人事副業 / 両立・スキル
案件でよくある失敗|範囲の膨張|人事の副業で範囲が膨らむのは、一度の大きな追加ではなく「ついでに・今回だけ・前の人はやっていた」の小さな積み重ねから。膨らんだことに気づくのは、稼働が枠を超えてから。防ぐ線は「契約の範囲を工程で書き、契約外の稼働を分けて記録し、更新で直す」
契約はスカウトの運用だった。数か月経った今、求人票も書き、面接の日程も組み、内定者への連絡もしている。単価は最初のままで、稼働は倍になっている。いつからこうなったのか、思い出せない。結論を先に書くと、範囲の膨張は、一度の大きな追加ではなく、「ついでに」「今回だけ」「前の人はやっていた」の小さな積み重ねで起きます。一つ一つは断るほどではなく、気づいたときには稼働が枠を超えています。防ぐ線は三本で、「契約の範囲を工程で書く」「契約外の稼働を分けて記録する」「更新の節目で範囲と条件を直す」です。膨張そのものが悪いのではなく、膨らんだ分が契約と条件に反映されないまま続くことが失敗です。範囲外の依頼への対応は範囲外の依頼が増えたときに、断り方は無理なときの伝え方に、抱え込みの構造は断れずに抱え込むにまとめています。
膨らむ五つの経路
範囲は、五つの経路から膨らみます。経路ごとに、依頼の形が違います。
| 経路 | 依頼の形 | なぜ受けてしまうか |
|---|---|---|
| 一、「ついでに」 | 「送信のついでに、返信の対応もお願いできますか」 | 隣の工程で、断るほどではないと感じる |
| 二、「今回だけ」 | 「今回だけ、面接の日程も組んでもらえますか」 | 一度なら、と受ける。次も来る |
| 三、「前の人はやっていた」 | 「前の担当者は、求人票も見てくれていました」 | 比べられて、自分もやらないといけないと感じる |
| 四、成果の後の期待 | 「スカウトがうまくいったので、次は内定者のフォローも」 | 評価された嬉しさで、範囲を考えずに受ける |
| 五、依頼側の型の不在 | 依頼側に型が無く、「どうすればよいか」を聞かれ、答えているうちに、その工程を担うことになる | 答えることと、担うことの線が曖昧になる |
五つの要点は、「一」の「ついでに」が、最も多く、最も気づきにくいことです。隣の工程は、自分の範囲と地続きに見え、受けることに違和感がありません。しかし、隣の工程を一つ受ければ、その隣がまた隣になり、地続きで範囲は広がり続けます。「五」は、依頼側に型が無い案件で起きやすく、専任がいない会社の依頼で注意が要ります。依頼側の型の有無はどんな会社から依頼が来るのかに書いています。
膨らんだ後に起きること
範囲が膨らんだまま続くと、次のことが起きます。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 稼働が枠を超える | 契約の範囲の稼働に、契約外の稼働が上乗せされ、本業の枠を削り始める |
| 単価が実質的に下がる | 同じ報酬で稼働が倍になれば、時間あたりの報酬は半分になる |
| 本来の範囲の品質が落ちる | 膨らんだ分に稼働を取られ、契約の範囲の工程が薄くなる |
| 更新のときに根拠が無い | 膨らんだ分を記録していなければ、「範囲が広がった」と示せず、条件を直せない |
| 依頼側の認識が固定される | 依頼側は「この範囲で、この報酬」が当たり前になり、戻すのが難しくなる |
| 範囲の一言が言えなくなる | 自分が何を担当しているかを、一言で言えなくなる。次の案件の範囲も決められない |
| 突然、続けられなくなる | 限界が来て、膨らんだ分も本来の分も止まる。断れずに抱え込む |
