人事副業 / 採用・人事の実務
研修講師を務める|「うまく話す」ではなく、「最初の五分・演習を回す・受講者に答えさせる・翌週の一つで終える」型
研修の講師を頼まれると、「うまく話せるか」が気になります。ただ、話が上手い講師の研修でも、受講者の翌週の行動は変わらないことが多い。行動が変わるのは、講師が話した時間ではなく、受講者が自分の場面で試した時間で決まります。講師の仕事は、話すことではなく、演習を回すことです。結論を先に書くと、研修講師は、最初の五分で「翌週の行動」と「今日やること」を示し、説明は短く演習を回し、質問に講師が答えず受講者に答えさせ、翌週の一つで終える四つを当日の型にし、沈黙と反発の扱いを持ち、知らないことは「知らない」と言い、法令や制度の内容を断定せず、当日の反応と翌週の行動を分けて記録し、受講者の情報を残しません。設計の型は研修を設計するに、案件として受ける形は研修講師の副業の実務に書いています。ここでは、当日の講師の型に絞ります。
話が上手くても行動が変わらない理由
| 講師の形 | 受講者に起きること |
|---|---|
| 説明が長く、分かりやすい | 「分かった」で終わる。試していない |
| 事例が豊富 | 他人の話として聞く。自分の場面と結びつかない |
| 質問に全部答える | 受講者が考えない。講師の答えを持ち帰るだけ |
| 盛り上がる | その日の満足。翌週は忘れる |
| 最後に「頑張ってください」 | 何をすればよいかが決まっていない |
講師が話すほど、受講者は聞く側になります。受講者が試すほど、行動になります。当日の時間の使い方を、説明から演習に移すのが講師の型です。
当日の四つ
| 段 | 中身 | 時間の考え方 |
|---|---|---|
| 最初の五分 | 「この研修で翌週に変わる行動は〇〇です」「今日は、その行動を自分の場面で試します」。上司から事前に聞いている内容と揃える | 短く。会社紹介や自己紹介を長くしない |
| 演習を回す | 型を短く説明→受講者が自分の場面で試す→互いに見て一つ気づきを言う→講師は回って一言 | 全体の半分以上 |
| 質問に受講者に答えさせる | 「〇〇の場合はどうすれば」に、講師が答えず「同じ場面の方はいますか。どうしていますか」と返す | 講師の答えは最後に短く |
| 翌週の一つで終える | 「翌週、どの場面で、何をしますか」を各自が一行書く。上司に伝えることを案内 | 最後の数分 |
四つのうち、講師が慣れていないと崩れるのは「質問に受講者に答えさせる」です。答えたくなるところを、問いに変えます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、講師で最も差がつくのは、「質問に自分で答えない」を守れるかです。受ける側は、経験があるほど答えを持っていて、聞かれれば答えたくなります。ただ、講師が答えると、受講者は「講師の答え」を持ち帰り、自分の場面では使えません。「同じ場面の方はいますか」と会場に返し、受講者が答えると、答えは受講者の言葉になり、他の受講者にも「自分たちで考えてよい」が伝わります。講師の答えは、受講者の答えの後に、一言足すだけです。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「研修で、受講者が話した時間と講師が話した時間は、どちらが長かったですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、質問が来たら、答える前に一度「皆さんはどうですか」と返す癖を、最初の一問から始めること。
演習の回し方
| 順 | 講師がやること | 受講者がやること |
|---|---|---|
| 一 | 型を一枚で示す。「問いの順」「記録の欄」など。説明は数分 | 型を見る |
| 二 | 「事前に書いた自分の場面で、この型を試してください」 | 二人組で、一人が試し、一人が見る |
| 三 | 回って、詰まっている組に一言。「型のどこで止まりましたか」 | 試す |
| 四 | 「見ていた方は、一つだけ気づきを言ってください」 | 気づきを一つ |
| 五 | 役割を交代 | 交代して試す |
| 六 | 全体で「試してみて、型のどこが使いにくかったか」を数人に | 言う |
演習の材料は、受講者が事前の確認で書いた「自分の場面」です。架空の事例を用意しません。設計の段階で事前の確認が無ければ、当日の最初に「その行動に関わる、最近の場面を一つ書いてください」で作ります。
沈黙と反発の扱い
| 場面 | やらないこと | やること |
|---|---|---|
| 質問に誰も答えない | 講師が埋める | 待つ。「隣の方と三十秒話してから」と、二人組で話させてから聞く |
| 演習で手が止まる | 講師が代わりにやる | 「型のどこで止まりましたか」と、止まった場所を聞く。型の問題なら型を直す |
| 「うちでは無理」と反発 | 反論する、説得する | 「無理だと思う理由を教えてください」と聞き、理由を全体で共有する。「やる意味が分からない」なら上司に戻す。「機会が無い」なら仕組みの話として依頼側に |
| 一人が話し続ける | 遮る | 「ありがとうございます。他の方は」と、次に回す |
反発は、研修で直せる範囲(知らない・やり方が分からない)の外にあることが多い。講師がその場で解決せず、依頼側に「こういう声があった」と戻します。
知らないことを聞かれたとき
| 聞かれたこと | 答え方 |
