人事副業 / 両立・スキル
数字で語る|人事の副業で依頼側に伝わる数字は「依頼側の記録から取った・以前と比べた・工程の出口を示した・自分の範囲と依頼側の範囲を分けた」もの。数字を多く出すのではなく、一つの数字を比較と工程で語る
報告に数字を入れたほうがよいと分かっているので、送信数、返信数、面接数と、数字を並べている。それなのに、依頼側の担当者からは「で、どうなんですか」と聞かれる。数字はあるのに、伝わっていない。結論を先に書くと、依頼側に伝わる数字は、「依頼側の記録から取った」「以前と比べた」「工程の出口を示した」「自分の範囲と依頼側の範囲を分けた」の四つの条件を満たすものです。数字を多く並べても、比較と工程が無ければ、担当者は「それで何が変わったのか」が分かりません。一つの数字を、比較と工程で語るほうが、十の数字を並べるより伝わります。数字で語ることは、数字を集めることではなく、数字に意味を付けることです。成果の見せ方は成果が数字に出ない業務の見せ方に、KPIの設計はKPIを設計するに、報告の形は稼働報告のフォーマットにまとめています。
数字が伝わらない理由
数字を出しているのに伝わらないとき、何が起きているかを見ます。
| 伝わらない形 | 依頼側の担当者の頭の中 |
|---|---|
| 「送信〇通、返信〇件、面接〇件」と並べるだけ | 「多いのか少ないのか分からない」「先月と比べてどうなのか」 |
| 数字の出どころが自分の集計 | 「本当にその数字なのか」。依頼側の記録と合わないと信用されない |
| 工程が分からない数字 | 「返信〇件は、送信の何割なのか」「面接〇件は、どの段階の面接か」 |
| 自分の範囲と依頼側の範囲が混ざっている | 「内定〇件」が自分の成果なのか、面接官の判断の結果なのか分からない |
| 数字が多すぎる | 読むのに時間がかかり、要点が分からない |
| 数字だけで、状態の変化が無い | 「で、採用はどうなっているのか」 |
| 割合と実数が混ざっている | 「返信率〇割」と「面接〇件」が並ぶと、母数が分からない |
理由の要点は、「数字に比較と工程が無い」ことです。数字は、それだけでは意味を持ちません。「先月より増えた」「送信の何割が返信に至った」「返信から面接の設定に至ったのは何件」のように、比較と工程が付いて、初めて担当者は「何が起きているか」を読めます。数字を並べる報告は、材料を渡しているだけで、語っていません。
伝わる数字の四つの条件
伝わる数字は、四つの条件を満たします。一つの数字に、四つを付けます。
| 条件 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 一、依頼側の記録から取った | 媒体の管理画面、ATS、依頼側の記録。自分の推定や記憶ではない | 「ATSの記録では」「媒体の管理画面では」 |
| 二、以前と比べた | 先月、先々月、入る前との比較。数字の動きが見える | 「先月の〇件から今月は△件」「入る前は平均で一週間以上だったが、今は数日」 |
| 三、工程の出口を示した | その数字が、採用のどの工程の出口かが分かる。割合なら母数も | 「送信〇通に対して返信〇件」「返信から面接の設定に至ったのは〇件」 |
| 四、自分の範囲と依頼側の範囲を分けた | その数字が、自分の稼働で動かせるものか、依頼側の判断で決まるものか | 「面接の設定までは私の範囲で〇件。その先の通過は御社の面接の判断で〇件」 |
四つの要点は、「二」の比較が、最も伝わり方を変えることです。「返信〇件」は状態で、「先月の〇件から今月は△件」は変化です。担当者が上長に説明するとき、状態は説明しにくく、変化は説明しやすい。「増えました」「減りました」「変わっていません」のどれかが言えれば、担当者は社内で使えます。比較の起点の作り方は現状把握のしかたに、範囲の分け方は成果をどう定義しておくかに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「数字をたくさん出せば、客観的で説得力がある」というものです。実際には、依頼側の担当者は、数字が多い報告ほど読まなくなります。担当者が求めているのは、上長に一言で言える数字で、「先月より返信が増え、面接の設定が〇件から△件になった」のような、一つか二つの数字と、その変化です。十の数字が並んだ報告から、担当者がその一言を自分で作るのは、担当者の負担です。
