採用代行 / 採用の課題
女性比率を上げたいが応募が偏る|「女性を採る」のではなく、「応募をためらわせる壁」を求人票・経路・選考・職場から取り除く
社内の女性の比率が低く、経営者は「上げたい」と言う。ただ、求人を出しても応募は男性に偏り、女性の応募者は選考で残らず、採っても数年で辞める。「女性限定」の募集はできないと聞いているし、何をすればよいか分からない。結論を先に書くと、女性の比率が上がらないのは、「女性を採ろう」としているからではなく、応募・選考・職場の各段階に「女性がためらう壁」があり、それが見えていないからです。壁は、求人票の言葉、経路、選考の観点、職場の実態にあります。壁を取り除けば、応募の偏りは減り、選考で残り、続きます。性別に関する採用の扱いは法令上の定めがあるので、専門家と公的機関の案内で確認しながら進めます。女性候補者へのアプローチは女性候補者へのアプローチ設計に、候補者体験の全体は候補者体験が悪いまま放置されているにまとめています。
応募が偏る構造
女性の応募が少なく、選考で残らず、続かないのは、次の構造で起きます。
| 段階 | 起きていること |
|---|---|
| 求人票 | 言葉、写真、働き方の記述が、暗黙に男性を想定している。「体力」「長時間」「飲み会」など |
| 経路 | 使っている媒体や紹介会社の利用者が、男性に偏っている |
| 選考 | 面接官が全員男性。観点に「長時間働けるか」のような暗黙の前提がある。私的な事情に踏み込む質問 |
| 職場の実態 | 女性の管理職がいない、働き方の柔軟さが無い、育児や介護との両立の実態が見えない |
| 社内の理解 | 「女性を採れ」と言うだけで、なぜ、どう、が現場に共有されていない |
| 「女性を採る」の発想 | 性別で採ろうとして、法令上の扱いに触れる。または、「女性だから」で役割を限定する |
| 続かない | 採っても、働き方の実態と、周囲の理解と、成長の機会が無く、辞める |
構造の要点は、「壁が各段階にあり、見えていない」ことです。「女性を採ろう」の発想では、壁は見えません。「なぜためらうか」の視点で、壁を探します。
法令上の扱いの確認
性別に関する採用の扱いは、法令上の定めがあります。進める前に、専門家と公的機関の案内で確認します。
性別を理由にした募集や採用の扱い。 「女性限定」「男性限定」の募集、性別を理由にした選考の扱いは、法令上の定めがあります。原則と例外は、専門家と公的機関の案内で確認します。
格差の改善のための取り組みの扱い。 女性の比率が低い場合に、改善のために取れる取り組みの範囲と条件は、法令上の定めがあります。「何ができ、何ができないか」を、専門家に確認します。
面接で聞いてはいけないこと。 結婚、出産、家族の事情などの私的な事情に関する質問は、法令上の扱いがあります。面接官に一枚で共有します。
求人票の表現。 性別を限定する表現、性別を想定した表現の扱い。専門家に確認します。
社内の制度と実態。 働き方、評価、昇進に、性別による不利益な扱いが無いか。法令上の扱いと、社内の規程を確認します。
法令上の扱いの要点は、「女性を採る」ではなく「壁を取り除く」形で進めることです。壁を取り除くことは、性別に関わらず、応募をためらう人を減らすことでもあります。
求人票の壁の取り除き方
求人票にある「ためらわせる壁」を探し、取り除きます。
| 壁 | 取り除き方 |
|---|---|
| 暗黙に男性を想定した言葉 | 「体力に自信のある方」「バリバリ働ける方」「タフな」など。役割に本当に要るかを見直し、要るなら具体的な業務で書く |
| 写真や素材の偏り | 写真が全員男性。働いている人の実態に合わせ、多様な人が写る素材に。素材の作り方は使える写真・素材がない |
| 働き方の記述が無い | 時間、リモート、休日、柔軟さの実態を書く。「無い」なら無いと書く。隠さない |