|---|---|
| 講師の経験の外のこと | 「私の経験の範囲では分かりません。御社で詳しい方はいますか」 |
| 依頼側の制度の詳細 | 「御社の人事にご確認ください」 |
| 法令や制度の内容 | 「法令に関わる点は、専門家に確認していただく前提で、一般に整理されている範囲では〇〇と言われています。個別の判断は専門家に」 |
| 他社の事例の詳細 | 「他社のことは、公開されている範囲でしか分かりません」 |
「知らない」と言えない講師は、推測で答え、それが受講者の行動になります。人事の研修は、法令や制度に触れることが多く、講師が断定した内容が誤っていれば、依頼側と受講者に影響します。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「講師は、受講者より詳しくなければならない」というものです。実際には、受講者は自分の現場に詳しく、講師は型に詳しい、という分担で足ります。講師が現場の詳細を知っている必要は無く、「型を渡し、受講者が自分の現場で試すのを回す」のが役割です。「私は御社の現場のことは皆さんほど知りません。型を渡すので、皆さんの場面で試してください」と最初に言えば、受講者は「試す側」になり、講師は「回す側」になります。受ける側がその場で使える判断としては、最初の五分に「私は型を渡す役、試すのは皆さん」を一言入れること。
当日の反応と翌週の行動を分けて記録する
| 記録 | 中身 | 使い道 |
|---|---|---|
| 当日の反応 | 演習で型のどこが使いにくかったか。反発の理由。質問の傾向 | 型と設計の見直し |
| 翌週の行動 | 上司が見た「やったか」。一か月後の「続いているか」 | 効果。次の研修の判断 |
| 書かないこと | 受講者の氏名と個人の発言の詳細。「できていない人」の特定 | — |
当日の反応は、講師が終了後に短く書きます。翌週の行動は、上司から人事を通して受け取ります。二つを混ぜると、「盛り上がったから効いた」になります。効果の見方は研修を設計するに書いています。
受講者の情報を残さない
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 事前の確認の答え | 演習の材料として当日使い、研修後は依頼側の決まりで扱う。講師の手元に残さない |
| 演習で出た個人の場面 | 記録しない。上司にも渡さない |
| 「できていない人」 | 特定しない。型の使いにくさとして記録 |
| 受講者の一覧 | 依頼側のもの。講師は当日の出席の確認まで |
受講者が演習で話した自分の場面は、上司や同僚の名前が出ることがあり、外に出せば受講者の信頼を失います。講師は聞くだけで、記録しません。扱いは個人情報の扱いに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 説明が長くなる | 型の一枚だけを説明し、残りは演習で。時間を先に決める |
| 質問に答えてしまう | 「皆さんはどうですか」を最初の一問から |
| 演習で沈黙 | 二人組で三十秒話してから。待つ |
| 反発が出る | 理由を聞き、研修の外の問題は依頼側に戻す |
| 知らないことを推測で答えた | 次の場で訂正し、「専門家に」と戻す |
| 盛り上がったが翌週の行動が無い | 翌週の一つで終えたか、上司が見る形になっていたかを確かめる |
まとめ
- 話が上手くても行動は変わらない。受講者が試した時間で決まる
- 当日の四つは最初の五分・演習を回す・受講者に答えさせる・翌週の一つで終える
- 演習は受講者の自分の場面で、二人組で試して見て気づきを一つ。全体の半分以上
- 質問には「皆さんはどうですか」と返してから、講師は一言
- 沈黙は待つ。反発は理由を聞き、研修の外の問題は依頼側に戻す
- 知らないことは「知らない」。法令と制度は断定せず専門家に。個別の判断は専門家にご確認ください
- 当日の反応と翌週の行動を分けて記録。受講者の個人の場面は記録しない
よくある質問
受講者が講師より経験が長く、「そんなことは分かっている」という空気です
「型を渡す役、試すのは皆さん」を最初に言い、演習に入ります。経験が長い人ほど、自分の場面で型を試すと「ここは使える」「ここは自分のやり方のほうがよい」と具体に言え、それが他の受講者の学びになります。講師が経験で競わず、「皆さんの場面で試して、型の使いにくいところを教えてください」と、受講者を型の改善の側に置くと、空気が変わります。
オンラインの研修で、演習が回りにくいです
二人組の演習は、少人数の部屋に分ける機能で回せます。講師は部屋を回り、詰まっている組に一言。全体に戻したら、「型のどこが使いにくかったか」を数人に。オンラインでは沈黙が長く感じるので、「隣の方と」の代わりに「チャットに一言」で先に書かせてから聞くと、答えが出ます。機能の有無と使い方は、依頼側の環境で事前に確かめます。
講師として、受講者の評価(誰ができていたか)を依頼側から求められました
講師は受講者を評価しません。「できていない人」を特定して伝えると、受講者は研修で本音を出さなくなり、次の研修が機能しません。伝えるのは、「型のどこが使いにくかったか」「反発の理由の傾向」で、個人ではなく型と設計の改善の材料です。受講者の評価は、翌週の行動を上司が見る形で、依頼側が行います。線は契約の範囲に書きます。範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。