人事副業 / エンゲージメント施策
エンゲージメント施策の副業案件|求められる経験と進め方
エンゲージメント施策は、サーベイの結果が悪かった会社や、離職が続く会社から出る副業案件です。サーベイの点が低い、若手が辞める、社員が受け身に見える、部署ごとに空気が違う。その状態で「エンゲージメントを上げる施策を」と外に出されます。ただ、「社員が喜ぶイベントや制度を企画する仕事」と思って受けると、懇親会と表彰と福利厚生が並び、当日は盛り上がり、三か月後のサーベイは変わらず、「効かなかった」で終わります。結論を先に書くと、エンゲージメント施策の副業案件は、「下がっている箇所の特定と施策の選択肢」「管理職が動く施策の設計と進行」「効果の記録と見直し」「型作りと引き継ぎ」の四つの型に分かれ、求められるのは、会社が「誰の、どの行動が、どう変われば成功か」を決めるのを支えられること、サーベイや面談や離職の記録から下がっている箇所を一つに絞れること、上司と役割と情報と承認の四つの型から施策を選び管理職が動く形で設計できること、行動の変化で効果を見て直した経験の四つです。進め方は、成功の定義を会社が決める→下がっている箇所を一つに絞る→四つの型から施策の選択肢→会社が選ぶ→管理職が動く形で設計→実行(会社)→三か月ごとに行動の変化で見る→直す、の順で、施策の決定・費用・実行は会社、施策を強制せず、処遇に関わる施策は専門家と組み、効果を保証せず、個人の情報を扱わず、イベントで終わらせない線を先に引いておきます。測る側の設計は組織サーベイの設計の副業案件に、上司の1on1の型は1on1・メンタリングの副業案件に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、施策の案件に絞ります。
先に確かめる:施策の四つの型と、効きにくい施策
エンゲージメントは、施策の数ではなく、「社員の日常で何が変わったか」で動きます。効く施策は、四つの型に集まります。
| 型 | 中身 | 動くのは誰か |
|---|---|---|
| 上司 | 上司の1on1の型、期待の伝え方、面談の頻度、フィードバックの型 | 管理職 |
| 役割 | 役割と期待の明確化(JD)、決めてよいことの範囲、最初の三か月の設計 | 管理職と本人 |
| 情報 | 会社の向かう先と決定の共有、部署をまたぐ情報の流れ、なぜそう決めたかの説明 | 経営者と管理職 |
| 承認 | 良い仕事が本人に伝わる仕組み(面談での言葉、同僚からの言葉、成果の共有の場) | 管理職と同僚 |
効きにくいのは、「イベント」「グッズ」「福利厚生の追加」「社内報の充実」を、上の四つと切り離して行う施策です。悪くはありませんが、日常が変わらないので、三か月後には戻ります。受ける前に、会社が「イベントをやりたい」のか「日常を変えたい」のかを確かめます。
エンゲージメント施策の案件の四つの型
募集文は「エンゲージメント向上施策の企画」「組織活性化」「社内コミュニケーションの改善」と書かれていることが多いですが、任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。
| 型 | 任される範囲 | 依頼側が持つこと | 受ける側の稼働の性質 |
|---|---|---|---|
| 下がっている箇所の特定と施策の選択肢 | サーベイ、面談の傾向、離職の記録(個人が特定されない形)から、下がっている箇所を一つに絞り、四つの型から施策の選択肢を出す | 施策の選択、費用 | 分析と選択肢。数週間で区切れる。実行しない |
| 管理職が動く施策の設計と進行 | 選ばれた施策を、管理職が日常で動く形(型、頻度、記録)に設計し、管理職への説明と最初の進行を支える | 実行、管理職の時間 | 三か月の伴走。管理職の人数に比例 |
| 効果の記録と見直し | 行動の変化(面談の実施、役割の明確化の進み、情報の共有の回数)と、サーベイや離職の変化を記録し、直す材料を出す | 直す決定 | 三か月ごと |
| 型作りと引き継ぎ | 下がっている箇所の見方、施策の選択肢の型、管理職が動く設計の型、効果の記録の型を作り、社内で回せるようにする | 以後の運用 | 期間が決まっている。終わったら手を離す |
止まりやすいのは、「施策の企画」で受けたのに、「イベントの運営もお願い」と、当日の運営に稼働を取られるときです。イベントの運営は施策の中心ではなく、受けるなら別の範囲にします。
求められる経験を棚卸しする
依頼側が見ているのは、「施策のアイデアが多いか」ではなく、「下がっている箇所に効く施策を、管理職が動く形にして、効果を行動で見られるか」です。社内でエンゲージメントに関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。
