人事副業 / 採用・人事の実務
オンボーディングを設計する|「歓迎する」ではなく、面接で渡した「最初の三か月」をそのまま実行する型
入社日に歓迎会、翌日から座学の研修、二週目に配属。「オンボーディングはやっている」と依頼側は言いますが、三か月後に「思っていたのと違う」と辞める人が出ます。歓迎と研修は、入社した人が求めているものの一部でしかありません。求めているのは、「面接で聞いた最初の三か月が、そのとおりに始まること」です。結論を先に書くと、オンボーディングは、求人票と面接で渡した「最初の三か月」をそのまま実行する設計とし、初日・一週間・一か月・三か月の到達点と担当と任せる仕事の順番と確認の接点とずれたときの戻し方の五つを決め、現場の責任者と一緒に働く人が担い、担当者は設計と接点の記録までを行い、「思っていたのと違う」を採用の記録に戻します。案件として受ける形はオンボーディング設計の副業の実務に、会社側から見た手順は入社後のオンボーディングの進め方に書いています。ここでは、設計の型に絞ります。
歓迎と研修だけで早期離職が出る理由
| 形 | 入社した人に起きること |
|---|---|
| 歓迎会と座学の研修だけ | 「仕事」が始まらない。面接で聞いた役割と違うと感じる |
| 配属後は現場任せ | 現場が忙しく、放置される。誰に聞けばよいか分からない |
| 到達点が無い | 自分が順調なのか遅れているのか分からず、不安が続く |
| 確認の接点が無い | 「思っていたのと違う」を言う場が無く、辞めるときに初めて言う |
| 面接で渡した「最初の三か月」と実際が違う | 採用の段階の約束が守られていない、と受け取る |
早期離職の原因は入社後に見えますが、採用の段階から続いています。原因の分け方は早期離職が続くのは採用のどの段階の問題かに書いています。オンボーディングは、採用の最後の段です。
出発点は「最初の三か月」
求人票の六つの要素の一つ、「最初の三か月」(誰と何を引き継ぎ、どの状態を目指すか)を、面接でも候補者に渡しています。オンボーディングは、それを実行する計画です。新しく作るのではなく、渡したものをそのまま形にします。
| 求人票・面接で渡したこと | オンボーディングでの形 |
|---|---|
| 最初の三か月は〇〇さんと一緒に〇〇を引き継ぐ | 〇〇さんが担当。引き継ぎの順番と期間 |
| 〇〇を一人で回せる状態を目指す | 三か月の到達点。到達したかを誰が見るか |
| 一緒に働く人は〇〇と〇〇 | 初日と最初の一週間で顔を合わせる相手 |
| 任せる仕事は〇〇・〇〇・〇〇 | 任せる順番。最初は一つ、慣れたら二つ |
求人票の六つの要素はジョブディスクリプションを書くに書いています。渡したものと実際がずれると、入社した人は「話が違う」と感じ、それが早期離職につながります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、オンボーディングで最も差がつくのは、「面接で渡した最初の三か月」と「入社後の計画」を、同じ一枚にできるかどうかです。受ける側は、オンボーディングを「入社後の施策」として、採用とは別に設計します。すると、面接で「最初は〇〇さんと一緒に案件を引き継ぐ」と伝えたのに、入社後の計画には座学の研修が二週間入っていて、入社した人は戸惑います。採用の段階で渡した言葉を、そのまま入社後の計画の一行目に置く。それだけで、「話が違う」が減ります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「面接で候補者に伝えた最初の三か月と、入社後の計画は同じですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、オンボーディングの一枚の先頭に、求人票の「最初の三か月」の欄をそのまま写すこと。写した文と計画がずれていたら、計画を直します。
設計で決める五つ
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 到達点 | 初日・最初の一週間・一か月・三か月で、どの状態になっていればよいか。一行ずつ |
| 担当 | 各時期で、誰が一緒にいるか。現場の責任者と、一緒に働く人(引き継ぐ相手) |
| 任せる仕事の順番 | 最初に一つ。慣れたら二つ目。三か月で求人票の「任せる仕事」の全部 |
| 確認の接点 | 一週間・一か月・三か月の終わりに、現場の責任者と「到達点に対してどうか」「思っていたのと違うことは」を話す |
| ずれたときの戻し方 | 到達点に届かないとき、誰が何を変えるか。仕事を減らすか、担当を足すか、期間を延ばすか |
五つを一枚にして、現場の責任者と一緒に働く人と、入社する本人に渡します。本人に渡すのは、「自分が順調か」を本人が分かるようにするためです。
時期ごとの到達点の考え方
| 時期 | 到達点の例 | 担当がやること |
|---|---|---|
| 初日 | 一緒に働く人の顔と役割が分かる。最初の仕事が何か分かる。誰に聞けばよいか分かる | 現場の責任者が一日つく。環境(アカウント、道具)が初日に揃っている |
| 最初の一週間 | 最初の仕事に手を付けている。引き継ぐ相手と一緒に一つの案件を見た | 一緒に働く人が毎日短く話す |
| 一か月 | 最初の仕事を、聞きながら一人で進められる | 現場の責任者と一度目の確認の接点 |
| 三か月 | 求人票の「任せる仕事」を、教えなくても一人で回せる(求人票の到達点) | 現場の責任者と三度目の確認の接点。到達したかを一緒に見る |
