人事副業 / 単価・契約・税務
時給型の相場と決め方
人事・採用の副業を時給型で受けるとき、最初に詰まるのが金額です。「いくらが相場ですか」と聞かれることが多いのですが、時給型は工程と稼働の形で意味が変わるため、外から拾った一つの数字を当てても合いません。結論を先に書くと、時給型の単価は、相場から選ぶのではなく、自分の本業の時間単価を下限として置き、準備と往復の時間を織り込み、工程ごとに分けて決めます。そのうえで、税と社会的な制度(消費税、確定申告の線、雇用か業務委託か)で手取りがどう変わるかを確かめます。以下は公表資料に沿った一般的な整理で、個別の契約条件や税務の判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください。三つの型の違いは人事の副業単価の相場に、月額で受ける場合は月額固定型の相場と稼働時間に書いています。
時給型が向く仕事、向かない仕事
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 作業の量が読めない(初回のスカウト設計、要件の整理、急な立て直し) | 毎月ほぼ同じ量が続く(定例の運用) |
| 期間が短い、単発 | 期間が長く、依頼側が予算を固定したい |
| 依頼側が「どれくらいかかるか分からない」状態 | 成果物が明確で、時間ではなく物で数えられる |
| 稼働の記録を出せる体制がある | 記録を取らずに受けたい |
時給型は、依頼側にとっては「使った分だけ払う」形で、受ける側にとっては「時間を売る」形です。時間を売る以上、上限は自分が使える時間で決まります。稼働の記録が前提になるので、記録の型を先に持っておきます。記録の取り方は稼働時間の管理と申告に書いています。
下限をどう置くか
外の相場ではなく、自分の本業の時間単価から始めます。
| 手順 | 計算 |
|---|---|
| 一 | 本業の年収 ÷ 年間の所定労働時間 = 本業の時間単価 |
| 二 | 本業の時間単価を「下限」に置く。副業は本業の時間外に行うため、これを下回ると、時間を削る理由が薄くなる |
| 三 | 準備・往復・記録の時間を織り込む。実作業1時間に対して、打ち合わせ、資料の準備、報告が付く |
| 四 | 工程で分ける。判断を伴う工程(要件の整理、設計)と、手を動かす工程(送信、日程)は分けて出す |
一の計算で使う「年間の所定労働時間」は、自分の会社の就業規則で確かめます。二で下限を置くのは、金額の正しさの話ではなく、続けられるかどうかの話です。本業より安い時間単価で続けると、稼働が増えたときに削るのは副業の時間になり、依頼側にも迷惑がかかります。
参照点として、公的な統計で「時間あたりに支払われている賃金」の水準を見ておくと、依頼側の感覚とのずれに気づけます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、短時間労働者の1時間当たり賃金は男女計1,518円(年齢計)となっています。同調査の短時間労働者は1日当たり所定内実労働時間が5.2時間、実労働日数14.0日という働き方です。人事・採用の専門性を切り出して受ける副業は、この統計とは別の決まり方をしますが、「時間を売る働き方に世の中が払っている水準」を知っておくと、依頼側が時給型に対して持っている感覚の出どころが見えます。
エラベルの見解
時給型で最も多い失敗は、実作業の時間だけを数えて見積もることです。「スカウトを100通送るのに5時間」と出して受けると、実際には要件の確認に1時間、文面の作成に2時間、返信への対応に3時間、報告に1時間がかかり、実質の時給が半分以下になります。防ぐ方法は単純で、見積りの段階から工程ごとに時間を分けて書くことです。「送信5時間」ではなく「要件の確認1時間・文面2時間・送信5時間・返信対応3時間・報告1時間」と出す。依頼側は金額の妥当性を判断しやすくなり、受ける側は後から増えた工程を請求できます。エラベルで案件を受ける方には、最初の見積りを工程ごとに分けて書くことをお伝えしています。工程の分け方は業務範囲を書面で固めるに書いています。
雇用で受けるか、業務委託で受けるか
同じ「時給いくら」でも、契約の形で適用される制度が変わります。
| 契約の形 | 最低賃金 | 労働時間の扱い | 手取りに関わるもの |
|---|---|---|---|
| 雇用(パート・アルバイトとして受ける) | 適用される | 本業と通算される扱いがある | 給与として源泉徴収。社会保険の扱いは条件による |
| 業務委託(請負・準委任) | 適用されない | 労働時間の通算の対象ではない | 報酬として受け取り、経費を引いて所得を計算 |
最低賃金の額は毎年度改定され、発効日も都道府県ごとに違うため、雇用で受ける場合は厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で自分の働く地域の額と発効日を確認します。業務委託には最低賃金の適用がありませんが、それは「いくらでもよい」という意味ではなく、下限を自分で置く必要があるということです。労働時間の通算など、雇用で受ける場合に関わる制度上の整理は、企業側から見た副業許可制度に書いています。個別の判断は社会保険労務士にご確認ください。
消費税とインボイスが時給に効く場面
