人事副業 / 採用・人事の実務

マニュアルを作る|「全部を書く」のではなく、「型・基準・手順・例・更新の決まり」の五つに分けて、担当者が替わった翌日に回る形にする型

公開 2026-09-22

「採用の業務をマニュアルにしてほしい」と頼まれて、応募から入社までの全工程を数十ページに書くと、完成した日に読まれ、翌月には誰も開かず、半年後には実態と合わなくなります。分厚いマニュアルは、作った人の努力の証拠にはなっても、担当者が替わった翌日に業務を回す道具にはなりません。結論を先に書くと、マニュアルは、型(一枚の様式)・基準(判断の一行)・手順(順番と担当)・例(実際の記録の匿名化)・更新の決まり(誰がいつ直すか)の五つに分け、いま回っている業務の記録から起こし、一業務一枚で毎日使う画面に置き、会社が決めることを明記し、個人情報と機密を載せず、権利の扱いを契約で先に決め、三か月で使われている部分だけを残す形で作ります。会社側から見た残し方は採用マニュアルを残すに、スカウトの運用に絞った型はスカウト運用マニュアルの作り方に、権利の考え方は代行が作ったマニュアルの権利は誰のものかに書いています。ここでは、作る型に絞ります。

分厚いマニュアルが読まれない理由

分厚い形何が起きるか
全工程を文章で探せない。読む時間が無い
「〜すること」の羅列どの様式を使うか、どう判断するかが無い
例が無い抽象で終わり、初めての人が動けない
更新の決まりが無い実態が変わっても直されず、嘘になる
判断の所在が無い「マニュアルどおりにやったのに」と、会社の判断が抜ける
個人情報の例が載っている共有できない

読まれるマニュアルは、「困ったときに、一枚を開けば、次にやることが分かる」ものです。分けて、薄くします。

五つの部

中身
その業務で使う様式。候補者リスト、評価シート、依頼書、報告の一枚空の一枚。そのまま使える
基準判断の一行。「必須の○△×の付け方」「段階を進める条件」「見送りの理由の分類」一行ずつ。長くしない
手順順番と担当。「誰が、いつ、何を、次に誰へ」表。一業務一枚
実際に使った記録を、個人が特定できない形にしたもの型に記入した見本
更新の決まり誰が、いつ(月次、担当が替わったとき、実態が変わったとき)、どこを直すか一行。末尾に版と日付

五つは別々の一枚(または別々のページ)にし、手順の一枚から型と基準と例にたどれる形にします。これまでの記事で作ってきた一枚(候補者リストの作り方評価シートを作るATSの運用ルールを作る)は、そのまま「型」と「基準」と「手順」の部になります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、マニュアルで最も差がつくのは、「いま回っている業務の記録から起こす」ができるかです。受ける側は、「あるべき業務の流れ」を頭で組み立てて書きます。あるべき流れは、実態と合わず、現場は「うちはこうじゃない」で閉じます。いま実際に回っている業務の記録(候補者リスト、評価シート、依頼書、週次の報告)を並べ、「この記録を、誰が、いつ、どう更新しているか」を手順に写す。それが実態のマニュアルで、現場は自分の業務として読めます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「マニュアルは、いまの記録から起こしましたか、あるべき流れから書きましたか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、マニュアルを書く前に、いま使われている記録の一覧を作り、記録が無い業務は「マニュアルの前に記録の形を作る」と分けること。

書く順番

中身
いま使われている記録(型)の一覧を作る。無い業務は記録の形から
記録ごとに、「誰が、いつ、どう更新しているか」を現場に聞き、手順の一枚に
手順の中の「判断」を拾い、基準の一行にする。判断が現場の頭の中にあるなら、言葉にしてもらう
実際の記録から、個人が特定できない形の例を一つ
更新の決まりを一行。版と日付
担当者以外の人(依頼側の人事)に、手順の一枚だけを見て業務を一度やってもらう。詰まった箇所を直す

六が、マニュアルが回るかどうかの確かめです。担当者が「分かりやすく書けた」と思っても、他の人が動けなければ、マニュアルではありません。

一業務一枚で、毎日使う画面に置く

置き方理由
一業務一枚探せる。「日程調整」「見送りの連絡」「週次の確認」で一枚ずつ
毎日使う画面にATSの固定のメモ、共有の場所の先頭。別の場所にあると開かれない
手順の一枚から型と基準にリンク手順を読んで、そのまま型を開ける
全体の目次は一枚業務の一覧と、各一枚への入口

