人事副業 / 採用・人事の実務
自社の魅力を3つに絞る|「他社にも書けること」を外して残す型
依頼側に「御社の魅力は何ですか」と聞くと、十個は出てきます。成長環境、風通し、裁量、安定、社会貢献、若手が活躍、福利厚生、代表の人柄。全部を求人票に書くと、読む人には何も残りません。魅力を絞る仕事は、良いところを削ることではなく、「この会社にしか書けず、来る人の動く理由に対応し、実態で裏付けられるもの」だけを残すことです。結論を先に書くと、自社の魅力は、まず全部書き出し、「他社にも書けるか」「ターゲット像の動く理由に対応するか」「実態で裏付けられるか」の三つの問いで削り、残った三つをタイトル・求人票・スカウト文・面接のそれぞれの置き場所に振り分けます。ターゲット像の作り方はターゲット像を1枚にまとめるに、求人票での置き場所はジョブディスクリプションを書くに書いています。ここでは、絞る型に絞ります。
魅力が多いほど伝わらない理由
| 魅力を全部書くと | 読む人に起きること |
|---|---|
| 十個が並ぶ | どれが本当の強みか分からず、全部が薄く見える |
| 他社にも書けることが混ざる | 「どこにでもある会社」に見える |
| 実態より良く書いた項目が混ざる | 面接や入社後に「違った」となり、全体の信頼が落ちる |
| 動く理由と関係ない魅力が先に来る | 読む人が自分に関係あるか分からず、閉じる |
魅力は、数ではなく「その人にとって効くか」で決まります。三つに絞るのは、三つが上限だからではなく、三つを超えると「どれが効いたか」が分からなくなり、次の改善ができなくなるからです。
手順一:全部書き出す
最初に削らず、依頼側が思う魅力を全部出してもらいます。経営者・現場の責任者・いまうまくやっている人の三者に、別々に聞きます。
| 相手 | 出てくる魅力の傾向 |
|---|---|
| 経営者 | 理念、事業の将来、市場での位置。大きい話 |
| 現場の責任者 | 裁量、チームの雰囲気、仕事の幅。日々の話 |
| いまうまくやっている人 | 「入ってみて良かったこと」「前の会社と違うこと」。実感の話 |
三者の魅力を一枚に並べると、重なるものと、一者しか言わないものが見えます。重なるものが候補です。一者しか言わない魅力は、その人の視点の魅力で、実態の裏付けが弱いことがあります。聞き方はヒアリング力の磨き方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、魅力の絞り込みで最も差がつくのは、いまうまくやっている人の「前の会社と違うこと」を材料にできるかです。経営者が言う魅力は理念で、現場が言う魅力は雰囲気で、どちらも他社にも書けます。いまうまくやっている人が「前の会社では上司の承認が三段階あったが、ここは自分で決めて翌日には動ける」と言えば、それは裁量という言葉に実態が付いた魅力で、同じ悩みを持つ人に届きます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「最近入った方が、前の会社と一番違うと言っていることは何ですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、魅力の候補ごとに「これを言ったのは誰か」を書いておくこと。いまうまくやっている人の言葉が付いていない魅力は、実態の裏付けが無いものとして、削る候補の先頭に置きます。
手順二:三つの問いで削る
書き出した魅力を、三つの問いに順にかけます。一つでも「いいえ」なら、削る候補です。
| 問い | 「いいえ」の例 | 残る例 |
|---|---|---|
| 他社にも書けるか(書けるなら削る) | 「成長できる環境」「風通しの良い職場」「アットホーム」 | 「〇〇業界で〇〇を扱う数少ない会社」「入社二年目から案件の予算を任せている」 |
| ターゲット像の動く理由に対応するか | 動く理由が「裁量」なのに「安定」を推す | 動く理由が「仕事の幅が固定されている」に対して「営業から納品まで一人で持つ」 |
| 実態で裏付けられるか | 「幹部候補」だが登用の実績が無い | いまうまくやっている人の言葉、社内の実例がある |
三つの問いをかけると、十個がたいてい二つか三つになります。ゼロになることもあります。ゼロなら、魅力が無いのではなく、まだ言葉になっていない状態なので、いまうまくやっている人に「前の会社と違うこと」をもう一度聞きます。
「他社にも書けるか」は、依頼側に判断してもらうと甘くなります。「この一文を、同業の他社の求人票に貼っても違和感が無いか」と、具体の同業を思い浮かべて問います。
手順三:残った三つを置き場所に振り分ける
| 置き場所 | 置く魅力 | 形 |
|---|---|---|
| 求人タイトル | 動く理由に最も近い一つ | 一語。「立ち上げから関われる」「一人で〇〇を担当」。付け方は求人タイトルの付け方に |
| 求人票の「得られるもの」 | 三つ全部 | 各一〜二行。実態の裏付け(実例)を添える |
| スカウト文 | 相手の経歴に対応する一つ | 二段落目に。相手のいまの環境で満たされないものに対応させる |
| 面接 | 三つのうち、候補者の迷う理由に対応するもの | 面接官が、実例を語れるように用意する |
三つを全部の場所に同じ順で置くのではなく、場所ごとに、読む人の状態に合わせて選びます。面接で語る魅力は、面接官が自分の言葉で実例を言えることが条件です。言えない魅力は、面接で使いません。
依頼側が譲らない魅力の扱い
