人事副業 / 採用・人事の実務

KPIを設計する|ファネルの一枚から「動かせる三つ」を選び、目標は依頼側の記録で後から置く型

公開 2026-09-22

依頼側と「KPIを決めましょう」となると、「今期の採用人数」が置かれ、月の途中で「達成できそうか」と聞かれても、担当者には答えようがありません。採用人数は結果で、途中で動かせる数字ではないからです。KPIの設計は、目標を決めることではなく、「結果の一つ手前にある、動かせる数字」を選び、それを依頼側の記録で測れる形にすることです。結論を先に書くと、採用のKPIは、ファネルの一枚から「担当者が動かせる・依頼側の記録で測れる・一つ手前の段を見ている」の三つの基準で三つまで選び、目標の水準は依頼側の過去の記録から後で置き、外部の数値を持ち込まず、見るだけの指標と分け、月次で見直します。KPIの考え方の全体はKPIを設計する(働き方)に、会社側から見た置き方は採用KPIに何を置くべきかに、ファネルの一枚は採用ファネルを可視化するに書いています。ここでは、ファネルからKPIを選ぶ手順に絞ります。

「採用人数」だけでは途中の判断ができない

KPIが採用人数だけだと起きること
月の途中で進捗が分からない期末に「未達」と分かるだけ
何を直せばよいか分からない応募を増やすのか、面接を速くするのか、判断できない
担当者が動かせない採用人数は依頼側の最終の判断と候補者の意思で決まる
未達の理由が「市場」になる直す場所が見つからない

採用人数は「見る指標」として残しますが、KPIにはしません。KPIは、採用人数の一つ手前の、動かせる数字に置きます。

ファネルの一枚から選ぶ

ファネルの一枚(段階×数・日数・理由)があれば、KPIの候補はそこにあります。一枚が無ければ、先に作ります。

ファネルの段KPIの候補動かす手段
応募・返信一定の期間の応募の数、スカウトの返信の数求人票、タイトル、スカウト文面、媒体
書類・一次一次に進んだ数、書類から一次までの日数必須の言葉、書類の見極めの基準、日程の枠
面接の各段次の段に進むまでの日数、面接後の評価シートの記入率(記録の揃い)枠の預かり、確定の即日、運用ルール
内定内定を出すまでの日数、内定後の接点の数段の数、決める人、接点の設計
入社内定から入社の数(辞退の数)迷いへの答え、接点

候補は段ごとに複数ありますが、選ぶのは三つまでです。詰まりの段に近い候補から選びます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、KPIの設計で最も差がつくのは、「担当者が動かせる数字」だけをKPIにできるかどうかです。受ける側は、依頼側の期待に応えようとして、「内定の数」「入社の数」をKPIに置きます。ただ、内定は決める人が決め、入社は候補者が決めます。担当者が動かせるのは、その手前の「一次に進んだ数」「日程が確定するまでの日数」「返信の数」です。動かせない数字をKPIにすると、未達のときに担当者が説明できず、依頼側との信頼が落ちます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「担当者に置いているKPIは、担当者が動かせる数字ですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、KPIの候補ごとに「これを動かす手段を自分が持っているか」を一行書くこと。書けない候補は、「見る指標」に移します。

選ぶ基準の三つ

基準問い外れる例
担当者が動かせるこの数字を動かす手段(求人票、文面、日程の枠、基準)を、自分の業務範囲で持っているか内定の数(決める人が決める)、入社の数(候補者が決める)
依頼側の記録で測れる一覧の列から数えられるか。新しい記録を増やさずに済むか「候補者の満足度」(記録が無い)、「面接の質」(測れない)
一つ手前の段を見ている詰まりの段の、一つ手前の数字か詰まりが二次なのに応募の数(遠すぎる)

三つを満たす候補が、たいてい三つ以内に絞れます。絞れないなら、詰まりの段が決まっていません。ファネルの読み方に戻ります。

目標の水準は後から、依頼側の記録で

やらないことやること
「返信率は一般に〇%」と外部の数値を置く依頼側の過去の記録(先月、前期)から、いまの水準を出す
最初の月に目標を決める最初の月は「測る」だけ。二か月目に、先月の水準を基準に置く
目標を担当者が決める水準は担当者が出し、目標は依頼側が決める
高い目標で意欲を出す届かない目標は、二か月目に形だけになる

外部の数値は、依頼側の職種・規模・媒体と合わず、持ち込むと基準が狂います。無人で確認できない数値を、担当者は持ち込みません。目標の置き方は、「先月の水準を、今月はこの手当てで、この方向に動かす」という形にし、数値の断定を避けます。数字の扱いは数字で語るに書いています。

