人事副業 / ジョブディスクリプションの作成

ジョブディスクリプションの作成の副業の実務|1案件の流れ

公開 2026-09-20

ジョブディスクリプション(職務記述書)の作成を初めて受けるとき、見えにくいのは「一枚を書く前に誰に何を聞き、書いたあとに何に展開するか」です。募集文には「JD作成」「職務記述書の整備」とだけあり、実際には、責任者と担当者への別々の聞き取り、ずれの整理と責任者の決定、六項目で一枚、両方への確認、共有の場所への配置、求人票と面接と評価への展開、更新の仕組みと、一枚の前後に工程が並びます。順番を知っていれば、契約前に決めておけます。結論を先に書くと、1案件は「契約前→聞き取り→ずれの整理と決定→一枚に書く→展開→更新の仕組みと終了」の六つの段階で進み、契約前に範囲と職種の数・責任者と担当者の三十分・承認者・一枚の型・展開の範囲・等級と報酬は範囲外であること・置き場所と更新の担当を決め、聞き取りは責任者と担当者に別々に六項目で行って抽象語を一段掘り、ずれを責任者が決め、六項目で一枚に書いて両方に確認して日付を入れ、範囲に応じて求人票と面接と評価に展開し、四つの更新の時期と担当を残して終えます。案件の型と求められる経験はジョブディスクリプションの作成の副業案件に、最初の一枚の中身はジョブディスクリプションが無い会社に書いていますので、ここでは「1案件の流れ」に絞ります。

契約前:決めておくこと

JDは、「一枚」と軽く見られやすい一方で、「ジョブ型への移行」という大きな話に膨らみやすい仕事です。契約前に、範囲の上限と下限を決めます。

決めること確かめる中身決めていないと起きること
範囲と職種の数一職種か複数か。一枚までか、展開までか、更新の仕組みまでか「全職種をついでに」が足される
責任者と担当者の三十分役割ごとに、責任者と担当者に別々に三十分ずつ取れるか。新設なら近い役割の人人事だけから聞いて、責任者に使われない
承認者一枚を承認するのは誰か(責任者か、その上か)承認が無く、共有されない
一枚の型六項目(何を決めてよいか・誰と最も話すか・どこまで担うか・最初の三か月・詰まるもの・どう評価されるか)で一枚。業務の一覧は別紙数枚の業務一覧になる
展開の範囲求人票の骨格、面接の観点と質問、評価の基準と到達点、のどこまで含むか一枚で終わり、使われない
等級と報酬は範囲外ジョブ型への移行、等級、報酬の設計は含まないこと。求められたら専門家の関与を勧める制度の設計を一人で引き受ける形になる
置き場所と更新の担当JDを置く共有の場所。更新の担当と、四つの更新の時期半年で実態とずれ、誰も直さない
基準にしてはいけない項目会社の一覧があるか法令上の論点に触れる項目が入る。専門家にご確認ください

止まりやすいのは、「まず一職種やってみて、良ければ全部」で始めるときです。良ければ全部、の「全部」の範囲と単価を、最初の一職種を受ける前に決めておきます。範囲の決め方は業務範囲の決め方に、見積もりの出し方は見積もりの出し方に書いています。

聞き取り:責任者と担当者に別々に、六項目で

聞き取りは、責任者と担当者に別々に、三十分ずつ行います。一緒に聞くと、担当者は責任者の前で「実際にやっていること」を小さく言い、責任者は担当者の前で「決めてよいこと」を大きく言います。

相手六項目の問い抽象語を掘る問い
責任者この役割に何を決めてよいことにするか。誰と最も話す役割か。どこまで担わせるか(どこから先は別の役割か)。最初の三か月で何をしてほしいか。詰まりそうなものは何か。何で評価するか「推進」→「何を決めて、誰に頼み、どこまで追うか」。「管理」→「何を見て、何が起きたら何をするか」
担当者実際に決めていることは何か。最も話す相手は誰か。実際にやっていることと、渡されていない範囲は何か。最初の三か月で何をしたか。回らないものは何か。良くやったと自分で思うのはどんなときか「調整」→「誰と誰の間で、何を合わせているか」。「対応」→「何が来て、何を返しているか」

