人事副業 / 採用・人事の実務
文面を検証する|「一箇所だけ変えて、同じ層に、同じ時期に」で返信の差を読む型
文面を書き換えて、返信が少し増えた気がする。次の週はまた減った。何が効いたのかは分からない。副業の担当者がスカウト文面の改善を任されると、たいていこの状態になります。原因は、文面を変えるときに、同時に送る相手も時期も変えているからです。検証の仕事は、文面を良くすることではなく、「何を変えたら、何が変わったか」を読める形で送ることです。結論を先に書くと、文面の検証は、一箇所だけ変える・同じ層に送る・同じ時期に送るの三条件をそろえ、件名→一段落目→任せる仕事→迷う理由への先回り→結びの順で一箇所ずつ試し、文面の名前・変えた箇所・層・件数・返信・面談を一枚に記録し、件数が少ないうちは差を断定せず、結果を型に戻します。文面の組み立てはスカウト文面を書くに、会社側から見たABテストの考え方はスカウト文面のABテストのやり方に書いています。ここでは、副業の担当者が稼働の中で回す検証の型に絞ります。
検証が「なんとなく」で終わる理由
| やってしまうこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 文面を三箇所同時に変える | どこが効いたか分からない |
| 新しい文面を、新しい検索条件の相手に送る | 文面の差か、相手の差か分からない |
| 先週の旧文面と今週の新文面を比べる | 時期の差(媒体の混み具合、相手の動き)が混ざる |
| 返信率だけを見る | 返信は来たが面談に進まない文面を「良い」と判断する |
| 記録が無い | 前回何を試したか分からず、同じ検証を繰り返す |
検証は、比べたい一つ以外をそろえることです。そろっていない比較は、結果がどうであれ読めません。
検証の三条件
| 条件 | 中身 | そろえ方 |
|---|---|---|
| 一箇所だけ変える | 件名なら件名だけ。一段落目なら一段落目だけ | 変えない箇所は、文字どおり同じにする |
| 同じ層に送る | 同じ検索条件、同じ優先度の相手 | 一つの候補者リストを二つに分けて、交互に割り当てる |
| 同じ時期に送る | 同じ週、できれば同じ日と時間帯 | 二つの文面を、同じ送信の回で半分ずつ送る |
三条件のうち、副業の担当者が最も崩しやすいのは「同じ層」です。上の人には新しい文面、中の人には型、と分けると、返信の差は文面ではなく優先度の差になります。検証するときは、同じ優先度の中で二つに分けます。候補者リストの作り方は候補者リストの作り方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、検証で最も差がつくのは、「一箇所だけ変える」を守れるかどうかです。受ける側は、文面を見直すと直したいところが五つ見つかり、全部直して送りたくなります。全部直して返信が増えても、次に何を変えればよいかが分からず、次の案件でも同じ五つを直すところから始めることになります。一箇所ずつ変えると遅く見えますが、「件名を役割の言葉にすると開封が変わる」「一段落目に職歴の記述を入れると返信が変わる」と、一つずつ確かめた結果が、自分の型として残ります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「文面を変えるとき、何を変えたかを一つに絞っていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、直したい箇所が複数あるときは、下の優先順位で一番上のものだけを変え、残りは記録の「次に試す」の欄に書いておくこと。
変える箇所の優先順位
| 順 | 箇所 | 何が変わるか | 見る数字 |
|---|---|---|---|
| 一 | 件名 | 開かれるか | 開封の数(媒体で見えるとき)。見えなければ返信の数 |
| 二 | 一段落目(その人の経歴に触れる) | 「自分宛て」と読まれるか | 返信の数 |
| 三 | 任せる仕事の書き方 | 役割が自分に関係あると判断されるか | 返信の数、返信で聞かれること |
| 四 | 迷う理由への先回り | 迷いが解けるか | 返信の数、面談に進む数 |
| 五 | 結び(次の一歩) | 返信の負荷 | 返信の数、面談の日程が決まる速さ |
上から順に試すのは、上のほうが差が大きく出やすく、下は上が整っていないと差が読めないからです。件名で開かれていなければ、一段落目を変えても届きません。返信ゼロが続くときは、文面より先に疑うことがあるので、返信ゼロが続くときに疑う順番を先に見ます。
記録の一枚
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 文面の名前 | 「営業・型A」「営業・型A・件名変更」のように、何を変えた版か分かる名前 |
| 変えた箇所 | 一つ。変更前と変更後の文 |
| 送った層 | 検索条件の名前、優先度 |
| 送った時期 | 日付、時間帯 |
| 件数 | 送った数 |
| 返信 | 返信の数。返信で最初に聞かれたこと |
| 面談 | 面談に進んだ数 |
| 判断 | 「採用して型に戻す」「差が読めないので継続」「戻す」のどれか |
| 次に試す | 今回変えなかった、直したい箇所 |
記録は、候補者リストや検索条件の記録と同じ場所に置き、依頼側と共有します。候補者の氏名や返信の本文は書きません。数と、聞かれたことの要約だけです。記録の持ち方は検索条件の保存と使い回しと共通です。
件数が少ないときに差を断定しない
副業の稼働で送れる数は限られます。二つの文面に十数通ずつ送って、返信が二通と三通だったとき、「新しい文面のほうが良い」とは言えません。