三つの問いで削った魅力を、依頼側が「これは入れたい」と言うことがあります。特に理念と代表の人柄です。
| 譲らない魅力 | 扱い |
|---|---|
| 理念・ミッション | 求人票の「この役割がある理由」の一文に溶かす。「魅力」の欄には置かない |
| 代表の人柄 | 面接の最終段で、代表が直接話す場を設計する。文章では伝わりにくい |
| 福利厚生・制度 | 媒体の所定の欄に。「魅力」の三つには入れない |
| 受賞・認定 | 実態の裏付けがあるので残してよいが、動く理由に対応しなければ本文の末尾に |
削るのではなく置き場所を変える、と示すと、依頼側は受け入れやすくなります。判断は依頼側です。「魅力の三つは、応募を増やすためではなく、合う人が自分で判断できるようにするためのものです」と、最初に伝えておきます。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「魅力は良く見せるもの」というものです。実際には、魅力を良く見せた分だけ、入社後の期待とのずれが大きくなり、早期の離職につながります。魅力は、合う人が「自分が求めているものがここにある」と判断するための材料で、合わない人が「自分には合わない」と判断するための材料でもあります。「裁量が大きい」と書けば、指示を受けて動きたい人は離れます。それでよく、それが魅力を絞る目的です。受ける側がその場で使える判断としては、残した三つの魅力それぞれに、「この魅力で、離れる人は誰か」を一行書くこと。離れる人が書けない魅力は、誰にでも当てはまる魅力で、効いていません。書けた魅力は、合う人と合わない人を分けています。離職の構造は早期離職の原因に書いています。
盛らない線
| 盛る表現 | なぜ避けるか |
|---|---|
| 実績の無い「幹部候補」「将来の〇〇」 | 入社後に登用の実態が無ければ、不信の元になる |
| 収入や昇進を保証するように読める表現 | 保証できない。実態と違えば問題になる |
| 数字の裏付けが無い「業界トップ」「急成長」 | 根拠を聞かれて答えられない |
| 一部の人の例を全体のように書く | 「入社一年で〇〇になった人がいる」を「一年で〇〇になれる」と書かない |
魅力は、実態の裏付け(いまうまくやっている人の言葉、社内の実例)が付いているものだけを残します。数字を使うときは、依頼側が出どころを示せるものに限り、出どころを確認せずに書きません。表現の可否に法令や媒体の規約が関わる場合は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 三つの問いで全部消えた | 魅力が無いのではなく言葉になっていない。いまうまくやっている人に「前の会社と違うこと」を聞き直す |
| 依頼側が「うちは全部が魅力」と言う | 全部を一枚に並べ、「同業の〇〇社の求人票に貼っても違和感が無いか」で一つずつ分ける。判断は依頼側に |
| 残った魅力が、ターゲット像と合わない | ターゲット像の「動く理由」が違うか、魅力の裏付けが弱い。両方を見直す |
| 面接官が魅力を語れない | 実例を面接官に聞き取り、語れる形に整える。語れない魅力は面接で使わない |
| 魅力を変えたのに応募が変わらない | 魅力の問題ではなく、タイトル・必須・媒体が原因の可能性。止まっている場所に戻る |
まとめ
- 魅力は数ではなく、その人に効くかで決まる。三つを超えると、どれが効いたか分からなくなる
- まず全部書き出す。経営者・現場の責任者・いまうまくやっている人に別々に聞く
- 三つの問いで削る:他社にも書けるか/動く理由に対応するか/実態で裏付けられるか
- 残った三つをタイトル・求人票・スカウト文・面接に、読む人の状態に合わせて振り分ける
- 譲らない魅力は削らず置き場所を変える。理念は「この役割がある理由」に、代表の人柄は面接に
- 魅力は合う人が判断する材料で、合わない人が離れる材料。「この魅力で離れる人は誰か」を書く
- 盛らない。裏付けの無い数字と、一部の例の一般化を避ける。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
いまうまくやっている人が「魅力は特に無い。普通の会社」と言います
「普通」の中身を聞きます。「前の会社と比べて、楽になったこと、やりやすくなったことは何ですか」「辞めようと思ったことはありますか。そのとき、なぜ残りましたか」と、比較と残った理由で聞くと、本人が魅力と思っていない実態が出ます。「上司に相談すると翌日に決まる」「残業が減った」のような言葉が、他社に書けない魅力になることがあります。本人の言葉をそのまま一枚に写します。
職種ごとに魅力が違う場合、三つずつ作りますか
「動く理由」が職種で違うなら、三つずつです。営業職と開発職では、動く理由も比べる相手も違うので、同じ三つは効きません。ただし、会社の型(規模・業態・段階)に関する魅力は共通で使えるので、一つは共通、二つは職種ごと、という形で組めます。ターゲット像の一枚が職種ごとにあれば、それに沿って分けます。無ければ、先にターゲット像を作ります。
副業の稼働が短く、三者への聞き取りの時間が取れません
いまうまくやっている人を優先します。三十分で「前の会社と違うこと」「残っている理由」を聞けば、実態の裏付けが付いた魅力の候補が出ます。経営者と現場の責任者には、その候補を一枚にして「これで合っていますか。足りないものはありますか」とメールで確認する形にします。聞き取りをゼロにはせず、順番と形で稼働に合わせます。稼働の設計は副業の稼働管理に書いています。