人事副業 / 両立・スキル
再委託してよいか|人事の副業で受けた業務を他の人に回すのは「契約書の条項・依頼側の了解・情報の扱い」の三つが揃わない限りしない。忙しいときの逃げ道は再委託ではなく範囲の見直し
本業が急に忙しくなり、副業で受けているスカウトの送信を、知人の人事経験者に一部やってもらえないかと考える。あるいは、受けた範囲の中に自分の得意でない工程があり、そこだけ他の人に回したい。結論を先に書くと、人事の副業で受けた業務は、再委託を前提にしないのが基本です。回してよいのは、「契約書に再委託を認める条項がある、または禁止されていない」「依頼側に誰に何を回すかを伝えて了解を得た」「回す相手が情報の扱いで依頼側と同じ約束をする」の三つが揃ったときだけで、一つでも欠けるなら回しません。忙しいときの逃げ道は、再委託ではなく、依頼側と範囲や稼働を見直すことです。業務委託の契約では、依頼側が「この人に頼む」と決めて契約しているので、黙って他の人に回すことは、一般に契約上の問題になると整理されています。個別の契約の解釈は、弁護士などの専門家にご確認ください。チームで受ける形にする話はチームで動くときの分担に、複数人で最初から受ける形は複数人で案件を受けるにまとめています。
再委託を前提にしない理由
副業の案件で、受けた業務を他の人に回すことが問題になるのは、依頼側が「誰がやるか」を見て契約しているからです。
| 理由 | 何が起きるか |
|---|---|
| 依頼側は本人の経歴で決めている | 別の人が動くと、依頼側が選んだ前提が崩れる。担当が替わったのと同じ |
| 契約書に再委託の禁止が入っていることが多い | 業務委託の契約書には、一般に再委託を禁じるか、事前の書面の承諾を要する条項があると整理されている |
| 秘密保持は本人と結んでいる | 回した相手は秘密保持の対象外。候補者の情報がその人に渡った時点で、約束の外に出る |
| 媒体のアカウントは本人に発行されている | 回した相手が同じアカウントを使うと、媒体の規約に触れることがある |
| 責任の所在が曖昧になる | 回した相手のミスは、依頼側から見れば本人のミス。だが本人は内容を把握していない |
理由の要点は、「依頼側は人を選んでいる」ことです。副業の業務委託は、会社に頼むのではなく、その人に頼む形が多く、その人が動くことが契約の前提になっています。黙って他の人に回すと、依頼側が知ったときに、契約の話だけでなく信頼の話になります。依頼側から契約を切られる場面の一つがこれで、契約を切られたときに書いた「理由が言われない終了」の中には、再委託が発覚したことが含まれることがあります。
契約書で見る条項
再委託を考える前に、依頼側と結んだ契約書を読みます。見る場所は決まっています。
| 条項 | 書かれていること | 読み方 |
|---|---|---|
| 再委託の条項 | 「乙は本業務を第三者に再委託してはならない」「甲の事前の書面による承諾なく」など | 禁止なら回さない。承諾があれば可なら、書面で承諾を取る手順に入る |
| 秘密保持の条項 | 情報を開示してよい相手の範囲 | 「本業務の遂行に必要な範囲の従業員」のような書き方なら、副業の個人には従業員がいないので、回す相手は対象外になりやすい |
| 個人情報の取り扱いの条項 | 候補者の情報を扱う人の範囲と、扱い方 | 回す相手が候補者の情報に触れるなら、依頼側の同意と、相手の約束が要る |
| 担当者の指定 | 業務を行う者として本人の名前が書かれているか | 書かれていれば、他の人が行うことは契約の前提から外れる |
| 契約の解除の条項 | 解除の理由に「再委託の禁止に違反したとき」が入っているか | 入っていれば、黙って回すことが解除の理由になる |