| 状態 | 判断 |
|---|---|
| 件数が少なく、返信の差が一〜二通 | 差は読めない。「継続」にして、次の送信でも同じ二つを送る |
| 件数が少ないが、片方がゼロで片方に複数 | 傾向はあるが断定しない。「継続」で件数を足す |
| 何回か継続して、同じ方向の差が続く | 「採用」して型に戻す。それでも断定はせず「この案件・この層では」と添える |
| 返信は増えたが、面談に進まない | 返信の数だけで「良い」としない。返信で聞かれたことを見て、文面の三段落目か四段落目を見直す |
差を断定しないのは、慎重さのためだけではなく、依頼側に「この文面で返信が倍になった」と言ってしまうと、次の週に戻ったときに信頼を失うからです。数字は自分が送った範囲の数として伝え、市場や一般の傾向として言いません。数字の伝え方は数字で語るに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「検証は、勝った文面を決めるためにやる」というものです。実際には、副業の稼働で送れる件数では、勝ち負けが決まらないことのほうが多く、決まらないこと自体が結果です。「件名を変えても差が出なかった」なら、件名は今の形でよく、次は一段落目を試す、と進めます。差が出なかった検証も、記録に残っていれば、次の案件で「件名より一段落目から試す」という自分の型になります。受ける側がその場で使える判断としては、検証の記録の「判断」の欄に、「差が読めない」を正式な結論として書くこと。「良かった気がする」と書くより、次につながります。
検証の結果を型に戻す
| 結果 | 型への戻し方 |
|---|---|
| 採用 | 型の該当箇所を書き換え、文面の名前を新しい版にする。旧版は記録に残す |
| 差が読めない | 型はそのまま。次の送信で同じ検証を続けるか、次の箇所に進むかを記録に書く |
| 戻す | 型はそのまま。「この変更は効かなかった」を記録に残し、次の案件で同じ変更を試さない |
型に戻すとき、依頼側の確認が要るのは、二段落目(役割の説明)と三段落目(迷う理由への先回り)を変えたときです。件名と一段落目と結びは、事前に合意した範囲で担当者が変えられる形にしておきます。確認の範囲はスカウト文面を書くに書いています。
依頼側への伝え方
| 伝えること | 形 |
|---|---|
| 何を試したか | 変えた箇所と、変更前後の文 |
| 結果 | 件数と返信の数。「この件数では差は読めない」も含めて |
| 判断 | 採用・継続・戻す |
| 次に試すこと | 優先順位の次の箇所 |
伝える頻度は、送信の回ごとではなく、検証の区切り(同じ二つの文面を送り終えたとき)にします。毎回伝えると、依頼側は数字の上下に反応して、検証が途中で止まります。検証の単位の考え方はどの単位で効果を検証するかに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 直したい箇所が多く、一箇所に絞れない | 優先順位の一番上だけを変え、残りは「次に試す」に書く |
| 同じ層に分けられるほど候補者がいない | 検証を止め、送ることを優先する。件数が溜まってから検証する |
| 依頼側が「早く結論を」と言う | 「この件数では差は読めず、読めないことが結論です」と伝え、次に試す箇所を示す |
| 返信は増えたが面談に進まない | 返信で聞かれたことを見て、三段落目か四段落目を次の検証にする |
| 記録を付け忘れる | 送信のたびに文面の名前と件数だけ書く。返信は後から足す |
まとめ
- 検証が「なんとなく」で終わるのは、文面と相手と時期を同時に変えているから
- 三条件は一箇所だけ変える・同じ層に送る・同じ時期に送る。同じ優先度の中で二つに分ける
- 変える順は件名→一段落目→任せる仕事→迷う理由への先回り→結び。返信ゼロなら文面より先に疑うことがある
- 文面の名前・変えた箇所・層・時期・件数・返信・面談・判断・次に試すを一枚に。氏名と返信の本文は書かない
- 件数が少ないうちは差を断定しない。「差が読めない」を正式な結論にする
- 結果は型に戻す。役割と迷う理由の段落を変えるときは依頼側の確認
- 伝えるのは検証の区切りごと。数字は自分が送った範囲の数として
よくある質問
媒体で開封が見えません。件名の検証はできますか
開封が見えない媒体では、件名の差は返信の数で見ることになり、一段落目の差と混ざります。その場合、件名の検証は後回しにして、一段落目から始めます。件名はスカウトの件名の作り方の三つの条件(自分宛て・役割が見える・誰からか分かる)を満たす形にしておき、検証の対象から外します。開封が見える媒体に切り替えたときに、件名を試します。
送る時間帯や曜日も検証したほうがよいですか
文面の検証と同時にはやりません。時間帯を変えると、「同じ時期に送る」の条件が崩れ、文面の差が読めなくなります。文面の型が固まってから、同じ文面で時間帯だけを変えて見ます。時間帯の考え方は送信する時間帯と曜日に書いています。順番は、文面が先、時間帯が後です。
前の案件で効いた文面の形を、次の案件でそのまま使ってよいですか
型として持ち込むのは構いませんが、「効く」と決めつけずに、新しい案件でも検証の対象にします。前の案件の層と、今回の層は違います。前の案件で効いた一段落目の形(職歴の記述を入れる)は、たいていの案件で効きますが、迷う理由への先回りは案件ごとに違います。持ち込んだ型を「版一」として記録し、今回の案件で一箇所ずつ試す、という始め方にします。前の依頼側の文面そのものは持ち出さず、形だけを使います。