| 両立の実態が見えない | 育児や介護と仕事の両立の実態(制度と、実際に使っている人の有無)。制度があるだけでなく、実態を |
| 成長の機会が見えない | 評価と昇進の仕組み、女性の管理職やリーダーの有無。いなければ、いないと書き、「今後こうしたい」を |
| 「女性歓迎」だけ | 「女性歓迎」と書いて中身が変わらなければ、かえって不信。法令上の扱いも専門家に確認 |
| 役割の記述が薄い | 「何を決める役割か」「誰と働くか」。役割が明確なら、性別に関わらず、自分に合うかを判断できる |
| 応募の手前の窓口が無い | 「まず話を聞く」場(カジュアル面談)があれば、応募をためらう人が一歩踏み出せる |
求人票の要点は、「実態を、隠さず、具体的に書く」ことです。良く見せると、面接か入社後に分かって離れます。実態が良くないなら、「今後こうしたい」を経営者の言葉で添えます。
求人票の表現は、性別に関する法令上の扱いを専門家に確認します。
経路の見直し
使っている経路の利用者が偏っていれば、応募も偏ります。
媒体と紹介会社の利用者の層を、確認する。 各媒体や紹介会社の利用者の層(性別を含む)を、公式の案内や担当者に聞いて確認します。偏っていれば、別の経路を足します。
女性の利用者が多い媒体や、両立を重視する層向けの経路を、足す。 各媒体の特徴は公式の案内で確認します。
社員の紹介を、女性の社員からも。 社員の紹介は、紹介する社員の知り合いに偏ります。女性の社員にも、具体的に頼みます。
スカウトで、「返信をためらわせる壁」を取り除く。 文面の言葉、働き方の実態、応募の手前の窓口。設計は女性候補者へのアプローチ設計に書いています。
カジュアル面談を、入口に置く。 応募をためらう人が、「まず話を聞く」で一歩踏み出せます。面談は選考にしない(カジュアル面談が選考になってしまう)。
両立を支援する仕組みや、再就職の支援の経路を、確認する。 公的機関や自治体の支援の仕組みがあることがあります。公的機関の案内で確認します。
経路の要点は、「偏った経路に、偏っていない経路を足す」ことです。一つの経路に頼ると、その経路の偏りがそのまま応募の偏りになります。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「女性の比率を上げたいので、求人票に『女性歓迎』と足しただけで、中身は変えなかった」というものです。求人票には「体力に自信のある方」「残業あり」が残り、写真は全員男性、面接官も全員男性、働き方の実態は書かれていない。「歓迎」の言葉だけでは、壁は消えません。求人票の言葉と写真と働き方の実態を直し、面接官に女性を入れ、カジュアル面談を入口に置いたら、応募の偏りが減りました。「女性歓迎」と書くことではなく、壁を取り除くことでした。
見ていて差がつくのは、担当者が「壁を探す」視点を持っているかどうかです。「女性向けの求人票にしましょう」と言う担当者と、「いまの求人票と選考と職場に、応募をためらわせる壁がどこにあるかを探しましょう。求人票の言葉、写真、働き方の記述、面接官の構成、質問の内容」と、壁を一つずつ探す担当者がいます。後者は、性別に関わらず、応募をためらう人を減らします。
発注側にできるのは、「女性を採りたい」を「応募をためらわせる壁を取り除きたい」と言い換えて、担当者に依頼することです。
選考の壁
選考にある壁を探し、取り除きます。
| 壁 | 取り除き方 |
|---|---|
| 面接官が全員男性 | 面接官に女性を入れる。「一緒に働く人」として。いなければ、いないことを候補者に正直に |
| 観点に暗黙の前提 | 「長時間働けるか」「転勤できるか」のような前提が、役割に本当に要るかを見直す。要るなら、性別に関わらず全員に同じ確認 |
