人事副業 / 両立・スキル
案件でよくある失敗|社内の力関係に巻き込まれる|人事の副業で依頼側の社内の対立に巻き込まれるのは、外部の立場を「中立の第三者」と思われ、片方の味方として使われるから。線は「窓口は担当者一人・判断は依頼側に返す・事実だけを話す」の三本
依頼側の人事の担当者と、現場の責任者の意見が合わない。担当者からは「現場が要件を決めてくれない」と聞き、現場からは「人事が候補者を絞りすぎる」と聞く。どちらからも「外部の目で見て、どう思いますか」と聞かれ、答えた内容が、いつの間にか「外部の人もそう言っている」と、片方の主張に使われていた。結論を先に書くと、外部の担当者が社内の力関係に巻き込まれるのは、外部の立場を「中立の第三者」と思われ、片方の主張の裏付けとして使われるからです。巻き込まれると、もう片方から見て「あちらの味方」になり、その後の仕事が進まなくなります。線は三本で、「依頼側との窓口は担当者一人に固定する」「判断は依頼側に返し、自分の意見を主張として出さない」「話すのは事実だけで、評価や推測は言わない」です。外部の立場でできることの整理は外部の立場だからできることに、現場との関係は現場との関係の作り方に、経営者と直接話す場面は経営者直下で動くときの立ち回りにまとめています。
巻き込まれる典型の場面
巻き込まれる場面は、どの依頼側でも似た形で起きます。
| 場面 | 何が起きるか | 巻き込まれ方 |
|---|---|---|
| 人事と現場の要件の対立 | 人事は「幅広く」、現場は「絞って」と言い、要件が決まらない | どちらかに「外部の目で、どちらが正しいと思うか」と聞かれ、答えると、その答えが片方の主張に使われる |
| 担当者と上長の方針の違い | 担当者は型を整えたい、上長は早く数字を出したい | 担当者から「上長を説得する材料をくれ」と頼まれ、上長から「担当者は何をしているのか」と聞かれる |
| 経営者と人事の距離 | 経営者が人事を通さず、外部の担当者に直接指示する | 人事の担当者を飛び越えて動くことになり、担当者から見て「経営者の側の人」になる |
| 前任の担当者との比較 | 「前の外部の人はこうしていた」と、現任の担当者の方針を否定する材料に使われる | 前任との違いを聞かれ、答えると、現任の批判に使われる |
| 複数の外部の担当者の間 | 依頼側が複数の外部を入れていて、評価を比べている | 他の外部の担当者の仕事について聞かれ、答えると、その人の評価に使われる |
| 候補者の合否をめぐる対立 | 面接官と人事で合否の判断が割れている | 「外部から見てどう思うか」と聞かれ、答えると、合否の判断に外部が関わったことになる |
場面の要点は、「『外部の目で見て』と聞かれたとき」が入口だということです。この問いは、中立の意見を求めているように聞こえますが、多くの場合、聞く側はすでに答えを持っていて、外部の裏付けを探しています。答えれば、その答えは「外部の人もそう言っている」として、社内の議論に使われます。
巻き込まれた後に起きること
片方の味方と見られた後、何が起きるかを知っておくと、線の重さが分かります。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| もう片方から協力が得られなくなる | 現場の味方と見られれば人事が、人事の味方と見られれば現場が、情報を出さず、日程を組まず、返事を遅らせる |
| 自分の範囲の仕事が止まる | 面接官の予定が取れない、要件が決まらない、記録に協力してもらえない。自分の工程が、社内の対立で止まる |
| 担当者との関係が壊れる | 担当者を飛び越えて上長や経営者と話したことで、担当者が「自分の立場を脅かす人」と見る |
| 契約の更新に影響する | 更新の判断をする人が、自分を「あちらの味方」と見ていれば、更新されない |
| 判断の責任を負わされる | 「外部の人がそう言ったから」と、社内の判断の責任を外部に置かれる |
| 依頼側の社内の情報を、意図せず別の人に渡すことになる | 片方から聞いた話を、もう片方に伝えることで、情報の流れを作ってしまう |
