人事副業 / 採用・人事の実務
リファレンスチェックを行う|「裏を取る」ではなく、本人の同意のもとで「面接の観点を第三者の事実で補う」型
「リファレンスチェックをしてほしい」という依頼を、「前職での評判を調べる」「裏を取る」と受け取ると、事故になります。本人の知らないところで前職に連絡する、本人が指定していない相手に聞く、面接の観点と関係ない評判を集める。どれも、個人情報と募集・採用に関わる法令の整理、そして候補者との信頼に関わります。結論を先に書くと、リファレンスチェックは、本人の同意と依頼側の決まりを前提に、本人が指定した相手に、面接の観点と同じ項目で「過去の場面の事実」だけを聞き、聞いてはいけない項目に触れず、記録と共有の範囲を限定し、結果の扱いは依頼側の判断に残して、担当者は整理までを行います。会社側から見た手順はリファレンスチェックの進め方に、代行に出す範囲はリファレンスチェックは代行に出せるかに書いています。ここでは、副業の担当者が関わるときの型に絞ります。
「裏を取る」で進めると事故になる
| やってしまうこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 本人に知らせずに前職へ連絡 | 本人の同意が無い。個人情報と信頼の両方の問題。転職活動が現職に知られる |
| 本人が指定していない相手に聞く | 同意の範囲外。聞かれた側も答える立場に無い |
| 「どんな人でしたか」と評判を聞く | 面接の観点と関係ない印象が集まり、判断に混ざる |
| 聞いた内容を面接官全員に回す | 共有の範囲が広がり、管理できない |
| 結果で不採用にする判断を担当者がする | 決めるのは依頼側 |
リファレンスチェックは、「調査」ではなく、「本人の同意のもとで、面接で確かめた観点を、第三者の事実で補う」ものです。この位置づけを依頼側と共有してから始めます。
前提:本人の同意と依頼側の決まり
| 前提 | 中身 |
|---|---|
| 本人の同意 | 実施すること、聞く相手、聞く項目、結果の用途を本人に説明し、同意を得る。書面の形は依頼側の決まりに従う |
| 依頼側の決まり | 実施するかどうか、どの段階で、誰が、どう記録し、どう保管するか。依頼側の規程と専門家の確認に従う |
| 聞く相手の指定 | 本人が指定した人(前職の上司・同僚など)。依頼側が指定しない |
| 現職への配慮 | 現職に聞く場合は、本人の転職活動が現職に知られる。本人の意向を優先 |
同意の取り方、記録の保管、法令上の整理は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。担当者が「これで大丈夫」と判断しません。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにと個人情報の扱いに書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、リファレンスチェックで最も差がつくのは、「聞く項目を面接の観点に限る」ことができるかどうかです。受ける側は、せっかく前職の人に聞けるのだから、と「勤務態度」「人間関係」「退職の理由」まで聞きたくなります。ただ、面接の観点に無い項目を聞くと、判断の基準に無い情報が集まり、それが合否に混ざります。混ざった判断は、後で説明できません。面接で「迷う」が付いた観点について、「〇〇のような場面で、この方はどう動いていましたか」と、過去の場面の事実だけを聞く。それで、リファレンスチェックは面接の補いとして機能します。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「リファレンスで聞く項目は、面接の観点と同じですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、聞く項目の一枚を、評価シートの観点をそのまま写して作ること。新しい項目を足しません。
聞く項目:面接の観点と同じ
| 面接の観点(例) | リファレンスで聞く形 |
|---|---|
| 決まりの無いことを自分で決めて進めた | 「決まりや前例が無い仕事を、この方がどう進めていたか、具体的な場面があれば教えてください」 |
| 他部門と対立した件を合意まで持っていった | 「他の部門と意見が分かれた場面で、この方はどう動いていましたか」 |
| 一人で案件を回した | 「この方が一人で担当していた仕事の範囲を教えてください」 |
| 面接で「迷う」が付いた観点 | その観点だけを重点的に |
聞くのは「事実(場面)」で、「評価(良かったか)」ではありません。「良い人でしたか」と聞くと、答える側は良く言うか、言葉を濁すかで、判断に使えません。「〇〇の場面で、どう動いていましたか」と聞くと、事実が返ります。聞き方の型は面接質問集を作るの掘る問い(状況・役割・判断・行動・結果)と同じです。
聞いてはいけない項目
| 聞かない項目 | 理由 |
|---|---|
| 性別・年齢・国籍・家族の状況・出身地・宗教や思想・健康の状態 | 募集や採用で法令上の決まりがあると一般に整理されている項目。第三者から聞くのも同じ |
| 退職の理由の詳細(本人の私的な事情) | 本人が面接で語った範囲を超えない |
| 前職の内部の情報(機密、他の社員のこと) | 答える側の守秘に関わる |
| 給与や評価の点数 | 依頼側の判断に混ざる。本人の同意の範囲外であることが多い |
| 「良い人でしたか」の総合評価 | 事実ではない |
答える側が自分から話し始めたときも、記録しません。「その点は結構です」と止めます。
記録と共有の範囲
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 記録の形 | 観点ごとに、答える側が語った場面の事実。評価や印象は書かない |
