人事副業 / 採用・人事の実務

組織サーベイを設計する|「設問を増やす」のではなく、「少ない設問・匿名の確保・返して一つ決める」で回す型

公開 2026-09-22

「社員の声を聞きたいのでサーベイをやりたい」という依頼で、設問を数十個並べて実施し、結果を経営者に報告して終わると、二回目の回答率が落ちます。社員は「答えても何も変わらない」と学びます。サーベイは、聞くことではなく、「聞いて、返して、一つ直す」までが設計です。結論を先に書くと、組織サーベイの設計は、目的を一つ・設問は少なく同じものを続ける・匿名の確保と集計の単位・結果を社員に返す・一つ決めて動くの五つで組み、設問は「聞いて何を直すか」が言えるものだけにし、少人数の単位を除いて匿名を確保し、スコアの高低で断定せず前回との変化と自由記述で読み、結果を返して一つ決める場を置き、回答のデータは担当者が持たない形で回します。案件として受ける形は組織サーベイの設計の副業の実務に、結果を施策につなぐ型はエンゲージメント施策を作るに書いています。ここでは、サーベイの設計の型に絞ります。

二回目から回答されない理由

一回目の形社員に起きること
設問が数十個途中で疲れて、適当に答える
結果が社員に返らない「答えても何も変わらない」
部署ごとの結果が上司に渡る「誰が書いたか分かる」と感じて、本音を書かない
自由記述が経営者に読まれるだけ書いたことが使われた形跡が無い
毎回設問が変わる変化が見えず、答える意味が分からない

サーベイの信頼は、「返す」と「一つ直す」で作られます。この二つが無いなら、実施しないほうが、信頼を損ねません。

設計の五つ

決めること中身
目的を一つ「何を知って、何を直すためか」。「社員の声を聞く」は目的ではない
設問は少なく、同じものを続ける十数問まで。「聞いて何を直すか」が言えるものだけ。回ごとに変えず、変化を見る
匿名の確保と集計の単位少人数の単位を集計から除く。属性の組み合わせで個人が特定されない形
結果を社員に返す全体の傾向と、決めたことを、実施から一定の期間内に全員に
一つ決めて動く結果を読んで、経営者と管理職で「直すこと」を一つ決め、三か月動く

五つを一枚にして、依頼側と合意してから設問を作ります。設問から作り始めると、数十個になります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、サーベイの設計で最も差がつくのは、「設問ごとに『聞いて何を直すか』が言えるか」で設問を削れるかです。受ける側は、「せっかく聞くのだから」と、聞きたいことを全部入れます。ただ、「上司との関係は良好か」と聞いて、結果が低かったときに何を直すかが決まっていなければ、聞いた意味がありません。「この設問が低かったら、〇〇を直す」と、設問ごとに一行書けるものだけを残すと、十数問に収まります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「サーベイの設問は、低かったときに何を直すかが決まっていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、設問の一覧に「低かったら直すこと」の列を作り、空欄の設問を消すこと。

設問の作り方

設問の型例の形低かったら直すこと
仕事の明確さ「自分に期待されていることが分かっている」等級の期待、目標管理
上司との接点「上司と、仕事の進め方について話す機会がある」1on1の設計
判断の余地「自分の判断で進められる範囲が分かっている」役割の定義、権限
情報の共有「会社や部門の方針が伝わっている」方針の一枚、共有の場
続ける意向「この会社で、この先も働きたいと思う」結果の指標。直すのは他の設問から
自由記述「会社が直すべきことを一つ挙げるなら」一つ決める場の材料

設問の文は、依頼側の言葉で、短く、一つのことだけを聞きます。「上司は公平で、相談しやすい」のように二つを一つに混ぜません。回答の形式(段階の数)は依頼側が決め、回ごとに変えません。外部の指標や標準の設問を持ち込む場合は、「依頼側で直せることに対応しているか」で選び、持ち込んだ指標の解釈を担当者が断定しません。

匿名の確保

決めること中身
集計の単位部門や職種。単位の人数が少ない場合は、上の単位にまとめる
属性の組み合わせ「部門×勤続×役職」のように組み合わせると個人が特定される。組み合わせを制限する
自由記述文面から個人が分かることがある。返すときは要約か、同意の範囲で。原文を上司に渡さない
回答のデータ依頼側の環境で、人事の限られた人だけが扱う。担当者は集計の結果だけを受け取る
案内匿名の確保の方法を、実施の案内に書く。社員が確かめられる形で

