人事副業 / 採用・人事の実務
採用データを分析する|「傾向を探す」ではなく、「問いを一つ立てて、記録で答える」型
「採用のデータを分析してほしい」と頼まれて、一覧をあらゆる切り口で集計し、「〇〇の傾向が見られます」と並べた資料を渡しても、依頼側は「で、何をすれば」と止まります。データを眺めて傾向を探す分析は、切り口の数だけ「傾向」が出て、どれも行動につながりません。分析は、問いから始めるものです。結論を先に書くと、採用データの分析は、問いを一つ立て、その問いに答えられる記録があるかを確かめ、条件を揃えて比べ、割合と平均で断定せず、相関を原因と言わず、結果を「直す場所を一つ」に落として一枚で渡し、外部の統計を持ち込まずに行います。記録の元はスプレッドシートで採用管理を作るに、段階ごとの見方は採用ファネルを可視化するに、数字の伝え方は数字で語るに書いています。ここでは、分析の型に絞ります。
傾向を探す分析が何も生まない理由
| やってしまうこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 一覧をあらゆる切り口で集計 | 切り口の数だけ「傾向」が出る。どれを信じるか決められない |
| 「〇〇の傾向が見られます」で終わる | 何を直すかが無い |
| 件数が少ないのに割合で語る | 一件の差で数字が倍になり、次の月に反転する |
| 相関を原因として語る | 「〇〇の経路は通過率が高い」→経路のせいではなく、その経路の候補者の層のせい |
| 外部の統計と比べる | 依頼側の職種・規模・時期と合わず、比較にならない |
分析は、「何を知りたいか」が先で、「何が出るか」は後です。問いが無い分析は、切り口の展示になります。
問いから始める
| 問いの型 | 例 | 答えに要る記録 |
|---|---|---|
| どこが詰まりか | 「先月、候補者はどの段で最も減ったか。どの段で日数がかかったか」 | 段階・最終更新日・見送りと辞退の理由 |
| この手当ては効いたか | 「求人票のタイトルを変えた前後で、応募の数はどうか」 | 応募日・求人・変更した日 |
| この経路はどうか | 「スカウト経由の候補者は、どの段で落ちているか」 | 経路・段階・理由 |
| この要件は合っているか | 「書類で必須〇〇を○にした人は、一次でどうだったか」 | 書類の○△×・一次の三択 |
| 辞退はなぜか | 「辞退の理由は、速さ・迷い・接点・条件のどれが多いか」 | 辞退の理由の分類 |
問いは一つずつです。二つ以上を同時に追うと、記録の切り方が混ざります。問いの立て方は課題を構造化するの「工程で分け、止まっている場所を記録で特定する」と同じです。
エラベルの見解
担当する側から見ると、データ分析で最も差がつくのは、「答えを出せる記録があるか」を分析の前に確かめられるかです。受ける側は、問いを立てた後、すぐに集計を始めます。ただ、「手当ては効いたか」に答えるには、手当てを実施した日が記録されていなければならず、「経路ごとの落ち方」には、経路の列が埋まっていなければなりません。記録が無いまま集計すると、空欄を除いた偏った数字が出て、それが「傾向」として語られます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「その分析に要る記録は、御社の一覧に埋まっていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、問いを立てたら、答えに要る列を書き出し、その列の埋まり具合を先に見ること。埋まっていなければ、「今月から記録して、来月答えます」と伝えます。
副業の件数では「傾向」より「一件ずつ」
副業の稼働で扱う候補者の数は、統計的な傾向を語れる数ではないことがほとんどです。それでも分析はできます。「傾向」ではなく、「一件ずつの事実」を並べる形にします。
| 傾向の形(件数が要る) | 一件ずつの形(少なくても読める) |
|---|---|
| 「一次の通過率が下がった」 | 「一次で見送りになった三人は、全員が観点〇〇で通さないだった」 |
| 「スカウト経由は辞退が多い」 | 「辞退した二人は、どちらもスカウト経由で、理由は速さだった」 |
| 「タイトルの変更で応募が増えた」 | 「変更後の応募は四件で、うち三件が変更で足した言葉に触れていた」 |
一件ずつ並べると、件数が少なくても「直す場所」が見えます。基準の一行のずれ、経路の速さ、タイトルの言葉。これは、傾向を待たずに次の手当てに使えます。
比べるときは条件を揃える
| 比べたいこと | 揃えること | 揃わないと |
|---|---|---|
| 手当ての前後 | 期間の長さ、経路、求人 | 時期の差や経路の差が混ざる |
| 経路の間 | 期間、求人、段階 | 求人の違いが経路の違いに見える |
| 求人の間 | 期間、経路 | 経路の違いが求人の違いに見える |
| 面接官の間(依頼側の判断で) | 段、候補者の層 | 層の違いが面接官の違いに見える |
揃えられないときは、比べません。「この二つは条件が違うので、比べられません」も分析の結果です。検証の三条件は文面を検証するに書いています。
割合と平均で断定しない、相関を原因と言わない
| 言わない | 代わりに |
|---|---|
| 「通過率〇%」 | 「〇人中〇人が通った。件数が少ないので、割合は揺れる」 |
