人事副業 / 研修講師
研修講師の副業案件|求められる経験と進め方
研修講師は、人事の副業の中で、稼働の区切りが見えやすく、単価も比較的読みやすい案件です。面接官がばらばらで研修をしたい、評価者の目線を合わせたい、新しく採用を担当する人を立ち上げたい、新任の管理職に人事の基礎を教えたい。その状態で「研修をしてほしい」と外に出されます。ただ、「知っていることを話す仕事」と思って受けると、当日は満足度が高く、翌週の現場では何も変わらず、二回目の依頼は来ません。結論を先に書くと、研修講師の副業案件は、「単発の登壇」「設計から登壇と振り返りまで」「社内講師の育成」「教材の型作り」の四つの型に分かれ、求められるのは、「受講者が研修のあとに何ができるようになるべきか」から設計できること、演習を作れること、講師が話すより受講者が自分の言葉で答える場を回せること、研修のあとに現場で使われたかを確かめた経験の四つです。進め方は、できるようになることを会社が決める→いまの受講者の状態を確かめる→教える順番と演習の設計→教材と進行表→当日の進行→振り返りと現場での確認→次の回を直す、の順で、内容の最終決定・受講者の選定・研修の結果の扱いは会社、他社の教材を写さず、研修の様子を評価に使わせず、法令に関わる内容は専門家と組み、効果を保証しない線を先に引いておきます。研修担当の経験を採用の副業に活かす形は研修担当が副業でできることに、面接官の育成の型は面接代行の副業案件に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、研修講師の案件に絞ります。
人事の副業で多い研修と、それぞれの線
人事の副業で頼まれる研修は、採用と評価に関わるものが中心です。内容によって、線の重さが違います。
| 研修 | 受講者 | できるようになること | 線 |
|---|---|---|---|
| 面接官研修 | 面接官になる社員 | 型に沿って聞き、事実と所感を分けて記録できる。聞いてはいけないことを聞かない | 聞いてはいけない項目は、会社の決まりと専門家の確認に沿う。個別の判断は専門家にご確認ください |
| 評価者研修 | 評価者(管理職) | 観点を同じ基準で判定し、理由を本人に伝えられる | 会社の評価制度に沿う。制度そのものの是非には入らない |
| 採用担当の立ち上げ | 新しく採用を担う人 | スカウト、書類選考、日程、面接の段取りを一人で回せる | 実務の型を渡す。会社の判断(合否、条件)には入らない |
| 新任管理職の人事の基礎 | 新任の管理職 | 部下の目標設定、面談、評価、労務の基本の流れを回せる | 労務と法令に関わる内容は、専門家が講師か監修。副業の人は流れと型まで |
| ハラスメントなど法令に関わる研修 | 全社員、管理職 | 法令と会社の方針の理解 | 副業の人が単独で講師をしない。専門家が講師か監修 |
止まりやすいのは、「人事のことなら何でも」と、法令に関わる研修を単独で受けるときです。法令の解釈を伴う内容は、専門家(社会保険労務士、弁護士など)が講師か監修に入る形にします。
研修講師の案件の四つの型
募集文は「研修講師」「社内研修の実施」「勉強会の講師」と書かれていることが多いですが、任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。
| 型 | 任される範囲 | 依頼側が持つこと | 受ける側の稼働の性質 |
|---|---|---|---|
| 単発の登壇 | 会社が決めた内容と教材で、当日の進行を担う | 内容、教材、受講者の選定、結果の扱い | 当日と準備で区切れる。効果の責任を持てない |
| 設計から登壇と振り返りまで | できるようになることの整理の支援、教える順番と演習の設計、教材、当日の進行、振り返り、現場での確認 | できるようになることの決定、受講者の選定、結果の扱い | 準備に時間がかかる。振り返りまで見る |
| 社内講師の育成 | 社内の人が講師として回せるように、教材と進行表を作り、同席して直す | 講師の選定、以後の実施 | 期間が決まっている。終わったら手を離す |
| 教材の型作り | 演習、進行表、事前と事後の確認の型を作り、社内で更新できるようにする | 内容の決定、以後の更新 | 作る工程。登壇しない |
止まりやすいのは、「単発の登壇」で受けたのに、「効果が出なかった」と研修のあとの現場の結果で評価されるときです。単発の登壇では、できるようになることの設計と受講者の選定に関われないので、効果の責任は持てません。受ける前に評価の基準を決めます。
求められる経験を棚卸しする
依頼側が見ているのは、「話がうまいか」ではなく、「受講者が研修のあと、現場でできるようになるか」です。社内で研修に関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。
