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退職や解雇の場面への関わり方|人事の副業で、採用の外側にある「人が辞める場面」に巻き込まれたときの線

公開 2026-09-16

採用の副業を受けていると、依頼側から採用とは別の相談が来ることがあります。「採った人が合わなくて、試用期間で見送りたい」「社員が辞めると言っている。どうすればよいか」「この人に辞めてもらいたいが、どう進めればよいか」。人事の経験があるので、依頼側は当然のように相談してきます。ただ、退職や解雇の場面は、採用活動の補助の範囲外であり、法令の判断を含み、当事者の生活に直結します。結論を先に書くと、退職や解雇の場面には、副業の人は「判断にも実行にも関わらず、専門家につなぐ」のが原則で、関わるとしても「採用の側で何を変えれば次に同じことが起きないか」に限るのが線です。この記事は一般的な整理で、個別の判断は社会保険労務士や弁護士にご確認ください。範囲の線引き全般は踏み込みすぎない線引きに、注意すべき依頼は注意したほうがよい依頼にまとめています。

なぜ関わらないのか

採用と、退職・解雇は、同じ人事の仕事に見えて、性質が違います。

観点採用活動の補助退職・解雇の場面
副業の範囲書面に書いた範囲の中範囲外。書面に無い
法令の関わり一般的な整理で足りることが多い労働契約や解雇の規制に直接関わる。個別の判断が要る
当事者への影響候補者は選考の一段階本人の生活と生計に直結する
依頼側の責任採用の判断は依頼側手続きと判断の責任は依頼側。副業の人が関わると責任が曖昧になる
副業の人の立場外部の実行者外部の人が関わること自体が、本人から見て不適切に映りうる
記録の重さ稼働の記録手続きの記録は、後で争いの材料になりうる

違いの要点は、「退職・解雇は、副業の人が関わる構造になっていない」ことです。法令の判断が要り、当事者の生活に関わり、外部の人が関わること自体が問題になりうる。人事の経験があるからといって、関われる領域ではありません。

関わってよい範囲と、関わらない範囲

線を具体的に引きます。

関わってよい関わらない
「それは専門家(社会保険労務士・弁護士)にご確認ください」と伝える進め方を助言する
依頼側が専門家に相談する際に、事実の整理(入社日、業務、評価の記録があるか)を手伝う評価や判断を書く、代筆する
採用の側に戻して、「次に同じことが起きないために、要件や選考で何を変えるか」を整理する本人との面談に同席する、本人に連絡する
試用期間の仕組み(見極めの期間として設けているか、評価の記録があるか)を、採用設計の話として一般的に扱う試用期間中の見送りの可否を判断する
依頼側が「辞めてもらいたい」と言ったとき、「その判断は専門家と」と返す退職勧奨や解雇の文面を作る
依頼側の労務担当や顧問がいれば、そこにつなぐ自分が窓口になる

範囲の要点は、「事実の整理までは手伝えるが、判断・助言・実行・本人との接触はしない」ことです。事実の整理も、採用の記録(面接の評価、入社時の要件)に限り、入社後の勤務評価には触れません。

エラベルの見解

登録の相談で多いのは、「採った人が合わなくて、依頼側から『試用期間で見送りたいが、どう伝えればよいか』と聞かれ、人事の経験から答えてしまった」という話です。依頼側は、副業の人を人事の専門家として頼り、副業の人は頼られて応えた。ただ、試用期間中の見送りは、法令の整理が要る場面で、副業の人の一言が依頼側の手続きに影響し、後で本人と争いになったとき、副業の人の関与が問われうる状態になっていました。

見ていて差がつくのは、「頼られた瞬間に、『専門家に』と言えるか」です。人事の経験があるほど、答えを持っているので、言いたくなります。ただ、答えを持っていることと、答えてよい立場かは別です。「それは社会保険労務士か弁護士にご確認ください。私は採用の側で、次に同じことが起きないように要件を見直します」と返す。エラベルの登録でも、退職・解雇の場面で線を引けている人は、依頼側から「線がはっきりしていて安心」と受け取られ、採用の案件が続いています。

相談されたときの返し方

相談の種類ごとに、返し方の型を示します。どれも、判断と助言はせず、専門家につなぎ、採用に戻します。

相談返し方
「採った人が合わない。試用期間で見送りたい」「見送りの可否と手続きは、社会保険労務士か弁護士にご確認ください。私は、採用時の要件と面接の評価を振り返って、次の採用で何を変えるかを整理します」
「社員が辞めると言っている」「退職の手続きは、労務のご担当か専門家に。採用の側では、その方の担当していた業務の要件を整理して、次の募集の準備を始められます」
「この人に辞めてもらいたい」「その判断と進め方は、弁護士にご確認ください。私が関わる範囲ではありません」
「退職する人の後任を急いで採りたい」「後任の採用は範囲の中なので、要件の整理から始めます。退職の手続きは別の話として、専門家と進めてください」
「辞める理由を聞いてほしい」「本人との面談は、私の立場では適切ではありません。ご担当か経営者の方が聞かれた内容のうち、採用の要件に関わる部分があれば、共有いただければ次に活かします」
「解雇の文面を見てほしい」「文面の確認は弁護士にお願いしてください。私は見られません」

返し方の要点は、「関わらない部分をはっきり言い、採用の側でできることを添える」ことです。断るだけだと冷たく聞こえますが、「採用の側でこれをします」と添えれば、依頼側は次に進めます。

