人事副業 / 採用・人事の実務
ATSの運用ルールを作る|「使い方の説明書」ではなく、「誰が・いつ・何を更新するか」の一枚にする型
ATSを入れて初期設定を終えると、次に頼まれるのは「運用ルールを作ってほしい」です。ここで、画面ごとの操作方法を並べた説明書を作ると、誰も読まず、三か月後には段階が更新されない候補者が溜まります。運用ルールは、操作の説明ではなく、「誰が、いつ、何を更新し、何を書き、何を外に出さないか」を一枚で決めることです。結論を先に書くと、ATSの運用ルールは、更新の担当・更新のタイミング・段階を進める条件・記録に書くこと・ATSの外に出さないことの五つを一枚にし、面接官には自分の段だけのルールを渡し、週次で更新の止まりを確かめ、守れないルールは減らし、権限を周期で見直して、担当者が替わっても回る形にします。選定と初期設定はATSの選定と初期設定に、会社側から見た運用の手順はATS(採用管理システム)の運用の進め方に書いています。ここでは、運用ルールの型に絞ります。
説明書を作っても更新が止まる理由
| 説明書の形 | 何が起きるか |
|---|---|
| 画面ごとの操作方法 | 読まれない。操作は触れば分かる |
| 全機能を網羅 | 自分に関係ある部分が分からない |
| 「随時更新してください」 | いつ更新するかが決まっておらず、後回しになる |
| 誰が更新するかが無い | 人事と現場が互いに相手がやると思う |
| 段階を進める条件が無い | 「一次通過」を誰がいつ押すかが曖昧で、候補者が段階に取り残される |
更新が止まる原因は、操作が難しいからではなく、「自分が、いつ、何をするか」が決まっていないからです。使いこなせない構造はATSを入れたが使いこなせていないに書いています。
運用ルールの一枚に書く五つ
| 項目 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 更新の担当 | 段階ごとに、誰が更新するか。一人に決める | 応募〜書類:人事。一次〜最終:各段の面接官。内定〜入社:人事 |
| 更新のタイミング | いつ更新するか。「随時」にしない | 面接の直後五分以内。日程が決まった当日。結果が出た当日 |
| 段階を進める条件 | 何が揃ったら次の段階に進めるか。誰が押すか | 評価シートの判断の欄が埋まり、決める人が「通す」としたら、人事が進める |
| 記録に書くこと | 各段で、何を書くか。何を書かないか | 評価シートの観点ごとの事実と判断。印象・私的な事情は書かない |
| ATSの外に出さないこと | ダウンロード、メール転送、スクリーンショットの可否 | 候補者の情報はATSの中で見る。外に出す場合は人事の許可と記録 |
五つで一枚です。二枚になるなら、書きすぎです。ルールは「守れる数」に留めます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、運用ルールで最も差がつくのは、「更新のタイミング」を「随時」にしないことです。受ける側は、「面接後に速やかに」と書きます。速やかに、は人によって違い、翌日になり、週末になり、忘れられます。「面接の直後五分以内に、評価シートの欄を埋めて段階を更新する」と、面接の予定の枠に五分を含める形にすると、更新が面接の一部になります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「ATSの更新は、いつ行うことになっていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、更新のタイミングを、時刻や期限ではなく「〇〇の直後」と、既にある行動にくっつけて書くこと。「日程が決まった直後」「面接の直後」「結果を伝えた直後」。新しい習慣を作らず、既にある行動に足します。日程の枠に五分を含める型は日程調整を速くするに書いています。
面接官には自分の段だけのルールを渡す
| 渡す相手 | 渡すルール |
|---|---|
| 一次の面接官 | 一次の候補者の一覧を見る。面接の直後に評価シートの欄を埋める。段階は人事が進めるので押さない。候補者の連絡先は見ない |
| 最終の面接官(経営者) | 最終の候補者だけ。判断の欄を埋める。それ以外は触らない |
| 人事 | 五つの全部 |
| 副業の担当者 | 契約の範囲の部分。自分の権限で見えるものだけ |
全員に五つの一枚を渡すと、面接官は自分に関係ない部分を読んで、全体を読まなくなります。自分の段の三行だけを渡します。権限の設定も、この三行に合わせます。面接官に渡す一枚の型は面接の設計にあり、ATSの運用ルールはその一枚の末尾に三行足す形にできます。
週次で更新の止まりを確かめる
| 確かめること | 見つけたら |
|---|---|
| 段階が一定の日数を超えて動いていない候補者 | 担当に「次の一歩は何か」を聞く。候補者が放置されている |
| 面接が終わっているのに評価シートが空の候補者 | 面接官に、その日のうちに埋めてもらう |
| 日程が決まっているのにATSに入っていない候補者 | 日程調整の担当が更新していない。タイミングのルールに戻る |
| 結果が出ているのに候補者に伝わっていない | 人事が結果の連絡を更新していない |
確かめるのは、副業の担当者か依頼側の人事のどちらかに決めます。週に一度、一覧を「段階ごとに、最終更新日の古い順」に並べれば、数分で見つかります。見つけたことは、人を責めるのではなく、「どのルールが守られていないか」として、ルールの見直しの材料にします。運用の週次の型は送信運用を回すの週次の報告と同じ考え方です。
媒体との連携で入る重複
| 起きること | 扱い |
