人事副業 / 1on1・メンタリング

1on1・メンタリングの副業案件|求められる経験と進め方

公開 2026-09-21

1on1・メンタリングは、「上司には話しにくいことを、外の人に話せる場を作りたい」会社から出る副業案件です。若手が誰にも相談できずに辞める、管理職の1on1が業務の進捗確認になっている、部門をまたいだ相談相手がいない。その状態で「外部のメンターを」「1on1を整えてほしい」と外に出されます。ただ、「社員の悩みを聞いて助言する仕事」と思って受けると、社員は外の人にだけ話すようになり、上司との関係は変わらず、聞いた中身の扱いで会社と社員の両方の信頼を失います。結論を先に書くと、1on1・メンタリングの副業案件は、「外部メンターとしての1on1」「管理職の1on1の設計と練習」「テーマの傾向の還元の仕組み」「型作りと引き継ぎ」の四つの型に分かれ、求められるのは、会社が「誰に、何のために、第三者の場を置くか」を決めるのを支えられること、本人の同意と守秘の範囲を先に決めて守れること、答えを教えずに本人が決めるのを支える進行、専門の窓口に渡すべき相談を見分けられることの四つです。進め方は、目的と対象と守秘の範囲を会社が決める→本人の同意→月に一度の場の型→場を回す→会社にはテーマの傾向だけを返す→上司との関係に戻す→区切りで続けるかを本人と会社が決める、の順で、評価に使わせず、中身を会社に渡さず、上司の代わりにならず、医療と法律と処遇の相談は専門の窓口へ渡し、答えを教えない線を先に引いておきます。オンボーディングで「教えない・上司の代わりにならない」とした理由はオンボーディング設計の副業案件に、副業をする自分の相談相手の考え方は相談相手を持つに、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、1on1・メンタリングの案件に絞ります。

先に確かめる:第三者の場が向く会社と、向かない会社

外の人との1on1は、上司との関係の代わりにはなりません。向く会社と向かない会社を分けます。

向く向かない
上司との1on1は行われていて、それとは別に、部門や利害の外の相談相手を置きたい上司が1on1をしておらず、その代わりに外の人を置きたい
対象と目的が決まっている(若手の定着、管理職候補の内省、異動した人の適応など)「全社員の悩みを聞いてほしい」
守秘の範囲(会社に返すのはテーマの傾向だけ)に会社が同意する「誰が何を話したか教えてほしい」
専門の窓口(医療、ハラスメント、労務)が別にある専門の窓口が無く、全部を外の人に集めたい

向かない会社では、外部メンターではなく、管理職の1on1の設計と練習の型を提案します。上司の1on1が無い会社に外の人を置くと、社員は外の人にだけ話し、上司との関係は作られません。

1on1・メンタリングの案件の四つの型

募集文は「外部メンター」「1on1の導入支援」「キャリア面談の実施」と書かれていることが多いですが、任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。

任される範囲依頼側が持つこと受ける側の稼働の性質
外部メンターとしての1on1会社が決めた対象の社員と、月に一度などの場を持ち、本人が決めるのを支える。会社にはテーマの傾向だけ返す対象の選定、目的、守秘の範囲の決定、本人への案内、専門の窓口対象の人数に比例。平日の日中か夕方の枠が要る
管理職の1on1の設計と練習管理職が部下と行う1on1の型(頻度、時間、話す順、聞き方、記録)を設計し、管理職が練習する場を回す型の決定、管理職の時間、実施設計と練習の回。自分は部下と1on1をしない
テーマの傾向の還元の仕組み1on1で出るテーマを、個人が特定されない形で集め、会社が制度や配置や上司の支援に活かせる形にする活かす判断月次か四半期。集計の型
型作りと引き継ぎ場の型、同意と守秘の型、記録の型、還元の型を作り、社内(人事や管理職)で回せるようにする以後の運用期間が決まっている。終わったら手を離す

止まりやすいのは、「外部メンター」で受けたのに、会社から「〇〇さんは何を話していましたか」と中身を求められるときです。中身を渡すと、社員はもう話しません。守秘の範囲を契約前に書面にします。

求められる経験を棚卸しする

依頼側が見ているのは、「聞くのがうまいか」ではなく、「社員が自分で決めて動けるようになり、上司との関係にも戻り、会社が傾向を活かせる形を、守秘を守って作れるか」です。社内で1on1やメンタリングに関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。

経験依頼側にとっての意味棚卸しの書き方
目的と対象を決めるのを支えた「悩みを聞く」ではなく、「誰に何のために」から場を設計できるどういう目的と対象で、何を成果にしたか
同意と守秘の範囲を先に決めて守った本人の同意を取り、会社に返す範囲を決め、守り切った同意の取り方、守秘の範囲の決め方、守った場面
答えを教えずに本人が決めるのを支えた助言ではなく、問いで本人の考えを整理し、本人が次の一歩を決めたどういう問いで、本人が何を決めたか
専門の窓口に渡すべき相談を見分けた医療、ハラスメント、労務、処遇の相談を、自分で扱わず適切な窓口に渡したどういう相談を、どこに、どう渡したか

