人事副業 / 案件獲得
期待値のすり合わせ|人事の副業で、依頼側の「これくらいはやってくれる」と自分の「ここまで」を、面談・初回・区切りの三回で合わせる
副業の案件でトラブルになるとき、依頼側も自分も、嘘をついていたわけではありません。依頼側は「これくらいはやってくれるだろう」と思い、自分は「ここまでが範囲だ」と思い、その二つが違っていただけです。期待は、言葉にしないと合いません。結論を先に書くと、期待は「速さ」「成果」「稼働」「判断」「範囲」の五つに分かれ、それぞれを面談・初回打ち合わせ・区切りの三回で言葉にして合わせ直すと、ずれが大きくなる前に戻せます。一度合わせて終わりではなく、区切りごとに合わせ直すことが要です。範囲の決め方は案件の範囲の決め方に、初回打ち合わせは初回打ち合わせの進め方にまとめています。
ずれが生まれる構造
期待のずれは、双方が黙っているところで育ちます。構造を整理します。
| 段階 | 依頼側 | 自分 | ずれ |
|---|---|---|---|
| 面談 | 「経験者だから、すぐ結果が出るだろう」 | 「三か月で一つを直す」 | 速さと成果 |
| 開始直後 | 「日中も連絡がつくだろう」 | 「火木の夜と土曜午前」 | 稼働 |
| 一か月目 | 「合否も見てくれるだろう」 | 「判断は依頼側」 | 判断 |
| 二か月目 | 「これもお願いできるだろう」 | 「書面の範囲まで」 | 範囲 |
| 区切り | 「もっと採用が進むと思っていた」 | 「見る数は変わった」 | 成果の定義 |
構造の要点は、「依頼側の期待は、言わなくても分かると思われている」ことです。依頼側は、自分の期待を当然のことだと思っていて、口にしません。自分も、範囲を書面にしたことで伝わったと思っています。どちらも言葉にしていない期待が、段階ごとにずれていきます。
五つの期待と、合わせ方
期待を五つに分け、それぞれ依頼側が持ちやすい期待と、合わせるための言葉を整理します。
| 期待 | 依頼側が持ちやすい期待 | 合わせる言葉 |
|---|---|---|
| 速さ | すぐ結果が出る。一か月目から応募が増える | 「最初の一か月は把握と合意、二か月目に一つを直し、三か月目に数で示します」 |
| 成果 | 採用が決まる。採用数が増える | 「私が直せるのは、この数(返信までの日数、面接設定数)です。採用の決定は御社の判断と市場に依存します」 |
| 稼働 | 日中も連絡がつく。急ぎに対応できる | 「稼働は火木の夜と土曜午前。翌朝に動くものを渡します。緊急は御社で」 |
| 判断 | 合否や条件も見てくれる | 「合否・条件・優先順位は御社。私は判断の材料を選択肢の形で用意します」 |
| 範囲 | 頼めば何でもやってくれる | 「範囲は書面のとおり。範囲外は区切りで相談します」 |
合わせ方の要点は、「成果の期待を、自分が動かせる数に置き換える」ことです。依頼側の期待は「採用が決まる」ですが、それは依頼側の判断と市場に依存します。自分が動かせる数(返信の日数、面接の設定数)を成果として定義し直すと、期待のずれが最も大きい部分が合います。
エラベルの見解
登録の相談で多いのは、「三か月で返信の日数を大きく縮めたのに、依頼側から『採用が決まっていない』と言われた」という話です。成果の定義が、依頼側は「採用の決定」、自分は「見る数の変化」で、最初から違っていました。自分の成果は出ているのに、依頼側の期待には届いていない。どちらも間違っていませんが、合わせていませんでした。
見ていて差がつくのは、「面談で、成果の定義を自分の言葉で言っているか」です。「私が動かせるのはこの数で、採用の決定は御社の判断に依存します。この数が変わることで、採用が進みやすくなりますが、決まることは保証できません」。ここまで言うと、依頼側は成果の見方を変えます。エラベルの登録でも、区切りで依頼側から「続けたい」と言われる人は、面談で成果の定義を合わせていて、区切りの数がそのまま依頼側の評価になっています。
