人事副業 / 人事の前提知識

介護休業の制度|93日・3回までの分割と、介護休暇・両立支援制度等の周知

公開 2026-09-23

副業で人事を受けていると、介護の相談は育児と違う形で来ます。育児は予定が読めますが、介護は突然始まり、いつ終わるか分かりません。そして、本人が言い出しにくい。結論を先に書くと、育児介護休業法第11条第1項は「労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる」と定め、第2項は、同一の対象家族について「三回の介護休業をした場合」または「介護休業をした日数…が九十三日に達している場合」には申出をすることができないとしています。九十三日を三回まで分けて使える、という設計です。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。介護のための短時間勤務は短時間勤務制度に、育児側は育児休業の制度にまとめています。

誰が、誰のために、どれだけ

対象家族(第2条第4号)。「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう」。

要介護状態(第2条第3号)。「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう」。要介護認定の有無とは別の定義である点に注意します。

介護休業(第2条第2号)。「労働者が、第三章に定めるところにより、その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいう」。

回数と日数の上限(第11条第2項)。介護休業をしたことがある労働者は、その対象家族について次のいずれかに当たる場合は申出ができません。

「対象家族ごと」に数えます。父について九十三日を使い切っていても、母について新たに申し出ることはできます。ここを一人あたりの上限と誤解している会社があります。

有期雇用の要件(第11条第1項ただし書)。「期間を定めて雇用される者にあっては、介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる」。契約の満了が明らかかどうかで判断する形です。

申出の方法(第11条第3項)。厚生労働省令で定めるところにより、対象家族が要介護状態にあることを明らかにし、かつ、その期間中は介護休業をすることとする一の期間について、初日(介護休業開始予定日)と末日(介護休業終了予定日)を明らかにして行います。

労使協定で除外できる範囲。育児休業と同様に、事業主と過半数労働組合等との書面による協定で、引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者などを対象外にできる仕組みが置かれています。協定がないのに現場が「一年未満は使えない」と運用しているケースがあるので、協定の有無から確かめます。

不利益取扱いの禁止(第16条)。介護休業申出をし、または介護休業をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁じられています。

介護休暇と、他の制度

介護休暇(第16条の5第1項)。「要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(…「介護休暇」という。)を取得することができる」。

第2項は「介護休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる」。第4項は「第一項の年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする」。

介護休業とは別の制度です。介護休業は連続した休業、介護休暇は通院の付き添いや手続のための単発の休暇です。両方が使える状態にしておきます。

所定労働時間の短縮等の措置(第23条第3項)。「その要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、…労働者の申出に基づく連続する三年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置…を講じなければならない」。第4項は、この期間を労働者が申し出た利用開始日から起算するとしています。

施行規則は、この措置を二回以上の利用をすることができる措置とし、次のいずれかの方法によることを求めています(第三号による場合は二回以上の利用を要しません)。

家族介護を行う労働者への配慮(第24条第3項・第4項)。介護休業・介護休暇に関する制度または介護のための所定労働時間の短縮等の措置に準じて、介護を必要とする期間・回数等に配慮した必要な措置を講ずるよう努めなければならない、在宅勤務等をさせることにより介護を容易にするための措置を講ずるよう努めなければならない、とされています。

エラベルの見解

担当する側から見ると、介護の案件でいちばん難しいのは、当事者が名乗り出ないことです。育児は周囲に見えますが、介護は隠せます。そして、多くの人は制度があることを知らないまま、有給休暇を使い切り、深夜に通院に付き添い、限界が来たところで突然辞めます。人事に相談が来たときには、もう決意が固まっている。

だからこの領域では、制度を作ることより、知らせることのほうが重要です。条文もそう作られていて、第21条第4項は、対象家族が介護を必要とする状況に至ったことを労働者が申し出たときに、介護休業に関する制度や介護両立支援制度等を知らせるとともに、意向を確認するための面談その他の措置を講じなければならないとしています。

そして第21条第5項は、さらに踏み込んでいます。「事業主は、労働者が、当該労働者が四十歳に達した日の属する年度その他の…厚生労働省令で定める期間の始期に達したときは、…当該労働者に対して、当該期間内に、当該事項を知らせなければならない」。申出を待たずに、年齢を契機として知らせるという設計です。実務では、四十歳到達の対象者リストを作って年に一度案内する仕組みを組みます。

第22条第2項・第4項は、介護休業申出および介護両立支援制度等申出が円滑に行われるようにするため、研修の実施/相談体制の整備/その他省令で定める措置のいずれかを講じなければならないとしています。「いずれか」でよいので、まず相談体制から整えるのが現実的です。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この周知の仕組みを作った経験は、経歴に書いておくと効きます。

