人事副業 / 単価・契約・税務
見積もりの出し方|金額の前に「工程・時間・含まない業務」を一枚に書く
「見積もりをください」と言われて、金額だけをメールで返す。依頼側は金額を見て「もう少し安く」と返す。業務の範囲は話されないまま、金額だけが下がり、受けてみると範囲が想定より広い。人事の副業で、見積もりが金額だけになっているときに起きることです。結論を先に書くと、見積もりは、金額の前に「工程・時間・含まない業務」を一枚に書いてください。工程と時間が見えれば、依頼側との交渉は「金額をいくらにするか」ではなく「どの工程を含めるか」になり、業務範囲のずれも防げます。価格の根拠の作り方は最初の1件の価格の決め方に、範囲の広がりを防ぐ話は安請け合いを避けるにまとめています。この記事では、金額や相場の数値は扱いません。
金額だけの見積もりで起きること
見積もりに金額だけを書くと、次のことが起きます。
交渉が金額だけになる。 依頼側は、金額しか見えないので、「もう少し安く」としか言えません。受ける側は、何を削れば安くなるかを示せず、金額だけを下げることになります。
業務範囲がずれる。 依頼側が想定している範囲と、受ける側が想定している範囲が、確認されないまま契約になります。受けてから「それも含まれていると思っていた」となります。
時間の根拠が無い。 金額が何時間分の対価かが分からず、依頼側は「高い」「安い」を相場のイメージで判断します。
追加の業務が、無償になる。 範囲が書かれていないので、「ついでに」が来たときに「範囲外」と言えません。
次の見積もりに活かせない。 金額だけの記録では、実際の稼働と比べられず、見積もりの精度が上がりません。
見積もりは、金額を伝える文書ではなく、「何を、どれだけ、いくらで」を合意する文書です。
見積もりに書く五つの項目
見積もりには、次の五つを書きます。一枚に収まります。
一.工程。 依頼された業務を、工程に分けて列挙します。スカウト代行なら、対象の抽出・文面の作成・送信・返信対応・日程調整・レポート・定例会。含む工程だけを書きます。
二.時間。 工程ごとに、月に何時間かかるかの見積もり。合計の月の稼働時間。最初の月は立ち上げの時間を足します。
三.報酬の形と金額。 月額固定か、時給か、成果報酬との組み合わせか。月額なら「月に〇時間の稼働で月額〇〇」、時給なら「時給〇〇で実働分」。金額は、工程と時間の後に書きます。
四.含まない業務。 頼まれていない、または受けない業務を明示します。「面談の同席は含みません」「求人票の作成は別途」。ここが、「ついでに」を防ぐ線になります。
五.期間と見直し。 契約の期間、稼働の上限、範囲や報酬を見直す時期(三か月後など)、範囲を変えるときの手続き。
五つが書いてあれば、依頼側は「この工程は要らないので下げてほしい」「この業務も含めてほしいので、追加でいくらか」と、中身で交渉できます。
書き方の型
見積もりの一枚は、次の型で書きます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 業務の目的 | 依頼側が何を解決したいか。一行 |
| 工程と時間 | 工程ごとに、月の時間。合計 |
| 立ち上げ | 最初の月に追加でかかる時間と、その扱い |
| 報酬 | 形(月額・時給・成果)と金額。何時間分か |
| 含まない業務 | 明示的に外す業務 |
| 稼働の上限 | 週または月の上限。超える場合の扱い |
| 期間 | 契約期間、更新、解約の条件 |
| 見直し | いつ、何を見直すか |
| 依頼側にお願いすること | 求人票の提供、面談枠の確保、承認の速さなど |
最後の「依頼側にお願いすること」は、見落とされがちです。受ける側の働きが成果になるには、依頼側の動きが要ります。見積もりの段階で書いておけば、契約後に「依頼側が動かない」を防げます。
型は、一度作れば使い回せます。案件ごとに、工程と時間と含まない業務を変えるだけです。
出すときの伝え方
見積もりを出すときは、金額を最初に言わず、工程から説明します。
目的の確認から。 「〇〇を解決したい、という理解で合っていますか」。目的がずれていれば、工程もずれます。
工程と時間を説明する。 「この工程にこれだけの時間で、合計これだけです」。依頼側は、どの工程に時間がかかるかを知らないことが多く、説明で納得します。
含まない業務を先に伝える。 「〇〇は含んでいません。必要なら別途お見積もりします」。後で言うより、先に言うほうが、ずれが起きません。
金額は、時間の対価として。 「この時間に対して、この金額です」。相場との比較ではなく、時間の説明です。
依頼側にお願いすることを伝える。 「成果を出すには、御社側で〇〇をお願いしたい」。受ける側の働きだけでは成果が出ないことを、最初に共有します。
持ち帰ってもらう。 その場で決めてもらわず、「ご検討ください」と持ち帰ってもらいます。依頼側が社内で確認する時間が要ります。
見積もりの説明は、依頼側との最初の共同作業です。ここで工程と時間を共有できれば、契約後の運用も同じ言葉で話せます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「見積もりを出したら、金額だけ見て断られた」というものです。金額だけをメールで送り、依頼側は相場のイメージと比べて「高い」と判断し、理由も聞かずに断る。工程と時間を書いていれば、依頼側は「この工程は要らないので、その分下げられますか」と返せました。金額だけの見積もりは、依頼側に「高いか安いか」しか判断させません。