| 経験 | 依頼側にとっての意味 | 棚卸しの書き方 |
|---|---|---|
| できるようになることから設計した | 「何を話すか」ではなく「受講者が何をできるようになるか」から逆算できる | どういう「できるようになること」を決め、何を教えて何を削ったか |
| 演習を作れる | 聞くだけの研修ではなく、受講者が手を動かして確かめる場を作れる | どういう演習で、受講者が何をやったか |
| 受講者に答えさせる進行 | 講師が話す時間を短く、受講者が自分の言葉で答える時間を長くできる | 進行表の形と、話す時間と答える時間の配分 |
| 現場で使われたかを確かめた | 研修のあと、現場で使われたかを確かめ、次の回を直した | 何をどう確かめ、次の回で何を変えたか |
いちばん差がつくのは四つ目です。研修の成果は当日の満足度ではなく、翌週の現場で決まります。「研修のあと、面接の記録に事実と所感が分かれて書かれるようになったか」を確かめた経験がある人は、設計の段階から現場で使われる形にできます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、研修講師の案件は、「会社が『研修のあとに何ができるようになるか』を一言で言えるか」で難易度が変わります。言える会社では、講師は教える順番と演習に集中でき、当日の受講者の反応も、その一言に照らして読めます。言えない会社では、「面接官の意識を高めたい」のような目的のまま研修が組まれ、当日は盛り上がり、現場は変わらず、講師の評価も曖昧に終わります。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「研修の翌週、受講者の行動で何が変わっていれば成功ですか」です。答えが「意識」なら、行動の言葉に直してもらってから設計に入ります。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「研修の翌週、受講者が何をしていれば成功ですか」と聞くこと。答えを進行表の一行目に書き、当日の最後に受講者自身に「翌週、何をするか」を言ってもらう場を作ります。
進め方の順番
| 順 | やること | ここで決めておくこと |
|---|---|---|
| 一 | できるようになることを会社が決める(研修の翌週、受講者が何をしていれば成功か。行動の言葉で) | 決める人。受講者の選定 |
| 二 | いまの受講者の状態を確かめる(何ができていて、何ができていないか。事前の確認か、上司への聞き取り) | 事前の確認の形。受講者の情報の扱い |
| 三 | 教える順番と演習の設計(できるようになることから逆算。話す時間より演習を長く) | 設計の承認 |
| 四 | 教材と進行表(受講者に渡す一枚、演習の素材(架空の例)、講師の進行表。他社の教材を写さない) | 教材の権利(会社のものか、自分のものか) |
| 五 | 当日の進行(最初に「翌週何をするか」を示し、演習で受講者に答えさせ、最後に受講者自身に翌週の一つを言ってもらう) | 当日の担当の分担。記録の扱い |
| 六 | 振り返りと現場での確認(当日の反応と、翌週から一か月の現場での行動を、上司か記録で確かめる) | 確かめる人と方法 |
| 七 | 次の回を直す(使われなかった箇所を削り、つまずいた箇所に演習を足す) | 次の回の有無 |
止まりやすいのは、一を飛ばして「話す内容」から作るときです。話す内容から作った研修は、講師の知っていることが並び、受講者の行動は変わりません。
外部の立場で踏み込まない線
研修は、社員の前に立ち、会社の名前で行われます。線を先に引いておきます。
- 内容の最終決定と受講者の選定は会社。 設計の案は出すが、何を教え、誰に教えるかは会社が決める
- 他社の教材を写さない。 本業や他の依頼側の教材、書籍や公開の資料の文章や図を、そのまま使わない。演習の例は架空で自分が作る。教材の権利(会社のものか自分のものか、他で使えるか)を契約前に決める
- 研修の様子を、受講者の評価に使わせない。 研修中の発言や演習の出来を、人事評価の材料として会社に渡さない。受講者にその旨を伝えられる形にする。評価に使うなら、会社が受講者に事前に伝える
- 法令に関わる内容は専門家と。 労務、ハラスメント、契約、聞いてはいけない質問の線など、法令の解釈を伴う部分は、専門家(社会保険労務士、弁護士など)が講師か監修に入る。副業の人が単独で「法令上はこうです」と教えない。個別の判断は専門家にご確認ください
- 効果を保証しない。 「この研修で面接の質が上がります」と言わない。現場で使われたかを確かめる形を提案する
- 受講者の情報を手元に残さない。 事前の確認の回答、演習の記録、受講者の名簿は会社の管理する場所でだけ扱う
