人事副業 / 両立・スキル
案件でよくある失敗|期待値のずれ|人事の副業で最初につまずくのは、依頼側の「これくらいはやってくれる」と自分の「ここまでが範囲」が、契約の前に合っていないこと。ずれは「範囲・成果・稼働・判断の所在・報告」の五つで起き、最初の打ち合わせで潰せる
契約して一か月。依頼側の担当者は「そろそろ面接の設定が増えてくると思っていた」と言い、自分は「まだ文面の型を作っている段階」だと思っていた。担当者は「合否の意見も聞きたい」と言い、自分は「それは範囲の外」だと思っていた。どちらも間違っていないが、合っていない。結論を先に書くと、期待値のずれは、人事の副業で最初につまずく失敗で、依頼側の「これくらいはやってくれる」と自分の「ここまでが範囲」が、契約の前に合っていないことから起きます。ずれは「範囲」「成果」「稼働」「判断の所在」「報告」の五つの項目で起き、どれも最初の打ち合わせで合わせられます。合わせずに始めると、数週間から数か月後に「思っていたのと違う」が双方から出て、稼働の質に関わらず関係が崩れます。すり合わせの進め方は期待値のすり合わせに、初回の打ち合わせの項目は初回打ち合わせの進め方に、条件の合意は条件のすり合わせにまとめています。
ずれが起きる五つの項目
期待値のずれは、五つの項目のどれかで起きます。項目ごとに、依頼側と自分の「思っていること」が違います。
| 項目 | 依頼側が思っていること(例) | 自分が思っていること(例) | ずれの形 |
|---|---|---|---|
| 一、範囲 | 「採用のことは一通り見てくれる」 | 「スカウトの運用だけ」 | 依頼側は広く、自分は狭く |
| 二、成果 | 「数か月で採用が決まる」 | 「返信と面接の設定まで。その先は依頼側」 | 依頼側は採用の数字、自分は範囲の出口 |
| 三、稼働 | 「毎日、日中に対応してくれる」 | 「平日の夜と週末。本業の時間中は動けない」 | 依頼側は社員に近い稼働、自分は副業の枠 |
| 四、判断の所在 | 「合否や条件の意見も言ってくれる」 | 「判断は依頼側。自分は材料を出す」 | 依頼側は判断への関与、自分は材料まで |
| 五、報告 | 「動きは随時知らせてくれる」 | 「週に一度、まとめて」 | 依頼側は即時、自分は定期 |
五つの要点は、「どちらも自分の前提を当たり前だと思っていて、確認していない」ことです。依頼側は、外部の担当者を社員に近い形で想像し、自分は、副業の枠で想像しています。どちらも口に出さないので、ずれは契約の後に、行動の違いとして現れます。範囲の決め方は受ける範囲の決め方に、成果の定義は成果をどう定義しておくかに、判断の所在は権限がないと動けない場面に書いています。
依頼側の側にある期待の形
依頼側の期待は、依頼側の型と、外部に頼む理由で形が決まります。形を知ると、ずれやすい項目が読めます。
| 依頼側の型 | 期待の形 | ずれやすい項目 |
|---|---|---|
| 人事の専任がいない | 「採用のことを全部見てほしい」。範囲が広く、判断も求める | 範囲、判断の所在 |
| 専任はいるが手が足りない | 「型に沿って、量を回してほしい」。成果は量で見る | 成果、稼働 |
| 特定の工程だけ外に出したい | 「この工程を、社内の仕組みの中で」。範囲は明確だが、社内の手続きに合わせることを求める | 報告、稼働(社内の時間に合わせること) |
| 以前に外部を使ったことがある | 「前の人はこうだった」。前任の形を基準にする | 範囲、報告 |
| 以前に外部を使ったことがない | 「何を頼めるか分からない」。期待が固まっておらず、始まってから形になる | 五つ全部 |
