人事副業 / 採用・人事の実務
社内の採用担当を育てる|「教える」ではなく、「型で回させ、記録で振り返り、判断の場面で問う」を三か月ごとに一段ずつ上げる型
内製化の支援で、依頼側の社内の担当を育てる場面があります。担当者は自分がやってきたことを「隣で見せる」か「説明する」かで教えようとしますが、見せても説明しても、担当は自分で回せるようにはなりません。育つのは、本人が型で回し、自分の記録を読み、判断の場面で問われたときです。結論を先に書くと、社内の採用担当を育てるのは、型で回す・記録で振り返る・境目を判断する・型を直すの四段を三か月ごとに一段ずつ上げることで、最初の三か月は型どおりに回すことだけを求め、振り返りは担当者が評価せず本人が記録を読む形にし、判断の場面では「どう決めますか」と問って答えを渡さず、判断は経営者に置いて担当を孤立させず、育つ目印を「担当者に聞かずに決めたこと」の数で見ます。内製化の全体は内製化を支援するに、会社側から見た育て方は社内の採用担当を育てるに、スカウトの担当に絞った型はスカウト担当者の育て方に書いています。ここでは、副業の担当者が育てる側に立つ型に絞ります。
「隣で見せる」だけで育たない理由
| 教え方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 隣で担当者がやるのを見せる | 見ているだけで、本人は動いていない |
| 全部を説明する | 覚えられない。説明された順に動けない |
| 担当者が判断して、本人が作業 | 判断の仕方を学ばない。担当者に聞けば済む |
| 「センス」に期待する | 育つ人と育たない人が分かれ、育たない人が責められる |
| 一度に全工程 | どれも中途半端 |
育つ順番は、「型で回せる」→「自分の記録を読める」→「型に無い場面で判断できる」→「型を直せる」です。前の段が無いまま次の段を求めると、本人は自信を失います。
四段を三か月ごとに
| 段 | 本人がすること | 担当者がすること | 期間の考え方 |
|---|---|---|---|
| 一:型で回す | 型(候補者リスト、評価シート、文面の型、日程の型)どおりに回す。判断はしない | 型を一枚で渡す。回っているかを週次で見る。判断は担当者か経営者 | 最初の三か月 |
| 二:記録で振り返る | 自分の記録(送った数、返信、面接の記録)を月次で読み、「型のどこが使いにくいか」を言う | 振り返りの場を作り、評価せず問う | 次の三か月 |
| 三:境目を判断する | 型に無い場面(この人に送るか、この条件で進めるか)で、自分で決める | 「どう決めますか」と問い、答えを渡さない。決めた後に「なぜ」を聞く | 次の三か月 |
| 四:型を直す | 記録と判断から、型の一行を自分で直す | 直した型を確かめ、依頼側の場所に置く | 次の三か月 |
三か月ごとに一段は目安で、本人の状況で前後します。段を飛ばさないことが要点です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、育成で最も差がつくのは、「最初の三か月は型どおりに回すことだけを求める」を守れるかです。受ける側は、本人に早く判断してほしくて、最初から「どう思う?」と聞きます。型で回した経験が無い本人は、答えられず、「自分には向いていない」と感じます。最初の三か月は、型どおりに回して記録が揃うことだけを目標にし、判断は担当者と経営者が行う。三か月で記録が揃えば、本人は自分の記録を読める材料を持ち、二段目に進めます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「社内の担当に、最初から判断を求めていませんか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、育成の一枚の一段目に「この期間に求めること:型どおりに回す。求めないこと:判断」と書き、依頼側の経営者にも見せること。
振り返りは担当者が評価せず、本人が記録を読む
| 担当者がやらないこと | 担当者がやること |
|---|---|
| 「ここが悪い」と指摘する | 「この記録を見て、気づいたことは」と問う |
| 本人の力量を点数で評価する | 記録の揃い(型どおりか)を見る |
| 担当者のやり方と比べる | 型と比べる。「型のどこが使いにくかったか」 |
| 振り返りの内容を経営者に個別に報告する | 「型の直すところ」として傾向を報告 |
振り返りの型は、面接官トレーニングを行うの「記録の振り返り」と同じです。本人が自分の記録を読んで気づいたことは残り、担当者が指摘したことは残りません。
判断の場面で問い、答えを渡さない
| 本人の問い | 担当者の返し |
|---|---|
| 「この人に送ってよいですか」 | 「要件の必須と照らすと、どうですか」 |
| 「この条件で進めてよいですか」 | 「条件を決めるのは誰でしたか。その人に、どう伝えますか」 |
| 「面接官が評価シートを書いてくれません」 | 「運用ルールの一枚では、誰がいつ書くことになっていますか。守られていないなら、どこを軽くしますか」 |
| 「返信が来ません」 | 「返信ゼロのときに疑う順番の一枚を、どこまで確かめましたか」 |