起きることの要点は、「自分の範囲の仕事が、社内の対立で止まる」ことです。外部の担当者の仕事は、依頼側の社内の複数の人の協力で成り立っています。片方の味方と見られた瞬間に、もう片方の協力が消え、仕事は止まります。中立を保つことは、姿勢の問題ではなく、仕事を進めるための条件です。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「外部の立場だから、社内の対立とは無関係でいられる」というものです。実際には、外部の立場だからこそ、社内の対立で使われます。社内の人の意見は「立場があるから」と割り引かれますが、外部の人の意見は「立場が無いから中立だ」と見られ、裏付けとして重宝されます。だから、外部の担当者の一言は、社内の人の一言より、対立の中で重く使われます。
見ていて差がつくのは、「外部の目で見てどう思うか」と聞かれたときの答え方です。巻き込まれない人は、「私の立場では判断できませんが、事実としては〇〇です」と、判断を返し、事実だけを話しています。事実は、どちらの主張にも使えず、使われても事実なので問題になりません。巻き込まれる人は、「私は〇〇のほうがよいと思います」と意見を言い、それが主張の裏付けになっています。エラベルでは、担当者が依頼側の社内の判断に踏み込まず、判断の材料(事実)を出すところまでを役割としています。判断を返す担当者は、社内のどの立場の人からも「使いやすい」ではなく「信頼できる」と見られています。
外部の担当者が狙われる構造
なぜ外部の担当者が、社内の対立の裏付けに使われるのかを、構造で見ます。
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 立場が無いと見られる | 社内の人の意見は「人事の立場」「現場の立場」と割り引かれるが、外部の意見は「立場が無い」と見られ、割り引かれない |
| 専門性があると見られる | 「人事の専門家がそう言っている」は、社内の議論で強い |
| 責任を負わない | 外部の人の意見で決めれば、決めた側は「外部の助言に従った」と責任を薄められる |
| 反論しにくい | 外部の人は社内の議論に参加しないので、意見を引用されても、その場で訂正できない |
| 契約で動いている | 依頼側の担当者が契約の窓口なら、担当者の側に立つと見られやすい。逆に、経営者が契約の窓口なら、経営者の側と見られる |
構造の要点は、「外部の意見は、社内の議論で割り引かれずに使われる」ことです。自分では「一つの意見」として言ったことが、社内では「外部の専門家の判断」として扱われます。だから、意見を言わず、事実を出す。事実は、どう使われても事実で、自分の判断として扱われることはありません。判断の所在の考え方は権限がないと動けない場面に書いています。
兆しの見つけ方
巻き込まれる前に、兆しがあります。
| 兆し | 何が起きているか |
|---|---|
| 「外部の目で見てどう思うか」と聞かれる回数が増えた | 裏付けとして使われ始めている |
| 担当者以外の社内の人から、直接連絡が来るようになった | 窓口が複数になり、どちらかの側に寄りやすくなっている |
| 「〇〇さんには言わないでほしい」と前置きされた | 片方の側の情報を、もう片方に隠す形で受け取っている。すでに巻き込まれかけている |
| 自分の言った言葉が、別の人から聞こえてきた | 意見が引用され、社内で使われている |
| 依頼側の社内の人の評価を聞かれた | 「担当者はどうか」「面接官はどうか」。答えると、人の評価に関わる |
| 前任や他の外部の担当者との比較を求められた | 比較が、現任の批判や、他の外部の評価に使われる |
| 定例に、担当者以外の人が入ってきて、担当者と意見が割れた | 定例が対立の場になっている |
兆しの要点は、「『〇〇さんには言わないでほしい』と前置きされたとき」が、最も明確な兆しだということです。この前置きは、片方の側の情報を、もう片方に隠す形で預けられることで、預かった時点で、その側に立ったことになります。この前置きが来たら、「私は担当者を通して動いているので、担当者に共有できない話は伺えません」と、その場で線を引きます。