期待の形の要点は、「以前に外部を使ったことがない依頼側は、期待が固まっていない」ことです。この依頼側は、始まってから「もっとこうしてほしい」が次々に出て、ずれが後から生まれます。最初の打ち合わせで、こちらから五つの項目を示し、依頼側の期待を言葉にしてもらう必要があります。依頼側の型の見分け方はどんな会社から依頼が来るのかに整理しています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「契約書に範囲が書いてあれば、期待はずれない」というものです。実際には、契約書の範囲の条項は、依頼側の担当者の頭の中の期待とは別のものです。担当者は、契約書を読んでいても、「これくらいはやってくれるだろう」を別に持っていて、それは契約書には書かれていません。契約書は範囲の外側の線で、期待は範囲の内側の「どのくらい」「いつまでに」「どんな形で」です。
見ていて差がつくのは、最初の打ち合わせで「御社が想像している、私の一週間の動きを教えてください」と聞いているかです。この問いで、担当者の頭の中の期待が言葉になります。「毎日返信して、週に一度は面接が入って、月末には報告が来る」のように出てきたら、そこで「返信は夜になる」「面接の設定は最初の数週間は型づくりで、その後」「報告は週に一度と月に一度」と、一つずつ合わせられます。エラベルでは、依頼側と担当者の最初の打ち合わせで、五つの項目を一つずつ合わせる形をお願いしています。期待は、契約書ではなく、会話で合わせるものです。
ずれたまま始めると起きること
五つのどれかがずれたまま始めると、それぞれの形で「思っていたのと違う」が現れます。
| ずれた項目 | 数週間後に起きること | 依頼側の言葉 |
|---|---|---|
| 範囲 | 範囲外の依頼が来て、断るか受けるかで揉める | 「それもやってくれると思っていた」 |
| 成果 | 自分は出口が動いていると思い、依頼側は採用が決まらないと思う | 「成果が見えない」。成果が見えない |
| 稼働 | 日中に連絡が来て、夜に返し、依頼側は「遅い」と感じる | 「もっと早く反応してほしい」。連絡の遅れ |
| 判断の所在 | 意見を求められて答え、それが判断として扱われるか、答えずに「頼りない」と思われる | 「もっと踏み込んでほしい」か「勝手に決めた」 |
| 報告 | 依頼側が「今どうなっている」と聞きに来るか、報告が多すぎて読まれない | 「報告が無い」か「細かすぎる」。報告の頻度をどう決めるか |
起きることの要点は、「ずれは、稼働の質とは無関係に、関係を崩す」ことです。自分は範囲の中で質の高い仕事をしていても、依頼側の期待と違えば、「思っていたのと違う」になります。逆に、質が同じでも、期待が合っていれば「言った通り」になります。期待を合わせることは、仕事の質を上げることと同じくらい、評価に効きます。
兆しの見つけ方
ずれは、「思っていたのと違う」と言われる前に、兆しが出ます。
| 兆し | ずれている項目 |
|---|---|
| 依頼側から「これもお願いできますか」が早い段階で来る | 範囲。依頼側の範囲の想像が自分より広い |
| 「そろそろ結果が」と、自分の想定より早く言われる | 成果。依頼側の時間軸が自分より短い |
| 日中に連絡が来て、返事を待たれている | 稼働。依頼側が日中の対応を想定している |
| 「どう思いますか」と意見を求められることが多い | 判断の所在。依頼側が判断への関与を想定している |
| 「今、どうなっていますか」と聞かれる | 報告。依頼側の想定より、報告が少ないか遅い |
| 依頼側の担当者の反応が、最初より薄くなった | どこかがずれていて、担当者が「違う」と感じ始めている |
| 自分が「そんなつもりではなかった」と感じることが増えた | 自分の側の期待も、依頼側と合っていない |
兆しの要点は、「早い段階で来る『これもお願いできますか』」が、最も早い兆しだということです。始めて数週間で範囲外の依頼が来るなら、依頼側の範囲の想像が自分より広く、最初の打ち合わせで合わせきれていません。兆しが出たら、その項目だけを改めて合わせます。
最初の打ち合わせで五つを合わせる
五つの項目を、最初の打ち合わせで一つずつ合わせます。聞き方と、合わせる形です。
| 項目 | 聞き方 | 合わせる形 |
|---|---|---|
