人事副業 / 単価・契約・税務
月額固定型の相場と稼働時間
人事・採用の副業を続けていると、時給型から「月額でお願いできませんか」に変わることがあります。依頼側は予算を固定したく、受ける側は収入が読めるようになるので、双方にとって都合がよい形です。ただ、月額固定型でつまずく人はたいてい同じ場所でつまずきます。結論を先に書くと、月額固定型は「時間」ではなく「枠」を売る形なので、月額と一緒に想定稼働時間と超過の扱いを決めないと、実質の時給が下がり続けます。月額は直近の実績から出し、実質時給で検算し、超えたときにどうするかを契約の前に決めておきます。以下は公表資料に沿った一般的な整理で、個別の契約条件や税務の判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください。三つの型の違いは人事の副業単価の相場に、時間で受ける場合は時給型の相場と決め方に書いています。
月額固定型が向く仕事、向かない仕事
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 毎月ほぼ同じ量が続く(定例の運用、スカウトの継続、日程の運用) | 量が月ごとに大きく動く |
| 依頼側が予算を固定したい | 初回で作業量が読めない |
| 三か月以上続く見込みがある | 単発、短期 |
| 稼働の記録を毎月出せる | 記録を取らずに受けたい |
月額固定型は、依頼側にとって「予算が読める」形です。受ける側にとっては収入が安定しますが、量が増えても額が変わらないため、増えたときの扱いを決めていないと、実質の時給だけが下がります。
月額をどう決めるか
外の相場から選ぶのではなく、直近の実績から出します。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 一 | 直近3か月の実際の稼働時間を工程ごとに出す(記録が無ければ、まず1か月だけ時給型で受けて記録を取る) |
| 二 | 3か月の平均を「想定稼働時間」に置く。月による揺れが大きいなら、平均ではなく中くらいの月に合わせる |
| 三 | 想定稼働時間 × 自分の時間単価(下限は本業の時間単価)= 月額の出発点 |
| 四 | 打ち合わせ・報告・連絡の往復を想定稼働時間に含める |
| 五 | 超過の扱いを決める(後述) |
| 六 | 月額 ÷ 想定稼働時間 = 実質時給 で検算する |
六の検算を毎月続けるのが、月額固定型でいちばん大事な習慣です。実質時給が下がり始めたら、稼働が増えているか、範囲が広がっているかのどちらかです。記録の取り方は稼働時間の管理と申告に、毎月の報告の型は稼働報告のフォーマットに書いています。
参照点として、公的な統計で月額の水準を見ておくと、依頼側が「月いくら」に対して持っている感覚が分かります。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金(所定内給与額)は、正社員・正職員が男女計358.8千円、正社員・正職員以外が241.7千円となっています。これは本業としてフルタイムで働く人の月額なので、週に数時間の副業の月額と直接は比べられません。ただ、依頼側が「月◯万円」と言うとき、この水準を何分の一かに割った感覚で出していることがあります。自分の想定稼働時間を示して実質時給で話すと、その感覚のずれを埋められます。
エラベルの見解
月額固定型でいちばん多い崩れ方は、「ついでに」が積み上がることです。スカウトの運用で月額10万円と決めた後、「ついでに求人票も直してもらえますか」「面接の日程も見てもらえますか」「候補者への連絡もお願いできますか」が足されていく。一つひとつは小さく、断りにくい。半年後には稼働が倍になっているのに月額は同じ、という状態になります。防ぐのは交渉力ではなく、月額に紐づいた想定稼働時間と範囲が書面にあるかどうかです。書面があれば、「その作業はいまの範囲の外なので、追加で◯時間かかります」と事実として言えます。エラベルで案件を受ける方には、月額の契約に想定稼働時間と範囲の一覧を付けることをお伝えしています。範囲の固め方は業務範囲を書面で固めるに、広がり方の型は業務範囲が広がっていくときに書いています。
超えたときにどうするか
想定稼働時間を超えたときの扱いは、三つのどれかを先に決めます。
| 型 | 中身 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 超過分を時間単価で請求 | 想定を超えた分は時給で追加請求する | 量が読めない時期、依頼側に予算の余地がある |
| 上限で止める | 想定稼働時間に達したら、その月の作業を止めて翌月に回す | 自分の時間の上限が固い、本業が忙しい |
| 範囲を狭める | 増えた作業を入れる代わりに、別の作業を範囲から外す | 月額を動かしたくない依頼側 |
どれを選んでも構いませんが、決めずに始めるのが一番まずい形です。決めていないと、超えた月に「今回は仕方ない」で吸収し、それが次の月の基準になります。超過の連絡は、超えてから出すのではなく、想定の8割に達した時点で「今月は想定を超えそうです」と先に出すと、依頼側が判断できます。