会社に渡すもの

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

作るもの中身
制度の一覧介護休業/介護休暇/所定労働時間の短縮等/所定外労働の制限/時間外・深夜の制限
対象家族の定義配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母。準ずる者の範囲
要介護状態の確認法の定義に基づく確認の様式。要介護認定の有無だけで判断しない
日数の管理表対象家族ごとに、回数と日数。家族ごとに九十三日・三回
有期の判定開始予定日から九十三日経過日+六月までに契約満了が明らかか
労使協定除外する労働者の範囲。協定がない除外は成り立たない
申出の様式介護休業、介護休暇、短縮等の措置。それぞれ別に
40歳到達の案内第21条第5項。対象者リストと年一回の案内
申出時の面談第21条第4項。知らせる事項と意向確認の手順
雇用環境の整備第22条第2項・第4項。研修/相談体制/その他のどれを選ぶか
就業規則・規程育児介護休業規程が条文と整合しているか
引き継ぎの型開始時期が読めない前提での業務の分解と代替

「開始時期が読めない」を前提に設計します。育児休業は予定日から逆算できますが、介護は突然始まります。業務の属人化を減らす作業が、そのまま介護両立の備えになります。ここは会社にとって分かりやすい利点なので、説明の入口として使えます。

休業中の所得は雇用保険の枠です。介護休業給付については、雇用保険の被保険者資格や支給要件が関わります。雇用保険の適用範囲もあわせてご覧ください。支給額や要件は、ハローワークにご確認ください。

ハラスメントの防止措置も同じ枠にあります。介護休業等に関する言動に起因する問題についての雇用管理上の措置は、マタハラ・ケアハラ対応にまとめています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、制度の一覧、日数の管理表、様式、40歳到達の案内の仕組み、面談の手順、規程の整合の確認、引き継ぎの型までで、「この状態が要介護状態に当たるか」「この取扱いが不利益取扱いに当たるか」といった個別の判断は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)や弁護士の範囲です。

担当する側から見ると、介護の案件は会社の年齢構成を見るところから始めます。四十代後半から五十代が多い会社は、これから数年で介護の相談が増えます。人数を数えて示すと、経営は動きます。「制度を整えましょう」では動かない会社が、「三年以内に十人前後が当事者になります」と言うと動く。数を出すのが、この案件の入口です。

もう一つ、実務で効くのは、辞めた人の理由を数えることです。退職理由に「家庭の事情」と書かれているものを一件ずつ確かめると、介護が含まれていることがあります。防げた離職があったと分かると、会社の見方が変わります。採用にいくらかけているかを知っている人事なら、この比較を示せます。

そして、介護の制度を整えた会社は、採用でも強くなります。四十代・五十代の即戦力を採るとき、親の介護は現実的な検討事項です。ここに答えられる会社は選ばれます。制度整備が採用の競争力に変わる、分かりやすい領域です。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この接続まで語れる人は、経歴に書いておくと効きます。

まとめ

よくある質問

介護休業は一人あたり93日までですか

育児介護休業法第11条第2項は、介護休業をしたことがある労働者について、「当該対象家族について三回の介護休業をした場合」または「当該対象家族について介護休業をした日数…が九十三日に達している場合」に、当該対象家族については申出をすることができないと定めています。したがって、回数と日数の上限は対象家族ごとに数えます。父について使い切っても、母について新たに申し出ることは条文上妨げられません。管理台帳を家族単位で作るのが実務です。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

要介護認定を受けていないと介護休業は使えませんか

育児介護休業法第2条第3号は「要介護状態」を「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義しており、介護保険の要介護認定を要件としていません。第11条第3項は、申出に当たって対象家族が要介護状態にあることを明らかにすることを求めています。実務では、確認の方法と様式を先に決めておきます。個別の該当性の判断は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

従業員が言い出しにくいようです。会社から何かできますか

育児介護休業法第21条第4項は、対象家族が介護を必要とする状況に至ったことを労働者が申し出たときの、制度の周知と意向確認の措置を定めています。さらに第5項は、労働者が「当該労働者が四十歳に達した日の属する年度」その他の厚生労働省令で定める期間の始期に達したときに、介護休業に関する制度等を知らせなければならないとしています。申出を待たずに知らせる仕組みが条文に置かれている形です。あわせて第22条第2項・第4項は、研修の実施、相談体制の整備、その他の措置のいずれかを講じることを求めています。運用の設計については、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

出典