止まりやすいのは、責任者が「業務の一覧」を話し始めて、六項目に戻れないときです。「その業務の中で、この役割の人が決めてよいことは何ですか」と、六項目の問いに戻します。聞き方の詳細はジョブディスクリプションが無い会社に、問いの立て方は質問の仕方に書いています。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この仕事は「抽象語を一段掘る問いを、その場で出せるか」で、JDの質が決まります。責任者の「事業を推進する役割」を「推進」のまま書いたJDは、面接で聞けず、評価で測れず、担当者は自分の仕事だと思えません。「推進とは、この役割の人が何を決めて、誰に頼み、どこまで追うことですか」と掘ると、「新しい取引先の候補を決めて、営業に依頼し、初回の商談まで追う」のように、行動の言葉が出ます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「聞き取りで抽象語が出たら、その場で一段掘ります。三十分で六項目が行動の言葉になれば、一枚は書けます」と、私たちから先に伝えています。受ける側がその場で使える判断としては、聞き取りの記録に「抽象語」の欄を作り、出た抽象語を書き留めて、掘れたかどうかを印で残すこと。掘れなかった抽象語は、確認のときにもう一度聞きます。

ずれの整理と決定:責任者が決める

責任者と担当者の答えを六項目で並べると、ずれが出ます。ずれを一覧にし、責任者に決めてもらいます。自分で裁定しません。

よくあるずれ読み方決めてもらうこと
責任者は「決めてよい」と言い、担当者は「実際は上に聞いている」権限が渡っていないか、担当者が渡されていると知らないこの役割に決めさせるか、責任者が持つか
責任者は「〇〇まで担う」と言い、担当者は「〇〇は別の人がやっている」役割の境目が曖昧境目をどこに置くか
責任者の「評価」と担当者の「良くやったと思うとき」がずれる評価の基準が伝わっていない何で評価するかを、担当者に伝わる言葉で
担当者の「回らないもの」が、責任者の六項目に無い責任者が見えていない負荷役割に含めるか、別の役割に渡すか

止まりやすいのは、ずれを見て「担当者の言うことが実態だから、それを書く」と裁定するときです。JDは責任者が決める文書で、実態をそのまま書くと、責任者が変えたい方向が入りません。「実態はこう、責任者の意図はこう。どちらをJDに書きますか」と並べて、責任者に決めてもらいます。ずれの整理の型は課題の言語化に書いています。

一枚に書く:六項目、業務の一覧を書かない

決まったことを、六項目で一枚に書きます。読まれて使われる文書にするための決まりです。

決まり理由
六項目だけ。それ以上の見出しを増やさない増えると読まれない
各項目は行動の言葉で。抽象語を残さない面接で聞け、評価で測れる
業務の一覧は別紙(付けるなら)本体を一枚に保つ
日付と、次に更新する時期を入れる古いJDが使われない
責任者と担当者の両方に確認し、両方の確認の日付を入れる片方だけの文書にしない
共有の場所に置き、置き場所をJDに書く探せない文書は無いのと同じ

止まりやすいのは、確認で責任者が「もっと詳しく」と言い、一枚が二枚になるときです。「詳しくは別紙の業務一覧に。本体は面接と評価で使うので一枚に」と返します。書面の残し方は議事録の残し方に書いています。

エラベルの見解

同じ料金・同じ職種でも、結果が分かれるのは、「一枚を守れるか」です。責任者の「もっと詳しく」に応えて三枚にした担当者は、納品の場では喜ばれますが、三か月後、そのJDは求人票にも面接にも使われず、更新もされていません。「詳しくは別紙に。本体は一枚のまま」と守った担当者のJDは、募集のたびに開かれ、面接官が観点を確認し、評価の面談で到達点を見るのに使われます。JDは、書く仕事ではなく、使われる文書を残す仕事です。エラベルで長く続いている担当者は、納品のときに「このJDが次に開かれるのはいつですか」と聞き、四つの更新の時期をその場でカレンダーに入れてもらっています。受ける側がその場で使える形としては、一枚の下に「次に開く日:募集のとき/組織が変わったとき/入社三か月後/年に一度の〇月」と書き込んでおくことです。