見ていて差がつくのは、報告の冒頭に「今月の一つの数字」を置いているかです。「今月は、面接の設定が先月の〇件から△件に増えました。理由は文面の冒頭を変えたことと見ています。その先の面接の通過は御社の判断で〇件です」と、一つの数字を比較と理由と工程で語り、他の数字は表に添える。この形の報告は、担当者がそのまま上長に使え、外部の担当者の成果として伝わります。エラベルでは、担当者の稼働報告の「状態の変化」を、一つの数字を比較で語る形で書くことをお願いしています。数字は、量ではなく、語り方で伝わります。
数字の出どころの線
数字で語るとき、出どころには線があります。線を越えた数字は、伝わるどころか、信用を落とします。
| 出どころ | 使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 依頼側の記録(ATS、媒体の管理画面、依頼側の表) | 使える | 依頼側が確認できる。否定できない |
| 自分の記録(稼働ログ、日程の確定日の記録) | 使える。ただし依頼側と共有していれば | 依頼側の記録に無い数字(確定までの日数など)は、自分の記録で補う。記録を依頼側の共有に置く |
| 自分の推定 | 使わない | 「たぶん〇割くらい」は、依頼側の記録と合わないと信用を失う |
| 依頼側の担当者の記憶 | 起点としてなら使える | 「入る前は一週間以上かかっていた」という担当者の記憶は、比較の起点として担当者自身が納得する |
| 公開されている業界の数字 | 出典と前提を添えれば、参考として | 依頼側の状況と前提が違う。目標にはしない。他社事例をどう扱うか |
| 他の依頼側の数字 | 使わない | 守秘の線を越える。事例を流用しない |
| 本業の会社の数字 | 使わない | 本業の情報の持ち出し |
出どころの要点は、「依頼側が確認できる数字だけを使う」ことです。依頼側の記録から取った数字は、担当者がATSを開けば確認でき、否定できません。自分の推定や他の依頼側の数字は、確認できず、信用の根拠になりません。自分の記録を使うなら、依頼側の共有に置き、担当者がいつでも見られる形にします。記録の置き方は稼働ログの付け方に整理しています。
一つの数字を語る型
一つの数字を、四つの条件を付けて語る型です。報告の「状態の変化」の欄や、定例の冒頭で使います。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 一、数字と出どころ | 今月の数字と、どの記録から取ったか | 「ATSの記録で、今月の面接の設定は〇件です」 |
| 二、比較 | 先月か、入る前との比較 | 「先月は△件だったので、増えています」 |
| 三、工程と母数 | その数字がどの工程の出口で、母数は何か | 「返信〇件のうち、面接の設定に至ったのが〇件です」 |
| 四、理由(分かる範囲で) | 数字が動いた理由として、自分が見ていること。断定しない | 「文面の冒頭を変えた後から、返信の質が変わったと見ています。他の要因もあるかもしれません」 |
| 五、範囲の先 | 自分の範囲の先で、何が起きているか | 「設定した面接のうち、通過は御社の判断で〇件です。ここは御社の範囲です」 |
| 六、次に見ること | 来月、何の数字を見るか | 「来月は、設定から内定までの期間を見ます」 |
型の要点は、「四」の理由を断定しないことです。「文面を変えたから増えた」と断定すると、依頼側は「本当にそれだけか」と疑い、他の要因があったときに信用を失います。「〇〇と見ています。他の要因もあるかもしれません」と、自分の見立てとして言えば、依頼側は「この人の報告は慎重で信用できる」と受け取ります。断定を避ける書き方は成果が数字に出ない業務の見せ方にも書いています。