| 経験 | 依頼側にとっての意味 | 棚卸しの書き方 |
|---|---|---|
| 成功の定義を決めるのを支えた | 「エンゲージメントを上げる」を「誰の、どの行動が、どう変わる」に置き換えられる | どういう定義にして、何を成功にしたか |
| 下がっている箇所を一つに絞った | サーベイの点の羅列から、施策で動かせる箇所を一つ選べる | 何を見て、どこに絞り、何を後回しにしたか |
| 管理職が動く形で設計した | 施策を人事のイベントではなく、管理職の日常の行動にした | どの施策を、管理職の何の行動にしたか |
| 行動の変化で効果を見て直した | サーベイの点だけでなく、行動の変化を記録し、直した | 何を記録し、何を直したか |
いちばん差がつくのは三つ目です。エンゲージメント施策が効かない最大の理由は、人事が企画して人事が実行し、管理職の日常が変わらないことです。管理職が動く形にできる人は、施策を日常に埋め込めます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、エンゲージメント施策の案件は、「会社が『管理職の時間を使う』と決められるか」で難易度が変わります。決められる会社では、施策は上司の1on1や役割の明確化や承認の場に落ち、管理職の日常が変わり、三か月後に行動の変化が見えます。決められない会社では、「管理職は忙しいので、人事でできることを」となり、イベントと福利厚生と社内報に落ち、日常は変わりません。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「施策のために、管理職の方の時間を週にどれだけ使えますか」です。「使えない」なら、施策ではなく、管理職の時間を作ること(会議の削減、役割の整理)が最初の施策になります。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「この施策で、管理職の方は何をしますか」と聞くこと。答えが「特に無い」なら、その施策は効きにくいと伝え、四つの型から選び直します。
進め方の順番
| 順 | やること | ここで決めておくこと |
|---|---|---|
| 一 | 成功の定義を会社が決める(誰の、どの行動が、どう変われば成功か。サーベイの点ではなく行動で) | 決める人 |
| 二 | 下がっている箇所を一つに絞る(サーベイ、1on1のテーマの傾向、離職の記録、面談の記録から。個人が特定されない形で) | 材料の共有(匿名性を守った形) |
| 三 | 四つの型(上司・役割・情報・承認)から施策の選択肢を出す(二〜三つ。管理職が何をするか、要る時間、効果の見方) | 選ぶのは会社。費用は会社 |
| 四 | 会社が選ぶ(一つに絞る。理由を書面に) | 決めるまでの期限 |
| 五 | 管理職が動く形で設計(型、頻度、記録、最初の三か月の計画。管理職への説明の資料) | 管理職の時間の確保 |
| 六 | 実行(会社と管理職が行う。自分は進行の支援と記録) | 実行するのは会社 |
| 七 | 三か月ごとに行動の変化で見る(面談の実施率、役割の明確化の進み、情報の共有の回数、承認の場の実施。サーベイや離職は結果として) | 記録を出す人 |
| 八 | 直す(動かなかった箇所を、型か頻度か管理職の時間の問題に分けて直す) | 直す決定は会社 |
止まりやすいのは、二を飛ばして施策の案から入るときです。下がっている箇所が絞れていない施策は、当たりません。課題の絞り方は課題の言語化に書いています。
外部の立場で踏み込まない線
エンゲージメントは、社員の内面と会社の関係の話で、施策は社員の日常に触れます。線を先に引いておきます。
- 施策の決定と費用と実行は会社。 選択肢と設計は出すが、何をやるかを決め、費用を出し、実行するのは会社と管理職。自分がイベントの主催者にならない
- 社員に強制しない。 参加を強制する施策、時間外に社員の時間を使う施策、私生活に踏み込む施策を設計しない。参加は本人が選べる形
- 処遇に関わる施策は専門家と。 報酬、手当、休暇、働き方の制度に関わる施策は、人事制度の設計と同じ重さで、専門家(社会保険労務士など)の関与が要る。個別の判断は専門家にご確認ください
- 効果を保証しない。 「この施策でサーベイの点が上がる」「離職が減る」と言わない。行動の変化で見る設計を提案する
- 個人の情報を扱わない。 サーベイの個人の回答、1on1の中身、離職者の個別の事情を材料にしない。傾向だけを使う。「この人が下げている」と特定しない
- 管理職を裁かない。 下がっている部署の管理職を「原因」と言わない。型と時間の問題として扱い、管理職が動ける設計にする
- イベントで終わらせない。 イベントを施策の中心にせず、四つの型に紐づける。紐づかないイベントは「悪くないが効きにくい」と会社に伝える