| 私的な事情への質問 | 結婚、出産、家族の事情に関する質問は、法令上の扱いがある。「聞かない一覧」を専門家に確認して面接官に共有 |
| 「女性だから」の役割の限定 | 「女性はこの役割」と限定する発想。役割は性別ではなく、経験と適性で |
| 評価の基準の曖昧さ | 基準が曖昧だと、面接官の暗黙の前提が判定に入る。観察できる言葉の基準(評価基準が言語化できていない)で、前提を排除 |
| 面接官ごとの判定のばらつき | 男性の面接官と女性の面接官で判定が違う場合、基準のどこで読みが違うかを話す |
| 動機づけの内容 | 「うちは男性が多いけど大丈夫」のような言い方。職場の実態と、今後の方針を、事実として |
| 選考の記録 | 性別ごとの通過率を記録し、極端な差があれば、観点と基準を見直す |
選考の要点は、「暗黙の前提を、観察できる基準に置き換える」ことです。基準が言葉になっていれば、前提が判定に入りにくくなります。
面接での質問の扱いは、法令上の定めがあるので、専門家に確認のうえ、面接官に一枚で共有します。
職場の実態の見直し
採っても続かないなら、職場の実態に壁があります。求人票と選考を直しても、職場が変わらなければ、続きません。
働き方の実態を、見る。 時間、リモート、休日、柔軟さ。制度があっても、使われていなければ、実態は無いのと同じ。「使っている人がいるか」を見ます。
両立の実態を、見る。 育児や介護と仕事の両立を、実際にしている人がいるか。いれば、その人の話を(本人の同意のうえで)求人票と面接で。いなければ、「これから作る」を経営者の言葉で。
成長の機会と、昇進の実態を、見る。 女性の管理職やリーダーがいるか。評価と昇進の仕組みに、性別による差が無いか。法令上の扱いと社内の規程を確認します。
周囲の理解を、作る。 「なぜ多様な人を採るか」「どう接するか」を、受け入れる部署に説明します。「女性だから」の特別扱いでも、無視でもなく、「同じ社員として」。
相談の窓口を、持つ。 働き方や職場の関係で困ったときの相談先。人事、または外部の窓口。
辞めた理由を、聞いて記録する。 女性の社員が辞めた理由を(差し支えない範囲で)聞き、記録します。壁がどこにあるかが、見えます。
経営者が、方針を示す。 「女性の比率を上げる」ではなく、「多様な人が働ける職場を作る。そのために、働き方と評価と職場の理解を変える」。経営者の言葉で、社内に。
職場の実態の要点は、「制度ではなく実態」と「経営者の方針」です。制度を作っただけでは変わらず、経営者が方針を示さなければ現場は動きません。
外注する場合の範囲
女性の比率と応募の偏りの問題を、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 各段階の壁の点検(求人票、経路、選考、職場の実態)、法令上の扱いの確認の専門家への橋渡し、求人票の言葉と写真と働き方の記述の直し(専門家の確認を経て)、経路の利用者の層の確認と経路の追加、スカウトの文面(壁を取り除く形)、カジュアル面談の設計と運用、面接官の構成の案、観点と基準の見直し(暗黙の前提の排除)、「聞かない一覧」の整理(専門家の確認を経て)、面接官向けの一枚、性別ごとの通過率の記録、辞めた理由の聞き取りと記録、受け入れる部署への説明の資料、経営者の方針の文面の案。
社内に残す判断。 経営者の方針の決定、働き方と評価と昇進の制度の見直し(専門家との連携)、面接官の指名、役割と要件の決定、判定、内定、職場の実態の変更の決定。
外注の効きどころ。 応募の偏りは、「壁が見えていない」ことが根本で、社内の人には見えにくい壁を、外部の担当者が候補者の視点で探せます。担当者は複数の会社の求人票と選考を見ているので、「この言葉は壁になる」「この質問は法令上の扱いに触れる」の型を持ち込めます。ただし、法令上の扱いは、担当者も専門家に確認します。職場の実態の変更は、社内の判断です。