数字が無い業務の語り方
日程調整や記録の整備のように、採用の数字に直接出ない業務も、数字で語れます。数える対象を変えます。
| 業務 | 数える対象 | 語り方 |
|---|---|---|
| 日程調整 | 提示から確定までの日数、日程の理由での辞退の数、面接官の予定の組み直しの回数 | 「確定までの日数が、入る前の一週間以上から、今月は数日に縮みました。日程の理由での辞退は、先月の〇件から今月はゼロです」 |
| 候補者への連絡 | 返信までの時間、候補者からの「まだですか」の問い合わせの数 | 「候補者からの催促が、先月の〇件から今月はゼロになりました」 |
| 記録の整備 | 担当者が状況を聞きに来た回数、記録の抜けの数 | 「状況の確認でお声がけいただく回数が、先月から減っています」 |
| 面接の準備 | 面接の開始の遅れの回数、面接官からの準備の不足の指摘の回数 | 「面接官の方から準備の資料について指摘を受けた回数が、今月はゼロでした」 |
| 型づくり | 型を使った工程の所要時間、型の文書の有無 | 「文面の作成にかかる時間が、型を作る前の〇時間から、型を使って〇分になりました」 |
語り方の要点は、「減ったこと、無くなったこと、短くなったこと」を数えることです。日程調整の成果は「調整した件数」ではなく「辞退が減った」「日数が縮んだ」で、それは数字です。数字が無い業務は、数える対象が「増えたもの」ではなく「減ったもの」にあるだけで、数字で語れます。詳しい見せ方は成果が数字に出ない業務の見せ方に整理しています。
数字を使うときの注意
数字で語るとき、注意することがあります。数字は強い分、誤ると信用を大きく落とします。
| 注意 | 内容 |
|---|---|
| 小さい数字で断定しない | 送信が数十件、返信が数件のとき、一か月の変化は偶然の幅に入る。「傾向として」と添えるか、数か月で見る |
| 割合と実数を一緒に出す | 「返信率が上がった」だけでなく、「送信〇通に対して返信〇件」と実数を添える。母数が小さいと割合は大きく動く |
| 他の要因を添える | 数字が動いた月に、自分の変更以外の出来事(採用の時期、媒体の変化、依頼側の方針)があれば書く |
| 依頼側の範囲の数字を自分の成果にしない | 内定の数を「私の成果」と言わない。面接の設定までが自分で、その先は依頼側 |
| 悪い数字も出す | 良い数字だけを出すと、悪い数字が見つかったときに信用を失う。減った数字も、理由の見立てと一緒に出す |
| 数字を目標にすり替えない | 「今月〇件だったので、来月は△件を目指す」と、根拠の無い目標を置かない。目標は実績を数か月見てから。KPIを設計する |
| 出典の無い数字を使わない | 「一般に〇割」のような、出どころの無い数字は、依頼側にも自分にも根拠にならない |
注意の要点は、「悪い数字も出す」ことです。減った数字を隠して良い数字だけを出す報告は、担当者が記録を見れば分かり、その時点で報告全体が疑われます。減った数字を「先月から減りました。理由は〇〇と見ていて、来月は△△を試します」と出せば、担当者は「この人の報告は全部信用できる」と受け取り、減ったこと自体より、報告の信頼が残ります。
依頼側の担当者が上長に使える形
数字で語る目的は、依頼側の担当者が上長に説明できることです。上長に使える形にします。
| 上長が知りたいこと | 担当者が言える一言 | 自分が用意するもの |
|---|---|---|
| 外部に頼んで、何が変わったか | 「面接の設定が先月の〇件から△件に増えた」 | 一つの数字を比較で語った文 |
| 採用はどこまで進んでいるか | 「面接の設定までは進んでいて、通過の判断で〇名が待っている」 | 工程ごとの出口の数字と、止まっている場所 |
| 外部の費用に見合っているか | 「日程の理由の辞退が無くなり、面接官の予定の組み直しも無くなった」 | 減ったこと、無くなったことの数字 |
| 次に何をするか | 「来月は、設定から内定までの期間を短くする」 | 次に見る数字と、打つ手 |