匿名が確保されていないと感じた社員は、本音を書かず、次回は答えません。少人数の単位を除く基準(何人未満は集計しない)は依頼側の決まりで決め、案内に書きます。個人情報の扱いに関わる点は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。扱いは個人情報の扱いに書いています。

読み方:高低で断定せず、変化と自由記述で

やらないことやること
「スコアが〇点だから悪い」「前回より下がった設問はどれか」「部門で差が大きい設問はどれか」
外部の平均と比べる依頼側の前回と比べる。外部の数値は条件が違う
一回の結果で断定二回目以降の変化で読む。一回目は基準
設問ごとにばらばらに読む「低い設問」と「自由記述の内容」を突き合わせ、一つの課題に絞る
部門の順位を出す上司を責める材料になる。変化と課題の特定だけ

読み方は採用データを分析するの「問いを一つ立てて記録で答える」と同じです。数字は件数と変化のまま並べ、割合や平均で断定しません。数字の伝え方は数字で語るに書いています。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「サーベイの結果は経営者に報告するもの」というものです。実際には、結果を最初に読むのは経営者でよいのですが、社員に返さなければ、社員は「答えても何も変わらない」と学びます。「全体の傾向を全員に返し、決めた一つを伝え、三か月後に『こう動いた』を伝える」までが設計で、返す日を実施の前に決めておきます。受ける側がその場で使える判断としては、実施の案内に「結果は〇月〇日に全員にお返しします」と日付を入れること。日付があれば、返すことが約束になり、経営者も「一つ決める」を後回しにできません。

返して一つ決める

中身誰が
集計の結果(傾向、前回との変化、部門の差が大きい設問)を一枚に担当者(集計の結果を受けて)
経営者と管理職で、「直すこと」を一つ決める場依頼側。担当者は進行と一枚
全員に、傾向と決めた一つを返す依頼側
三か月、決めた一つを動く依頼側
次の回で、変化を見る同じ設問で

「一つ決める」は、課題を構造化すると同じで、複数を同時に直すとどれが効いたか分かりません。決めた一つを動かす型はエンゲージメント施策を作るに書いています。

回答のデータを担当者が持たない

理由
回答の生データを担当者の端末に置かない匿名でも、属性の組み合わせで個人が分かることがある
集計は依頼側の環境で担当者は集計の結果(単位ごとの傾向)だけを受け取る
自由記述の原文を担当者が読む場合依頼側の決まりの範囲で。要約だけを一枚に。原文を残さない
案件の終了時手元の集計の結果も消す。型だけを残す

外部のサーベイのツールを使う場合、データの保管と閲覧の権限はツールと依頼側の契約に従い、担当者は権限を最小にします。ツールの選定と費用は依頼側の判断です。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
設問が数十個「低かったら直すこと」が書けない設問を消す
回答率が低い匿名の確保と、前回の結果が返されたかを確かめる。設問を減らす
結果が経営者で止まる返す日を案内に書く。一つ決める場を実施の前に予定に入れる
部門の順位が出て上司が責められる順位を出さない。変化と課題の特定だけ
外部の平均と比べたがる依頼側の前回と比べる。外部は条件が違う
回答のデータが担当者の手元に依頼側の環境に戻し、手元を消す

まとめ

よくある質問

依頼側が「外部のサーベイのサービスを使いたい」と言います

使って構いませんが、五つの設計は同じです。サービスの設問が多い場合は、「依頼側で直せることに対応する設問」だけを使う形にできるかを確かめます。サービスが出す指標(外部との比較、スコアの解釈)は、依頼側の条件と合わないことがあるので、「前回との変化」を主に読み、外部との比較は参考に留めます。サービスの選定・費用・データの保管の契約は依頼側の判断です。

社員数が少なく、匿名が確保できません

部門ごとの集計をやめ、全体だけで読みます。それでも人数が少なければ、サーベイの形ではなく、「一つ決める場」に社員が直接出る形(全員で困りごとを一つ挙げる)のほうが、匿名の問題が無く、直すことにつながります。サーベイが合う規模かどうかも、設計の判断です。

自由記述に、特定の上司への不満が書かれていました

原文を上司に渡しません。人事が読み、内容がハラスメントなど深刻な事案に関わる場合は、依頼側の決まりと専門家の確認に従って、サーベイとは別の窓口で扱います。サーベイの結果としては、「上司との接点」の設問の傾向として返し、個別の記述は要約にも入れません。担当者は原文を扱わず、人事の判断に委ねます。