三回で合わせ直す手順
期待は、面談・初回打ち合わせ・区切りの三回で合わせ直します。番号付きで整理します。
面談で(契約前)
- 五つの期待を、依頼側に聞く。「三か月後にどうなっていれば良いですか」「日中の連絡はどのくらい想定されていますか」「合否はどなたが」
- ずれている期待を、その場で自分の言葉で伝える。速さ・成果・稼働・判断・範囲
- 書面に、五つを書く。成果の定義(見る数)、稼働の枠、判断の線、範囲
初回打ち合わせで(契約後・稼働前)
- 書面の五つを、担当と一緒に読み直す。面談の相手と担当が違う場合、担当は知らないことが多い
- 最初の一か月は把握で、成果は二か月目からと、改めて伝える
- 稼働の枠と、翌朝に動くものの渡し方を、担当と確認する
区切りで(月末か契約の区切り)
- 見る数の変化を示し、成果の定義を再確認する。「この数がこう変わりました。採用の決定は、御社の判断の段階にあります」
- 期待が上がっていれば、戻す。「次の一か月も、一つに絞ります」
- 範囲外の依頼が溜まっていれば、区切りで整理する。受けるなら時間と単価を合わせて
- 五つの期待を、次の期間分として書面を更新する
手順の要点は、「四で、担当と読み直す」ことです。面談の相手が経営者で、日々の担当が別の人なら、担当の期待は面談で合わせていません。初回打ち合わせで担当と合わせ直さないと、担当の期待とずれたまま始まります。
期待が上がりすぎたときの戻し方
うまくいっているときほど、期待は上がります。上がりすぎたときの戻し方を整理します。
| 状態 | 起きていること | 戻し方 |
|---|---|---|
| 「次はもっと早く」 | 一つ目が三か月で直ったので、二つ目は一か月でと思われている | 「二つ目も、把握と合意に一か月かかります。前回の型は使えますが、課題が違います」 |
| 「これもお願いできる?」が増える | 範囲外の依頼が日常になっている | 区切りに送る。「区切りで範囲と時間を見直すときに」 |
| 「日中も少しなら」 | 一度応じたことで、日中の対応が期待されている | 応じない。「緊急は御社でお願いします。私は夜に処理します」 |
| 「合否も見てもらえると助かる」 | 判断の材料を出しているので、判断もできると思われている | 「材料は用意しますが、判断は御社で。判断の責任を私が負う形はお受けできません」 |
| 「採用が決まるまで」 | 成果の定義が採用の決定に戻っている | 「私が動かせる数はここまでで、決定は御社の判断です」と再確認 |
戻し方の要点は、「一度応じると、それが期待になる」ことです。日中に一度返信すると、日中の対応が期待になります。範囲外を一度受けると、次も受けると思われます。期待を上げないためには、最初の一回で線を引きます。
すり合わせで起きる失敗
期待のすり合わせで起きやすい失敗を整理します。
| 失敗 | 起きる構造 | 直し方 |
|---|---|---|
| 面談で期待を聞かない | 依頼側の話を聞くだけ | 「三か月後にどうなっていれば」と、こちらから聞く |
| 成果を「採用の決定」にしたまま | 依頼側の言葉をそのまま受ける | 自分が動かせる数に置き換える |
| 書面に成果の定義が無い | 範囲と時間だけ書く | 見る数を書面に |
| 担当と合わせ直さない | 面談で合わせたと思う | 初回打ち合わせで担当と読み直す |
| 一度応じて期待を上げる | 断りにくい | 最初の一回で線を引く |
| 区切りで期待を確認しない | 数だけ示す | 成果の定義と次の期待を、区切りで言葉にする |