採用に戻して考えること

退職や解雇の場面は、採用の側から見ると、「採用の設計で防げたか」を考える材料になります。副業の人が関われるのは、ここです。

起きたこと採用の側で見直すこと
入社後に業務が合わなかった要件が業務と合っていたか。面接で業務の実態を伝えたか。ヒアリングで押さえる項目
入社後に社風や働き方が合わなかった面接で働き方(時間、進め方、関係)を伝えたか。候補者が判断できる情報を出したか
短期間で辞めた選考が速すぎて確認が足りなかったか。逆に遅すぎて他社に流れた人を無理に採ったか
現場との評価のずれ面接官の評価の型があったか。現場が要件に関わったか。現場との関係の作り方
試用期間中の見極めができなかった見極めの項目と記録の仕組みが、入社前に決まっていたか(一般的な採用設計として)

見直しの要点は、「採用の設計に戻す」ことで、退職・解雇の場面に関わらずに役に立つことです。依頼側にとっても、「次は防げる」という話のほうが、建設的です。

専門家につなぐ形

依頼側に、専門家がいる場合といない場合で、つなぎ方を整理します。

依頼側の状態つなぎ方
顧問の社会保険労務士や弁護士がいる「顧問の方にご相談ください」。副業の人は関わらない
労務の担当がいる「労務のご担当と、必要なら専門家に」。採用の担当(自分の窓口)とは別の経路
誰もいない(小規模)「社会保険労務士か弁護士に相談されることをお勧めします」。紹介は原則しない。紹介すると、自分が関わった形になる
経営者が「専門家に頼むほどではない」と言う「私の立場では判断できないので、専門家にご確認いただかないと、私は関われません」と、線を守る

つなぎ方の要点は、「専門家を紹介しない」ことです。自分の知り合いの専門家を紹介すると、関与の形が残ります。「専門家に」と言うだけにとどめます。

巻き込まれる失敗

退職・解雇の場面で、副業の人が巻き込まれる失敗を整理します。

失敗起きる構造直し方
進め方を助言する人事の経験がある「専門家に」。答えを持っていても答えない
本人との面談に同席する依頼側に頼まれる断る。外部の人の同席は本人から見て不適切に映りうる
文面を確認・作成する文章が得意断る。弁護士に
評価の記録を書く記録が無いと言われる入社後の評価は書かない。採用時の記録の有無を伝えるだけ
「一般論ですが」と前置きして助言する線を引いたつもり一般論でも、依頼側は助言として受け取る。言わない
本人から連絡が来て応じる採用のときに接点があった「ご連絡は会社の窓口へ」。応じない
依頼側の「辞めさせたい」に共感を示す関係が良い共感も関与になりうる。範囲の話に戻す
後任の採用を急ぐあまり、退職の手続きに口を出す採用と退職が絡む後任の採用は範囲。退職の手続きは別の話として分ける

失敗の要点は、「一般論でも、依頼側は助言として受け取る」ことです。「一般的には」と前置きしても、依頼側はその通りに動き、結果の責任は曖昧になります。言わないことが線です。

エラベルの見解

担当する側として登録した人の話を聞くと、この場面で困っていない人は、「採用の外側は関わらない」を最初から決めています。依頼側に頼られても、「専門家に。私は採用の側で次を整えます」と返す。依頼側は、最初は物足りなく感じることもありますが、線がはっきりしている人として信頼し、採用の案件は続いています。線を越えて関わった人は、後で本人との争いに名前が出て、依頼側との関係も終わっています。

依頼側から見ると、副業の人が退職や解雇に関わることは、責任の所在を曖昧にし、依頼側自身のリスクにもなります。エラベルは、企業と担当者の間に立つ窓口として、担当者にお願いする業務を採用活動の補助に限る形で案件を出しており、退職・解雇の場面は範囲外としてお伝えしています。それでも、依頼側から直接相談が来ることはあるので、返し方の型を持っていただくことをお勧めしています。個別の判断は、社会保険労務士や弁護士にご確認ください。

まとめ

よくある質問

依頼側が「人事の経験があるのだから分かるでしょう」と言います

経験があることと、答えてよい立場かは別です。「経験はありますが、私の立場(外部の、採用の実行者)で退職や解雇に関わると、責任の所在が曖昧になり、御社にとってもリスクになります。専門家にご確認いただくのが、御社を守ることになります」と、依頼側の側の理由で伝えます。それでも求められるなら、「関われません」で終えます。関係が悪くなることを恐れて答えると、後で争いになったときに、関係どころではなくなります。

採用のときに面接した人が、入社後に辞めることになり、本人から相談の連絡が来ました

応じません。「ご連絡は会社の窓口(採用のご担当か労務のご担当)にお願いします」と返し、依頼側の担当にそのことを共有します。採用のときに接点があった候補者から見ると、副業の人は会社の人事の一員に見えており、相談したくなるのは自然です。ただ、退職の場面で外部の人が本人と話すことは、本人にとっても依頼側にとっても不適切な形になりうる。自分の連絡先を候補者に渡していなければ、この連絡自体が来ません。連絡手段の分け方を参照してください。

試用期間の設計を、採用の段階で提案することはできますか

採用設計の一部として、一般的な形(見極めの期間として設けているか、見極めの項目と記録の仕組みがあるか)を確認し、「入社前に見極めの項目を決めておくと、入社後の判断がしやすくなります」と提案することはできます。ただし、試用期間中の見送りの可否や手続きの助言はしません。「制度の設計は専門家にご確認ください。私は、採用の側で見極めの項目を面接の評価とつなげる部分を整えます」と、範囲を分けて伝えます。制度そのものの設計は、社会保険労務士にご確認ください。