人事副業 / 単価・契約・税務
条件のすり合わせで決めること|面談の後、契約の前に、八つの項目を一枚で合意する
面談で、依頼側と話が合った。「ぜひお願いしたい」と言われた。そのまま契約書が来て、署名して、始まる。始まってから、業務の範囲が思っていたより広い、稼働の期待が違う、支払いが翌々月、と分かる。面談の「合った」と、契約の「合意」は、別のものです。結論を先に書くと、面談の後、契約の前に、条件のすり合わせを一段階置いてください。八つの項目を一枚にまとめて依頼側と合意し、その一枚を契約書か覚書に反映します。すり合わせを飛ばすと、面談の手応えが、契約後のずれになります。面談で聞くことはこちらから聞くべき質問に、見積もりの型は見積もりの出し方にまとめています。契約の個別の条項については、専門家にご確認ください。
面談の「合った」と、契約の「合意」は別
面談で話が合っても、次のことが決まっていないことが多い。
面談では、課題と進め方と実績と、大まかな稼働と報酬の形を話します。しかし、業務の範囲がどこまでか、稼働の上限は何時間か、報酬はいくらか、支払いはいつか、期間はどれだけか、依頼側は何をするか、記録は誰のものか、範囲を変えるときはどうするか。これらは、面談では決まっていません。
決まっていないまま契約に入ると、依頼側は依頼側の想定で、受ける側は受ける側の想定で、始まります。ずれは、始まってから表に出ます。
すり合わせは、面談と契約の間に置く、条件を決める段階です。面談の翌日から数日以内に、見積もりの一枚を出し、その一枚をもとに依頼側と合意し、合意した内容を契約書か覚書に反映します。
すり合わせで決める八つ
すり合わせで決めるのは、次の八つです。
一.業務範囲。 含む工程と、含まない工程。対象の抽出・文面・送信・返信対応・日程調整・レポート・定例会のうち、どれを担うか。「〇〇は含まない」を明示。
二.稼働と時間帯。 週または月の稼働の上限。対応できる時間帯、できない時間帯。返信対応の速さ(当日中か、翌営業日か)。超過したときの手続き。
三.報酬の形と額。 月額か、時給か、成果報酬か、その組み合わせか。額と、何時間分か。成果報酬なら、成果の定義と単価。立ち上げの期間の扱い。
四.支払い条件。 締め日、支払日、支払方法、請求書の形式、遅れたときの扱い。
五.期間と更新。 契約期間、更新の形(自動か都度か)、更新時の見直しの機会、更新しない場合の通知期限、途中解約の条件。
六.依頼側がやること。 求人票の整備、面談枠の確保、返信対応の窓口(受ける側が担わない場合)、承認の速さ、決める人。
七.記録の帰属。 送信の記録、文面、対象の基準、レポートを、契約後も受ける側が見られるか、契約終了後に使えるか。個人情報の扱い。
八.見直しの手続き。 範囲・稼働・報酬を変えるときの手続き。見直しの時期(三か月後など)。
八つを、一枚に。見積もりの出し方の型に、六から八を足した形です。
一枚にまとめる型
八つの項目を、次の型で一枚にします。
| 項目 | 受ける側の案 | 依頼側の希望 | 合意 |
|---|---|---|---|
| 業務範囲 | 含む工程/含まない工程 | ||
| 稼働と時間帯 | 週〇時間、〇曜〇時以降、返信は当日中 | ||
| 報酬の形と額 | 月額〇〇(〇時間分)/成果の定義 | ||
| 支払い条件 | 月末締め翌月末払い、振込 | ||
| 期間と更新 | 三か月、見直し付き自動更新、通知一か月前 | ||
| 依頼側がやること | 求人票、面談枠、決める人 | ||
| 記録の帰属 | 契約中は閲覧可、終了時に引き渡し | ||
| 見直しの手続き | 三か月後に見直し、変更は書面で |
「受ける側の案」を埋めて出し、依頼側に「依頼側の希望」を埋めてもらい、話し合って「合意」を埋めます。三列が埋まれば、すり合わせは終わりです。
一枚の表にすると、依頼側は社内で説明しやすく、受ける側は抜けが無いか確認しやすい。金額だけのやり取りより、はるかに速く合意できます。
進め方の順番
すり合わせは、次の順で進めます。
一.面談の翌日から数日以内に、一枚を出す。 「面談で伺った内容をもとに、条件の案をまとめました。ご確認ください」。受ける側の案を埋めた状態で。
二.依頼側の希望を聞く。 依頼側が、案に対して「ここは変えたい」を出す。メールでも、短い打ち合わせでも。
三.違いのある項目を、一つずつ話す。 業務範囲が広い→「その工程を含めると、稼働と報酬がこう変わります」。報酬が低い→「その額なら、範囲をここまでに」。項目ごとに、交換の形で。
四.決まらない項目を、保留にする。 全部を一度に決めようとしない。決まった項目から合意し、決まらない項目は「〇日までに」と期限を決めて保留。
五.合意した内容を、書面にする。 三列が埋まった一枚を、双方で確認。「この内容で合意しました」のメール。それを契約書か覚書に反映。
六.契約書を確認する。 依頼側の契約書に、合意した内容が反映されているか。反映されていなければ、覚書で足す。
面談から契約まで、一〜二週間が目安です。長引くなら、依頼側の社内で決まっていない項目があり、それを聞きます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「面談で『お願いしたい』と言われて、すぐ契約書に署名した」というものです。契約書には、月額と期間しか無く、業務範囲は「採用支援業務一式」。始まってから、範囲が広く、稼働が超過し、支払いが翌々月と分かる。面談と契約の間に、八つの項目の一枚を挟んでいれば、始まる前に全部が見えました。
