人事副業 / 採用・人事の実務
ターゲット像を1枚にまとめる|採用のペルソナを「使える一枚」にする型
「ペルソナを作りましょう」と言って、年齢と経歴と性格が並んだ一枚を作り、共有した後は誰も開かない。副業の現場でよく見る光景です。ペルソナが使われないのは、作り方が雑だからではなく、「何に使う一枚か」が決まっていないからです。結論を先に書くと、採用のターゲット像は、理想の人物像ではなく「いまどこで何をしていて、なぜ動き、なぜ迷い、誰と比べ、何を決め手にするか」を書いた一枚にし、検索条件・スカウト文・求人票・面接の四つの場面で引く前提で作ります。要件(誰を採るか)の一枚は採用要件を引き出すヒアリングの型に書きました。ターゲット像は、その要件に合う人が「どう動くか」を書く一枚で、役割が違います。ここでは、ターゲット像の一枚の型に絞ります。
ペルソナが使われない理由
使われないペルソナには共通の形があります。
| 使われない一枚 | なぜ使われないか |
|---|---|
| 年齢・性別・家族構成・趣味が並ぶ | 採用の基準にできない項目が多く、検索にもスカウト文にも使えない |
| 「主体性があり、成長意欲が高い」 | 理想の性質で、どこにいるか、なぜ動くかが書かれていない |
| 架空の名前と写真が付いている | 見た目は整うが、判断に使う項目が無い |
| 要件と混ざっている | 「誰を採るか」と「その人がどう動くか」が同じ紙にあり、どちらも薄くなる |
使われる一枚は、「この人は、どこにいて、なぜ転職を考え、何で迷い、どこと比べ、何が決め手か」が書かれています。これは検索でどこを探すか、スカウト文で何を書くか、求人票で何を先に言うか、面接で何を確かめるかに、そのまま変わります。
一枚に載せる七つの項目
| 項目 | 書くこと | 何に使うか |
|---|---|---|
| いまどこで何をしているか | 会社の型(規模・業態)、役職、担っている仕事の中身 | 検索条件、媒体の選択 |
| 動く理由 | なぜ転職を考えるか。いまの環境で満たされないもの | スカウト文の冒頭、求人票で先に言うこと |
| 迷う理由 | 転職をためらう理由。失うもの、不安 | スカウト文と面接で先回りして答えること |
| 比べる相手 | 同時に見ている会社の型。同業の大手、同規模の他社、いまの会社に残る選択 | 求人票の差の出し方、条件の設計 |
| 見ているもの | 判断で重く見るもの。仕事の中身、裁量、報酬、働き方、人 | 求人票の順番、面接で伝えること |
| 情報の取り方 | どこで求人を見るか。媒体、知人、SNS、エージェント | 媒体と経路の選択 |
| 決め手 | 最後に背中を押すもの。誰の言葉、何の情報 | 選考の最終段の設計 |
七つが全部埋まらなくても構いません。埋まらない項目は「仮」と書いて、面接で聞いて埋めます。ターゲット像は、選考が進むほど正確になる一枚です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、ターゲット像の一枚で最も差がつくのは「迷う理由」の欄です。動く理由は依頼側もすぐ言えますが、迷う理由は「うちに来ない理由」なので、依頼側は言いたがらず、聞き手も聞きにくい。ただ、スカウト文の返信率と面接の辞退率を決めるのは、この欄です。「いまの会社で任されている案件を途中で手放せない」「小さい会社に移って、次の転職で不利にならないか」「報酬が下がるのではないか」と書けていれば、スカウト文の二段落目と面接の冒頭で先回りできます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「御社に来ない理由を三つ言えますか」と、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、依頼側に「最近、辞退した人は何と言って辞退しましたか」を聞くこと。辞退の理由が、迷う理由の欄にそのまま入ります。
「理想の人」ではなく「来る人」を描く
依頼側にターゲット像を聞くと、理想の人が出てきます。理想の人は、市場のどこにもいないか、いても動きません。描くのは、「要件を満たしていて、いまの環境で満たされないものがあり、この会社なら満たされる可能性がある人」です。
| 理想の人 | 来る人 |
|---|---|
| 大手で成果を出していて、給与が下がっても来る | 大手で仕事の幅が固定され、裁量を求めて動く。給与は同水準を求める |
| 若くて経験が豊富 | 経験は要件を満たし、次の段階を探している |
| うちの理念に共感している | 理念はまだ知らない。仕事の中身と裁量で判断する |
「来る人」を描くために使えるのは、いまうまくやっている人の入社の経緯です。「なぜこの会社を選んだのか」「何で迷ったのか」「決め手は何だったか」を聞くと、七つの項目の実例が出ます。ヒアリングの型はヒアリング力の磨き方に書いています。
要件の一枚との役割分担
要件とターゲット像は、別の一枚にします。
| 一枚 | 問い | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 要件 | 誰を採るか。必須・歓迎・面接で確かめる項目 | 検索条件の骨、書類選考、評価基準 |
| ターゲット像 | その人はどこにいて、どう動くか | 媒体の選択、スカウト文、求人票の順番、面接の伝え方 |
要件が固まっていないのにターゲット像を描くと、理想の人になります。順番は要件が先です。要件の整理を案件として受ける形は採用要件の整理の副業案件に書いています。
四つの場面で引く
作った一枚は、四つの場面で引きます。引かれない一枚は、作らなくてよい一枚です。
