人事副業 / 採用・人事の実務
スプレッドシートで採用管理を作る|「一人一行・段階は一列・記録は別シート」で、ATSが無くても回る型
ATSを入れるほどの規模ではない、または入れる前に回る形を作りたい。そのとき、スプレッドシートで採用管理を作ることになります。ところが、依頼側の既存のシートを開くと、一人が複数行にわたり、段階が「一次済」「二次済」と列で並び、セルにメモが混ざり、誰が最新かが分からない。スプレッドシートが崩れるのは、道具の限界ではなく、構造が無いからです。結論を先に書くと、スプレッドシートの採用管理は、一人一行・段階は一列で選択式・記録は別シートで紐づけの三つを基本に、一覧の項目を絞り、更新の担当とタイミングをATSと同じルールで決め、個人情報の列を分けて共有の範囲を設計し、関数と自動化は最小に留め、ATSに移行しても困らない形で作ります。ATSの選定はATSの選定と初期設定に、運用ルールはATSの運用ルールを作るに書いています。ここでは、スプレッドシートの型に絞ります。
崩れる典型
| 崩れ方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 一人が複数行(応募のたび、面接のたびに行が増える) | 「いま誰がどの段階か」が数えられない |
| 段階が複数列(「一次済」「二次済」に○) | 段階を進めるたびに列を探す。一覧で並べられない |
| セルにメモが混ざる | 検索できない。誰が書いたか分からない |
| 個人情報と評価が同じ行 | 面接官に見せると連絡先も見える |
| 誰が最新の行を持っているか分からない | コピーが増え、正が分からない |
崩れたシートを直すより、構造を決めて作り直すほうが早いことが多い。ただし、選考中の候補者の情報は正確に移します。
基本の三つ
| 基本 | 中身 | なぜ |
|---|---|---|
| 一人一行 | 候補者一人につき一行。応募や面接で行を増やさない | 「段階ごとに何人」が数えられる |
| 段階は一列で選択式 | 「段階」の列を一つ作り、プルダウンで選ぶ(応募/書類/一次/二次/最終/内定/入社/見送り/辞退) | 並べ替えと絞り込みができる。表記の揺れが出ない |
| 記録は別シートで紐づけ | 評価シートの記録は別のシートに、候補者の番号で紐づける | 一覧が重くならない。面接官に一覧を見せずに記録だけ書ける |
三つが守られていれば、スプレッドシートはATSと同じ構造になります。ATSは、この三つを画面にしたものです。
エラベルの見解
担当する側から見ると、スプレッドシートで最も差がつくのは、「段階を一列で選択式にする」を最初に決められるかどうかです。受ける側は、依頼側の既存のシートの「一次済」「二次済」の列を尊重して、そのまま足していきます。ただ、段階が列だと、「いま一次で止まっている人は何人か」が数えられず、採用ファネルを可視化するができません。段階を一列にして、選択肢を依頼側の選考の段階と一致させる。それだけで、一覧の並べ替えと段階ごとの数が出ます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「採用管理のシートで、段階は一列ですか、複数列ですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、既存のシートを見たら、段階が一列かを最初に確かめ、複数列なら作り直しを提案すること。作り直しの負担より、数えられないことの損失が大きい、と伝えます。
一覧に置く項目
| 列 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| 番号 | 候補者ごとの通し番号。記録のシートとの紐づけの鍵 | 氏名ではなく番号で紐づける |
| 段階 | 一列、選択式 | 依頼側の選考の段階と一致 |
| 経路 | どこから来たか(媒体名、紹介、リファラル、自己応募) | 選択式 |
| 応募日 | 最初の接点の日 | 日付の形式を揃える |
| 最終更新日 | 段階が動いた日 | 週次の確認で「古い順」に並べる鍵 |
| 担当 | いま誰が動かすか | 一人。選択式 |
| 次にやること | 一行 | 日程調整中、評価シート待ち、結果連絡、など |
| 次の日程 | 面接や面談の日時 | 日付と時刻 |
| 見送り・辞退の理由 | 段階が見送りか辞退のときだけ。分類(速さ・迷い・接点・条件・要件・その他) | 選択式。自由記述は記録のシートに |
氏名と連絡先は、一覧とは別の「個人情報」のシートに置き、番号で紐づけます。一覧を面接官に見せても、連絡先が見えない形にします。項目は上の範囲で足り、増やすと更新が止まります。
記録のシート
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 番号 | 一覧の番号と同じ |
| 段 | 一次・二次・最終のどれか |
| 面接官 | 誰が書いたか |
| 観点一〜三の事実 | 候補者が語った場面。一行ずつ |
| 観点一〜三の判断 | 通す・迷う・通さない。選択式 |
| 候補者の質問と迷い | 一行 |
| 次の段への引き継ぎ | 一行 |
| 記入日 | 面接の直後 |
評価シートの型をそのまま列にします。面接官には、このシートの自分の段の行だけを渡す(別のシートに分けるか、フィルタで見せる)形にします。評価シートの型は評価シートを作るに書いています。
更新のルールはATSと同じ
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 更新の担当 | 段階ごとに一人 |
| 更新のタイミング | 「面接の直後」「日程が決まった直後」など、既にある行動の直後 |
