人事企画の副業単価の目安と案件の見つけ方|評価・報酬・等級の設計を段階に分けて値付けし、規程の作成とは線を引く
人事企画として評価や報酬、等級の仕組みをつくってきた人は、会社の方針を人事の制度に落とし込み、社員に説明し、運用しながら見直してきた経験を持っています。制度がないまま人数が増えた会社や、制度はあるが社員が納得していない会社にとって、この経験は大きな価値があります。結論から書くと、人事企画の副業単価は、制度づくりを調査・設計・導入・運用の段階に分けて値付けし、就業規則などの規程の作成とは線を引いて受けると、無理のない金額になります。
人事の副業の単価には公的な統計がなく、案件の範囲や依頼先で大きく変わるため、この記事では金額の相場は書きません。自分の単価を組み立てる手順と、案件の見つけ方を書きます。人事企画の経験の何が売れるかは人事企画が副業でできることで詳しく書いています。
段階に分けて値付けする
人事制度づくりは時間のかかる仕事で、一度に全部を受けると見積もりが大きくずれます。段階に分けて値付けします。
| 段階 | やること | 時間が増える条件 |
|---|---|---|
| 調査 | 今の処遇の実態、社員の声、経営者の考えを聞き取る | 社員が多い、記録が少ない |
| 設計 | 等級・評価・報酬の考え方と、移行の方法を決める | 職種が多い、雇用の形が多い |
| 導入 | 管理職や社員への説明、評価者の研修 | 拠点が多い、説明の回数が多い |
| 運用 | 最初の評価の時期の伴走、見直し | 評価の時期が年に複数回ある |
調査の段階を独立した成果物として受けると、依頼先は制度づくりに進むかどうかを判断でき、受ける側も設計の段階の見積もりを正確に出せます。評価の制度づくりの単価の考え方は評価制度づくりの副業単価、報酬の制度は給与制度づくりの副業単価でも書いています。
段階ごとに単価を組み立てる
単価は、段階ごとに時間を見積もって組み立てます。
- 調査を一括で見積もる:聞き取りの人数と時間、まとめの時間を出す
- 調査の結果をもとに設計を見積もる:等級・評価・報酬のうち、どこまで設計するかを決め、時間を出す
- 導入を見積もる:説明の回数と、評価者の研修の回数から時間を出す
- 運用を月額や評価の時期ごとに見積もる:最初の評価の時期の伴走の時間を出す
時間単価の考え方は本業の年収と副業単価の関係で書いています。人事企画の経験がある人は、設計の段階に時間をかけすぎる傾向があります。依頼先の規模に合った簡素な設計にとどめ、導入と運用で直していく前提にすると、作業の時間も抑えられ、依頼先にも使われる制度になります。
エラベルの見解
人事企画の副業でよくある失敗は、大企業の制度の型を、小さい会社にそのまま当てはめることです。等級を細かく分け、評価の項目を多く設けた制度は、評価者の負担が大きく、小さい会社では運用できません。導入して一年で使われなくなり、依頼先からは「お金をかけたのに続かなかった」と受け止められます。
担当する側から見ると、価値があるのは、依頼先の評価者が無理なく回せる量に制度を絞れることです。等級は少なく、評価の項目は経営者が本当に大事にしていることに絞る。運用できる制度をつくれる人ほど、依頼先から信頼され、見直しの相談も続きます。
設計で押さえる決まりと、規程の作成との線引き
制度を設計するときに押さえておきたい決まりがあります。短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期雇用労働法)第8条は、短時間・有期雇用労働者の基本給や賞与などの待遇について、通常の労働者との間で、職務の内容や配置の変更の範囲などに照らして不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。正社員の制度だけを設計して、パートや有期雇用の人の待遇との関係を考えないと、後から見直しが必要になります。
制度を社内のルールにするときは、就業規則などの規程に反映することになります。労働基準法第89条は、常時十人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と届出を求め、同法第90条は、作成や変更について労働者の過半数で組織する労働組合などの意見を聴くことを求めています。
規程の作成には、資格の決まりも関わります。社会保険労務士法第27条は、社会保険労務士でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、同法第2条第1項第1号から第2号までの事務(労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成や、帳簿書類の作成など)を業として行ってはならないと定めています。就業規則の作成などがこれにあたるかを含め、受けてよい範囲は社会保険労務士に確かめてください。副業の担当者としては、制度の考え方と運用の設計を受け、規程の作成は社会保険労務士に頼むよう案内する形が無理がありません。
案件の見つけ方と、受けるときの条件
人事企画の経験を活かせる案件は、次のような場所で見つけやすくなります。
- 人数が増えて制度が必要になった会社:評価や報酬の決め方が経営者の頭の中にしかない会社
- 社会保険労務士事務所との協業:規程の作成は社会保険労務士、制度の設計は自分、と分担して受ける
- 人事の副業の仲介サービス:制度づくりの経験を登録しておく
業務委託で受ける場合は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)が、業務委託事業者に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面などで明示することを求めています。段階ごとの成果物と報酬を書面で確かめてから始めてください。
本業に勤めながら副業をする場合は、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が示すとおり、まず勤め先の副業・兼業に関するルールを確認し、秘密保持義務や競業避止義務を意識してください。本業の会社の制度の資料をそのまま使うことはしないでください。20万円を超える副収入がある場合は、確定申告が必要です。個別の判断は社会保険労務士・弁護士・税理士にご確認ください。
エラベルの見解
もう一つ見てほしいのは、人事企画の副業は、採用とつなげて提案すると価値が伝わりやすいということです。評価や報酬の制度は、採用のときに候補者に何を約束するか、入社後にどう処遇するかと直結しています。制度がない会社では、採用のたびに条件をその場で決めていて、入社した人の間で処遇の差が説明できなくなっていることがよくあります。