| 一、範囲 | 「私に頼みたい工程を、具体に教えてください。逆に、御社の社内で持つ工程はどれですか」 | 工程で書き出し、受ける工程と受けない工程を分け、契約書の範囲の条項に反映する |
| 二、成果 | 「私の範囲の成果を、何で見ますか。採用が決まるまでには、私の範囲の先に御社の面接と条件があります」 | 自分の範囲の出口を成果に置き、その先は依頼側の範囲と分け、いつ見るかを決める。成果をどう定義しておくか |
| 三、稼働 | 「私の稼働は、平日の夜と週末です。本業の時間中は反応できません。御社が想定している私の動き方はどうですか」 | 固定できる枠と、返信の時間帯を伝え、依頼側の想定と合わせる。週何時間必要か |
| 四、判断の所在 | 「合否、条件、日程の優先は御社で判断いただき、私は材料を出す形でよいですか。私の判断で進めてよいことはどれですか」 | 自分で決めてよいことと、依頼側に確認することを分け、議事録に残す |
| 五、報告 | 「候補者の動きは当日中に、進捗は週に一度、稼働と成果は月に一度、の形でよいですか」 | 三層の報告の経路と頻度を決める。報告の頻度をどう決めるか |
| 全体 | 「御社が想像している、私の一週間の動きを教えてください」 | 依頼側の頭の中の期待を言葉にしてもらい、五つの項目に当てはめる |
合わせる要点は、「全体」の問いで、依頼側の期待を先に言葉にしてもらうことです。五つを順に聞くだけだと、依頼側は「はい」と答えて終わり、頭の中の期待は出てきません。「一週間の動きを想像して教えてください」と聞くと、期待が具体になり、ずれが見えます。最初の打ち合わせの全体は初回打ち合わせの進め方に、ヒアリングの型はヒアリングの進め方に整理しています。
途中でずれに気づいたときの直し方
始まってからずれに気づいた場合、項目ごとに直します。全部を一度に直そうとせず、ずれた項目だけを。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 一、どの項目がずれたかを見る | 「思っていたのと違う」の中身を、五つの項目に当てはめる。範囲か、成果か、稼働か、判断か、報告か |
| 二、依頼側の期待を、改めて言葉にしてもらう | 「〇〇について、御社が想定していた形を教えてください」と、責めずに聞く |
| 三、自分の前提を伝える | 「私は〇〇と考えていました。ずれていたので、合わせたいです」 |
| 四、合わせる形を提案する | 依頼側の期待に寄せられる部分と、自分の枠で寄せられない部分を分け、選択肢を出す。改善提案の伝え方 |
| 五、決まったら議事録に残す | 「〇〇については、今後はこの形」と、決まったことを文面に。議事録の残し方 |
| 六、他の項目もずれていないかを見る | 一つがずれていたなら、他もずれている可能性がある。この機会に五つを確認する |
直し方の要点は、「二」で依頼側を責めないことです。「そんな話は聞いていない」と言うと、依頼側は「言ったはず」となり、話が過去に向きます。「想定していた形を教えてください」と聞けば、話は今後に向き、合わせる形が決まります。ずれは、どちらが悪いのでもなく、合わせていなかっただけです。
担当者が替わったときの合わせ直し
依頼側の担当者が替わると、期待は新任のものに変わります。前任と合わせた五つは、新任には引き継がれていません。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 新任が来た | 最初の打ち合わせを、契約の最初と同じ形でやり直す。五つの項目を一つずつ |
| 新任が前任と違う期待を持っている | 「前任の方とはこう合意していましたが、〇〇さんのご想定はどうですか」と、前任との合意を示しつつ、新任の期待を聞く |
| 新任が「前任はこうだった」と言う | 前任の期待と新任の期待が違うなら、新任の期待で合わせ直す。ただし、範囲と稼働の枠は自分の側の条件なので、変えられない部分は伝える |
| 新任が外部の担当者を使った経験が無い | 期待が固まっていない。「一週間の動きを想像して」の問いで、期待を言葉にしてもらう |