KPIと「見るだけの指標」を分ける

種類中身扱い
KPI(三つまで)動かせる・測れる・一つ手前の数字毎週見る。手当てと結びつける
見るだけの指標採用人数、内定の数、入社の数、全体の日数月次で見る。動かす手段は持たないが、KPIが効いたかの結果として
記録の揃い評価シートの記入率、最終更新日の埋まりKPIの土台。埋まっていなければKPIが測れない

三つに分けて一枚にします。依頼側が「採用人数もKPIに」と言うなら、「見る指標として毎月並べます。動かす数字はこの三つです」と、役割を分けて置きます。合意の形はKPIの合意のしかたに書いています。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「KPIは一度決めたら期の終わりまで変えない」というものです。実際には、詰まりの段は手当てをすると動きます。一次の日数が詰まりで、枠の預かりで直ったら、次の詰まりは別の段に移り、KPIもそこに移ります。KPIを固定すると、直った段の数字を見続けて、新しい詰まりを見逃します。月次でファネルの一枚を更新し、詰まりの段が動いたらKPIを入れ替える。入れ替えの履歴を残せば、期の終わりに「何を直したか」が並びます。受ける側がその場で使える判断としては、KPIの一枚に「このKPIを置いた理由(詰まりの段)」と「置いた日」を書くこと。理由が消えたら、KPIも入れ替えます。

達成しなかったときの読み方

読み方見分ける問い次にすること
KPIの選び方の問題動かせない数字を置いていなかったか。詰まりの段とずれていなかったかKPIを入れ替える
手当ての問題KPIを動かす手段を実行したか。実行したが効かなかったか実行していなければ稼働と担当の見直し。効かなければ次の手当て
記録の問題数字が正しく記録されていたか運用ルールに戻る
外の要因市場、時期、依頼側の方針の変化KPIの水準を見直す。ただし「市場のせい」は上の三つを確かめた後

未達を「担当者の力不足」にも「市場のせい」にもせず、四つのどれかに分けます。分けた結果を依頼側に渡し、次の月のKPIと手当てを一緒に決めます。

KPIを契約の成果条件にするときの線

置いてよい置かない
担当者が動かせる数字(返信の数、一次に進んだ数、日数)の「測ること」と「手当てを実行すること」内定の数、入社の数、定着率(担当者が動かせない)
記録の揃い(週次の確認を行うこと)「〇%以上」の水準の保証

成果条件に動かせない数字を置くと、担当者は自分で決められないことに責任を持つことになり、依頼側との関係が崩れます。成果報酬の形は、職業紹介に関わる法令の整理にも関わるため、契約の形は依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。契約の範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
依頼側が採用人数だけをKPIにしたがる見る指標として残し、動かす数字を三つ添える。役割を分けて説明する
KPIが五つ以上になる三つに絞る。残りは見る指標に
目標の水準を最初の月に求められる「最初の月は測る」と伝え、二か月目に先月の記録から置く
外部の数値を依頼側が持ってくる「御社の記録と条件が違うので、御社の先月を基準にします」
KPIが形だけになる置いた理由(詰まりの段)が消えていないか。消えていれば入れ替え
未達で担当者が責められる四つの読み方で分ける。動かせない数字を置いていたなら、KPIの選び直し

まとめ

よくある質問

依頼側に過去の記録が無く、水準を置けません

最初の月は測るだけにします。「今月の数字が、来月の基準になります」と伝えます。記録が無い状態で目標を置くと、根拠の無い数字に責任を持つことになります。記録が無いこと自体が、依頼側の採用の課題なので、一覧の運用ルールとファネルの一枚を先に作る提案をします。一か月分の記録があれば、水準は置けます。

スカウトの返信の数をKPIにしましたが、文面を変えても動きません

返信の数を動かす手段は、文面だけではありません。対象の層(検索条件)、送る数、送信の時期、件名。手当てを一つずつ試し、文面を検証するの型で記録します。全部試しても動かないなら、返信の数は「動かせない」に近い数字で、KPIとしては一つ手前(送った数、対象の層の件数)に下げるか、詰まりの段が違う可能性を見ます。返信ゼロが続くときの順番は返信ゼロが続くときに疑う順番に書いています。

依頼側から「KPIを達成したら報酬を上乗せする」と言われました

動かせる数字(返信の数、一次に進んだ数、日数)で、依頼側の記録で測れるものなら、条件として置けることがあります。内定や入社の数を条件にすることは、担当者が動かせないことと、職業紹介に関わる法令の整理があることから、担当者の側からは受けません。契約の形は依頼側の決まりと専門家の確認に従います。報酬の形の考え方は見積もりの出し方に書いています。