起きることの要点は、「依頼側の認識が固定される」ことです。膨らんだ範囲を数か月続けると、依頼側にとってそれが「契約の範囲」になります。後で「本来の範囲はここまで」と言っても、依頼側は「今までやっていたのに」と感じます。膨らんだ範囲が固定される前に、記録し、更新で直すことが要ります。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「範囲が広がるのは、依頼側に信頼されている証拠だから、よいことだ」というものです。半分は正しく、信頼されていなければ範囲は広がりません。ただ、広がった範囲が契約と条件に反映されないまま続くと、それは信頼の証拠ではなく、安く広く使われている状態になります。依頼側に悪気は無く、「頼めばやってくれる」が続いているだけですが、結果は同じです。
見ていて差がつくのは、範囲が広がったときに、それを「記録し、更新で条件に反映する」形にしているかです。広がった工程を稼働報告の「契約外」の行に書き、更新の二か月前に「範囲がこう広がったので、条件をこう直したい」と出す人は、範囲が広がるたびに条件が上がり、信頼と報酬が一緒に育っています。記録せずに受け続ける人は、範囲だけが広がり、条件は最初のままで、どこかで限界が来ています。エラベルでは、担当者の稼働報告に「契約外」の工程を分けて書く形をお願いし、更新の節目で範囲と条件を見直す形を取っています。範囲の膨張は、記録があれば成長になり、無ければ失敗になります。
依頼側も気づいていない構造
範囲の膨張は、依頼側が意図して起こしているのではなく、依頼側も気づいていないことが多いです。
| 依頼側の側で起きていること | 内容 |
|---|---|
| 「ついでに」を、追加と思っていない | 隣の工程を頼むとき、担当者は「小さいこと」と思っていて、範囲の追加とは認識していない |
| 担当者が替わり、範囲を知らない | 前任が広げた範囲を、新任は「最初からの範囲」と思っている |
| 型が無いので、範囲の線が引けない | 依頼側に採用の型が無いと、どこまでが外部の範囲かを、依頼側も決められない |
| 稼働の実態が見えていない | 外部の担当者の稼働がどれだけ増えているかは、報告に「契約外」の行が無ければ、依頼側には見えない |
| 断られないので、続けている | 断られたことが無いので、「頼めばやってくれる」が続く。悪気は無い |
構造の要点は、「依頼側には、範囲が広がっていることが見えていない」ことです。依頼側から見れば、「小さいことを頼んでいる」だけで、それが積み重なって稼働が倍になっているとは思っていません。だから、事実を見せれば、依頼側は「そんなに増えていたのか」となり、条件の見直しに応じることが多いです。事実を見せる形は稼働報告のフォーマットに、見直しの進め方は更新時の条件見直しに整理しています。
兆しの見つけ方
膨張が固定される前に、兆しがあります。
| 兆し | 何が起きているか |
|---|---|
| 稼働ログに、契約の工程に無い作業が増えている | 契約外の工程が積み上がっている。最初の兆し |
| 「ついでに」「今回だけ」と言われる回数が増えた | 膨張の経路が開いている |
| 自分の範囲を一言で言えなくなった | 範囲が地続きで広がり、線が消えている |
| 稼働報告に書けない稼働がある | 契約外の稼働を、報告に載せる根拠が無い |
| 更新の話が「今の条件で」と当然のように来る | 依頼側の認識が固定され始めている |
| 本来の範囲の工程が、以前より薄くなった | 膨らんだ分に稼働を取られている |
| 「前の人はやっていた」と言われた | 前任が広げた範囲を、引き継がされている |
兆しの要点は、「稼働ログの契約外の作業」が最初に見える兆しだということです。ログを付けていれば、契約の工程に無い作業が現れた時点で気づけます。ログが無ければ、稼働が枠を超えて初めて気づきます。ログの付け方は稼働ログの付け方に書いています。
膨張を防ぐ三つの線
三本の線を、契約の最初から引いておきます。