条項の要点は、「禁止されていないから回してよい」とは読まないことです。再委託の条項が無くても、秘密保持や個人情報の条項で、回す相手が情報を扱えない形になっていることが多く、実質的に回せません。条項の読み方に迷う場合は、契約書を持って専門家に相談してください。契約の内容を最初に確認する場面は条件のすり合わせに整理しています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「作業の一部なら、依頼側に言わずに手伝ってもらっても問題ない」というものです。実際には、依頼側から見て「作業の一部」と「業務」の区別はありません。スカウトの送信を一通でも他の人が行えば、候補者の情報をその人が見たことになり、依頼側の情報管理の約束の外に出ます。作業の大小ではなく、依頼側の情報に触れる人が増えたかどうかで、依頼側は判断します。
依頼側に伝えたうえで手伝ってもらう形なら、了解が出ることは珍しくありません。依頼側の担当者は、稼働が回らないことより、知らないうちに人が増えていることを嫌います。「本業の繁忙で、この期間だけ送信の工程をこの人に手伝ってもらいたい。候補者の情報の扱いは同じ約束をさせる」と先に伝えれば、依頼側は判断できます。伝えずに回して後で分かるのと、伝えて断られるのでは、後者のほうが関係は続きます。エラベルは依頼側が担当者を見て選ぶ仕組みなので、選んだ人以外が動くときは、その前に依頼側へ伝えることをお願いしています。
依頼側に伝えて了解を得る手順
三つの条件が揃いそうなら、依頼側に伝えて了解を得ます。手順は、伝える内容を先に整理しておくと短く済みます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 一、回す工程と期間を限る | 「スカウトの検索と送信のうち、送信だけ」「来月末まで」のように、工程と期間を限って伝える。範囲全体を回すのは、再委託ではなく担当の交代 |
| 二、回す相手を伝える | 名前と、その工程の経験を伝える。依頼側が「この人なら」と判断できる材料を出す |
| 三、情報の扱いを揃える | 回す相手が、依頼側との秘密保持と同じ内容を守る約束をすることを伝える。相手と自分の間でも書面にする |
| 四、アカウントと連絡の窓口を決める | 媒体のアカウントは依頼側に相手の分を発行してもらう。依頼側との連絡は自分が窓口のまま |
| 五、書面で承諾をもらう | 契約書に「書面による承諾」とあれば、メールでもよいので文面で残す |
| 六、責任は自分に残る | 相手の工程の品質は自分が確認し、依頼側への報告は自分が出す |
手順の要点は、「一」の工程と期間を限ることです。範囲の全体を長期に回すのは、再委託ではなく担当の交代で、依頼側から見れば別の人と契約し直す話になります。一部の工程を限られた期間だけ回すなら、依頼側は自分が担当者であることを前提に判断できます。相手との間の取り決めをどう書くか、契約の形として問題がないかは、専門家にご確認ください。
情報の扱いで変わること
再委託で最も注意するのは、候補者と依頼側の情報が、自分以外の人に渡ることです。工程によって、渡る情報の量が違います。
| 回す工程 | 渡る情報 | 注意 |
|---|---|---|
| スカウトの検索(候補のリスト作り) | 媒体上の候補者のプロフィール | 媒体のアカウントを共有しない。相手の分を依頼側に発行してもらう |
| スカウトの送信 | 候補者のプロフィールと、依頼側の求人の情報 | 送信の文面に依頼側の内部の情報が入っていないか確認する |
| 応募者への一次対応 | 候補者の連絡先、履歴書、やり取りの履歴 | 個人情報の中心。回すなら、依頼側の個人情報の扱いの約束を相手にも適用する |
| 日程調整 | 候補者の連絡先と、依頼側の面接官の予定 | 依頼側の社内の情報に触れる。相手の連絡先が候補者に見える形になる |
| 記録の入力 | 候補者の評価と選考の状況 | 評価は最も慎重に扱う情報。回さないほうがよい |
情報の要点は、「候補者の連絡先と評価に触れる工程は回さない」ことです。検索のリスト作りのように、媒体上の公開情報の範囲で済む工程なら、相手の分のアカウントを発行してもらえば、渡る情報を限れます。一次対応や記録の入力は、候補者の個人情報の中心に触れるので、回すより、依頼側と稼働を見直すほうが安全です。情報の種類ごとの扱いは個人情報の扱いと情報の取り扱いと端末の分離に書いています。
再委託せずに乗り切る方法