外注しても動かない場合。 経営者が「女性を採れ」と言うだけで方針を示さない、面接官の構成を変えない、働き方の実態を変えない、辞めた理由を聞かない。社内の判断で、代行を替えても直りません。
応募の偏りは、壁を取り除けば減ります。外注は、壁を探し、取り除く設計を持ち込む手段です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この相談で最も多いのは、「採用の壁は直したが、職場の実態が変わっていない」ことです。求人票と選考を直して、女性の応募が増え、採れた。ただ、職場は変わっておらず、働き方の柔軟さも、両立の実態も、成長の機会も無い。数年で辞め、「やはり続かない」になる。
採用の壁と、職場の壁は、両方を直す必要があります。採用だけ直すと、「入口は開いたが中は変わっていない」状態になり、入った人が最も困ります。
発注側にできるのは、採用の壁を直すと同時に、職場の実態(働き方、両立、評価、周囲の理解)を、経営者の方針として変え始めることです。
まとめ
- 偏るのは求人票の言葉と写真・経路の偏り・面接官と観点と質問・職場の実態・社内の理解・「女性を採る」の発想・続かないの各段階の壁
- 法令上の扱いは性別を理由にした募集と選考・改善の取り組みの範囲・聞いてはいけないこと・求人票の表現・制度と実態を専門家と公的機関で確認。「女性を採る」ではなく「壁を取り除く」形で
- 求人票は暗黙の言葉・写真の偏り・働き方の記述・両立の実態・成長の機会・「歓迎」だけにしない・役割を明確に・応募の手前の窓口。実態を隠さず具体的に
- 経路は利用者の層を確認・偏っていない経路を足す・女性の社員からの紹介・スカウトの壁を取り除く・カジュアル面談・支援の仕組み
- 選考は面接官の構成・観点の前提・私的な事情の質問・役割の限定・基準の曖昧さ・面接官のばらつき・動機づけの言い方・性別ごとの通過率。暗黙の前提を観察できる基準に
- 職場は働き方の実態・両立の実態・成長と昇進・周囲の理解・相談の窓口・辞めた理由・経営者の方針。制度ではなく実態
- 外注できるのは壁の点検・専門家への橋渡し・求人票・経路・スカウト・面談・面接官の構成の案・観点と基準・一覧・一枚・記録・説明の資料・方針の文面。社内に残るのは方針・制度の見直し・面接官・要件・判定・内定・実態の変更
よくある質問
「女性限定」で募集してはいけませんか
性別を限定した募集や選考の扱いは、法令上の定めがあり、原則と例外があります。専門家と公的機関の案内で確認します。「女性を採る」の発想ではなく、「応募をためらわせる壁を取り除く」形で進めれば、法令上の扱いに沿いながら、応募の偏りを減らせます。壁を取り除くことは、性別に関わらず、応募をためらう人を減らすことでもあります。改善のための取り組みとして何ができるかは、専門家に確認します。
面接官に女性がいません
一緒に働く人として、女性の社員がいれば面接官に入れます。いなければ、いないことを候補者に正直に伝え、「今後こうしたい」を経営者の言葉で添えます。面接官が全員男性でも、観点を観察できる基準にし、私的な事情への質問を「聞かない一覧」で排除し、面接官向けの一枚で共有すれば、暗黙の前提が判定に入りにくくなります。カジュアル面談に女性の社員が出る形も、応募の手前の壁を下げます。
採っても、数年で辞めてしまいます
採用の壁を直しても、職場の実態(働き方の柔軟さ、両立の実態、成長の機会、周囲の理解)が変わっていなければ、続きません。辞めた理由を(差し支えない範囲で)聞き、記録すれば、壁がどこにあるかが見えます。働き方の制度が「あるが使われていない」なら、使える形に。両立をしている人がいなければ、「これから作る」を経営者の方針として示します。採用の壁と職場の壁は、両方を直します。