| 期待を下げることを恐れる | 「できません」と言うと評価が下がると思う | できることとできないことを分けて言う人が信頼される |
| 依頼側の期待に合わせて範囲を広げる | 期待に応えたい | 範囲は書面のとおり。期待に応えるのは、範囲の中で数を出すこと |
| 自分の期待を言わない | 依頼側の期待だけ合わせる | 判断の返事の目安、分担、権限の発行日など、自分の期待も伝える |
失敗の要点は、「自分の期待を言わない」ことも失敗だという点です。すり合わせは双方向で、依頼側に対する自分の期待(判断の返事、分担、権限)も言葉にしないと、自分の側が止まります。
エラベルの見解
担当する側として登録した人の話を聞くと、依頼側との関係が長い人は、期待を「合わせる」ことより「合わせ直す」ことを続けています。面談で合わせ、初回で担当と合わせ直し、区切りごとに合わせ直す。期待は、うまくいっていても、いっていなくても、動きます。動くものとして、定期的に言葉にする。この習慣がある人は、ずれが大きくなる前に戻せて、トラブルになりません。
依頼側から見ると、副業の人が「できること」と「できないこと」を分けて言うのは、頼りなく聞こえるどころか、信頼の材料です。何でもできると言う人より、線を引く人のほうが、依頼側は安心して任せられます。エラベルは、範囲と時間を書いた登録に、条件が合う案件のときだけご連絡する窓口ですが、案件を出すときに、依頼側にも「副業の人に期待できること・できないこと」をお伝えしています。それでも、成果の定義と稼働の枠は、面談で担当者ご自身の言葉で合わせていただく必要があります。三回で合わせ直す型を持っていただくことをお勧めしています。
まとめ
- 期待は速さ・成果・稼働・判断・範囲の五つ。言葉にしないと合わない
- ずれは依頼側が言わなくても分かると思い、自分が書面で伝わったと思うところで育つ
- 合わせ方の要は成果の期待を、自分が動かせる数に置き換えること。採用の決定は依頼側の判断と市場に依存する
- 面談・初回打ち合わせ・区切りの三回で合わせ直す。初回では担当と読み直す
- 期待が上がりすぎたら最初の一回で線を引く。一度応じると期待になる
- 自分の期待(判断の返事、分担、権限)も言葉にする。すり合わせは双方向
よくある質問
面談で「できないこと」を言うと、選ばれない気がします
逆です。「何でもできます」と言う人は、依頼側から見ると、範囲が読めず、後で揉めそうに見えます。「できるのはここまで、ここからは御社の判断です」と言う人は、範囲が読め、任せやすい。面談で選ばれるかどうかは、できることの多さではなく、できることの明確さで決まります。できないことを言った結果、選ばれなかったなら、その依頼側は自分の範囲に合わなかったということで、受けていれば崩れていた案件です。
依頼側の期待が最初から高すぎます。受けるべきですか
期待が高いこと自体は問題ではなく、合わせられるかどうかが問題です。面談で成果の定義を自分の言葉で伝え、依頼側が「それなら」と受け入れれば、受けられます。「それでも採用を決めてほしい」と成果の定義が採用の決定から動かないなら、期待が合わないので、受けません。受けてから期待を下げるのは、面談で合わせるより難しい。面談の段階で、期待が動くかどうかを確かめてください。
区切りで数を示したのに、依頼側の反応が薄いです
数が、依頼側の期待している成果と結びついていない可能性があります。「返信の日数が縮んだ」だけでは、依頼側は「で、採用は」となります。数を、依頼側が気にしている成果につなげて説明します。「返信の日数が縮んだことで、面接の設定が増え、面接の段階に進んだ候補者が増えました。次は、面接から内定の段階を見ます」。自分が動かせる数と、依頼側が見たい成果の間を、言葉でつなぐ。それでも反応が薄いなら、成果の定義を区切りで合わせ直します。