到達点は、依頼側の現場が決めます。担当者は、求人票と面接で渡したものと一致しているかを確かめ、一枚にします。到達点の数字(件数、売上など)を担当者が決めません。
確認の接点で聞くこと
| 問い | 何のために |
|---|---|
| 到達点に対して、いまどこか | 本人が順調かを自分で言えるように |
| 思っていたのと違うことは何か | 「話が違う」を早く拾う。辞めるときに初めて聞かない |
| 誰に聞けばよいか分からないことはあるか | 放置を防ぐ |
| 次の一か月で、何を任されたいか | 任せる順番の調整 |
接点を担うのは現場の責任者です。担当者が本人と直接話すかは、契約の範囲と依頼側の決まりで決めます。接点の記録は、到達点への到達と「思っていたのと違うこと」の二つだけを一行で残し、私的な事情や健康の状態は書きません。1on1の型は1on1・メンタリングの副業の実務に書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「オンボーディングは入社した人のためのもの」というものです。実際には、オンボーディングの記録は、採用の側にとっても材料です。「思っていたのと違うこと」が、求人票の言葉のずれなのか、面接で渡した見通しのずれなのか、現場の受け入れの問題なのかを分けると、次の候補者の求人票と面接が直ります。入社した人の言葉を、採用の記録に戻す。これが、オンボーディングを採用の最後の段として設計する理由です。受ける側がその場で使える判断としては、確認の接点の記録に「求人票・面接・受け入れのどれのずれか」の一語を足すこと。三か月分がたまれば、依頼側の採用のどこを直すかが見えます。突き合わせの型は見極めの精度を上げるに書いています。
踏み込まない線
| 線 | 理由 |
|---|---|
| 人事評価に関わらない | 到達点は育成のためで、評価のためではない。評価は依頼側の制度 |
| 労務(勤怠、休暇、契約の内容)に関わらない | 依頼側の人事と専門家の領域 |
| 本人の私的な事情や健康の状態を記録しない | 配慮が要る情報は依頼側の決まりに従い、担当者の手元に置かない |
| 現場の責任者に指示しない | 担当者は設計と記録の形を渡す。実行の指揮は依頼側 |
| 試用期間の扱いに関わらない | 法令上の整理がある事項。依頼側の決まりと専門家の確認に従う |
入社後の扱いに法令が関わる場合は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 現場が忙しく、担当がつかない | 担当を「一日中つく」ではなく「毎日短く話す」に。一緒に働く人に分ける |
| 到達点が抽象的(「慣れる」「一人前」) | 求人票の「任せる仕事」の一つを「聞きながら進められる」「教えなくても回せる」の二段で書く |
| 面接で渡した見通しと計画がずれている | 計画を直す。渡した言葉が正 |
| 確認の接点が「面談」になって形式化する | 四つの問いだけに。記録は二行 |
| 「思っていたのと違う」が出たが、誰も動かない | ずれたときの戻し方を先に決めておく。現場の責任者が何を変えるかを一枚に |
| 担当者が本人と直接話すことを求められる | 契約の範囲と依頼側の決まりで。話す場合も、記録は到達点とずれの二つだけ |
まとめ
- 歓迎と研修だけでは足りない。入社した人が求めるのは面接で聞いた最初の三か月がそのとおりに始まること
- 出発点は求人票と面接で渡した「最初の三か月」。一枚の先頭にそのまま写す
- 決めるのは到達点・担当・任せる順番・確認の接点・ずれたときの戻し方の五つ
- 担当は現場の責任者と一緒に働く人。「一日中つく」より「毎日短く話す」
- 確認の接点では到達点と「思っていたのと違うこと」を聞き、二行で記録
- 「思っていたのと違う」を採用の記録に戻す。求人票・面接・受け入れのどれのずれか
- 人事評価・労務・試用期間・私的な事情に踏み込まない。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
依頼側に、オンボーディングの担当をできる現場の人がいません
「一日中つく」担当は要りません。「毎日、短く話す人」が一人いれば設計できます。それも難しいなら、任せる仕事を最初の一か月は一つだけにし、その一つの引き継ぎ相手が「話す人」を兼ねる形にします。現場に人がいない状態で採用したなら、求人票の「一緒に働く人」の欄と実態がずれているので、次の求人票を直す材料にもなります。
入社した人が「思っていたのと違う」と言い、辞めそうです
確認の接点で聞いた「違うこと」を、求人票・面接・受け入れのどれのずれかで分けます。求人票や面接のずれなら、依頼側の現場の責任者と本人で、「いまの実態」と「これからどうするか」を話す場を設けます。受け入れのずれなら、担当や任せる順番を戻し方に沿って変えます。担当者は、ずれの場所を分けて依頼側に渡すまでで、本人を引き止める役割は持ちません。離職の防止の施策は離職防止の施策設計の副業の実務に書いています。
オンボーディングの設計だけの契約で、入社後まで見られません
五つを一枚にして依頼側に渡し、確認の接点の記録の形(二行)も一緒に渡します。実施は依頼側です。三か月後に、記録を読んで採用の記録に戻す作業を、別の契約か、次の案件の冒頭で行う提案をします。設計だけでも、「面接で渡したものと同じ一枚」になっていれば、依頼側が実施できます。引き継ぎの形は引き継ぎ資料の残し方に書いています。