| 「平均〇日」 | 「〇日、〇日、〇日。一件が長く、他は短い」(平均は一件に引っ張られる) |
| 「〇〇の経路は質が高い」 | 「〇〇の経路の候補者は、会社の型が近い人が多かった。経路のせいか層のせいかは分けられない」 |
| 「〇〇が原因」 | 「〇〇と同時に起きている。原因かどうかは、〇〇だけを変えて確かめる」 |
相関を原因と言うと、依頼側はその「原因」を直し、効かず、分析の信頼が落ちます。原因かどうかは、一箇所だけ変える検証で確かめるものです。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「分析の結果は、多ければ多いほど価値がある」というものです。実際には、分析の価値は「直す場所が一つに決まるか」で決まり、結果の数ではありません。十の発見を並べた資料より、「一次で見送りになった三人は全員が観点〇〇で通さない。基準の一行を見直す」の一行のほうが、依頼側は動けます。受ける側がその場で使える判断としては、分析の一枚を書き終えたら、「直す場所」の欄が一つになっているかを確かめること。二つ以上あるなら、どちらが先かを決めて一つにします。決めるのは依頼側ですが、案は一つに絞って出します。
依頼側に渡す一枚
| 欄 | 中身 |
|---|---|
| 問い | 一つ |
| 使った記録と期間 | どの列を、いつからいつまで。埋まっていない列があれば明記 |
| 結果 | 件数のまま。一件ずつの事実 |
| 読み方 | 何が言えて、何が言えないか。揃えられなかった条件 |
| 直す場所 | 一つ。担当者の案 |
| 次に確かめること | 直した後、何を、いつ見るか |
一枚に収めます。集計の表は添付に回します。レポートの型はレポートを作るに書いています。
外部の統計を持ち込まない
「一般に返信率は〇%」「業界の平均の採用日数は〇日」のような外部の数値は、依頼側の職種・規模・媒体・時期と合わず、比較の基準になりません。持ち込むと、依頼側の数字が「良い・悪い」の印象で語られ、直す場所の特定から遠ざかります。基準は、依頼側の過去の記録(先月、前期)です。記録が無ければ、今月が来月の基準です。
個人情報の扱い
分析で扱うのは、一覧の番号・段階・経路・日付・理由の分類までで足ります。氏名・連絡先・評価の自由記述は、分析に要りません。分析用に一覧を別の場所に写すときも、個人情報の列を除いて写します。担当者の端末に落とさず、依頼側の環境で行います。扱いは個人情報の扱いと情報の取り扱いと端末の分離に書いています。個人情報の扱いに法令が関わる場合は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が「何か傾向を見つけてほしい」と言う | 問いを一緒に立てる。「いま一番困っていることは何か」から一つに |
| 記録が埋まっていない | 「今月から記録して来月答える」。埋まっている列で答えられる問いに変える |
| 件数が少なく傾向が読めない | 一件ずつの事実で並べる。傾向を待たない |
| 依頼側が割合や平均を求める | 件数を並べ、依頼側が計算できる形に。揺れることを添える |
| 「〇〇が原因」と言いたくなる | 「同時に起きている」に留め、一箇所だけ変える検証を提案する |
| 直す場所が複数出る | 一つに絞る。残りは次の問いに |
まとめ
- 傾向を探す分析は、切り口の数だけ傾向が出て何も生まない。分析は問いから
- 問いは一つ。答えに要る記録があるかを先に確かめる
- 副業の件数では「傾向」より「一件ずつの事実」。少なくても直す場所は見える
- 比べるときは条件を揃える。揃わなければ比べない
- 割合と平均で断定しない、相関を原因と言わない。原因は一箇所だけ変えて確かめる
- 結果は直す場所を一つに落として一枚で
- 外部の統計を持ち込まない。基準は依頼側の過去の記録
- 分析に個人情報は要らない。番号と分類だけ。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
依頼側が「他社と比べてうちはどうか」を知りたがります
他社の数字は、条件(職種・規模・媒体・時期)が違うので、比べられません。「御社の先月と今月」「御社のこの経路とあの経路」のように、依頼側の中で条件を揃えた比較に置き換えます。外部の数値を担当者が持ち込むと、根拠を問われて答えられません。「比べるなら、御社の記録の中で」と、比較の対象を変える提案をします。
分析ツールやAIを使って、もっと高度な分析をしたいと言われました
道具を変えても、問いと記録が無ければ、出てくるのは切り口の展示です。まず問いを一つ立て、記録を揃え、一件ずつの事実で答える。それができてから、件数が増えて傾向を語れる段階になれば、道具を検討します。道具の選定と費用は依頼側の判断です。担当者は「いまの件数と記録で、道具が何を足すか」を分けて渡します。
分析の結果、依頼側の面接官の一人が「通さない」を多く付けていると分かりました
面接官の評価に踏み込みません。「その面接官の段で、通さないの理由は観点〇〇に集中している。観点〇〇の基準の一行が、他の面接官と読み方が違う可能性がある」と、基準の問題として返します。人の問題にすると、面接官は記録を書かなくなり、次の分析ができなくなります。面接官の揃え方は面接官トレーニングを行うに書いています。