人事副業 / 両立・スキル
よくある質問|本業の会社に競合はいないか|人事の副業で依頼側が本業の競合になるかは、「事業の重なり・候補者の重なり・情報の流れ」の三つで見る。同業でなくても重なることがあり、迷ったら受ける前に本業と依頼側の両方に確認する
副業の案件の相談が来た。依頼側は本業の会社とは業界が違うので、競合ではないと思うが、募集している職種は本業でも採用している職種だ。これは競合になるのか、受けてよいのかが分からない。結論を先に書くと、本業の会社と依頼側が競合になるかは、事業が同じかどうかだけでは決まりません。「事業の重なり」「候補者の重なり」「情報の流れ」の三つの軸で見て、一つでも重なるなら、受ける前に本業の会社の規定と、依頼側の両方に確認します。業界が違っても、同じ職種を同じ時期に同じ媒体で採用していれば、候補者が重なり、本業と副業の両方に不利益が出ます。逆に、業界が近くても、職種も地域も違えば、重ならないことがあります。競合かどうかは、業界の名前ではなく、実際に何が重なるかで判断します。利益相反の詳しい整理は本業と利益相反になる案件に、本業の規定の確認は副業許可の申請の出し方に、踏み込みすぎない線の引き方は踏み込みすぎない線引きにまとめています。規定と契約の解釈は、専門家にご確認ください。
事業だけでは足りない理由
「業界が違えば競合ではない」という判断は、人事の副業では足りません。人事の副業は、採用という同じ市場で動くからです。
| 見方 | 見落とすこと |
|---|---|
| 業界で見る | 業界が違っても、同じ職種(エンジニア、営業、管理部門)を採用していれば、候補者の市場は同じ |
| 商品やサービスで見る | 商品が違っても、同じ地域で同じ規模の会社なら、採用の候補者は重なる |
| 会社の名前で見る | 名前が違っても、親会社や関連会社が本業と関係していることがある |
| 依頼側の説明で見る | 依頼側は自社の競合を知っていても、担当者の本業の会社との関係は知らない |
| 契約書の競業の条項で見る | 条項は「同業他社」と書かれていることが多く、候補者の重なりまでは書かれていない |
足りない理由の要点は、「人事の副業は、依頼側の事業ではなく、依頼側の採用に関わる」ことです。本業の会社と依頼側が事業で競合していなくても、採用で競合していれば、自分が両方の採用に関わることになり、候補者の情報や採用の進め方が、意図せずどちらかに流れます。採用の市場で見る視点は本業と利益相反になる案件に書いています。
三つの軸で見る
競合かどうかは、三つの軸で見ます。どれか一つでも重なれば、確認が要ります。
| 軸 | 重なる例 | 重ならない例 |
|---|---|---|
| 事業の重なり | 本業の会社と同じ商品やサービスを、同じ顧客に売っている。親会社や関連会社が同じ | 商品も顧客も違う。資本の関係も無い |
| 候補者の重なり | 同じ職種を、同じ地域で、同じ時期に、同じ媒体で採用している。本業で接した候補者が、依頼側の候補者にもなり得る | 職種が違う。地域が違う。本業では採用していない職種 |
| 情報の流れ | 本業で知った採用の進め方、候補者の傾向、媒体の運用の工夫が、依頼側で使える。逆に依頼側で知ったことが本業で使える | 本業の採用と依頼側の採用が、進め方も市場も違い、一方で知ったことがもう一方で役に立たない |
三つの要点は、「候補者の重なり」が最も見落とされることです。本業がメーカーで、依頼側がサービス業でも、両方がエンジニアを東京で採用していれば、候補者は重なります。本業でスカウトを送った候補者に、副業でもスカウトを送る場面が起きます。これは、候補者から見れば「同じ人から別の会社の案内が来た」ことになり、本業と依頼側の両方の信用に関わります。候補者の情報の扱いは個人情報の扱いに整理しています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「業界が違えば、競合の心配は要らない」というものです。実際には、登録の相談で「本業とはまったく違う業界なので大丈夫です」と言った方の案件で、後から候補者の重なりが分かった例があります。本業も依頼側も、同じ職種を同じ地域で採用していて、担当者が本業で接した候補者が依頼側の候補として出てきました。担当者は業界の違いで判断していたので、候補者の重なりを想定していませんでした。
見ていて差がつくのは、受ける前に「本業ではどの職種を、どの地域で、どの媒体で採用しているか」を自分で整理しているかです。整理している人は、依頼側の相談が来たとき、職種・地域・媒体の重なりをすぐ見て、重なるなら受けないか、依頼側に伝えて判断を仰いでいます。整理していない人は、業界の違いだけで受け、後で気づきます。エラベルでは、登録の際に本業の業界と、本業で採用している職種の範囲を聞き、依頼側の相談と重なる可能性がある案件は、提示の前に担当者に確認しています。競合の判断は、業界ではなく、採用の市場で行います。