制度の設計の中で、採用のときに提示する条件の幅と、入社後の評価のつながりを示せると、依頼先は制度の必要性を実感しやすくなります。採用と制度を一続きで見られることが、人事企画の経験を持つ人の強みです。
まとめ
- 人事企画の副業単価は、制度づくりを調査・設計・導入・運用の段階に分けて値付けする
- 調査を独立した成果物にすると、設計の見積もりが正確になる
- 依頼先の評価者が無理なく回せる量に制度を絞る
- パート・有期雇用の待遇との関係を考えて設計する
- 就業規則などの規程の作成は、社会保険労務士の業務にあたるかを確かめ、線を引いて受ける
よくある質問
人事企画の副業単価の相場はいくらですか
案件の範囲や依頼先によって大きく異なり、公的な統計もないため、一律の相場はお伝えできません。調査・設計・導入・運用の段階ごとに時間を見積もり、自分の時間単価を掛けて単価の根拠をつくってください。
就業規則の改定まで頼まれたらどうすればよいですか
就業規則の作成などが社会保険労務士の業務にあたるかを含め、受けてよい範囲を社会保険労務士に確かめてください。制度の考え方の整理は自分が受け、規程の作成は社会保険労務士に頼むよう案内する形が考えられます。
小さい会社に評価制度は必要ですか
人数が少ないうちは、細かい制度より、何を大事にして評価するかを言葉にしておくことが役に立ちます。人数が増えて経営者がすべての社員を見られなくなったときに、制度を整える形が無理のない進め方です。
- e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(第8条)
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第89条・第90条)
- e-Gov法令検索「社会保険労務士法」(第2条・第27条)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
この記事のタグ
関連記事
- 人事企画が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|人事企画の経験は「人事の課題を数字と構造で捉え、制度と計画に落とし、経営に通してきた」型で売れる。売れるのは、採用の数字の見える化、採用計画と人員計画の設計、採用の条件の枠組みづくり、経営への報告の型の四つ。「企画をしていました」ではなく、「採用を、経営が判断できる数字と計画の形にする」と売る 人事企画の経験で人事の副業を始める人向けに、売れる経験の棚卸し(採用の数字の見える化・採用計画の設計・条件の枠組み・経営への報告)、売りにくい点(採用の実務が薄い・大きい会社の仕組みに見える・成果が間接的)とその扱い、入りやすい案件の探し方、単価の考え方、始める順番を整理しました。 人事副業人事企画
- 人事コンサルタントの副業単価の目安と案件の見つけ方|大きな案件の型を小さい会社の規模に直し、成果物の範囲を細かく区切って値付けする 人事コンサルティングの会社で制度設計や組織の改革を手がけてきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。大企業向けの型を小さい会社に合わせて直す値付けの方法、成果物の範囲を細かく区切る単価の組み立て方、案件の見つけ方、社会保険労務士の業務との線引き、本業の会社の手法や資料の扱い、業務委託で受けるときの条件を整理しました。 人事副業人事コンサルタント
- 労務担当の副業単価の目安と案件の見つけ方|資格がなくても受けられる「仕組みの整備」に絞って値付けし、手続きの代行とは線を引く 労務担当として勤怠や入退社の手続き、社内の相談に関わってきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。社会保険労務士の資格がない場合に受けられる作業と受けられない作業の線、仕組みの整備を成果物にする値付けの方法、案件の見つけ方、記録の保存の決まり、業務委託で受けるときの条件を整理しました。 人事副業労務担当
- 社会保険労務士の副業単価の目安と案件の見つけ方|手続きの業務と採用の支援を分けて値付けし、他人から受けるための登録を確かめる 社会保険労務士の資格を持つ人が人事の副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。資格の要る手続きの業務と、資格がなくてもできる採用の支援を分けた値付けの方法、他人の求めに応じて報酬を得て業務を行うときの登録、勤め先との関係、採用と労務を一続きで支える案件の見つけ方を整理しました。 人事副業社会保険労務士
「経歴別の人事副業」の他の記事
- 人事責任者・CHROが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|CHROの経験は「経営の議論に人事の言葉で入り、採用を事業計画とつなぎ、決める順番を知っている」型で売れる。売れるのは、採用計画と事業計画の接続、採用の優先順位の判断、経営者の壁打ち、人事機能の立ち上げの設計の四つ。「責任者でした」ではなく、「経営者が決めるための材料と順番を用意する」と売る人事責任者・CHRO
- 人事責任者・CHROの副業単価の目安と案件の見つけ方|経営の場での人の判断を「顧問」の月額で受け、関わり方の範囲と立場を先に決める人事責任者・CHRO
- 人事未経験が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|人事の肩書きが無くても売れるのは「採用の工程のどこかに触れた経験」と「人事以外の職種で身についた、採用に転用できる技能」の二つ。「人事未経験」と名乗るのではなく、「〇〇の工程を、△△の職種の経験で」と範囲を絞って売る人事未経験
- 人事未経験の副業単価の目安と案件の見つけ方|手順の決まった作業から受け、時間で値付けして経験を積み上げる人事未経験
- 組織開発担当が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|組織開発の経験は「組織の状態を観察し、対話の場を設計し、人が動く仕組みに変えてきた」型で売れる。売れるのは、採用の要件を組織の状態から決めること、受け入れと定着の設計、面接官の目線合わせ、辞める理由の構造化の四つ。「組織開発をしていました」ではなく、「採用した人が組織で機能する形を作る」と売る組織開発担当
- 組織開発担当の副業単価の目安と案件の見つけ方|見立て・対話の場・変化の確認を段階で値付けし、社員の声の扱いを先に決める組織開発担当