守秘義務の範囲|人事の副業は「本業の秘密」「副業先の秘密」「候補者の情報」の三つを守る

報酬・契約・税務単価・契約・税務 更新日 2026-10-16

人事の副業は、秘密に触れる仕事です。依頼側の採用計画、年収の条件、選考の評価、そして何より候補者の経歴や連絡先を扱います。本業でも同じような情報を扱っているので、副業を始めると、自分の頭の中に複数の会社の秘密が同時に入っている状態になります。結論から書くと、人事の副業で守る秘密は、本業の会社の秘密、副業先の会社の秘密、候補者の情報の三つです。三つは根拠も守り方も違うので、分けて考えると整理しやすくなります。

以下は条文と厚生労働省のガイドラインに沿った一般的な整理です。個別の情報が秘密に当たるか、どこまで使ってよいかは、契約や事情によって判断されます。判断が必要な場合は、弁護士・社会保険労務士にご確認ください。

本業の会社に対する秘密保持義務

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務を負っている(秘密保持義務)と説明しています。副業・兼業で問題になりうる場合として、本業の会社の労働者が、本業の業務上の秘密を副業先で漏らす場合などが挙げられています。そのため会社は、就業規則などで、業務上の秘密が漏れる場合には副業を禁止または制限できるとしておくことや、副業をする労働者に秘密の範囲を注意喚起することなどが考えられる、とされています。

人事の副業でいえば、本業の会社の採用計画、人員の配置、給与の水準、評価の仕組み、社員の個人情報などが、本業の秘密に当たる可能性があります。副業先から「御社ではどうしていますか」と聞かれても、具体的な数字や社内の資料を出すことはできません。

副業先の秘密と、職業安定法の義務

副業先との関係では、まず業務委託契約の秘密保持条項が基本になります。多くの契約で、業務上知り得た情報を第三者に漏らさないこと、契約終了後も一定期間同じ義務を負うことが定められています。

それに加えて、採用の仕事には法律上の義務もあります。職業安定法第51条第1項は、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者などと、これらの代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。その立場でなくなった後も同様とされています。第2項は、業務に関して知り得た個人情報などを、みだりに他人に知らせてはならないと定めています。

人事の副業で副業先の募集を手伝う場合、こうした立場の一部として業務に関わることになる可能性があります。契約に秘密保持の条項があるかどうかにかかわらず、候補者の秘密や個人情報を漏らさないことは、法律の面からも求められていると考えておくのが安全です。

守る相手主な根拠例
本業の会社労働契約上の秘密保持義務、就業規則採用計画、給与水準、社員の情報
副業先の会社業務委託契約の秘密保持条項副業先の採用計画、条件、選考の評価
候補者職業安定法第51条、第5条の5など経歴、連絡先、選考の状況、本人の事情

エラベルの見解

担当者として登録している人の仕事ぶりを見ていて、守秘で一番危ないと感じるのは、情報の持ち方が混ざることです。本業と副業で同じ個人のメールアドレスを使う、同じノートアプリに両方の候補者のメモを書く、本業の採用管理ツールの画面を開いたまま副業の打ち合わせに出る。どれも悪意はありませんが、情報が混ざると、どこから漏れたのか自分でも分からなくなります。

副業を始めるときは、本業と副業で道具を分けるところから始めてください。メールアドレス、ファイルの保存先、メモの置き場所、できれば端末も分けます。副業先が採用管理ツールのアカウントを用意してくれるなら、それを使います。道具が分かれていれば、情報を混ぜる事故の大半は防げます。

候補者の情報の扱い

三つの中で、最も慎重に扱うべきなのが候補者の情報です。職業安定法第5条の5は、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者などに対し、求職者などの個人情報を、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、その目的の範囲内で保管・使用しなければならないと定めています(本人の同意がある場合など正当な事由がある場合を除く)。また、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならないとされています。

人事の副業に当てはめると、次のような扱いは避けるべきです。

最後の例は見落としやすい点です。業界や年齢、前職を組み合わせると、名前を出さなくても個人が特定できることがあります。採用の事例を話すときは、特定につながる情報をすべて外してください。

契約が終わったときにやること

副業の契約が終わったら、手元に残っている情報を整理します。業務委託契約に、契約終了時の情報の返却・削除の定めがあれば、それに従います。定めがない場合も、副業先と相談して、候補者の情報や副業先の資料を返却または削除し、その旨を副業先に伝えておくと安心です。

職業安定法第51条が定める秘密を守る義務は、その立場でなくなった後も同様とされています。契約が終わったから話してもよい、ということにはなりません。副業で知った情報は、契約が終わった後も、自分の中で閉じておく必要があります。競業との関係は競業避止義務にあたらないかで整理しています。

エラベルの見解

守秘義務の話をすると、「それでは副業の経験を何も話せないのか」と聞かれることがあります。話せることはあります。仕組みや考え方は話せますが、固有の情報は話せません。 「書類選考の基準を3項目に絞ったら、面接に進む人の質がそろった」という話はできますが、「A社では年収◯万円で◯人採った」という話はできません。

人事の副業で信頼される人は、この線をはっきり引いています。依頼側も、自分たちの情報を他社で話さない人だと分かれば、安心して社内の事情を打ち明けます。守秘を徹底することは、制約ではなく、次の依頼につながる信頼の土台です。

まとめ

よくある質問

副業先と秘密保持契約を結んでいなければ、守秘義務はありませんか

契約がなくても、採用の業務で知った候補者の秘密や個人情報については、職業安定法の義務が関わる可能性があります。また、本業の会社に対する秘密保持義務は、副業先との契約とは別に負っています。契約の有無にかかわらず、秘密は守る前提で動いてください。

本業の経験を副業先に話すのはどこまで許されますか

一般的な考え方や仕組みは話せる場合が多いですが、本業の会社の数字、社内資料、社員や候補者に関する情報は話せません。迷う場合は、本業の会社の就業規則や秘密保持の誓約書を確認し、必要なら人事の窓口に相談してください。

副業で使った候補者のデータはいつ削除すればよいですか

業務委託契約に定めがあればそれに従います。定めがない場合は、契約終了時に副業先と相談し、返却または削除して、その旨を伝えておくと安心です。個人情報の取扱いについて判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご確認ください。

出典

本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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