人事副業 / ジョブディスクリプションの作成
ジョブディスクリプションの作成の副業案件|求められる経験と進め方
ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成は、「うちにはJDが無い」と気づいた会社から出る副業案件です。求人票が箇条書きのまま、面接官ごとに聞くことが違う、入社した人が「聞いていた仕事と違う」と言う、評価が印象で決まる、同じ肩書でも人によって仕事が違う。その状態で「JDを作ってほしい」と外に出されます。ただ、「仕事内容を文章にする仕事」と思って受けると、業務の一覧が長々と並んだ文書ができて、誰も読まず、更新もされません。結論を先に書くと、JDの作成の副業案件は、「一職種の一枚」「全職種の型作り」「求人票と面接と評価への展開」「更新の仕組み作り」の四つの型に分かれ、求められるのは、職務を六項目(何を決めてよいか・誰と最も話すか・どこまで担うか・最初の三か月・詰まるもの・どう評価されるか)で聞けること、抽象語を一段掘れること、一枚に収められること、求人票と面接と評価の三つの使い道に展開した経験の四つです。進め方は、責任者と担当者に別々に聞く→ずれを責任者が決める→六項目で一枚に書く→両方に確認→日付を入れて共有の場所に→三つの使い道に展開→更新の仕組みを残す、の順で、職務の定義と評価の基準を決めるのは会社、等級や報酬には踏み込まず、他社のJDを写さず、基準にしてはいけない項目を入れない線を先に引いておきます。JDが無いと何が起きるかと最初の一枚の中身はジョブディスクリプションが無い会社に、採用要件の整理との違いは採用要件の整理の副業案件に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、JDの作成の案件に絞ります。
JD・採用要件・求人原稿の違い
三つは混ざりやすいので、先に分けます。JDは「この役割は何をする仕事か」を定義する文書で、社内向け。採用要件は「その仕事を担えるのは、どんな経歴の人か」で、選考の基準。求人原稿は「その仕事を候補者にどう伝えるか」で、候補者向け。JDが無いと、要件は「良い人」で止まり、原稿は箇条書きになります。JDの作成の案件は、三つの土台を作る仕事です。
| 文書 | 問い | 読む人 | 決めるのは |
|---|---|---|---|
| ジョブディスクリプション | この役割は何をし、何を決め、どう評価されるか | 責任者、担当者、人事、面接官 | 責任者 |
| 採用要件 | その仕事を担えるのは、どんな経歴の人か | 人事、スカウトや書類選考を担う人 | 会社(優先) |
| 求人原稿 | その仕事を候補者にどう伝えるか | 候補者 | 会社(条件と実態) |
JDの作成の案件の四つの型
募集文は「JD作成」「職務記述書の整備」「ジョブ型への移行支援」と書かれていることが多いですが、任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。
| 型 | 任される範囲 | 依頼側が持つこと | 受ける側の稼働の性質 |
|---|---|---|---|
| 一職種の一枚 | 一つの役割について、聞き取りから一枚のJDまで | 定義の決定、評価の基準、承認 | 聞き取り二回と確認で、二時間程度の骨格。数日で区切れる |
| 全職種の型作り | JDの型(六項目、書き方、一枚の長さ、更新の欄)を作り、各職種を責任者が埋められるようにする | 各職種の中身、承認 | 職種の数に比例。型を作ってから展開 |
| 求人票と面接と評価への展開 | できたJDを、求人票の骨格、面接の観点と質問、評価の基準と到達点に展開する | 評価制度そのもの、条件 | JDがあることが前提。三つの使い道ごとに区切れる |
| 更新の仕組み作り | 募集のたび、組織の変更時、入社三か月後、年に一度、に更新する決まりと担当と履歴の形を作る | 更新の判断 | 期間が決まっている。終わったら手を離す |
止まりやすいのは、「一職種の一枚」で受けたのに、「ジョブ型に移行したいので等級と報酬も」と、人事制度の設計まで広がるときです。JDは職務の定義で、等級と報酬は制度の設計です。制度の設計は別の専門性と別の範囲で、専門家の関与も要ります。受ける前に線を引きます。
求められる経験を棚卸しする
依頼側が見ているのは、「文書をきれいに書けるか」ではなく、「責任者と担当者のずれを見つけて、一枚に収め、求人票と面接と評価に使える形にできるか」です。社内でJDや職務の整理に関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。