巻き込まれないための三本の線
三本の線を、最初から引いておきます。
| 線 | 内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 一、窓口は担当者一人に固定する | 依頼側との連絡と判断の確認は、契約の窓口である担当者を通す。他の社内の人から直接連絡が来ても、「担当者を通してください」か、担当者に共有したうえで対応する | 担当者を飛び越えない。担当者に共有できない話は受けない。現場との関係の作り方 |
| 二、判断は依頼側に返す | 「どちらが正しいか」「どうすべきか」を聞かれても、自分の意見を主張として出さない。「私の立場では判断できません。判断の材料として、事実は〇〇です」 | 意見を求められたら、選択肢と事実を出し、選ぶのは依頼側という形にする。改善提案の伝え方 |
| 三、話すのは事実だけ | 依頼側の記録で確認できること、自分の範囲で起きたことだけを話す。人の評価、推測、他社との比較は言わない | 「担当者はどうか」と聞かれたら「私の範囲では、担当者との連絡は滞りなく進んでいます」と、事実で答える。評価はしない |
三本の要点は、「一」の窓口の固定が、他の二本の土台になることです。窓口が担当者一人なら、他の社内の人から意見を求められる場面そのものが減ります。求められても、「担当者に共有します」と言えば、隠す形の情報は受けずに済みます。経営者が直接指示してくる場合も、担当者に共有したうえで動く形にすれば、担当者を飛び越えたことになりません。経営者との距離は経営者直下で動くときの立ち回りに、社内の人事担当との分担は社内の人事担当との役割分担に整理しています。
巻き込まれてしまったときの抜け方
すでに片方の味方と見られている場合、抜ける順番があります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 一、自分の言葉が使われたことを認める | 「私の発言が、そのように使われたことを承知しました」と、事実として受け止める。言い訳をしない |
| 二、判断を返し直す | 「私の発言は判断ではなく、事実の共有でした。判断は御社でしていただくものです」と、使われた発言の位置づけを直す |
| 三、窓口を担当者に戻す | 他の社内の人との直接の連絡を減らし、担当者を通す形に戻す。担当者に「今後は担当者を通して動きます」と伝える |
| 四、もう片方の側に、事実で接する | 味方と見られなかった側に、自分の範囲の事実(進捗、記録)を丁寧に共有し、仕事で信頼を戻す。意見は言わない |
| 五、対立そのものには触れない | 対立の解消を自分の役割にしない。自分の範囲の仕事を、両方の協力を得て進めることに集中する |
| 六、抜けられないなら、更新の節目で終える | 対立が深く、どちらの側に立っても仕事が進まないなら、その案件は自分の範囲で動ける状態ではない。合わない案件の見分け方 |
抜け方の要点は、「対立を解消しようとしない」ことです。巻き込まれた人が、対立を自分で解消しようとすると、さらに深く巻き込まれます。自分の役割は、自分の範囲の仕事で、対立の解消ではありません。両方に事実で接し、自分の範囲を進め、対立には触れない。この形で、時間をかけて中立の位置に戻ります。
担当者が替わったときの注意
依頼側の担当者が替わると、力関係が変わり、巻き込まれ方も変わります。
| 状況 | 注意 |
|---|---|
| 新任が前任と方針が違う | 前任の方針を、新任の前で擁護しない。「前任のときはこうしていました」は事実として、「こうすべき」は言わない |
| 新任が前任の批判を求めてくる | 「前任の方はどうでしたか」と聞かれても、評価はしない。「前任の方とは、こういう進め方で合意していました」と、事実だけ |
| 新任が、自分を前任の側と見る | 前任と親しかった外部の担当者は、新任から「前任の側の人」と見られやすい。新任と最初に窓口と判断の所在を合意し直す |
| 前任が別の部署に残っている | 前任から連絡が来ても、新任を通す。前任との直接の連絡は、新任に共有できる範囲で |
