないことを、認める。 事実で、変わっていないなら、それは自社の実態です。隠すのではなく、「そういう面はある。それでも合う人を探している」と伝える方向にします。
事実でないことは、事実を示す。 当時から事実でない記述には、事実を示せる材料(制度の説明、数字)を用意します。反論ではなく、事実の提示です。
この整理をしておけば、文面と面談で口コミに向き合えます。整理が無いと、候補者に聞かれて答えられません。
文面で先に触れる
低い評価が目立つ点があるなら、文面で先に触れることを検討します。
触れる場合。 口コミの評価が低い点が、候補者の判断に大きく影響しそうなとき(働き方、評価の仕組み、組織の雰囲気など)。文面の後半で、「〇〇については、以前は課題があり、〇〇を変えました」と、変わったことを伝えます。候補者が口コミを見たときに、「文面で触れていたことだ」と分かります。
触れない場合。 口コミの評価が低い点が、この役割に関係ないとき。あるいは、古い口コミで、いまの候補者が気にしない内容のとき。触れると、かえって注意を向けます。
触れ方。 口コミを直接引用しない。「口コミに書かれていますが」ではなく、「以前は〇〇という声があり」と、事実として触れます。変わったことを短く、変わっていないことは面談で話す前提で。
言い訳にしない。 「あれは一部の人の意見で」「誤解があり」は、候補者に言い訳として届きます。変わったことと、変わっていないことを、率直に。
文面で触れるかどうかは、担当者と一緒に決めます。担当者は、候補者が何を気にするかを返信のやり取りで知っています。
面談で向き合う
面談では、口コミについて聞かれることを前提に準備します。
聞かれる前に、こちらから触れる。 「口コミで〇〇についてご覧になったかもしれませんが」と、面談者からこちらから触れる。聞かれてから答えるより、先に触れるほうが、隠していない姿勢が伝わります。
変わったことと、変わっていないことを分ける。 「〇〇は変えました。〇〇はまだ課題です」。全部が変わったと言うと、信頼されません。
候補者の懸念を聞く。 「口コミを見て、気になった点はありますか」。候補者が気にしている点を聞き、その点について事実を伝えます。
面談者が答えられるように準備する。 口コミの内容と、事実との照らし合わせ、変わったこと。面談者に事前に渡します。面談者が知らないと、「そんなことが書かれているんですか」となり、候補者は「社内で把握されていない」と感じます。
一緒に働く人の言葉で。 口コミは退職者の言葉です。いま働いている人の言葉で、実態を話せる人が面談に出ると、候補者は両方を聞いて判断できます。
面談で口コミに向き合えるかどうかは、面談者への準備で決まります。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「口コミを見ないふりをする」というものです。社内で口コミを読んでおらず、文面でも面談でも触れず、候補者から聞かれて初めて知る。候補者から見れば、「自社の評判を把握していない会社」で、それ自体が不安の材料です。
見ていて差がつくのは、担当者が「口コミを読みました。この点は候補者が気にするので、文面で先に触れましょう」と言えるかどうかです。口コミを読んで文面を書く担当者は、候補者が検索した先で何を見るかを分かっています。読まない担当者は、返信が来ない原因を文面に求め続けます。
発注側にできるのは、口コミを社内で読み、事実と照らし、変わったことを言葉にして、担当者と面談者に渡すことです。整理された材料があれば、担当者は文面で触れ、面談者は聞かれて答えられます。
口コミの内容を社内に戻す
口コミは、採用の障害であると同時に、社内の課題の情報でもあります。
繰り返し書かれている不満を、社内に共有する。 一人の不満は個人の事情かもしれませんが、複数の人が同じことを書いていれば、構造の問題です。経営や現場に、事実として共有します。
変えられるものは、変える。 評価の仕組み、働き方、コミュニケーション。変えられるものを変えれば、口コミの評価は時間をかけて変わり、文面と面談で「変えた」と言える材料になります。
変えられないものは、認めて伝える。 業種の特性、事業の段階による制約。変えられないなら、それを認めたうえで、「それでも合う人」を探す方向にします。