| 経験 | 依頼側にとっての意味 | 棚卸しの書き方 |
|---|---|---|
| 職務を六項目で聞ける | 「業務の一覧」ではなく、決めてよいこと・話す相手・担う範囲・最初の三か月・詰まるもの・評価、で聞ける | どういう問いで聞いて、何が言葉になったか |
| 抽象語を一段掘れる | 「推進」「管理」「調整」を、実際の行動の言葉に置き換えられる | 掘った例(「推進」→「〇〇を決めて〇〇に依頼し、〇〇まで追う」) |
| 一枚に収められる | 長い文書ではなく、読まれて使われる一枚にできる | 一枚にした例と、何を削ったか |
| 三つの使い道に展開した経験 | 求人票、面接、評価に、同じJDから展開できる | どの使い道に展開して、何が変わったか |
いちばん差がつくのは二つ目です。責任者が「事業の推進を担う」と言い、担当者が「毎日調整ばかり」と言うとき、「推進」と「調整」を実際の行動の言葉に掘ると、同じことを言っているか、ずれているかが分かります。掘れない人が書いたJDは、抽象語の羅列になります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、JDの案件は、「責任者が三十分出てくれるか」で難易度が決まります。JDは責任者が「この役割に何を決めさせ、何で評価するか」を決める文書で、人事や担当者だけから聞いて書いたJDは、責任者が読んで「違う」と言い、使われません。責任者が三十分出て六項目に答えた会社では、担当者との三十分と合わせて二時間で骨格ができ、責任者が自分の言葉で決めた文書になります。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「その役割の責任者に三十分いただけますか」です。取れない会社には、JDの前に、責任者の時間を取ってもらうことを条件にします。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「責任者に三十分、担当者に三十分、別々にいただけますか」と聞くこと。「人事が答えます」という会社は、できたJDが責任者に使われない可能性が高いので、責任者の確認の時間だけでも取ってもらいます。
進め方の順番
| 順 | やること | ここで決めておくこと |
|---|---|---|
| 一 | 責任者に三十分(この役割に何を決めてよいか、誰と最も話すか、どこまで担うか、最初の三か月、詰まるもの、どう評価するか) | 責任者の時間。承認者は誰か |
| 二 | 担当者に三十分(実際に決めていること、最も話す相手、実際にやっていること、回らないもの、良くやったと思うとき) | 担当者がいない新設の役割なら、近い役割の人に |
| 三 | ずれを責任者が決める(責任者の言う「決めてよい」と担当者の「実際に決めている」のずれなど。決めるのは責任者) | ずれの一覧を誰に渡すか |
| 四 | 六項目で一枚に書く(業務の一覧ではなく、六項目。それ以上書かない) | 一枚の型 |
| 五 | 両方に確認し、日付を入れて共有の場所に置く | 置き場所と、更新の担当 |
| 六 | 三つの使い道に展開する(求人票の骨格、面接の観点と質問、評価の基準と到達点。範囲に含む場合) | どこまで展開するか |
| 七 | 更新の仕組みを残す(募集のたび、組織の変更時、入社三か月後、年に一度。日付と理由を残す) | 更新の判断者 |
止まりやすいのは、四で「業務の一覧」を書き始めるときです。一覧は長くなり、読まれず、更新されません。六項目に絞ります。聞き方はジョブディスクリプションが無い会社とヒアリングの技能に書いています。
外部の立場で踏み込まない線
JDは、役割の定義と評価の土台です。制度と人に近いので、線を先に引いておきます。
- 職務の定義と評価の基準を決めるのは会社(責任者)。 聞いて、ずれを並べ、一枚に書くが、「この役割はこう定義すべき」と外の人が決めない
- 等級と報酬に踏み込まない。 JDから等級や報酬の設計を求められたら、それは人事制度の設計で、別の範囲と別の専門性が要る。労務や法令の論点も絡むので、専門家の関与を勧める。個別の判断は専門家にご確認ください
- 他社のJDを写さない。 公開されているJDは、構造の参考にとどめ、文章はその会社の責任者と担当者の言葉から書く
- 基準にしてはいけない項目を入れない。 性別、年齢、国籍など、募集や採用の基準にすることに法令上の決まりがあると整理されている項目は、JDにも書かない。専門家にご確認ください
- 担当者の評価に使われる形で、担当者を裁かない。 担当者から聞いた「実際にやっていること」を、その人の評価の材料として責任者に渡さない。JDは役割の定義で、個人の評価ではない
