人事副業 / 採用・人事の実務

動機づけの設計|「口説く」ではなく、候補者の「動く理由」と「迷う理由」に選考の各段で答える型

公開 2026-09-22

選考が進んでから「志望度が低い」「他社に決めそうだ」と依頼側が焦り、最終面接で経営者が会社の魅力を熱く語る。それでも辞退される。「口説く」は、候補者の迷いに答えていないので効きません。動機づけは、熱意を伝えることではなく、候補者がなぜ動き、何で迷っているかを知り、それに選考の各段で答えることです。結論を先に書くと、動機づけの設計は、ターゲット像の「動く理由」と「迷う理由」を出発点に、面談・一次・二次・最終・内定後の各段で「誰が、何を渡すか」を決め、見極めと動機づけを同じ人が同じ時間にやらない形にし、候補者の迷いを記録から拾って次の段に渡し、盛らず・約束せず・急かさずに行います。ターゲット像の作り方はターゲット像を1枚にまとめるに、面接の設計は面接の設計に書いています。ここでは、動機づけの型に絞ります。

「口説く」が効かない理由

口説き方候補者に起きること
会社の魅力を長く語る候補者はすでに知っている。迷いには答えていない
「あなたが必要だ」と熱意全員に言っていると分かる
条件を上げる条件で迷っていない人には効かない。条件で迷っている人にも「なぜ最初から出さなかったか」と不信
最終で経営者が一気に遅い。迷いは一次から積み上がっている
「早く決めてほしい」急かされて引く

候補者は、「自分の迷いに答えてくれたか」で決めます。迷いは人によって違い、選考の途中で変わります。だから、各段で聞き、各段で答える設計が要ります。

出発点は「動く理由」と「迷う理由」

一枚の欄動機づけでの使い方
動く理由各段で「それがここにある」と、実例で示す。言葉ではなく、任せる仕事・一緒に働く人・最初の三か月で
迷う理由各段で先回りして触れる。候補者が口にする前に、「〇〇を気にされる方が多いのですが」と
比べる相手比べる相手に無いものを、押しつけずに一つだけ
決め手最終と内定後で、決め手になる情報と人を用意する

ターゲット像の一枚は推測から始まるので、各段で候補者から聞いた迷いで書き換えます。書き換えた迷いが、次の候補者の動機づけの材料になります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、動機づけで最も差がつくのは、「見極めと動機づけを、同じ人が同じ時間にやらない」形にできるかです。一次面接で、面接官が観点を確かめながら会社の魅力も語ろうとすると、どちらも薄くなり、候補者は「見られている」と感じて迷いを口にしません。見極めの段では見極めに徹し、動機づけは面談(カジュアル面談)と各段の最後の時間、内定後の接点に置く。役割を分けると、面接官の負担も減ります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「面接で、見極めと動機づけを同じ人が同時にやっていませんか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、各段の一枚に「この段で渡すこと(動機づけ)」の欄を作り、「この段で確かめること(見極め)」と分けて書くこと。同じ欄に混ぜないだけで、面接官の動きが変わります。

段ごとの設計

誰が渡すこと(動機づけ)聞くこと(迷いを拾う)
カジュアル面談現場の責任者か、いまうまくやっている人役割の実態。動く理由に対応する実例「何を知りたいか」「何で迷いそうか」
一次現場の責任者見極めに徹する。最後の数分で、任せる仕事と最初の三か月を具体に候補者の質問。記録の「質問と迷い」の欄に
二次一緒に働く人一緒に働く人の実感。前の段で出た迷いに、現場の言葉で答える二次で新しく出た迷い
最終経営者決め手。会社の方針と、この人にこの役割を任せる理由。前の段の迷いのうち、経営者しか答えられないものに答える最後に残っている迷い
内定後依頼側の採用担当と、現場の責任者迷いへの答えの続き。一緒に働く人との接点。入社までの見通し他社の状況、決めるための不足

各段の「聞くこと」が、次の段の「渡すこと」になります。記録の「候補者の質問と迷い」の欄が、この橋渡しです。評価シートの型は評価シートを作るに書いています。カジュアル面談の設計はカジュアル面談を設計するに書いています。

候補者の迷いを記録から拾う

迷いの出どころ拾い方
スカウトの返信最初に聞いてきたこと。返信対応のテンプレートの記録
面談・面接の記録「候補者の質問と迷い」の欄
日程調整のやり取り日程を延ばす、返事が遅れる、は迷いの目印
辞退の理由前の候補者の辞退の理由は、次の候補者の迷いの候補