いま働いている人の声を、集める。 口コミは退職者の声に偏ります。いま働いている人の声を、採用サイトや広報で見せれば、候補者は両方を比べられます。ただし、社員に良い口コミを書かせる形は、候補者に見抜かれ、逆効果です。
採用の結果を、口コミと照らす。 辞退の理由に口コミの内容が出ていれば、その点が採用に効いている証拠です。優先して対処します。
口コミへの対処は、採用担当だけの仕事ではなく、社内の課題への対処です。
担当者に共有しておくこと
口コミへの向き合い方を、担当者と共有します。
- 自社の口コミの内容と、評価が低い点
- 事実との照らし合わせ(いまも事実か、変わったか、当時から事実でないか)
- 変わったことと、その内容
- 文面で触れるか、触れないか、触れるならどう書くか
- 候補者から口コミについて聞かれたときの、返信での答え方
- 面談者に渡す準備の内容
担当者は、返信のやり取りで口コミについて聞かれることがあります。「口コミに〇〇と書かれていますが、実際はどうですか」。答えられる材料があれば、返信で率直に答え、面談につなげられます。無ければ、「面談でお話しします」としか返せず、候補者は面談の前に離れます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、口コミで最も困るのは「返信が来ない原因が口コミにあると分かっているのに、社内が動かない」ことです。文面を直し、対象を絞り、それでも返信が来ない。候補者から「口コミを見て」と言われた返信が数件ある。社内に伝えても、「口コミは気にしなくてよい」「昔のことだ」で終わる。
口コミは、担当者の側では変えられません。文面で触れることはできますが、変わっていないことを「変わった」とは書けません。社内が事実と照らし、変えられるものを変え、変わったことを言葉にして初めて、担当者は文面と返信で向き合えます。
発注側にできるのは、口コミを「採用担当の問題」にせず、「社内の課題」として経営に上げることです。担当者から「口コミが返信率に効いている」という事実が出たら、それを経営に伝えてください。返信率の数字と、候補者の声が、社内を動かす材料になります。
まとめ
- 口コミは返信の前・面談・内定後・入社後の全段階に影響する
- 消せない前提で、自社の口コミを読み、いまも事実か・変わったか・当時から事実でないかで照らす
- 文面では、候補者の判断に大きく影響する点に変わったことを事実として先に触れる。言い訳にしない
- 面談ではこちらから先に触れ・変わったことと変わっていないことを分け・候補者の懸念を聞き・面談者に準備を渡し・いま働いている人の言葉で
- 口コミは社内の課題の情報。繰り返される不満を共有し、変えられるものを変え、変えられないものは認めて伝える
- 担当者に口コミの内容・事実との照らし合わせ・変わったこと・文面での触れ方・返信での答え方・面談者への準備を共有する
- 法的な対応は専門家に確認する
よくある質問
口コミに、事実と違うことが書かれています
事実を示せる材料(制度の説明、数字、いま働いている人の声)を用意し、文面や面談で「事実はこうです」と提示してください。反論の形ではなく、事実の提示として。削除の請求など法的な対応は、条件と手続きがあるので、専門家にご確認ください。運用の側では、消えない前提で向き合います。
口コミの評価が低い点が、いまも事実です
隠さず、認めたうえで、「それでも合う人」を探す方向にしてください。「〇〇という面はある。その中で、〇〇を大事にできる人と働きたい」と、文面と面談で伝えます。変えられるなら、変える取り組みを社内で始め、「変えようとしている」と伝えられる状態にします。隠して入社させると、入社後に「口コミどおりだった」となります。
社員に、良い口コミを書いてもらってはいけませんか
避けてください。候補者は、不自然に良い口コミを見抜きます。見抜かれると、「口コミを操作する会社」という、さらに悪い印象になります。いま働いている人の声は、口コミサイトではなく、採用サイトや広報の記事で、顔と名前を出して見せてください。そのほうが候補者は信頼します。
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