答えを渡すと、本人は次も聞きます。問いを返すと、本人は型と記録に戻り、自分で決めます。決めた後に「なぜそう決めたか」を聞き、記録に残してもらいます。判断の型は、これまでの記事の一枚(要件の型、返信ゼロが続くときに疑う順番)にあり、担当者は「どの一枚を見るか」を示すまでです。
経営者との関係
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 判断は経営者 | 要件、条件、合否、優先は経営者か決める人。担当に押しつけない |
| 担当を孤立させない | 担当が経営者に直接聞ける場(週次の短い確認)を置く。担当者を経由しない形に |
| 経営者に育成の一枚を見せる | 「いまの段」と「求めること・求めないこと」を共有。経営者が段を飛ばした要求をしないように |
| 担当の評価 | 担当者はしない。経営者が、記録の揃いと「聞かずに決めたこと」で見る |
担当が「担当者に聞けば済む」状態は、担当者が抜けたら止まります。経営者と担当の間に直接の場を作り、担当者は横に立ちます。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「育っているかは、担当者の感覚で分かる」というものです。感覚で「育った」と言うと、経営者には伝わらず、担当者が抜けた後に「やっぱり回らない」となります。育つ目印は、「担当者に聞かずに、本人が決めたことの数」で見えます。月次で、本人が「今月、自分で決めたこと」を三つ挙げられれば、三段目に入っています。挙げられなければ、二段目です。受ける側がその場で使える判断としては、月次の振り返りの最後に「今月、私に聞かずに決めたことは」と聞き、その数を育成の一枚に書くこと。数が増えていれば育っていて、増えていなければ段を戻します。
担当者が抜けた後の相談相手
| 相談の内容 | 相談先 |
|---|---|
| 型の使い方、記録の読み方 | 型の一枚とマニュアル。マニュアルを作る |
| 判断(要件、条件、合否) | 経営者か決める人 |
| 法令や制度 | 専門家(社労士等)。窓口を一枚に |
| 型に無い新しい場面 | 月次の確認の契約があれば担当者。無ければ、同じ立場の人(外部の勉強会、他社の採用担当) |
担当者が抜けた後に、本人が「誰に聞けばよいか」を持っていれば、止まりません。相談先の一覧を、引き継ぎの一枚の「連絡先」に含めます。
育成の負担を稼働に入れる
育てる仕事は、回す仕事より時間がかかります。「一緒にやる」段では、担当者が一人で回す時間の倍近くかかることもあります。育成を契約に含めるときは、四段の期間と、各段の担当者の稼働を見積もりに入れます。含めずに引き受けると、稼働が足りず、「隣で見せる」に戻ります。見積もりの型は見積もりの出し方に書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 最初から判断を求めている | 一段目に戻す。「型どおりに回す」だけを三か月 |
| 本人が担当者に聞き続ける | 問いを返す。「どの一枚を見ますか」 |
| 振り返りで本人が黙る | 担当者が評価していないか確かめる。「気づいたことは」の問いだけに |
| 経営者が担当に判断を押しつける | 育成の一枚を見せ、判断は経営者と確認 |
| 本人が「向いていない」と言う | 段を戻す。型で回せていることを記録で示す |
| 担当者が抜けた後に止まった | 相談先の一覧と、型の一枚が依頼側の場所にあるかを確かめる |
まとめ
- 「隣で見せる」「説明する」では育たない。型で回し、記録を読み、判断で問われることで育つ
- 四段は型で回す→記録で振り返る→境目を判断する→型を直す。三か月ごとに一段。飛ばさない
- 最初の三か月は型どおりに回すことだけ。判断を求めない
- 振り返りは担当者が評価せず、本人が記録を読む
- 判断の場面で「どう決めますか」と問い、答えを渡さない。決めた後に「なぜ」を聞く
- 判断は経営者。担当と経営者の直接の場を作り、担当者を経由しない
- 育つ目印は「担当者に聞かずに決めたこと」の数
- 抜けた後の相談先の一覧を残す。育成の負担を稼働に入れる
よくある質問
依頼側の担当が、採用の経験がまったく無い人です
一段目(型で回す)から始めれば、経験は要りません。型の一枚があれば、日程調整と連絡と記録の更新は、初日から回せます。経験の無い人ほど、型どおりに回すことに抵抗が無く、記録が揃います。経験のある人のほうが、「自分のやり方」で型を崩し、記録が揃わないことがあります。最初の三か月で「型どおりに回せた」を本人の成功にします。
依頼側の担当が二人います。同時に育てますか
二人を同じ段で育てると、担当者の稼働が倍になり、判断の場面で二人の意見が割れます。一人を主にし、もう一人は「記録の更新」など一部の工程から始める形にします。主の担当が三段目に入ったら、もう一人を一段目から。主の担当が、もう一人に型を渡す役になれば、担当者の負担が減り、主の担当の四段目(型を直す)にもなります。
育成の途中で、依頼側から「その担当は向いていないので替えたい」と言われました
担当者は本人の力量を評価しません。「いまの段と、記録の揃い、聞かずに決めたことの数」を事実として示し、判断は依頼側です。段を飛ばして求めていた場合は、それを伝えます。替える判断になった場合、型と記録が依頼側の場所にあれば、次の担当は一段目から始められ、ゼロには戻りません。本人への伝え方は依頼側の人事の領域で、担当者は関わりません。