見ていて差がつくのは、受ける側が「見積もりは一枚の文書で出す」と決めているかどうかです。金額をメールの一行で返す人と、工程・時間・含まない業務を一枚にして出す人がいます。後者は、依頼側から「仕事の中身を分かっている人」と見られ、交渉も中身で進みます。
受ける側にできるのは、見積もりの型を一度作り、案件ごとに埋めることです。型があれば、見積もりを出すのに時間はかかりません。
依頼側の反応への対応
見積もりを出すと、依頼側から反応が返ってきます。反応ごとに、対応があります。
「もう少し安く」。 「どの工程を減らせば、その金額になるか」を示します。「返信対応を御社で担っていただければ、この金額に」。金額だけを下げず、工程で合わせます。
「この業務も含めてほしい」。 その業務の工程と時間を足して、追加の金額を示します。「含める」と即答せず、見積もりに足します。
「予算はこれだけ」。 予算の中で受けられる工程を示します。「その予算なら、対象の抽出と文面までで、送信と返信対応は御社で」。
「他社はもっと安い」。 他社の見積もりの工程と時間を聞きます。工程が違えば、金額の比較にはなりません。同じ工程で安いなら、時間の見積もりの違いか、その人の時給の違いです。自分の時給を下限より下げてまで合わせる必要はありません。
「まず試しに安く」。 「最初の一件は立ち上げの価格で、二件目からはこの価格」と、二件目の価格を同時に合意します。試しの価格が続く形は避けます。
返事が無い。 一週間ほどで、「ご検討状況はいかがですか」と一度だけ聞きます。返事が無ければ、その案件は流れたと考えます。追いかけ続けません。
反応への対応は、全部「工程と時間で合わせる」に集約されます。金額だけで応じないことが、原則です。
見積もりを次に活かす記録
出した見積もりと、受けた後の実際の稼働を、記録しておきます。
見積もりの控え。 工程・時間・金額・含まない業務。出した日付と、依頼側の反応。
実際の稼働。 受けた後、工程ごとに実際にかかった時間。月ごとに。
見積もりとの差。 どの工程で、見積もりより多く(少なく)かかったか。差の理由。
依頼側の動き。 お願いしたことが、実際に行われたか。行われなかったときに、稼働がどう増えたか。
次の見積もりへの反映。 差と理由をもとに、次の案件の見積もりを直します。同じ工程なら、実際の時間で見積もれます。
記録が溜まれば、見積もりの精度は上がり、「この業務範囲なら、この時間と金額」という自分の価格表になります。二件目、三件目の見積もりは、価格表から出せます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、見積もりで最も困るのは「依頼側が、見積もりの工程を読まずに、金額だけを社内に上げる」ことです。工程と時間を一枚に書いて渡したのに、依頼側の担当者が金額だけを上司に伝え、上司が「高い」と判断し、断られる。工程と時間が伝わっていれば、上司も「この工程を減らせば」と判断できました。
見積もりを出すときは、「金額だけでなく、工程と時間も社内で共有してください」と一言添えます。一枚の文書を、そのまま社内に回してもらう形にします。
受ける側にできるのは、見積もりを「金額を伝える文書」ではなく「依頼側が社内で判断するための文書」として作ることです。依頼側の担当者が、上司に説明しやすい形になっていれば、通りやすくなります。
まとめ
- 金額だけの見積もりは交渉が金額だけになり・範囲がずれ・根拠が無く・追加が無償になり・次に活かせない
- 書くのは工程・時間・報酬の形と金額・含まない業務・期間と見直しの五つ。一枚に
- 型は目的・工程と時間・立ち上げ・報酬・含まない業務・稼働の上限・期間・見直し・依頼側にお願いすること
- 伝えるときは目的の確認→工程と時間→含まない業務→金額は時間の対価→依頼側へのお願い→持ち帰ってもらう
- 反応には工程と時間で合わせる。金額だけで応じない。「試しに安く」は二件目の価格を同時に
- 見積もりの控え・実際の稼働・差・依頼側の動きを記録し、次の見積もりと価格表に活かす
- 見積もりは依頼側が社内で判断するための文書
よくある質問
見積もりに工程まで書くと、長くなりませんか
一枚に収まります。工程は箇条書きで五〜七行、時間はその横に、含まない業務は二〜三行。金額だけのメールより長いですが、依頼側は中身で判断でき、交渉も中身で進みます。長さより、依頼側が社内で説明しやすいかどうかです。
依頼側が「工程はどうでもいいので、金額だけ教えて」と言います
金額を伝えつつ、「この金額は、この工程にこれだけの時間、という前提です」と一言添えてください。後で範囲がずれたときに、「前提はこうでした」と戻れます。工程を全く伝えないと、範囲のずれを防ぐ根拠が無くなります。
他社の見積もりのほうが安いと言われました
他社の見積もりの工程と時間を聞いてください。工程が少ないなら、同じ工程で比べれば差は縮まります。同じ工程で安いなら、時間の見積もりか時給の違いです。自分の時給の下限を下回ってまで合わせる必要はありません。「この工程まで減らせば、その金額に近づけられます」と、工程で合わせる提案をします。