業務委託で受ける場合、請求額に消費税を乗せるかどうか、適格請求書発行事業者の登録をするかどうかが、依頼側の負担に影響します。国税庁のQ&A問113は、免税事業者等からの課税仕入れについて、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置の期間と割合を次のとおり示しています。
| 期間 | 依頼側が控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで | 80% |
| 令和8年10月1日から令和10年9月30日まで | 70% |
| 令和10年10月1日から令和12年9月30日まで | 50% |
| 令和12年10月1日から令和13年9月30日まで | 30% |
令和8年(2026年)10月1日から、この割合が80%から70%に下がります。登録していない状態で継続して受けている案件では、依頼側の負担がこの時期に増えます。単価の話が出るとすればこのタイミングなので、更新の前に、登録するかどうかと、単価をどうするかを自分の中で決めておきます。どちらを選ぶかは手取りの計算次第で、登録すれば納税義務が生じ、登録しなければ依頼側の負担が増えます。判断は税理士にご確認ください。請求書の作り方は請求書の書き方に書いています。
手取りで見る
時給が決まっても、手取りは別に計算します。
| 見るもの | 中身 |
|---|---|
| 経費 | 通信費、資料費、ツールの費用のうち、業務の遂行上必要な部分 |
| 所得の計算 | 収入から必要経費を引いた額が所得。区分(事業所得か雑所得か)で扱いが変わる |
| 確定申告の要否 | 給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要(国税庁No.1900) |
| 住民税 | 所得税の申告とは別の扱いがある。自治体に確認 |
国税庁No.1900には、給与を2か所以上から受けている場合の扱いや、一定の条件で申告が不要になる場合も書かれています。自分がどれに当たるかは、税理士か所轄の税務署にご確認ください。申告の進め方は確定申告の進め方に書いています。
エラベルの見解
時給型の単価を上げようとして、時給の数字だけを上げにいくと、案件が続きません。上がるのは同じ時間で依頼側が得るものが増えたときです。たとえば、送信だけを頼まれていたところに、返信率の記録と次の月の打ち手を毎月一枚で付けると、依頼側はその一枚を社内の会議で使えるようになり、同じ稼働に対して払う理由が増えます。時給を上げる交渉の前に、「いま自分が出しているもの」が記録に残る形になっているかを見たほうが、結果として早い。エラベルで案件を受ける方には、工程ごとの記録と月一枚の報告を型として持つことをお伝えしています。上げ方の具体は単価の上げ方に書いています。
決める順番
| 順 | やること |
|---|---|
| 一 | 本業の時間単価を出し、下限に置く |
| 二 | 工程を分け、工程ごとに想定時間を出す |
| 三 | 準備・往復・報告の時間を織り込む |
| 四 | 契約の形(雇用か業務委託か)を確かめ、適用される制度を見る |
| 五 | 消費税の扱いと登録の有無を決める |
| 六 | 手取りを計算し、続けられるかを見る |
| 七 | 見積りを工程ごとに分けて出す |
まとめ
- 時給型の単価は相場から選ばず、本業の時間単価を下限に置いて組み立てる
- 実作業だけでなく、準備・往復・報告の時間を織り込む
- 見積りは工程ごとに分けて出す。後から増えた工程を請求できる
- 雇用で受けるなら最低賃金が適用される。業務委託なら適用されないので、下限は自分で置く
- 参照点として、短時間労働者の1時間当たり賃金は男女計1,518円(令和7年賃金構造基本統計調査)
- 令和8年10月1日から、免税事業者からの仕入れで依頼側が控除できる割合が80%から70%に下がる
- 手取りは経費と所得区分で変わる。給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告(No.1900)
- 個別の判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください
よくある質問
最初の案件で、相場より安く提示されました
安いかどうかを判断する基準を、外の相場ではなく自分の下限(本業の時間単価)に置きます。下限を下回るなら、受ける理由は金額以外(経験を積む、実績にする)にあるはずなので、その理由を自分ではっきりさせ、期間を区切ります。区切らずに続けると、次の案件の単価の基準がそこで固定されます。受ける場合も、工程ごとの見積りは出しておくと、次の更新で話ができます。
「1時間の打ち合わせ」は請求してよいのでしょうか
見積りに入れていれば請求できます。入れずに受けて後から請求すると揉めるので、最初の見積りに「打ち合わせ(月◯回、1回◯時間)」の行を作っておきます。依頼側が打ち合わせを増やしたい場合は、そのぶん稼働が増えることが見積りの形で見えるため、話が早くなります。範囲の固め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。
時給型から月額固定型に変えたいと言われました
稼働の量が安定してきた印なので、変えること自体は自然です。変えるときは、直近3か月の実際の稼働時間を出し、その平均を基に月額と想定稼働時間を決めます。想定を超えたときの扱い(超過分の単価、または上限で止める)も同時に決めておきます。決め方は月額固定型の相場と稼働時間に書いています。