- 聞いた事情を外に持ち出さない。 責任者が担当者について、担当者が責任者について話したことは、ずれの一覧に「役割の認識のずれ」として書き、人の評価として書かない
線の詳細は副業で法令違反をしないためにと本業と利益相反になる案件に書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、依頼側の「JDは業務を漏れなく書き出すもの」と、受ける側の「JDは詳しいほど良い」の両方です。実際には、業務を漏れなく書いたJDは数枚になり、責任者も担当者も読まず、募集のたびに更新されず、半年で実態とずれます。同じ料金で同じ職種を任されても、結果が分かれるのは、担当者が「一枚に削れるか」です。業務の一覧を並べた担当者は、納品の場では「よく調べてくれた」と言われ、三か月後にはそのJDは誰も開いていません。六項目に絞って一枚にした担当者は、納品の場で「これだけ?」と言われることがありますが、求人票と面接と評価に使われ、更新されます。JDの価値は、書いてある量ではなく、使われる回数です。受ける側がその場で使える判断としては、一枚に収まらなくなったら、六項目のどれにも当たらない行を削ること。削った行は「業務の一覧」として別紙にしてもよいですが、JD本体は一枚を保ちます。
向く人と向かない人
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 「推進」「管理」「調整」を、実際の行動の言葉に掘るのが苦にならない | 抽象語のまま整えたい |
| 一枚に削れる。削ることに抵抗が無い | 漏れなく書きたい |
| 責任者と担当者のずれを、人の評価にせず役割の認識のずれとして扱える | どちらが正しいかを決めたい |
| 求人票・面接・評価への展開を頭に置いて書ける | 文書を作って終わりにしたい |
| 等級や報酬の話が出たら、範囲外として専門家を勧められる | 制度の設計まで引き受けてしまう |
「制度の設計まで引き受けてしまう」人は、JDの案件で最も事故が起きます。等級と報酬は、労務と法令に関わり、外の副業の人が一人で決める範囲ではありません。
まとめ
- JDは職務の定義、採用要件は選考の基準、求人原稿は候補者への伝え方。JDが三つの土台
- JDの案件は一職種の一枚・全職種の型作り・三つの使い道への展開・更新の仕組み作りの四つの型。受ける前に型と、責任者の三十分が取れるかを確かめる
- 求められるのは六項目で聞ける・抽象語を一段掘れる・一枚に収められる・三つの使い道に展開した経験の四つ
- 進め方は責任者に三十分→担当者に三十分→ずれを責任者が決める→六項目で一枚→両方に確認して共有の場所に→三つに展開→更新の仕組み。業務の一覧を書かない
- 線は定義と評価の基準は会社・等級と報酬に踏み込まない・他社のJDを写さない・基準にしてはいけない項目を入れない・担当者を裁かない・聞いた事情を持ち出さない
- JDの価値は書いてある量ではなく、使われる回数。一枚を保つ
よくある質問
「ジョブ型に移行するので、等級と報酬まで設計してほしい」と言われました
JDの作成と、等級と報酬の設計は、別の仕事です。等級と報酬は、労務や法令の論点が絡み、社員の処遇に直接関わるので、外の副業の人が一人で設計する範囲ではありません。「JDは私が一緒に作ります。等級と報酬の設計は、人事制度の専門家(社会保険労務士や人事コンサルタント)と一緒に進めることをお勧めします。JDはその土台になります」と返し、範囲を分けます。個別の判断は専門家にご確認ください。
新設の役割で、担当者がいません
責任者に三十分聞いたあと、近い役割の人(その仕事の一部をいま兼務している人、隣の部署で似た役割の人)に三十分聞きます。「この役割ができたら、自分の仕事のどこが渡るか」「渡すときに詰まりそうなことは何か」を聞くと、実際の行動の言葉が出ます。誰もいない場合は、責任者の六項目だけで一枚を書き、「入社三か月後に担当者と見直す」と日付を入れて、更新の予定をJDに書き込みます。
JDを作ったあと、求人票や面接がどう変わるのか見えません
範囲に「三つの使い道への展開」を含めるか、次の範囲として提案します。求人票には、役割・最初の三か月・必須・成果の四つがJDから入り、箇条書きが無くなります。面接には、六項目から観点と質問が作れ、面接官ごとのばらつきが減ります。評価には、「どう評価されるか」の項目が基準と到達点になります。展開まで見せると、依頼側は「JDが使われる」ことを実感します。求人票への展開は求人原稿のライティングの副業案件に、面接への展開は面接代行の副業案件に書いています。