拾った迷いは、候補者ごとに一行で、次の段の一枚の「この段で答えること」に書きます。氏名は媒体のIDか応募の番号で、迷いの要約だけです。迷いを聞き出すための問いは、面接の観点とは別で、「今日の話で、気になったことはありますか」「決めるために、足りない情報はありますか」の二つで足ります。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「志望度が低い候補者は、動機づけで上げられる」というものです。実際には、動機づけで変わるのは「迷っている人」で、「動く理由が無い人」は変わりません。動く理由が無い人に時間をかけると、面接官は疲れ、動く理由がある人への対応が薄くなります。カジュアル面談と一次で「動く理由」が語れない候補者は、動機づけの対象ではなく、選考を進めるかどうかを依頼側が判断する対象です。受ける側がその場で使える判断としては、各段の記録に「動く理由(候補者の言葉)」を一行残し、空欄の候補者には動機づけの設計を厚くしないこと。厚くするのは、動く理由があって、迷いが具体な候補者です。

盛らない・約束しない・急かさない

避けること理由代わりに
実態より良い役割の説明入社後にずれ、早期の離職につながる実例で。いまうまくやっている人の言葉で
昇進や報酬の約束保証できない。約束になると後で問題「実績としてこういう例がある」まで。条件は依頼側が所定の形で
「あなたしかいない」全員に言っていると分かる「この役割にこの経歴が要る理由」を具体に
「他社より早く決めて」急かされて引く「決めるために足りない情報は何か」を聞き、渡す
他社の悪口候補者の判断を侮ることになる比べる相手に無いものを一つだけ、押しつけずに

収入や昇進を保証するように読める表現、実態と異なる待遇の説明は、動機づけの場でも避けます。条件の提示は依頼側が所定の形で行い、担当者は口頭で条件に触れません。性別や年齢などに触れる言い回しも、募集や採用で法令上の決まりがあると一般に整理されているため、動機づけの会話でも使いません。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにに書いています。

担当者が候補者に直接接する範囲

契約の範囲担当者がやること
設計のみ段ごとの一枚に「渡すこと」「聞くこと」を書く。面談・面接には出ない
面談の同席ありカジュアル面談で「聞くこと」を担う。見極めはしない
内定後の接点あり依頼側の名義で、迷いへの答えの続きを渡す。条件と約束には触れない

担当者が候補者に直接接する場合は、依頼側の名義で、答えてよい範囲を先に決めます。範囲は返信対応のテンプレートの「答えてよい範囲と依頼側に渡す範囲」と同じです。範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
最終で経営者が「口説く」だけになる最終の一枚に「前の段で出た迷いのうち、経営者が答えること」を書いて渡す
迷いが記録に残っていない評価シートの「質問と迷い」の欄を作る。面接の最後の二つの問いを一枚に
面接官が見極めと動機づけを同時にやる一枚の欄を分ける。「最後の数分で渡す」と時間を分ける
動く理由が無い候補者に時間を使う記録の「動く理由」が空欄なら、選考を進めるかを依頼側に判断してもらう
内定後に接点が無く辞退内定後の「誰が、何を、いつ」を設計に足す。内定辞退が続くときに見直す3点

まとめ

よくある質問

候補者が他社と比べていて、条件で負けそうです

条件で迷っているなら、条件の判断は依頼側です。担当者ができるのは、「候補者は条件の〇〇で迷っている」を依頼側に正確に渡すことと、条件以外の迷い(役割、一緒に働く人、次の転職での見え方)に答えることです。条件を上げるかどうかを担当者が示唆しません。条件以外の迷いに答え切ったうえで、それでも条件で決まるなら、それは候補者の判断です。

動機づけの設計をしたのに、辞退が減りません

辞退の理由を集めます。理由が「迷う理由」の一枚に無いものなら、ターゲット像の推測がずれていて、動機づけが的外れだった可能性があります。理由が「速さ」(他社が先に決まった)なら、動機づけではなく日程調整の問題です。理由が条件なら、条件の出し方の問題です。動機づけの設計が効くのは、迷いに答えられていなかった辞退だけで、全部の辞退には効きません。理由の集め方は内定辞退の理由を正しく集める方法に書いています。

副業の担当者が、候補者に直接動機づけをしてよいですか

契約の範囲によります。設計だけの契約なら、担当者は候補者に接しません。接する契約なら、依頼側の名義で、答えてよい範囲の中で、迷いへの答えを渡します。担当者が自分の言葉で会社を売り込むと、依頼側の意図と違う約束になることがあるので、渡す内容は依頼側と決めた実例に限ります。担当者にできて依頼側にできないことは、「迷いを聞き出すこと」のほうで、そこに役割を置くと、依頼側との分担が明確になります。