| 止まっている原因は何か | 「面接の評価の段階で止まっていて、そこは社内の判断」 | 自分の範囲の先の、止まっている場所の事実 |
形の要点は、「担当者が一言で言える文を、こちらで作って渡す」ことです。担当者は、報告の表から自分で一言を作る時間がありません。報告の冒頭に、上長向けの一言(一つの数字を比較で語った文)を置けば、担当者はそれをそのまま使えます。報告の形は稼働報告のフォーマットに、担当者の社内の立場は外部の立場だからできることに書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、数字で語れていると評価されている人は、数字を多く出していません。報告の冒頭に、一つの数字を、依頼側の記録から取り、先月と比べ、工程と母数を示し、範囲の先を分けて、一文で語っています。他の数字は表に添えるだけです。依頼側の担当者は、その一文をそのまま上長に使い、「外部に頼んで変わった」と説明できています。数字を並べている人は、量は多くても、担当者が「で、どうなんですか」と聞き返す形になり、数字が成果として伝わっていません。
順番として、報告を書く前に「今月の一つの数字」を決め、依頼側の記録から取り、先月と比べ、工程と母数を付け、理由を断定せずに添え、範囲の先の状態を書き、次に見る数字を書く。数字が無い業務は、減ったことを数える。悪い数字も出す。この順番で、数字は量ではなく語り方で伝わります。エラベルでは、担当者の稼働報告を「一つの数字を比較で語る」形で書くことをお願いしています。数字で語る力は、数字を集める力ではなく、依頼側の担当者が上長に一言で言える文を作る力です。
まとめ
- 伝わる数字は依頼側の記録から取った・以前と比べた・工程の出口を示した・自分の範囲と依頼側の範囲を分けたの四つの条件を満たす
- 数字が伝わらないのは比較と工程が無いから。並べるだけでは材料で、語っていない
- 出どころは依頼側が確認できる数字だけ。自分の推定、他の依頼側の数字、本業の数字は使わない
- 型は数字と出どころ→比較→工程と母数→理由(断定しない)→範囲の先→次に見ること
- 数字が無い業務は減ったこと・無くなったこと・短くなったことを数える
- 注意は小さい数字で断定しない・割合と実数を一緒に・他の要因を添える・依頼側の範囲を自分の成果にしない・悪い数字も出す・目標にすり替えない
- 担当者が上長に一言で言える文を、報告の冒頭に置く
よくある質問
依頼側の記録が整っておらず、取れる数字がほとんどありません
取れる数字が無いなら、まず記録を始めます。候補者ごとに、工程の日付(提示、確定、面接、結果)を自分の記録に残し、依頼側の共有に置けば、数か月で比較できる数字ができます。記録を始めた最初の月は、「今月から記録を始めました。来月から比較できます」と報告し、起点を作ります。記録の整備そのものが、数字で語るための最初の工程です。記録の型は議事録の残し方と稼働ログの付け方に整理しています。
数字が悪化した月の報告を、どう書けばよいですか
悪化した数字を冒頭に置き、比較と、理由の見立てと、次に打つ手を添えます。「今月の返信は、先月の〇件から△件に減りました。送る相手の条件を変えたことが影響したと見ています。来月は条件を戻し、文面の冒頭を変えて試します」の形です。悪化を隠さず、理由の見立てと次の手を添えれば、担当者は「悪化したが、把握して手を打っている」と上長に言えます。隠すと、記録で分かったときに報告全体が疑われます。改善の回し方は改善を回すに書いています。
依頼側から「もっと詳しい数字を出してほしい」と言われました
詳しい数字は、表に添える形で出し、冒頭の一つの数字は変えません。担当者が「詳しく」と言うとき、多くは特定の工程の内訳(媒体ごと、職種ごと)を知りたがっているので、何を知りたいかを聞き、その内訳だけを表に足します。全部の数字を細かく出すと、読まれなくなります。冒頭に上長向けの一言、次に担当者向けの表、という二層にすれば、詳しさと伝わりやすさの両方を保てます。報告の層の分け方は報告の頻度をどう決めるかに整理しています。