再委託を考えるのは、たいてい本業の繁忙で稼働が足りなくなったときです。再委託より先に、依頼側と範囲や稼働を見直す方法があります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 稼働を一時的に下げることを伝える | 「今月は週の稼働をこれだけに下げたい」と先に伝える。依頼側は、黙って遅れるより、先に言われるほうを選ぶ。本業が忙しくて稼働できないとき |
| 工程の優先順位を依頼側と決める | 全部を薄くやるより、「送信は続け、記録の整理は来月に回す」のように優先を決める |
| 依頼側の社内に一時的に戻す | 依頼側に人事担当がいれば、一部の工程を期間限定で社内に戻してもらう |
| 依頼側に別の担当者を追加してもらう | 自分が回すのではなく、依頼側が別の外部の担当者を契約する。窓口を通していれば、窓口に相談する |
| 契約の更新の節目で範囲を直す | 恒常的に足りないなら、更新のときに範囲を小さくする。契約期間の目安 |
方法の要点は、「先に伝える」ことです。再委託を考える段階は、すでに稼働が足りていない段階で、依頼側にはまだ見えていません。見える前に伝えれば、依頼側と一緒に方法を選べます。見えてから分かると、遅れの説明と再委託の発覚が重なり、信頼を失います。
エラベルの見解
担当する側から見ると、再委託を考える人の多くは、受けた範囲が最初から一人の稼働に対して大きすぎます。本業が忙しくなる前提で範囲を決めていないので、繁忙期に入ると足りなくなり、誰かに回したくなります。順番として、範囲を決めるときに「本業が最も忙しい月でも回る量」を上限にしておけば、再委託を考える場面はほとんど来ません。
それでも足りなくなったときは、回す相手を探す前に、依頼側に稼働を下げることを伝える。依頼側が別の担当者を足す判断をするなら、窓口を通していればその窓口が候補を出せます。エラベルでは、依頼側が担当者を追加したいときは、いまの担当者を通さず、依頼側が新しく選ぶ形にしています。担当者が自分で人を連れてきて回すのではなく、依頼側が選び直す。この形なら、情報の扱いも契約も依頼側との間で整い、いまの担当者の責任の範囲も変わりません。
まとめ
- 再委託は前提にしない。依頼側は人を選んで契約しており、黙って回すと契約と信頼の両方の問題になる
- 回してよいのは契約書で禁止されていない・依頼側の了解がある・相手が情報の扱いで同じ約束をするの三つが揃ったときだけ
- 契約書で見るのは再委託・秘密保持・個人情報・担当者の指定・解除の条項。禁止が無くても情報の条項で回せないことが多い
- 了解を得るなら工程と期間を限る・相手を伝える・情報の扱いを揃える・アカウントを分ける・書面で残す・責任は自分に残す
- 候補者の連絡先と評価に触れる工程は回さない。回すなら媒体上の公開情報で済む工程まで
- 逃げ道は稼働を下げると先に伝える・優先順位を決める・社内に戻す・依頼側が担当者を足す・更新で範囲を直す。契約の解釈は専門家に
よくある質問
家族に、送信の作業だけ手伝ってもらうのも再委託になりますか
家族であっても、自分以外の人が候補者の情報に触れれば、依頼側の秘密保持の約束の外に出ます。相手が誰かではなく、依頼側の情報に触れる人が増えたかどうかで考えます。手伝ってもらうなら、依頼側に伝えて了解を得る手順は同じです。家族だからと伝えずに手伝ってもらい、後で分かった場合の影響は、知人に回した場合と変わりません。
契約書に再委託の条項が無い場合は、回してよいですか
条項が無いことは、回してよいことを意味しません。秘密保持や個人情報の条項で、情報を扱える人が本人に限られていることが多く、その場合は実質的に回せません。条項が無く、情報の条項でも読み取れない場合でも、依頼側に伝えて了解を得てから回すのが安全です。契約書の読み方に迷う場合は、専門家にご確認ください。
依頼側から「誰かに手伝ってもらってよい」と口頭で言われました
口頭で言われた場合も、文面で残しておきます。「先日お話しした、〇〇の工程を〇〇さんに手伝ってもらう件、来月末までの期間で進めます。情報の扱いは同じ約束をさせます」のようにメールを送り、返信をもらえば、書面の承諾に近い形になります。契約書に「書面による承諾」とある場合は、メールで足りるかも含めて、依頼側に確認しておくと後で困りません。