受けてよい案件と避ける案件の線
三つの軸で見た結果を、受ける・確認する・避けるの三つに分けます。
| 三つの軸の状態 | 判断 | やること |
|---|---|---|
| どれも重ならない | 受けてよい | 本業の規定の一般的な確認(副業の許可)だけ |
| 候補者だけ重なる(職種・地域・時期・媒体のどれかが同じ) | 確認する | 本業の会社の規定を確認し、依頼側に「本業で同じ職種を採用している」と伝え、依頼側の判断を仰ぐ。受けるなら、本業で接した候補者には副業で接しない線を決める |
| 情報の流れだけ重なる | 確認する | 本業で知った進め方や傾向を、依頼側で使わない線を自分で引けるか。引けないなら避ける |
| 事業が重なる | 避ける | 本業の規定で競業が禁じられていることが多い。禁じられていなくても、依頼側から見て「競合の社員が自社の採用に入る」形になり、依頼側も避ける |
| 事業と候補者の両方が重なる | 避ける | 本業と依頼側の両方に不利益が出る。判断の余地は無い |
| 親会社や関連会社が同じ | 避けるか、両方に確認 | 資本の関係は、事業の重なりと同じ扱い。本業の会社のグループの規定を確認 |
線の要点は、「候補者だけ重なる」を確認なしで受けないことです。ここが最も判断が分かれ、本人は「業界が違うから」と受けがちです。本業の規定と依頼側の判断の両方を確認し、受けるなら、本業で接した候補者には副業で接しないという線を、自分の中で決めておきます。線の引き方は踏み込みすぎない線引きにも書いています。
本業の会社の規定を確認する
競合の判断は、自分の感覚ではなく、本業の会社の規定に沿って行います。
| 確認すること | 見る場所 | 要点 |
|---|---|---|
| 副業の許可の範囲 | 就業規則の副業に関する条項 | 「同業他社での副業を禁ずる」のような競業の制限があるか |
| 競業の定義 | 就業規則、誓約書、入社時の書類 | 「同業」が事業で定義されているか、より広いか |
| 届け出の要否 | 副業の申請の様式 | 依頼側の業種や業務の内容を届け出る欄があるか |
| 秘密保持の範囲 | 入社時の誓約書 | 本業で知った候補者の情報や採用の進め方が、秘密保持の対象か |
| 退職後の競業の制限 | 誓約書 | 副業の依頼側が、退職後の制限の対象になり得るか |
規定の要点は、「競業の定義が事業で書かれていても、秘密保持の範囲で候補者の情報が対象になっていることが多い」ことです。競業の条項に触れなくても、本業で知った候補者の情報を副業で使えば、秘密保持に触れます。規定を読んで分からない場合は、本業の会社の窓口に「このような副業は規定に触れるか」を確認するか、社会保険労務士などの専門家に相談します。届け出の書き方は副業許可の申請の出し方に整理しています。規定の解釈は、専門家にご確認ください。
依頼側に伝えるべきこと
競合の可能性は、本業の会社だけでなく、依頼側にも関わります。依頼側にも、受ける前に伝えます。
| 伝えること | 伝え方 | 理由 |
|---|---|---|
| 本業の業界 | 「本業は〇〇業界の会社です」。会社名は出さない | 依頼側が、自社との事業の重なりを判断できる |
| 本業で採用している職種 | 「本業でも〇〇職を採用しています」 | 依頼側が、候補者の重なりを判断できる |
| 本業で接した候補者には接しない線 | 「本業で接点のある候補者には、御社の案件では接しません」 | 依頼側が、担当者の線引きを知る |
| 本業の情報を持ち込まない線 | 「本業の採用の進め方や候補者の情報は、御社の案件では使いません」 | 依頼側が、担当者の情報の扱いを知る |
| 本業の規定の確認の状況 | 「本業の規定では、この案件は問題ないことを確認しています」 | 依頼側が、後から本業の問題で担当者が止まる不安を持たない |
伝える要点は、「本業の会社名は出さない」ことです。業界と職種を伝えれば、依頼側は重なりを判断でき、会社名まで出す必要はありません。会社名を出すと、依頼側がその会社との関係で判断し、本業の情報を副業に持ち込んだ形にもなります。依頼側が「本業の会社名を教えてほしい」と言った場合は、「業界と職種でご判断いただければ」と返します。本業の情報の線は本業と利益相反になる案件に書いています。
途中で競合になったときの扱い
受けたときは重なっていなくても、途中で重なることがあります。そのときの扱いを決めておきます。