展開:求人票・面接・評価

範囲に含む場合、一枚のJDを三つの使い道に展開します。展開して初めて、依頼側は「JDが使われる」ことを実感します。

使い道JDから入るもの渡す先落とし穴
求人票の骨格役割(何を決め、誰と話すか)、最初の三か月、担う範囲、成果(どう評価されるか)求人原稿の担当条件や訴求は別に要る。骨格だけで掲載しない
面接の観点と質問六項目それぞれを、過去の行動を聞く質問に。役割の認識を候補者と合わせる質問面接官面接官に渡して終わり。使い方を一度説明する
評価の基準と到達点「どう評価されるか」を、期初に合意する基準と、三か月と一年の到達点に責任者、人事評価制度そのものを変える話に広げない

止まりやすいのは、評価への展開で「評価制度を作り直そう」と広がるときです。JDから入るのは、この役割の基準と到達点までで、制度の設計は範囲外です。求人票への展開は求人原稿のライティングの副業案件に、面接への展開は面接代行の副業案件に書いています。

更新の仕組みと終了:四つの時期、日付と理由、引き継ぎ

終了時に、更新の仕組みを残します。更新されないJDは、半年で実態とずれ、「JDはあるが誰も見ない」状態に戻ります。

引き継ぎの型は引き継ぎの仕方に書いています。

聞いた事情の扱い

JDの聞き取りでは、担当者が「実際は上に聞いている」「回らない」と、自分の仕事の実態を話します。責任者が「あの人はここまでできていない」と、担当者の評価を口にすることもあります。それらは、ずれの一覧に「役割の認識のずれ」「権限の渡り方」として書き、個人の評価として書きません。担当者から聞いた実態を、その人の評価の材料として責任者に渡さないことは、この仕事の信頼の土台です。聞いた事情は会社の外で話さず、他の依頼側や本業に持ち込みません。基準にしてはいけない項目が口にされても、JDに残しません。個別の判断は専門家にご確認ください。利益相反の見分け方は本業と利益相反になる案件に書いています。

稼働時間は何で決まるか

一職種にかかる時間は、「聞き取り(責任者三十分+担当者三十分)」「ずれの整理と決定の場」「一枚に書いて両方に確認」「展開(含む場合、三つの使い道ごと)」「更新の仕組み」の合計で決まります。骨格の二時間は目安で、責任者の時間が取れない、抽象語が掘れない、ずれが多い、と長くなります。職種が複数なら、型を作ってから職種ごとに繰り返す形で、二職種目からは短くなります。受ける前に「職種の数」「責任者の時間が取れるか」「展開の範囲」を決めておけば、見込みが立ちます。数値は案件ごとに違うので、最初の一職種の実績で見直します。稼働の管理は稼働時間の管理に書いています。

まとめ

よくある質問

責任者が「担当者に聞けば分かるから」と、自分は出てくれません

担当者だけから聞いたJDは「実態の記録」で、責任者が「この役割に何を決めさせ、何で評価するか」を決めた文書になりません。「三十分だけ、六つの質問に答えていただければ、あとは担当者の方と私で作ります」と、時間と問いの数を示して頼みます。それでも取れないなら、担当者から聞いた実態で一枚を仮に作り、責任者に「これで決めてよいですか」と確認の時間だけ取ります。確認も取れない責任者のJDは使われないので、その旨を書面に残します。

担当者が「実際は上に全部聞いている」と言い、責任者は「任せている」と言います

権限の渡り方のずれで、JDの案件で最もよく出るずれです。どちらが正しいかは決めず、「責任者は任せているつもりで、担当者は聞いている状態です。この役割に決めさせるなら、どこまでですか」と責任者に決めてもらい、決めたことをJDの「何を決めてよいか」に書きます。書いたことを担当者にも確認し、両方の確認の日付を入れます。担当者の「聞いている」を、担当者の評価として責任者に渡さないことが大事です。

一枚のJDができたのに、責任者が「これで何が変わるのか」と言います

展開を見せます。求人票の骨格、面接の観点と質問、評価の基準と到達点、の三つに展開すると、「JDが使われる」ことが分かります。範囲に展開を含めていない場合は、一つだけ(面接の観点と質問が最も分かりやすい)を例として見せ、残りを次の範囲として提案します。「これだけ?」と言われる一枚は、使い道を見せると評価が変わります。