| 線 | 内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 一、契約の範囲を工程で書く | 「採用業務全般」ではなく「スカウトの検索・送信・一次返信・面接の設定まで」と、工程で書き、受けない工程も書く。契約書の範囲の条項に反映してもらう | 依頼が来たら「範囲の中か外か」を見る。外なら「範囲の外なので」と言える。受ける範囲の決め方、契約はどうなるか |
| 二、契約外の稼働を分けて記録する | 範囲外の依頼を受けた場合、稼働ログと稼働報告に「契約外」の行を作り、工程と時間を書く | 依頼側にも毎月見える。更新のときの根拠になる。書けない稼働は受けない |
| 三、更新の節目で範囲と条件を直す | 更新の二か月前に、一期分の契約外の記録を並べ、「範囲に入れて条件を直す」「依頼側に戻す」「止める」の選択肢を出す | 膨らんだ分を、契約と条件に反映する。固定される前に |
三本の要点は、「二」の記録が、「三」の見直しの根拠になることです。記録が無ければ、「範囲が広がった」は自分の感覚で、依頼側には示せません。記録があれば、「〇月から〇〇の工程が加わり、月に〇時間」と事実で示せ、依頼側は判断できます。範囲外の依頼が来たときの対応は範囲外の依頼が増えたときに、その場での断り方は無理なときの伝え方に整理しています。
膨らんでしまった後の戻し方
すでに膨らんでいる場合、戻す順番があります。急に戻すと、依頼側との関係が崩れます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 一、契約の範囲と、実際の範囲を並べる | 契約書の範囲の条項と、稼働ログの実際の工程を並べ、差を一覧にする |
| 二、差の稼働を出す | 契約外の工程に、月にどれだけの時間を使っているかを、ログから出す |
| 三、依頼側に事実として見せる | 「契約の範囲は〇〇でしたが、現在は△△と□□も担当しており、月に〇時間になっています」。責めずに事実で |
| 四、三つの選択肢を出す | 「範囲に入れて条件を見直す」「御社の社内に戻す(型と手順を渡す)」「止める(期限を切って)」。依頼側に選んでもらう。改善提案の伝え方 |
| 五、決まったら契約に反映する | 更新なら新しい契約書に。途中なら覚書かメールで。文面に残す |
| 六、範囲の一言を書き直す | 新しい範囲を一言にし、登録先のプロフィールも直す。プロフィールの書き方 |
戻し方の要点は、「四」で「現状のまま続ける」を選択肢に入れないことです。「現状のまま」を入れると、依頼側はそれを選び、膨らんだ範囲が固定されます。範囲に入れて条件を直すか、戻すか、止めるかの三つにし、「今の範囲で今の条件」は無いことを示します。依頼側に戻すときは、型と手順を渡せば、「投げ返した」ではなく「引き継いだ」になります。戻し方の詳細は断れずに抱え込むに書いています。
範囲を広げるべきときとの見分け
範囲が広がることは、失敗ではなく成長でもあります。膨張と成長の違いを見分けます。
| 項目 | 膨張(失敗) | 成長(広げるべき) |
|---|---|---|
| 広がり方 | 「ついでに」「今回だけ」で、なし崩しに | 更新の節目で、意図して |
| 契約への反映 | 反映されていない。契約の範囲は最初のまま | 新しい範囲が契約に書かれている |
| 条件への反映 | 条件は最初のまま | 範囲に合わせて稼働と単価が見直されている |
| 記録 | 契約外の稼働として記録されていないか、記録があっても使われていない | 記録を根拠に、範囲と条件が決まっている |
| 自分の範囲の一言 | 言えなくなっている | 新しい一言になっている |
| 依頼側の認識 | 「頼めばやってくれる」 | 「この範囲を、この条件で頼んでいる」 |
| 工程の帯 | 同じ帯の工程が横に増えている(隣の工程) | 上の帯の工程が加わっている(型を作る、設計する) |