| 誰が読むか | 決める人と、依頼側の人事。面接官全員には回さない |
| 保管 | 依頼側の決まりに従う。担当者の手元に残さない |
| 本人への開示 | 依頼側の決まりに従う。担当者が判断しない |
| 答えた人の情報 | 氏名と連絡先は依頼側の記録に。担当者の手元に残さない |
記録は、評価シートの観点と同じ並びにし、「面接ではこう、リファレンスではこう」と横に置けるようにします。突き合わせの形は見極めの精度を上げると同じです。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「リファレンスで悪い話が出たら不採用」というものです。実際には、リファレンスの結果は、面接の観点を補う材料の一つで、それだけで決めるものではありません。答える側の立場(本人と合わなかった上司かもしれない)、場面の解釈、本人が面接で語ったことの整合。これらを並べて、決める人が決めます。担当者は、面接の記録とリファレンスの記録を観点ごとに並べ、「ここは一致、ここは食い違い」を示すまでです。食い違いがあれば、本人に確かめる機会を設けるかどうかも、依頼側の判断です。受ける側がその場で使える判断としては、リファレンスの記録に「判断」の欄を作らないこと。事実の欄だけにし、判断は決める人が面接の記録と合わせて行います。合否に関わる線は合否判断に関わってよいかに書いています。
担当者が実施するか、設計だけか
| 関わり方 | 担当者がやること | 前提 |
|---|---|---|
| 設計だけ | 本人への説明の文面、聞く項目の一枚、記録の形、共有の範囲を作る。実施は依頼側 | 契約の範囲に「設計」 |
| 実施も担う | 上に加えて、依頼側の名義で答える側に連絡し、聞き、記録する | 契約の範囲に「実施」。依頼側の決まりで外部の担当者が実施してよいこと。本人の同意にその旨が含まれること |
| 外部の専門の事業者を使う | 事業者の選定の材料を整え、記録の受け取りと観点の並べ方を担う | 依頼側と事業者の契約。担当者は関与しない |
副業の担当者が実施する場合、答える側から見ると「依頼側の人」です。名義、答えてよい範囲、聞いた内容の扱いを、依頼側と先に決めます。範囲の決め方は業務範囲を書面で固めるに書いています。実施が依頼側の決まりや法令の整理で外部に出せない場合は、設計だけに留めます。
進め方の順
| 順 | 中身 |
|---|---|
| 一 | 依頼側の決まりを確認する。実施の可否、段階、記録と保管、外部の担当者の関与 |
| 二 | 聞く項目の一枚を、評価シートの観点から作る。「迷う」の観点を重点に |
| 三 | 本人に説明し、同意を得る。相手の指定を本人から。書面の形は依頼側の決まりで |
| 四 | 答える側に、依頼側の名義で連絡。目的、所要時間、聞く項目の概要を先に伝える |
| 五 | 観点ごとに場面の事実を聞く。聞いてはいけない項目に触れない |
| 六 | 記録を観点ごとに。判断の欄は作らない。決める人と人事にだけ渡す |
| 七 | 担当者の手元の記録を消す。依頼側の記録が正 |
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が「本人に知らせずに」と言う | 同意が前提であることを伝え、依頼側の決まりと専門家の確認を求める。同意無しでは担当者は関与しない |
| 本人が相手を指定できない | 無理に実施しない。実施しないことを依頼側に伝え、判断は依頼側 |
| 答える側が評判を語り始める | 「〇〇の場面で、どう動いていましたか」と事実に戻す。評判は記録しない |
| 依頼側が結果で即決しようとする | 面接の記録と観点ごとに並べ、一致と食い違いを示す。判断は依頼側 |
| 記録が面接官全員に回る | 共有の範囲を先に決める。決める人と人事だけ |
まとめ
- 「裏を取る」ではなく、本人の同意のもとで、面接の観点を第三者の事実で補うもの
- 前提は本人の同意と依頼側の決まり。聞く相手は本人が指定。判断は専門家の確認に従う
- 聞く項目は面接の観点と同じ。「迷う」の観点を重点に。評判ではなく場面の事実
- 聞いてはいけない項目に触れない。答える側が話し始めても記録しない
- 記録は観点ごとに事実だけ。判断の欄を作らない。決める人と人事にだけ
- 結果の扱いは依頼側の判断。担当者は面接の記録と並べて一致と食い違いを示すまで
- 実施するか設計だけかは契約と依頼側の決まりで。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
候補者が「現職に知られたくないので、リファレンスは受けたくない」と言います
本人の意向を優先します。現職に聞かない形(前職の相手だけ)で実施できるか、実施しないかは、依頼側の判断です。担当者は、本人の意向を正確に依頼側に伝え、「現職への連絡は本人の同意が無ければ行わない」を確認します。受けないことを理由に不利に扱うかどうかも依頼側の判断で、担当者は判断しません。
答える側が、本人の悪い話を長く語りました
観点に関わる場面の事実だけを記録し、それ以外は記録しません。答える側の立場(本人との関係)を一行で残し、決める人が読むときの材料にします。悪い話が出たこと自体で判断せず、面接の記録と観点ごとに並べます。食い違いがあれば、本人に確かめる機会を設けるかは依頼側の判断です。担当者が「この人は危ない」と伝えることはしません。
リファレンスの結果を、本人に伝えてよいですか
依頼側の決まりに従います。担当者が判断しません。本人から「何と言われましたか」と聞かれても、「結果の扱いは会社の決まりに従います」と答え、内容には触れません。答える側の情報を本人に伝えることも、答える側との関係に関わるため、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。