|---|---|
| 同じ人が二つの媒体から応募 | 一人にまとめる。まとめる担当と、どちらの応募を正とするかを決める |
| スカウトを送った人が、別の経路で応募 | 経路の記録を両方残し、候補者としては一人 |
| 紹介会社からの推薦と自己応募が重なる | 紹介会社との契約に関わる。依頼側の判断。担当者は事実を並べる |
| 過去の応募者が再応募 | 過去の記録を見られる権限があるかで扱いが変わる。依頼側の決まり |
重複の扱いは、紹介会社との契約や個人情報の保管に関わることがあり、担当者が決めません。「重複が出たら人事に知らせる」までをルールに書きます。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「ルールが守られないのは、守らない人の問題」というものです。実際には、守られないルールは、ルールの側に無理があります。「面接後に十項目を記入」は守られず、「観点三つの事実と判断を一語」なら守られます。守られないルールを見つけたら、注意するのではなく、ルールを減らすか、タイミングを既にある行動にくっつけ直します。三か月続けて守られたルールだけが、運用ルールです。受ける側がその場で使える判断としては、週次の確認で同じルールが二回続けて守られていなかったら、そのルールを減らす案を依頼側に出すこと。ルールを守らせる側ではなく、守れる形にする側に立ちます。
個人情報と権限の見直し
| 周期 | 見直すこと |
|---|---|
| 面接官が増減したとき | 権限の追加と削除。辞めた面接官の権限が残っていないか |
| 案件の開始と終了 | 副業の担当者のアカウントの発行と停止 |
| 保管の期限(依頼側の決まり) | 期限を過ぎた候補者の記録の扱い。ATSの設定で自動にできるか |
| 四半期に一度程度 | 誰が何を見られるかの一覧を、依頼側の決まりと照らす |
権限の見直しは、依頼側の人事が行い、担当者は「見直しの周期と項目」をルールに書くまでです。ATSの外に出した情報(ダウンロードしたファイル、メールの添付)の扱いは、依頼側の決まりに従います。個人情報の扱いに法令が関わる場合は、個別の判断は専門家にご確認ください。扱いは個人情報の扱いに、アカウントの扱いはアカウント管理のしかたに書いています。
担当者が替わっても回る形
| 残すもの | 置き場所 |
|---|---|
| 運用ルールの一枚 | ATSの中(お知らせや固定のメモの機能があれば)か、依頼側の共有の場所 |
| 段ごとの三行 | 面接官に渡した一枚と同じ場所 |
| 週次の確認の手順 | 「一覧を段階ごと・最終更新日の古い順に並べる」の一行 |
| ルールの変更の履歴 | いつ、何を、なぜ変えたか |
担当者の頭の中にだけあるルールは、担当者が替わると消えます。一枚と三行と一行を、依頼側の場所に置きます。引き継ぎの形は引き継ぎ資料の残し方に書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が操作の説明書を求める | 説明書は要らないと伝え、五つの一枚を先に作る。操作はATSのヘルプで足りる |
| 面接官が段階を勝手に進める | 「段階を進めるのは人事」を三行に書き、権限で進められない設定にできれば設定 |
| 更新が止まる | タイミングを既にある行動にくっつけ直す。ルールを減らす |
| 重複が溜まる | まとめる担当を一人に決める。連携の設定を見直す |
| 候補者の情報がATSの外に出ている | 「外に出さない」のルールと、出す場合の許可と記録を明記。依頼側の決まりに従う |
| 担当者が替わったら止まった | 一枚と三行を依頼側の場所に。頭の中に置かない |
まとめ
- 説明書は読まれない。運用ルールは誰が・いつ・何を更新し・何を書き・何を外に出さないかの一枚
- 更新のタイミングは「随時」にせず、既にある行動の直後にくっつける
- 面接官には自分の段の三行だけ。全員に全部を渡さない
- 週次で更新の止まりを確かめる。人を責めず、ルールの見直しの材料に
- 守られないルールは減らす。三か月守られたものだけが運用ルール
- 重複と個人情報の扱いは依頼側の決まり。担当者は「人事に知らせる」までをルールに。個別の判断は専門家にご確認ください
- 一枚と三行を依頼側の場所に置き、担当者が替わっても回る形に
よくある質問
依頼側の人事が一人しかおらず、週次の確認の時間がありません
週次の確認を副業の担当者の稼働に含めます。「一覧を段階ごと・最終更新日の古い順に並べて、止まっている候補者を人事に一行で知らせる」だけなら、短い稼働で済みます。見つけた止まりに対応するのは依頼側ですが、見つける役割は担当者が担えます。担当者も動けない週は、確認を飛ばすのではなく、依頼側に「今週は確認できない」と先に伝えます。
面接官が「ATSに入力する時間が無い」と言います
入力の量を減らします。「観点三つの事実を一行ずつ、判断を一語」で足ります。それも難しいなら、面接の直後に口頭で人事に伝え、人事が入力する形にします。入力の担当を面接官から人事に移すことは、ルールの変更として一枚に書きます。面接官の負担を減らすことと、記録が残ることの両方を満たす形を探します。評価シートの長さは評価シートを作るに書いています。
ルールを作ったのに、依頼側が「もっと細かく決めてほしい」と言います
細かくすると守られなくなる構造を伝えます。「五つの一枚で三か月回してみて、守られているものと守られていないものを見てから、足すか減らすかを決めましょう」と、期限を置きます。依頼側が求める細かさの多くは、「例外のときどうするか」で、例外は「人事に知らせる」の一行で足ります。例外のルールを増やすと、本則が読まれなくなります。