人事副業 / 採用・人事の実務
引き継ぎ資料を作る|「やったことの記録」ではなく、「翌日に動く人が困らない四つ(型・状態・未完了・連絡先)」を一枚にする型
案件の終わりに「引き継ぎ資料を作ってください」と言われ、これまでやったことの履歴を時系列で書いて渡すと、翌日に動く人は「で、いま何が動いていて、私は何をすればよいのか」が分からず、担当者に連絡してきます。引き継ぎ資料は、過去の記録ではなく、翌日に動く人が困らないための一枚です。結論を先に書くと、引き継ぎ資料は、型(使っている様式と基準)・状態(いま動いている候補者と案件の段階)・未完了(止まっていることと期限と判断待ち)・連絡先(依頼側の窓口と外部の窓口)の四つを一枚にし、状態は候補者リストとATSの一覧をそのまま使って書き写さず、未完了は「誰が・いつまでに・何を」で、担当者の手元の情報は消して「消した」と書き、判断の所在を残し、引き継ぎの相手が読んで一度回せるかで確かめます。引き継ぎの考え方の全体は引き継ぎ資料の残し方に、いつ辞めても困らない状態はいつ辞めても困らない状態を作るに、会社側から見た項目は引き継ぎ資料に含める内容に書いています。ここでは、一枚を作る型に絞ります。
履歴を渡しても翌日に困る理由
| 履歴の形 | 翌日に動く人に起きること |
|---|---|
| 時系列の作業の一覧 | 読む時間が無い。「いま」が分からない |
| 担当者の考えや感想 | 判断の根拠は分かっても、次の一歩が分からない |
| 候補者の情報を書き写した一覧 | ATSやリストと二重になり、どちらが正か分からない |
| 未完了が「〇〇を調整中」 | 誰が、いつまでに、何を、が無く、止まる |
| 連絡先が無い | 紹介会社や媒体の担当者に連絡できない |
| 担当者の手元の情報がどうなったか不明 | 個人情報が残っているか分からず、依頼側が不安になる |
翌日に動く人が知りたいのは、「型はどこにあるか」「いま何が動いているか」「何が止まっているか」「誰に連絡するか」の四つです。
四つの部
| 部 | 中身 | 形 |
|---|---|---|
| 型 | 使っている様式(候補者リスト、評価シート、依頼書、文面の型、報告の一枚)と基準の一行。置き場所 | 一覧と、置き場所へのリンク。中身は写さない |
| 状態 | いま動いている候補者と案件の段階。候補者リストとATSの一覧が正 | 「一覧を最終更新日の古い順に見る」の一行と、一覧の場所。書き写さない |
| 未完了 | 止まっていること。判断待ち。期限 | 「誰が・いつまでに・何を」の表 |
| 連絡先 | 依頼側の窓口(人事、現場の責任者、決める人)。外部の窓口(紹介会社、媒体、専門家)。担当者への連絡の可否と期間 | 表。個人の連絡先は依頼側の決まりで |
四つで一枚です。マニュアル(マニュアルを作る)があれば、「型」の部はマニュアルへのリンクで足ります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、引き継ぎで最も差がつくのは、「状態を書き写さない」を守れるかです。受ける側は、丁寧にしようとして、いま動いている候補者の一覧を引き継ぎ資料に書き写します。すると、翌日に候補者の段階が動いた瞬間に、引き継ぎ資料と一覧がずれ、翌日に動く人はどちらを信じるか迷います。「状態は一覧が正。引き継ぎ資料には、一覧の場所と見方だけを書く」。これで、引き継ぎ資料は古くならず、一覧が更新され続けます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「引き継ぎ資料に、候補者の状態が書き写されていませんか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、「状態」の部に候補者の番号を一つでも書きたくなったら、その候補者について書くべきことは「未完了」の部に「誰が・いつまでに・何を」として書き、状態は一覧に任せること。
未完了の書き方
| 列 | 中身 | 例の形 |
|---|---|---|
| 何が止まっているか | 一行。候補者は番号で | 「番号〇〇の日程が未確定」「依頼書の版の更新が未送付」 |
| 誰が | 次に動く人。依頼側の誰か | 「人事の〇〇」 |
| いつまでに | 期限。候補者が待っている場合は候補者への約束の日 | 「〇日までに」 |
| 判断待ちなら、誰の判断か | 決める人 | 「条件の提示は経営者の判断待ち」 |
| 放置したら何が起きるか | 一行 | 「候補者が他社に流れる」「紹介会社の推薦が止まる」 |
未完了は、多くて十行。多いなら、引き継ぎの前に減らします。「放置したら何が起きるか」があると、翌日に動く人が優先を付けられます。
担当者の手元の情報を消して「消した」と書く
| 手元にあったもの | 扱い | 引き継ぎ資料に書くこと |
|---|---|---|
| 候補者リストや記録の写し | 依頼側の環境が正であることを確かめてから消す | 「手元の写しは〇日に消した」 |
| 文面の下書き | 型として依頼側の場所に置いたものを正とし、手元を消す | 同上 |
| アカウント | 依頼側が停止。担当者は停止を確認 | 「アカウントは〇日に依頼側が停止」 |
| 聞き取りのメモ(個人の事情を含む) | 一枚に傾向だけを残し、メモは消す | 「聞き取りのメモは消した。傾向は〇〇の一枚に」 |