見分けの要点は、「契約と条件に反映されているか」です。同じ工程が加わるのでも、更新の節目で契約に書かれ、条件が見直されていれば成長で、なし崩しに加わり条件が最初のままなら膨張です。広げること自体を避けるのではなく、広げるときは節目で、契約と条件と一緒に広げます。広げる順番は次の案件へ広げるに、工程の帯の考え方はどれくらい稼げるかに整理しています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、範囲が広がって収入と信頼が育っている人と、範囲が広がって疲れて止まった人は、広がった範囲の中身は似ています。違いは、広がった分を記録し、更新の節目で契約と条件に反映しているかどうかです。前者は、範囲が広がるたびに条件が上がり、依頼側からも「この範囲をこの条件で頼んでいる」と認識されています。後者は、範囲だけが広がり、条件は最初のままで、依頼側からは「頼めばやってくれる人」と認識され、限界が来て止まっています。
順番として、契約の範囲を工程で書き、範囲外の依頼が来たら線に当て、受けるなら契約外として記録し、稼働報告に契約外の行を毎月書き、更新の二か月前に一期分を並べて、範囲に入れるか戻すか止めるかを依頼側と決め、契約と条件に反映する。この順番で、範囲の広がりは膨張ではなく成長になります。エラベルでは、担当者の稼働報告に契約外の工程を分けて書く形をお願いし、更新の節目で範囲と条件を見直す形を取っています。範囲は、広げるものではなく、記録して反映するものです。
まとめ
- 範囲の膨張は「ついでに」「今回だけ」「前の人は」の小さな積み重ねで起き、気づくのは稼働が枠を超えてから
- 膨らんだまま続くと稼働が枠を超え・単価が実質的に下がり・本来の品質が落ち・更新の根拠が無く・依頼側の認識が固定される
- 依頼側には範囲が広がっていることが見えていない。事実を見せれば応じることが多い
- 兆しは稼働ログの契約外の作業が最初。範囲の一言が言えなくなったら、線が消えている
- 線は三本。契約の範囲を工程で書く・契約外の稼働を分けて記録する・更新の節目で範囲と条件を直す
- 戻すときは契約と実際を並べ・差の稼働を出し・事実で見せ・三つの選択肢(現状維持は入れない)・契約に反映・一言を書き直す
- 契約と条件に反映されていれば成長、されていなければ膨張
よくある質問
「ついでに」と頼まれた小さな作業を、毎回断るのは角が立ちませんか
毎回断る必要はなく、受けるなら「契約外」として記録し、更新で反映すれば、角は立ちません。角が立つのは、その場で断ることではなく、受け続けて限界が来て突然止まることです。受けるときに「これは契約の範囲外なので、稼働の記録に契約外として残し、更新のときにご相談します」と一言添えれば、依頼側は「範囲外だと認識している」と分かり、更新の見直しも驚かれません。その場の判断の仕方は範囲外の依頼が増えたときに整理しています。
前任が広げた範囲を、自分が引き継いでいます。戻せますか
戻せます。前任の範囲は前任の契約で、自分の契約は自分の範囲です。「前任の方が担当されていた〇〇は、私の契約の範囲には入っていないので、範囲に入れて条件を見直すか、御社の社内で担当していただくか、ご相談したい」と、契約の前か、最初の更新で出します。前任との比較で「やってくれていた」と言われても、「前任の方の契約の範囲と、私の範囲は別です」と、事実で線を引きます。担当者が替わった後の範囲の確認はいつ辞めても困らない状態を作るにも書いています。
範囲を広げたいのですが、膨張にならないように広げるにはどうすればよいですか
更新の節目で、意図して広げます。「次の期は、〇〇の工程を範囲に加えたい。稼働は月に〇時間増え、単価はこう見直したい」と、範囲と稼働と条件を一緒に出し、契約に反映してもらいます。なし崩しに加わった工程を後から契約に入れるのではなく、加える前に契約に入れる順番です。広げる工程は、同じ帯の隣の工程より、上の帯(型を作る、設計する)の工程を選ぶと、単価の帯も上がります。広げる順番は次の案件へ広げるに、条件の出し方は更新時の条件見直しに書いています。