| 場面 | 引く項目 | 変わるもの |
|---|---|---|
| 検索条件・媒体 | いまどこで何をしているか、情報の取り方 | どの媒体で、どの会社の型・役職を探すか。検索の型はスカウト代行の副業に |
| スカウト文 | 動く理由、迷う理由 | 冒頭で「あなたのいまの環境で満たされないもの」に触れ、二段落目で迷う理由に先回りする |
| 求人票 | 見ているもの、比べる相手 | 何を先に書くか。比べる相手との差をどこで出すか。書き方はジョブディスクリプションを書くに |
| 面接 | 迷う理由、決め手 | 冒頭で不安に答え、最終段で決め手になる情報と人を用意する |
一枚の右端に「この項目は、どの場面で引くか」を書いておくと、依頼側にも使い道が伝わります。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「ターゲット像は一度作れば終わり」というものです。実際には、最初の一枚は依頼側の推測で、選考が進むと変わります。スカウト文に返信した人が、想定と違う会社の型から来る。面接で聞いた迷う理由が、書いたものと違う。辞退の理由が、決め手の欄と逆だった。この差を一枚に戻して書き換えると、次の検索とスカウト文が変わります。「一枚を月に一度、実際に来た人と辞退した人で書き換える」ことを、依頼側と最初に決めておくと、使われ続けます。受ける側がその場で使える判断としては、面接のたびに「迷う理由」と「決め手」の二項目だけ、候補者の言葉で追記すること。候補者の氏名は書かず、言葉だけを残します。
依頼側に確認してもらう形
一枚を作ったら、依頼側に「この人は、実際にいますか」「この人は、御社に来ますか」の二つで確認してもらいます。「いる」と「来る」は別です。いるが来ないなら、動く理由か迷う理由の欄が違います。来るがいないなら、要件の一枚に戻ります。
確認の場は、経営者と現場の責任者を分けます。経営者は「来る」を過大に見て、現場は「いる」を過小に見る傾向があります。二者の答えを並べ、差を一枚に書きます。書き換えの判断は依頼側です。
書いてはいけない項目
性別、年齢、国籍、家族の状況、出身地など、募集や採用で基準にすることに法令上の決まりがあると一般に整理されている項目は、ターゲット像にも書きません。「年齢層」「ライフステージ」の言い換えも同じです。動く理由や迷う理由を書けば、それらの項目は要りません。何が該当するかは、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにに、実在の候補者の情報を一枚に残さない考え方は個人情報の扱いに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が「理想の人」から離れない | 「その人は、いま何に困っていて、なぜ御社に来るのですか」を聞く。答えが無ければ、来る人ではない |
| 迷う理由が空欄のまま | 直近の辞退者の理由、いまうまくやっている人が入社前に迷ったことを聞く。空欄なら「仮」と書いて面接で埋める |
| 一枚が長くなる | 七つの項目を各二行以内に。長い部分は「引く場面」が無い項目なので削る |
| 要件と混ざる | 「誰を採るか」の行は要件の一枚に移す。ターゲット像には「どう動くか」だけ残す |
| 作った後、誰も開かない | 一枚の右端に引く場面を書く。スカウト文と求人票の初稿に、どの欄から書いたかを注記して渡す |
まとめ
- ペルソナが使われないのは、「何に使う一枚か」が決まっていないから。年齢や性格を並べても引けない
- 載せるのは七つ:いまどこで何をしているか・動く理由・迷う理由・比べる相手・見ているもの・情報の取り方・決め手
- 描くのは理想の人ではなく来る人。いまうまくやっている人の入社の経緯が実例になる
- 要件(誰を採るか)と別の一枚にし、順番は要件が先
- 検索・スカウト文・求人票・面接の四つの場面で引く。引く場面を右端に書く
- 最初の一枚は推測。来た人と辞退した人で書き換える。氏名は書かず言葉だけ
- 基準にしてはいけない項目は書かない。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
依頼側から「ペルソナに名前と顔写真を付けてほしい」と言われました
付けても構いませんが、判断に使う七つの項目が埋まっていることが先です。名前と写真は、社内で共有するときに話しやすくなる効果はありますが、検索にもスカウト文にも使えません。「名前は付けます。ただ、検索とスカウト文で引くのはこの七つの欄なので、そちらを先に埋めさせてください」と順番を示します。写真は実在の人物を使わず、使う場合も依頼側に判断してもらいます。
職種が複数あり、ターゲット像を何枚作ればよいか分かりません
「動く理由」と「比べる相手」が違えば別の一枚、同じなら一枚にまとめます。同じ営業職でも、大手から裁量を求めて来る人と、同規模の他社から報酬で来る人では、スカウト文も求人票の順番も変わるので、別の一枚です。枚数は職種の数ではなく、動き方の数で決めます。三枚を超えるなら、要件の一枚に戻って優先を決めてもらいます。
副業の稼働時間が短く、面接に同席できません。一枚をどう更新しますか
面接後に、依頼側の面接官から「候補者が口にした迷う理由と、決め手になりそうなこと」の二項目だけをメモで受け取る形にします。面接記録の全文は要りませんし、氏名も要りません。月に一度、そのメモで一枚を書き換えて、次の検索とスカウト文に反映します。依頼側に頼む二項目を最初の合意で決めておくと、稼働が短くても回ります。稼働の設計は副業の稼働管理に書いています。