| 段階を進める条件 | 記録のシートの判断が埋まり、決める人が通したら、人事が段階を進める |
| 正はどれか | 共有の場所にある一つのシートが正。コピーを作らない。ダウンロードしない |
| 週次の確認 | 最終更新日の古い順に並べ、止まっている候補者を担当に知らせる |
道具が変わってもルールは同じです。ルールの作り方はATSの運用ルールを作るに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「スプレッドシートなら、関数と自動化で便利にできる」というものです。実際には、関数と自動化が増えるほど、作った担当者にしか直せなくなり、担当者が替わった瞬間に壊れます。段階ごとの数を出す関数と、最終更新日の並べ替え。それ以上は足しません。「見た目が良い集計」より「誰でも直せる素の表」のほうが、長く使われます。受ける側がその場で使える判断としては、関数を一つ足すたびに、「依頼側の人事が、この関数を自分で直せるか」を問うこと。直せないなら足しません。集計が要るなら、別のシートに手で転記する形のほうが、壊れません。
共有の範囲と個人情報
| シート | 誰が見られるか | 中身 |
|---|---|---|
| 一覧 | 人事、決める人、副業の担当者(契約の範囲で) | 番号・段階・経路・日程・担当・次にやること |
| 個人情報 | 人事と、日程調整を担う人だけ | 番号・氏名・連絡先・履歴書の置き場所 |
| 記録 | 各段の面接官は自分の段の行だけ。決める人は全部 | 観点ごとの事実と判断 |
| 集計 | 人事、決める人 | 段階ごとの数、経路ごとの数(手で転記か最小の関数) |
シートを分けて、共有の設定をシートごとに変えます。一つのブックに全部を入れて全員に共有すると、面接官に連絡先が見えます。共有の設定は依頼側の管理者が行い、担当者は設計を渡すまでです。個人情報の扱いに法令が関わる場合は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。扱いは個人情報の扱いと情報の取り扱いと端末の分離に書いています。
ATSに移行しても困らない形
| 形 | なぜ |
|---|---|
| 一人一行 | ATSの候補者の一覧と同じ構造。そのまま移せる |
| 段階が一列で選択式 | ATSの段階に対応させられる |
| 番号で紐づけ | 記録と個人情報を、番号で一緒に移せる |
| 日付の形式が揃っている | 取り込みで崩れない |
| セルにメモが無い | 移すものが明確 |
スプレッドシートを「ATSの前段」として作っておけば、候補者が増えてATSに移るときに、作り直しが要りません。移行の順番はATSの選定と初期設定に書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 既存のシートが崩れていて直せない | 選考中の候補者だけを新しい構造に移し、旧シートは読み取り専用で残す |
| 依頼側が「氏名を一覧に出したい」と言う | 一覧に番号と、個人情報のシートへの参照だけ。連絡先は出さない。氏名を出すかは依頼側の決まり |
| 面接官が一覧を見て他の候補者の記録を読む | 記録のシートを段ごとに分け、共有を段ごとに |
| 関数が壊れた | 壊れた関数を消し、手で転記する形に戻す。足すときは人事が直せるものだけ |
| コピーが増えて正が分からない | 共有の場所の一つを正と決め、コピーとダウンロードを禁止する一行をルールに |
| 段階の選択肢が増え続ける | 依頼側の選考の段階だけ。「保留」「要相談」を増やさず、「次にやること」の列に書く |
まとめ
- 崩れるのは道具のせいではなく構造が無いから
- 基本は一人一行・段階は一列で選択式・記録は別シートで番号で紐づけ
- 一覧の項目は番号・段階・経路・日付・担当・次にやること・次の日程・理由の分類。氏名と連絡先は別シート
- 記録のシートは評価シートの型をそのまま列に。面接官には自分の段だけ
- 更新のルールはATSと同じ。担当・タイミング・進める条件・正はどれか・週次の確認
- 関数と自動化は最小に。依頼側の人事が直せないものは足さない
- シートを分けて共有の範囲を変える。個別の判断は専門家にご確認ください
- ATSの前段として作れば、移行で作り直しが要らない
よくある質問
依頼側が「Excelのファイルをメールで回している」状態です
正が分からなくなる構造なので、共有の場所にある一つのシートに変える提案をします。メールで回す形は、個人情報が添付で流れることにもなり、依頼側の決まりに照らして問題になることがあります。変えられない事情があるなら、少なくとも「一人一行・段階は一列」の構造にし、最新版の管理を一人に決めます。共有の形の判断は依頼側です。
複数の求人を一つのシートで管理してよいですか
一覧に「求人」の列を足し、選択式にすれば、一つのシートで複数の求人を管理できます。段階の選択肢が求人で違う(新卒と中途で段階が違う)なら、シートを分けます。記録のシートの観点は求人ごとに違うので、記録は求人ごとに分けるほうが扱いやすい。一覧は一つ、記録は求人ごと、が基本の形です。
スプレッドシートの作成を「副業の成果物」として、単価に含めてよいですか
構造の設計(三つの基本と項目とルール)は成果物です。ただし、作ったシートは依頼側のもので、担当者が持ち出したり、他の依頼側で使い回したりしません。使い回せるのは「型」(項目の並び、ルールの一枚の形)だけです。成果物の範囲と、案件の終了後の扱いは契約に書きます。範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。