置き場所は依頼側の環境で、担当者の手元ではありません。置き場所はATSの運用ルールを作るの「担当者が替わっても回る形」と同じです。

判断の所在を明記する

書くこと
会社が決めること「合否は決める人が決める」「条件は人事が提示する」「見送りの連絡の文面の変更は人事の承認」
担当者が決めてよいこと「候補者リストの優先度」「文面の一段落目」「日程の候補の提示」
専門家に確認すること「表現の可否」「在留の確認」「労働条件に関わる変更」

判断の所在が無いマニュアルは、「マニュアルどおりにやった」で会社の判断が抜けます。手順の一枚の各行に「決める人」の列を置きます。法令に関わる判断は、マニュアルの中で「専門家に確認」と書き、内容を断定しません。個別の判断は専門家にご確認ください。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「マニュアルは完成させるもの」というものです。実際には、完成したマニュアルは、完成した日から実態とずれ始めます。「三か月後に、使われている部分と使われていない部分を分け、使われていない部分は消す」を、作るときに決めておく。使われていない部分は、実態と合わないか、要らないかのどちらかで、残しておくとマニュアル全体の信用が落ちます。受ける側がその場で使える判断としては、更新の決まりに「三か月後の見直しの日」と「見直しで消してよい」を書くこと。消せるマニュアルは、生き続けます。

個人情報と機密を載せない

載せない代わりに
候補者の氏名、経歴、連絡先例は番号と、経歴の記述を一般化した形
社員の評価の結果例は架空か、個人が特定できない形
依頼側の顧客名、数字、開発中のもの「〇〇社」「〇件」の形
紹介会社との契約の条件「契約に従う」と書き、条件は載せない
アカウントとパスワード載せない。アカウントの管理の一枚は別に、依頼側の管理者が

例は、実際の記録から起こすと具体になりますが、個人が特定できない形に直します。直せない例は載せません。扱いは個人情報の扱いに書いています。

権利の扱いは契約で先に

決めること中身
マニュアルは誰のものか依頼側の業務のために作ったものは、依頼側のもの。契約に書く
担当者が持ち出せるもの「型の考え方」(五つの部の構造)だけ。中身は持ち出さない
他の依頼側で使えるもの構造だけ。依頼側の記録から起こした中身は使わない
担当者が作った様式の扱い契約で決める。決めていなければ揉める

権利の考え方は代行が作ったマニュアルの権利は誰のものかに書いています。契約の条項の文言は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
依頼側が「全部を網羅して」と言う五つの部に分け、一業務一枚。網羅より「翌日に回る」を目的に
あるべき流れで書いてしまったいまの記録から起こし直す
基準が書けない現場の頭の中の判断を、「この場合はこうしている」と聞き出して一行に
例が無い実際の記録を匿名化して一つ。無ければ架空と明記
更新されない更新の決まりに、日と人と「消してよい」を
個人情報が載っている匿名化するか消す

まとめ

よくある質問

マニュアルの作成を、副業の成果物として単価に含めてよいですか

五つの部の構造の設計と、記録から起こす作業は成果物です。ただし、作ったマニュアルは依頼側のもので、担当者が持ち出したり、他の依頼側で使い回したりしません。持ち出せるのは「五つの部に分ける」という構造の考え方だけです。成果物の範囲と権利の扱いを、契約に書きます。見積もりの型は見積もりの出し方に書いています。

現場が「マニュアルどおりにやると遅くなる」と言います

手順の一枚が、実態より細かい可能性があります。現場に「実際は、どこを飛ばしていますか」と聞き、飛ばしている部分が「要らない」なら消し、「要るのに飛ばしている」なら基準の一行に理由を足します。マニュアルは現場の実態に合わせて薄くするもので、現場をマニュアルに合わせるものではありません。三か月の見直しで、使われていない部分を消します。

動画や画面の録画でマニュアルを作りたいと言われました

操作の説明は動画が向きますが、五つの部(型・基準・手順・例・更新の決まり)は文字の一枚が向きます。動画は探せず、更新しにくく、実態が変わると全部撮り直しになります。「手順の一枚は文字で、操作の部分だけ短い動画を添える」形を提案します。動画に候補者の情報や画面上の個人情報が映らないように、撮る画面を先に確かめます。