いちばん差がつくのは四つ目です。1on1で最も事故が起きるのは、健康や人間関係やハラスメントの相談を、外の人が「聞いてあげる」で抱えたときです。見分けて渡せる人が、この仕事を続けられます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、1on1・メンタリングの案件は、「会社が『中身は聞かない』と決められるか」で受けられるかが決まります。中身を聞かないと決めた会社では、社員は第三者に安心して話し、自分で決めて動き、会社にはテーマの傾向(「異動後の役割の曖昧さ」「上司との期待のずれ」など)が届き、制度や配置に活かせます。中身を聞きたい会社では、社員は外の人を「会社の耳」と見て話さず、場は形だけになります。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「1on1の中身は、担当者から御社に一切渡りません。それでも置きますか」です。「それでは意味が無い」という会社には、外部メンターではなく、管理職の1on1の設計と練習を提案します。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「会社に返すのは、個人が特定されないテーマの傾向だけです」と伝え、同意が無ければ受けないこと。この線は、社員を守るためであり、会社を守るためでもあります。

進め方の順番

やることここで決めておくこと
目的と対象と守秘の範囲を会社が決める(誰に、何のために、会社に返すのはテーマの傾向だけ、専門の窓口はどこか)三つが無いなら、始めない
本人の同意(目的、頻度、守秘の範囲、会社に返るもの、やめられること、専門の窓口を本人に伝え、同意を得る)同意の取り方(会社から案内、本人が選べる)
場の型(月に一度、時間、話す順(近況→本人が話したいこと→整理→本人が決める次の一歩)、記録の型)記録は本人と自分の間。会社には渡らない
場を回す(答えを教えず、問いで整理し、本人が次の一歩を決める。専門の窓口に渡すべき相談は見分けて渡す)渡す先と渡し方(本人の同意を確かめて)
会社にはテーマの傾向だけを返す(個人が特定されない形で、四半期などに)集計の型と頻度
上司との関係に戻す(上司に話したほうがよいことは、本人が上司に話せる形を一緒に整える)上司の1on1の有無
区切りで続けるかを本人と会社が決める(半年か一年で、本人が続けたいか、会社が続けるか)区切りの時期

止まりやすいのは、二を会社が省いて「対象者に業務として受けさせる」ときです。同意の無い1on1は、本人にとって会社の面談と同じで、本音は出ません。本人が選べる形にします。

外部の立場で踏み込まない線

1on1は、社員の内面と会社の間に立つ仕事です。線は、他の人事の副業と違う重さで引きます。

線の詳細は候補者の個人情報の扱い本業と利益相反になる案件副業で法令違反をしないためにに書いています。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、依頼側の「外の人なら本音を聞き出して会社に教えてくれる」と、受ける側の「親身に聞いて助言すれば役に立つ」の両方です。実際には、外の人が中身を会社に渡した瞬間に社員は話さなくなり、外の人が助言し続けると社員は自分で決めなくなり、どちらも場の目的(社員が自分で決めて動く)を壊します。同じ料金で同じ回数を任されても、結果が分かれるのは、担当者が「聞いて教える」か「問いで整理して本人に決めさせる」かです。親身に聞いて「私ならこうする」と助言した担当者の1on1は、本人が担当者に頼り、次の月も同じ悩みを持ってきます。「いま一番気になっているのはどれですか」「それが動いたら何が変わりますか」「次の一か月で一つやるなら何ですか」と問いで整理し、本人が決めた一つを本人の言葉で記録した担当者の1on1は、本人が動き、次の月には次の話に進みます。受ける側がその場で使える判断としては、場の最後に「本人が自分で決めた次の一歩」を本人の言葉で記録すること。自分の助言が記録に残っていたら、教えすぎています。

向く人と向かない人

向く向かない
答えを教えず、問いで整理し、本人が決めるのを待てる助言したくなる
守秘の範囲を、会社に求められても守れる会社に頼られると中身を話してしまう
医療や法律やハラスメントの相談を、抱えずに専門の窓口に渡せる「私が聞いてあげる」で抱える
上司との関係に戻す形を、本人と一緒に整えられる自分が一番の相談相手になりたい
転職の相談が出ても、自分の他の仕事につなげない紹介の仕事につなげたくなる

「自分が一番の相談相手になりたい」人は、良い人ですが、この仕事では社員を社内から切り離し、自分が離れたときに本人を孤立させます。

まとめ

よくある質問

会社から「〇〇さんが辞めそうか教えてほしい」と言われました

答えません。「個人の中身は一切お伝えしません。お伝えできるのは、対象の方々全体で出ているテーマの傾向だけです」と、契約前に決めた守秘の範囲に戻します。辞めそうかを会社に伝えることは、本人の信頼を失い、場が終わります。本人が「会社に伝えてほしい」と言った場合だけ、本人の言葉で、本人の同意の範囲で伝えます。会社が個人の状況を知りたいなら、それは上司の1on1の役で、管理職の1on1の設計と練習を提案します。

1on1で、本人が体調や人間関係の深刻な話を始めました

聞いて抱えず、専門の窓口に渡します。「その内容は、私よりも〇〇(産業医、外部の相談窓口など、会社が用意した窓口)にご相談いただくほうが、ちゃんと支えてもらえます。つなぎましょうか」と、本人の同意を確かめて渡します。緊急性があると感じたときの流れ(誰に、どう連絡するか)は、契約前に会社と決めておき、その流れに従います。自分が判断し、自分が抱えることが、最も危険です。個別の判断は専門家にご確認ください。

1on1・メンタリングの単価はどう決めればよいですか

「対象の人数×月の回数×一回の時間」に、「記録」「テーマの傾向の集計と還元(四半期など)」「上司との関係に戻す整理」を足して見込みます。管理職の1on1の設計と練習は、設計の成果物と練習の回数で見込みます。相場は範囲と人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。単価の考え方は単価の相場と考え方に、始め方は1on1・メンタリングで副業を始めるにはに書いています。