| 合わせ直しの結果を議事録に残す | 新任との合意を、前任との合意と同じ形で文面に |
合わせ直しの要点は、「新任との最初の打ち合わせを、契約の最初と同じ重さでやる」ことです。「引き継ぎを受けているだろう」と思って省くと、新任の期待とずれたまま進み、数週間後に「思っていたのと違う」が来ます。担当者の交代への備えはいつ辞めても困らない状態を作るに書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、案件が長く続いている人は、仕事の質が高いだけでなく、最初の打ち合わせで依頼側の期待を言葉にし、五つの項目を一つずつ合わせています。合わせた内容は議事録にあり、依頼側の担当者が替わっても、同じ形で合わせ直しています。「思っていたのと違う」が出ないので、稼働の質がそのまま評価になります。合わせていない人は、質が高くても、期待とのずれで評価が下がり、「頑張っているのに」となっています。
順番として、契約の前に「一週間の動きを想像して」と聞いて依頼側の期待を言葉にし、範囲・成果・稼働・判断の所在・報告の五つを一つずつ合わせ、議事録に残し、兆しが出たらその項目だけを合わせ直し、担当者が替わったら最初と同じ重さで合わせ直す。この順番で、期待値のずれは、最初につまずく失敗ではなく、最初に潰せる失敗になります。エラベルでは、依頼側と担当者の最初の打ち合わせで五つの項目を合わせる形を整えており、依頼側の期待と担当者の前提を、契約の前に会話で揃えています。期待は、契約書ではなく、会話で合わせるものです。
まとめ
- 期待値のずれは範囲・成果・稼働・判断の所在・報告の五つで起き、どちらも自分の前提を当たり前だと思って確認していない
- 依頼側の期待の形は依頼側の型と外部に頼む理由で決まる。外部を使ったことがない依頼側は、期待が固まっていない
- ずれたまま始めると稼働の質と無関係に「思っていたのと違う」が出て、関係が崩れる
- 兆しは早い段階の「これもお願いできますか」・想定より早い「そろそろ結果が」・日中の連絡・意見を求められる・「今どうなっている」
- 最初の打ち合わせで「一週間の動きを想像して教えてください」と聞き、五つを一つずつ合わせ、議事録に残す
- 途中で気づいたらずれた項目だけを、責めずに、依頼側の期待を聞いて合わせ直す
- 担当者が替わったら最初と同じ重さで合わせ直す
よくある質問
最初の打ち合わせで五つを全部聞くと、細かい人だと思われませんか
聞き方によります。「確認事項です」と一覧で聞くと、細かく見えます。「御社が想像している私の一週間の動きを教えてください」と聞き、出てきた話に沿って五つを合わせていけば、会話の流れの中で自然に決まります。依頼側の担当者は、最初に合わせておいたほうが後で困らないことを知っているので、合わせようとする担当者を「細かい」ではなく「準備ができている」と見ることが多いです。聞き方の型はヒアリングの進め方に整理しています。
依頼側の期待が、自分の枠では応えられないものでした
応えられない部分を、契約の前に伝えます。「日中の対応をご想定でしたが、私の稼働は夜と週末です。日中の対応が要る工程は、御社の社内で持っていただくか、範囲から外す形でいかがでしょうか」と、できる形を示します。契約の前なら、依頼側は「では、この範囲で」と決めるか、「合わない」と判断するかを選べます。契約の後に分かるより、双方にとって負担が小さい。無理な期待への伝え方は無理なときの伝え方に書いています。
窓口を通した案件では、期待値は窓口が合わせてくれますか
窓口は、依頼側の相談と担当者の範囲と条件を合わせて提示するので、範囲と稼働の大枠は合っていることが多いです。ただし、成果の見方、判断の所在、報告の形のような、依頼側の担当者の頭の中の期待は、担当者と直接話さないと出てきません。窓口が合わせた大枠を前提に、最初の打ち合わせで五つの項目を担当者と合わせます。窓口が合わせた内容と、担当者の期待がずれていたら、窓口に伝えて調整してもらいます。