見ていて差がつくのは、受ける側が「面談の手応え」と「条件の合意」を分けているかどうかです。手応えで安心して契約に進む人と、手応えがあっても一枚を出して合意してから契約に進む人がいます。後者は、始まった後の「聞いていない」が起きません。
受ける側にできるのは、面談の後に「条件の案をまとめてお送りします」と一言伝え、一枚を出すことです。依頼側にとっても、一枚で全部が見えるほうが、社内で通しやすい。
決まらない項目の扱い
八つのうち、決まらない項目が出ることがあります。扱い方です。
依頼側の社内で決まっていない。 面談枠、決める人、支払い条件。依頼側の担当者が、社内で確認する必要がある。「〇日までに確認いただけますか」と期限を。決まるまで、契約を待つか、「決まってから開始」を条件に契約するか。
依頼側と受ける側の希望が離れている。 報酬、範囲、稼働。交換の形で寄せる。「範囲を絞れば、その報酬で」「稼働を増やせば、その範囲で」。寄らなければ、受けない判断。
受ける側が決めきれない。 自分の稼働、時給の下限。面談の前に決めておく。週何時間から受けられるかと最初の1件の価格の決め方で。
「後で決めればよい」と言われる。 「範囲は始めてから調整」「報酬は様子を見て」。後で決めることは、決まらないことが多い。「始める前に、この八つだけは」と、決めてから始める。
決まらないまま、始めることになった。 決まらない項目を明示して、「〇日までに決める」を契約に入れる。決まらなければ、そこで止める合意を。
決まらない項目は、受けた後に詰まる場所です。決めてから始めることが、最も安全です。
合意を書面にする方法
合意した内容は、書面に残します。形はいくつかあります。
契約書に反映する。 依頼側の契約書のひな型に、八つの項目が入っているか確認し、無ければ足してもらう。
覚書を足す。 契約書のひな型を変えられない場合、八つの項目を箇条書きにした覚書を、契約書と同じ効力を持つ書面として添付。
メールでの合意。 契約書も覚書も無い場合、三列が埋まった一枚を添付して、「この内容で合意しました」のメールを双方で確認。契約書より弱いが、無いよりはるかに良い。
口頭だけにしない。 「じゃあ、それで」の口頭の合意は、後で「言った」「言わない」になる。口頭で決まったことは、その日のうちにメールで「〇〇と伺いました」と記録に。
契約書の内容を確認する。 依頼側の契約書に、合意と違うことが書かれていないか。特に、業務範囲の記述、途中解約の条件、記録の帰属、競業避止の範囲。
契約書や覚書の個別の条項、効力については、弁護士などの専門家にご確認ください。この記事は、確認する項目の整理であって、法的な助言ではありません。
エラベルの見解
担当する側から見ると、すり合わせで最も困るのは「依頼側の担当者と合意したことが、依頼側の契約書に反映されていない」ことです。担当者と「返信対応は御社で」「支払いは翌月末」と合意したのに、契約書には「採用支援業務一式」「支払いは当社規定による」。担当者は「大丈夫です」と言うが、書面は違う。始まってから、担当者が替わり、契約書だけが残る。
合意は、担当者との口約束ではなく、書面で残します。契約書に反映されないなら、覚書で。覚書も無理なら、メールで。
受ける側にできるのは、契約書を受け取ったら、合意の一枚と照らして、違いがあれば「ここは合意と違いますが」と指摘することです。指摘せずに署名すると、書面が全てになります。
まとめ
- 面談の「合った」と契約の「合意」は別。間にすり合わせを置く
- 決めるのは業務範囲・稼働と時間帯・報酬の形と額・支払い条件・期間と更新・依頼側がやること・記録の帰属・見直しの手続きの八つ
- 受ける側の案・依頼側の希望・合意の三列の一枚で。金額だけのやり取りより速い
- 進め方は翌日から数日で一枚を出す→希望を聞く→違いを一つずつ交換の形で→決まらないものは期限付き保留→合意を書面に→契約書を確認
- 決まらない項目は依頼側の社内・希望の差・受ける側の準備不足・「後で」のどれか。決めてから始める
- 書面は契約書に反映→覚書→メールでの合意。口頭だけにしない。契約書と合意の一枚を照らす
- 条項の効力は専門家に確認
よくある質問
面談で「お願いしたい」と言われました。すぐ契約に進んでよいですか
進む前に、八つの項目の一枚を出し、合意してからにしてください。面談で決まっているのは、課題と進め方と大まかな稼働と報酬の形までで、範囲・上限・額・支払い・期間・依頼側の宿題・記録・見直しは決まっていません。一枚を出すのに、面談の翌日から数日で足ります。
依頼側が「細かいことは始めてから」と言います
「始めてから」は、決まらないことが多く、始まってからのずれの原因になります。「始める前に、この八つだけは決めさせてください。一枚にまとめたので、確認だけお願いします」と、一枚を出してください。一枚なら、依頼側の負担は小さく、多くの依頼側は応じます。
契約書のひな型を変えられないと言われました
八つの項目を箇条書きにした覚書を、契約書と同じ効力を持つ書面として添付する形を提案してください。それも難しければ、合意の一枚を添付した「この内容で合意しました」のメールを、双方で確認します。契約書だけで、合意と違う内容のまま署名することは避けます。個別の条項の効力は、専門家にご確認ください。