- 他社の施策を持ち込まない。 本業や他の依頼側の施策を、この会社にそのまま持ち込まない。公開されている構造の話に留める
線の詳細は候補者の個人情報の扱いと本業と利益相反になる案件と副業で法令違反をしないためにに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、依頼側の「良い施策を打てば上がる」と、受ける側の「施策のアイデアが多いほど価値がある」の両方です。実際には、エンゲージメントは施策の日ではなく日常で決まり、日常を変えるのは管理職の行動で、施策はその行動の型にすぎません。同じ料金で同じ期間を任されても、結果が分かれるのは、担当者が「施策を増やす」か「管理職の行動を一つ変える」かです。懇親会と表彰と社内報と福利厚生を並べた担当者の施策は、実行に人事の稼働が取られ、管理職は変わらず、三か月後のサーベイは同じです。「上司の1on1で、期待を一つ言葉にして伝える」という一つの行動を、型と頻度と記録で管理職に落とした担当者の施策は、三か月後に「上司と話す時間」の項目が動き、離職の理由が変わります。受ける側がその場で使える判断としては、施策の選択肢を出すとき、それぞれに「管理職が何をするか」の欄を作り、空欄の施策を外すこと。空欄の施策は、効きにくい施策です。
向く人と向かない人
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 施策を増やすより、下がっている箇所を一つに絞りたい | アイデアをたくさん出したい |
| 管理職の行動に落とす設計が好き | 人事が主催するイベントを企画したい |
| 効果をサーベイの点ではなく行動の変化で見られる | 点の上下で一喜一憂する |
| 下がっている部署の管理職を裁かずに、型と時間の問題として扱える | 「あの管理職が原因」と言いたくなる |
| 処遇に関わる施策を、専門家と会社に渡せる | 報酬や休暇の施策を自分で設計してしまう |
「人事が主催するイベントを企画したい」人は、良い企画を作りますが、この仕事では日常を変えられず、三か月で「効かなかった」と言われます。
まとめ
- 効く施策は上司・役割・情報・承認の四つの型に集まる。イベントや福利厚生は四つに紐づけないと日常が変わらない
- 案件は下がっている箇所の特定と施策の選択肢・管理職が動く施策の設計と進行・効果の記録と見直し・型作りと引き継ぎの四つの型。受ける前に型と、管理職の時間を確かめる
- 求められるのは成功の定義を決めるのを支えた・下がっている箇所を一つに絞った・管理職が動く形で設計した・行動の変化で効果を見て直したの四つ。アイデアの多さではない
- 進め方は成功の定義→下がっている箇所を一つに→四つの型から選択肢→会社が選ぶ→管理職が動く形で設計→実行(会社)→三か月ごとに行動で見る→直す
- 線は決定と費用と実行は会社・強制しない・処遇に関わる施策は専門家と・効果を保証しない・個人の情報を扱わない・管理職を裁かない・イベントで終わらせない・他社の施策を持ち込まない
- 施策の選択肢には「管理職が何をするか」の欄を作り、空欄の施策を外す
よくある質問
会社から「まず懇親会と表彰制度をやりたい」と言われました
否定せず、四つの型に紐づけます。「懇親会は、部署をまたぐ情報の流れ(情報の型)に紐づけて、経営者が向かう先を話す時間を入れると効きやすくなります。表彰は、承認の型に紐づけて、管理職が面談で本人に伝える形にすると、日常に残ります」と、イベントを日常につなぐ提案をします。紐づかないまま行うなら、「悪くはないが、三か月後に戻りやすい」と伝え、記録で確かめる形にします。判断は会社です。
下がっている部署の管理職が、施策に協力してくれません
管理職を裁かず、型と時間の問題として扱います。「協力しない」の多くは、「何をすればよいか分からない」か「時間が無い」で、型(1on1の話す順、期待の伝え方の一枚)を渡し、時間を会社に確保してもらうと動きます。それでも動かないなら、会社に事実(施策の実施率)で返し、管理職への説明と時間の確保を会社が行います。自分が管理職を説得する役にならず、会社が決める形にします。
エンゲージメント施策の単価はどう決めればよいですか
「下がっている箇所の特定と選択肢(分析と提案)」「管理職が動く設計と説明の資料」「三か月の進行の支援」「効果の記録と見直し」を分けて見込みます。イベントの運営を含むなら、別の範囲にします。施策そのものの費用は会社が持ちます。相場は範囲と管理職の人数と期間で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。単価の考え方は単価の相場と考え方に、始め方はエンゲージメント施策で副業を始めるにはに書いています。