| 変化 | 扱い |
|---|---|
| 本業の会社が、依頼側と同じ職種の採用を始めた | 候補者の重なりが発生。本業の規定を確認し、依頼側に伝え、線(本業で接した候補者には接しない)を守れるかを見る。守れないなら、更新の節目で終える |
| 依頼側が、本業の会社と同じ事業を始めた | 事業の重なりが発生。本業の規定で競業に当たる可能性。本業の窓口か専門家に確認し、該当するなら終える |
| 本業で異動し、採用の担当になった | 情報の流れが変わる。本業で知る採用の情報が増え、副業に持ち込まない線が難しくなる。線を引き直すか、終える |
| 依頼側が本業の会社の関連会社に買収された | 資本の関係が発生。両方に確認し、多くの場合は終える |
| 本業で接した候補者が、依頼側の候補に出てきた | その候補者には副業で接しない。依頼側に「別の案件で接点のある候補者がいる」とだけ伝え、他の担当者に対応してもらう |
変化の要点は、「重なりに気づいたら、隠さずに両方に伝える」ことです。途中で重なったことを黙って続けると、後で分かったときに、本業と依頼側の両方から「知っていて続けた」と見られます。気づいた時点で伝え、判断を本業の規定と依頼側に委ねれば、終えることになっても関係は保てます。案件を終えるときの手順は引き継ぎの進め方に、終えた後の入口は次の案件へ広げるに整理しています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、競合の問題で止まった人は、「業界が違うから大丈夫」と自分で判断して受けた人です。三つの軸で見て、重なりに気づき、本業の規定と依頼側に確認してから受けた人は、問題になっていません。確認の手間は、受ける前の数日で済み、それを省いて後で分かったときの損失は、本業と副業の両方に及びます。
順番として、本業で採用している職種・地域・媒体を自分で整理し、依頼側の相談が来たら三つの軸で重なりを見て、重なるなら本業の規定を確認し、依頼側に業界と職種を伝えて判断を仰ぎ、受けるなら線を決めて守り、途中で重なったら隠さず伝える。この順番で、競合の問題は避けられます。エラベルでは、登録の際に本業の業界と採用している職種を聞き、依頼側の相談との重なりを見て提示しているので、担当者が一人で判断する場面を減らしています。競合の判断は、担当者だけの責任にせず、窓口と依頼側と本業の規定で支えるものです。
まとめ
- 競合かどうかは事業の重なり・候補者の重なり・情報の流れの三つの軸で見る。業界の名前では決まらない
- 候補者の重なりが最も見落とされる。業界が違っても、同じ職種を同じ地域で採用していれば重なる
- 判断はどれも重ならない→受ける・候補者か情報だけ重なる→確認する・事業が重なる→避ける
- 本業の規定は競業の定義と秘密保持の範囲を見る。候補者の情報は秘密保持に触れることが多い
- 依頼側には本業の業界と職種と線引きを伝える。会社名は出さない
- 途中で重なったら隠さず両方に伝え、判断を委ねる。終えることになっても関係は保てる
よくある質問
本業が人事ではなく、別の職種です。それでも競合を気にする必要がありますか
本業が人事でなくても、本業の会社が依頼側と同じ職種を採用していれば、候補者の重なりは起きます。ただし、本業で採用に関わっていなければ、候補者の情報や採用の進め方を知る機会は少なく、情報の流れの重なりは小さくなります。事業の重なりと、本業の規定の競業の制限は、職種に関わらず確認します。本業が人事でない場合の副業の始め方は人事の副業に向いている人にも書いています。
依頼側から「本業の会社の採用のやり方を教えてほしい」と言われました
本業の採用の進め方は、本業の会社の情報で、依頼側に伝えることは情報の持ち出しになります。「本業の情報はお伝えできませんが、一般的な進め方として〇〇があります」と、自分の判断の仕方や公開されている一般的な方法として答えます。依頼側が本業の情報を求め続けるなら、その案件は情報の流れの重なりが大きく、続けるのが難しい案件です。情報の線は発信で書いてはいけないことに整理した線と同じです。
本業の会社に、副業の依頼側の業種を届け出ないといけませんか
本業の会社の副業の申請の様式に、依頼側の業種や業務の内容を書く欄があれば、届け出ます。欄が無くても、競業の制限がある場合は、依頼側の業種が制限に当たらないかを、本業の窓口に確認しておくと、後で問題になりません。届け出るときも、依頼側の会社名は、依頼側との秘密保持で出せないことがあるので、業種と業務の内容で届け出る形にし、会社名が要るかは本業の窓口に確認します。届け出の書き方は副業許可の申請の出し方に、規定の解釈は専門家にご確認ください。