- 会社の制度や方針の是非に入らない。 評価者研修で「この評価制度は良くない」と言わない。制度に沿って教え、制度の課題は会社に別の場で渡す
- 受講者に個別に指導しない。 研修の場の外で、受講者から個別に相談を受けて答える形にしない。会社の上司か人事に取り次ぐ
線の詳細は副業で法令違反をしないためにと本業と利益相反になる案件に書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、依頼側の「良い講師を呼べば変わる」と、受ける側の「話がうまければ選ばれる」の両方です。実際には、研修のあとに現場が変わるかは、講師の話のうまさではなく、「受講者が研修の中で自分の言葉で答え、翌週に何をするかを自分で決めたか」で決まります。同じ料金で同じ時間を任されても、結果が分かれるのは、講師が「話す」か「答えさせる」かです。知っていることを整理して話し切った講師の研修は、満足度は高く、翌週の面接の記録は変わらず、二回目は呼ばれません。話す時間を短くし、架空の候補者の例で受講者に記録を書かせ、互いに見せ合い、最後に「翌週の面接で変えること一つ」を受講者自身に言わせた講師の研修は、翌週の記録が変わり、次の回が続きます。受ける側がその場で使える判断としては、進行表で講師が話す時間の合計を数え、全体の半分を超えていたら演習に置き換えること。話す時間が半分を超える研修は、講師のための研修です。
向く人と向かない人
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 「翌週、受講者が何をするか」から逆算して設計できる | 知っていることを全部話したい |
| 架空の例で演習を作るのが苦にならない | 実在の事例を使いたい |
| 話す時間を短くし、受講者に答えさせる進行ができる | 講義が好き |
| 研修のあと、現場で使われたかを確かめ、次の回を直せる | 当日の満足度で終わりにしたい |
| 法令に関わる内容を専門家に渡し、単独で教えない | 「法令上はこうです」と教えたくなる |
「実在の事例を使いたい」人は、他社の内情や本業の情報を持ち込む形になり、線を越えます。演習の例は架空で作ります。
まとめ
- 人事の副業で多い研修は面接官・評価者・採用担当の立ち上げ・新任管理職の人事の基礎。法令に関わる内容は専門家が講師か監修で、単独で受けない
- 案件は単発の登壇・設計から登壇と振り返りまで・社内講師の育成・教材の型作りの四つの型。単発の登壇では効果の責任を持たない
- 求められるのはできるようになることから設計・演習を作れる・受講者に答えさせる進行・現場で使われたかを確かめた経験の四つ。話のうまさではない
- 進め方はできるようになることを会社が決める→受講者の状態→教える順番と演習→教材と進行表→当日→振り返りと現場での確認→次の回を直す。話す内容から作らない
- 線は内容の決定と受講者の選定は会社・他社の教材を写さない・研修の様子を評価に使わせない・法令は専門家と・効果を保証しない・受講者の情報を残さない・制度の是非に入らない・個別に指導しない
- 講師が話す時間は全体の半分以下。最後に受講者自身に「翌週やること一つ」を言ってもらう
よくある質問
「ハラスメント研修もお願いしたい」と言われました
単独では受けません。ハラスメントの研修は、法令の解釈と会社の方針の説明を伴い、間違いが出たときの影響が大きい内容です。「法令に関わる部分は、専門家(社会保険労務士や弁護士)が講師か監修に入る形にしてください。私は、進行の設計と演習の型で支えます」と、専門家と組む形に直します。専門家なしで進めたい会社では、受けません。個別の判断は専門家にご確認ください。
会社から「研修中の発言や演習の出来を、評価の参考にしたい」と言われました
研修の様子を評価に使う形は、受講者が本音で答えなくなり、研修の効果が無くなります。「評価に使う場合は、事前に受講者に伝えてください。伝えないなら、私は演習の記録を会社に渡しません」と、線を引きます。研修の場は、間違えてよい場であることを受講者に伝えられなければ、受講者は答えず、研修は講義になります。それでも評価に使いたい会社では、研修ではなく評価の場として設計を変え、受講者にその旨を伝える形にします。
研修講師の単価はどう決めればよいですか
「設計(できるようになることの整理、順番、演習)」「教材と進行表の作成」「当日(準備と本番と片付け)」「振り返りと現場での確認」「次の回の直し」を分けて見込みます。当日の時間だけで見積もると、設計と教材が無償になり、質が落ちます。教材の権利(会社のものか、自分のものか、他で使えるか)で単価は変わるので、契約前に決めます。相場は範囲と回数と受講者の人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。単価の考え方は単価の相場と考え方に、始め方は研修講師で副業を始めるにはに書いています。