| 持ち出せるもの | 型の考え方(構造)だけ | — |
「消した」と書くことで、依頼側は個人情報が残っていない安心を持て、担当者は後で「持っているのでは」と疑われずに済みます。扱いは個人情報の扱いとアカウント管理のしかたに書いています。
判断の所在を残す
| 残すこと | 中身 |
|---|---|
| 会社が決めたこと | 要件の必須、条件の幅、優先順位、媒体の選定。「〇日に〇〇が決めた」 |
| 担当者が決めてよかったこと | 優先度、文面の一段落目、日程の候補。「担当者の範囲」 |
| 保留になっていること | 決まっていない判断。誰が決めるか |
| 専門家に確認した(する)こと | 確認の窓口と、確認済みか未確認か |
判断の所在が無いと、翌日に動く人が「前の担当者が決めたのか、会社が決めたのか」で迷い、決まっていたことを決め直します。判断の履歴は、依頼側の記録(PROGRESSやレポートの一枚)にあれば、そこへのリンクで足ります。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「引き継ぎ資料は、案件の終わりに作るもの」というものです。実際には、四つのうち「型」と「連絡先」は案件の最初に、「状態」は一覧の運用として、「未完了」は週次の報告として、案件の途中で既にあるべきものです。終わりに作るのは、それらを一枚にまとめ、手元の情報を消して「消した」と書くことだけです。最初から四つが依頼側の場所にあれば、担当者が急に続けられなくなっても、依頼側は翌日に動けます。受ける側がその場で使える判断としては、案件の最初の週に、四つの部の空の一枚を依頼側の場所に置き、週次の報告の「止まっていること」を「未完了」の部に書く形にすること。
引き継ぎの相手が読んで一度回せるか
| 確かめ方 | 中身 |
|---|---|
| 相手に一枚だけを渡す | 口頭の説明をせずに、一枚を読んでもらう |
| 「明日、最初に何をしますか」を聞く | 未完了の一行目が言えれば、回る |
| 詰まった箇所を直す | 「型はどこ」「一覧はどこ」「誰に聞く」で詰まったら、その部を直す |
| 口頭の説明は最後に | 一枚で回らない部分だけを口頭で補い、補った内容を一枚に足す |
口頭の説明から始めると、説明した内容が一枚に無く、相手が忘れた時点で止まります。一枚で回る状態を作ってから、口頭で補います。
急に続けられなくなったときの最小の一枚
本業の都合で、引き継ぎの時間が取れないことがあります。そのときの最小の一枚は、「未完了(誰が・いつまでに・何を)」と「連絡先」と「手元の情報を消したこと」の三つです。型と状態は、依頼側の場所に既にあれば省けます。最小の一枚を、案件の最初から「もしもの一枚」として依頼側の場所に置いておくと、急な終わりでも依頼側が困りません。続けられなくなる前の準備はいつ辞めても困らない状態を作るに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 履歴を書いてしまった | 四つの部に振り分け、履歴は依頼側の記録へのリンクに |
| 状態を書き写した | 消して、一覧の場所と見方に |
| 未完了が「調整中」で終わっている | 「誰が・いつまでに・何を」と「放置したら」を足す |
| 手元の情報が残っている | 依頼側の環境が正であることを確かめて消し、「消した」と書く |
| 判断の所在が無い | 会社が決めたこと、担当者の範囲、保留を分けて書く |
| 相手が読んで動けない | 「明日、最初に何をしますか」で詰まった部を直す |
まとめ
- 履歴を渡しても翌日に困る。型・状態・未完了・連絡先の四つを一枚に
- 状態は書き写さない。候補者リストとATSの一覧が正。場所と見方だけ
- 未完了は「誰が・いつまでに・何を」と「放置したら何が起きるか」。十行まで
- 手元の情報は消して「消した」と書く。持ち出せるのは構造だけ
- 判断の所在(会社が決めたこと・担当者の範囲・保留・専門家の確認)を残す
- 相手が一枚だけで「明日、最初に何をするか」を言えるかで確かめる
- 四つは案件の最初から依頼側の場所に。急な終わりの最小の一枚も先に置く
よくある質問
依頼側から「引き継ぎのために、しばらく連絡できる状態でいてほしい」と言われました
期間と範囲を決めて、契約に書きます。「一か月、週に一度、一枚に無いことの質問に答える」のような形です。期間と範囲が無いと、無償の対応が続きます。連絡の可否と期間は、引き継ぎ資料の「連絡先」の部に書きます。連絡が来ないように、一枚を「相手が読んで回る」状態にしておくことが先です。契約の形は業務範囲を書面で固めるに書いています。
後任が決まっておらず、誰に引き継げばよいか分かりません
依頼側の人事の窓口に、四つの一枚を渡します。後任が決まっていなくても、一枚が依頼側の場所にあれば、誰が引き継いでも回ります。「引き継ぎの相手が読んで回るか」の確かめは、人事の窓口の人に「明日、最初に何をしますか」を聞く形で行います。後任が決まったら、依頼側から一枚を渡してもらえば足ります。
引き継ぎ資料に、依頼側の課題や改善の提案を書いてよいですか
四つの一枚とは別の一枚にします。「未完了」に混ぜると、翌日に動く人が「やらなければならないこと」と「提案」を区別できません。提案は、「直す場所を一つ」に絞った一枚(提案のまとめ方)として、依頼側が判断する材料に留めます。引き継ぎの一枚は、翌日に回るためのものだけにします。