| 新任が経営者や上長と対立している | 巻き込まれる構造が新しく始まる。三本の線を、新任との最初の打ち合わせで引き直す |
注意の要点は、「新任との最初の打ち合わせで、窓口と判断の所在を合意し直す」ことです。前任との合意は新任に引き継がれておらず、新任は自分をどう見るかを決めていません。最初に「窓口は新任の方一人、判断は御社、私は事実を出す」と伝えれば、新任は自分を「前任の側」ではなく「外部の担当者」として見ます。担当者の交代への備えはいつ辞めても困らない状態を作るに書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、社内の対立がある依頼側で長く続いている人は、対立を見ていないのではなく、対立を見たうえで、三本の線を守っている人です。窓口を担当者に固定し、意見を求められたら判断を返し、事実だけを話す。対立の両側から「外部の目で」と聞かれても、同じ答え方をしているので、どちらの側にも立たず、どちらからも「信頼できる」と見られています。
順番として、案件の最初に窓口を担当者一人に決め、判断は依頼側に返すと合意し、「外部の目で」と聞かれたら事実だけを答え、「〇〇さんには言わないで」と前置きされたら線を引き、巻き込まれたら対立の解消を役割にせず自分の範囲に戻る。担当者が替わったら、線を引き直す。この順番で、社内の力関係は、自分の仕事を止めるものではなくなります。エラベルでは、依頼側の窓口を一人に決め、担当者の判断の範囲を契約で明確にする形を取っています。窓口が一人であることは、担当者が社内の対立に巻き込まれないための、仕組みの側の線です。
まとめ
- 巻き込まれるのは外部の立場が「中立の第三者」と見られ、片方の主張の裏付けに使われるから
- 入口は「外部の目で見てどう思うか」と聞かれたとき。答えれば、その答えが社内で使われる
- 巻き込まれるともう片方の協力が消え、自分の範囲の仕事が止まり、更新に影響する
- 兆しは「外部の目で」が増える・担当者以外から直接連絡が来る・「〇〇さんには言わないで」と前置きされる・自分の言葉が別の人から聞こえる
- 線は三本。窓口は担当者一人・判断は依頼側に返す・話すのは事実だけ
- 巻き込まれたら認め・判断を返し直し・窓口を戻し・もう片方に事実で接し・対立の解消を役割にしない
- 担当者が替わったら線を引き直す
よくある質問
担当者自身が、上長との対立で私を味方につけようとしています
担当者が契約の窓口でも、担当者の主張の裏付けにはなりません。「担当者の方の考えは理解しました。上長の方への説明に使える事実として、〇〇と〇〇があります」と、事実を材料として渡し、「私の意見として上長に伝える」形は避けます。担当者が上長に「外部の人もそう言っている」と言いたがるなら、「私の立場では判断はできないので、事実の共有として使ってください」と線を引きます。担当者を助ける形は、意見の裏付けではなく、担当者が使える事実を渡すことです。提案の材料の渡し方は改善提案の伝え方に整理しています。
経営者から直接「人事の担当者は頼りないから、君が進めてくれ」と言われました
経営者の言葉に乗って担当者を飛び越えると、担当者との関係が壊れ、その後の仕事が進みません。「担当者の方と一緒に進める形で、ご期待に応えます」と、担当者を通す形を保ちます。経営者からの指示は担当者に共有し、担当者を通して動きます。経営者が担当者を外したいなら、それは依頼側の社内の判断で、外部の担当者が関わることではありません。経営者との距離の取り方は経営者直下で動くときの立ち回りに書いています。
対立が深く、どちらの側とも仕事が進みません
三本の線を守っても、対立が深すぎて自分の範囲の仕事が進まないなら、その案件は、外部の担当者が動ける状態にありません。担当者に「私の範囲の仕事を進めるために、〇〇と〇〇の協力が要る」と事実で伝え、それでも動かなければ、更新の節目で終えることを考えます。対立の解消は自分の役割ではなく、解消されないまま契約を続けても、成果は出ず、評価も下がります。終え方は合わなかったらやめられるかに、合わない案件の見分け方は合わない案件の見分け方に整理しています。