契約期間と更新の節目
月額固定型は、期間を区切って始め、更新の節目で見直すのが扱いやすい形です。
| 節目 | 見るもの |
|---|---|
| 三か月 | 実質時給が想定どおりか。範囲が広がっていないか |
| 六か月 | 作業が定型化して時間が短くなっていないか(短くなったなら、余った時間で別の価値を出すか、範囲を広げて単価を上げるか) |
| 更新時 | 想定稼働時間、範囲、超過の扱い、単価をまとめて見直す |
作業が慣れて時間が短くなるのは自然なことで、それ自体を隠す必要はありません。短くなった時間で何を足すかを自分から出すと、更新の話が値下げではなく範囲の話になります。契約期間の考え方は契約期間の目安に、更新時の交渉は更新時の条件見直しに書いています。
副業として受けるときの前提
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業を行うに当たって、労働者と企業がそれぞれ留意すべき事項を整理しています。本業の就業規則で副業がどう扱われているか、届出が要るか、競業に関する定めがあるかは、受ける前に自分で確かめます。雇用契約で受ける場合と業務委託で受ける場合では、労働時間の扱いをはじめ関わる制度が違います。個別の判断は社会保険労務士にご確認ください。本業側の制度の見方は企業側から見た副業許可制度に書いています。
エラベルの見解
月額固定型は、受ける側にとって「安定した収入」に見えますが、実際には依頼側との関係が安定しているかどうかで安定が決まります。毎月同じ額が振り込まれていても、依頼側の担当者が代わった瞬間に「この月額で何をしてもらっているのか分からない」となれば、次の更新で切れます。切れないようにするのは、作業を増やすことではなく、毎月の報告を一枚で残すことです。何に何時間使い、何が動いたかが一枚で見えれば、担当者が代わっても説明が要りません。エラベルで案件を受ける方には、月次の報告を型として持つことをお伝えしています。報告の型は稼働報告のフォーマットに書いています。
手取りと税の扱い
月額固定型でも、手取りの計算の考え方は時給型と同じです。
| 見るもの | 中身 |
|---|---|
| 消費税 | 業務委託で受ける場合、請求に消費税を乗せるか、適格請求書発行事業者の登録をするか |
| 経過措置 | 国税庁Q&A問113によれば、免税事業者等からの課税仕入れについて依頼側が控除できる割合は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までが80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までが70%、令和10年10月1日から令和12年9月30日までが50%、令和12年10月1日から令和13年9月30日までが30% |
| 確定申告 | 給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要(国税庁No.1900) |
| 経費 | 通信費、資料費、ツールの費用のうち業務の遂行上必要な部分 |
月額固定型は年間の収入が読めるため、申告が必要になるかどうかを早い段階で判断できます。令和8年10月1日からの割合の変更は、継続して受けている月額の案件に効きます。更新の時期が近いなら、登録の有無と単価をどうするかを先に考えておきます。判断は税理士にご確認ください。申告の進め方は確定申告の進め方に、請求書の作り方は請求書の書き方に書いています。
まとめ
- 月額固定型は「枠」を売る形。月額と一緒に想定稼働時間を決める
- 月額は直近3か月の実績から出す。記録が無ければ1か月だけ時給型で受けて記録を取る
- 月額 ÷ 想定稼働時間 = 実質時給で毎月検算する
- 超えたときの扱い(超過を請求・上限で止める・範囲を狭める)を先に決める
- 「ついでに」を防ぐのは交渉力ではなく範囲の書面
- 更新の節目で想定稼働時間・範囲・超過の扱い・単価をまとめて見直す
- 令和8年10月1日から、免税事業者からの仕入れで依頼側が控除できる割合が80%から70%に下がる
- 個別の判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください
よくある質問
月額を提示されたとき、想定稼働時間が書かれていません
先に聞きます。「この月額は、月に何時間くらいを想定されていますか」と確認し、返事が「特に決めていない」なら、自分から想定を出します。出す形は「月◯時間を想定しています。内訳は、スカウトの送信◯時間、返信対応◯時間、報告◯時間です」。この一文があるかどうかで、半年後の実質時給が変わります。想定が合わないなら、その時点で調整するほうが、始めてから直すより簡単です。
作業が早く終わった月は、返金すべきでしょうか
月額固定型は枠を売る形なので、早く終わった月に返す必要は基本的にありません。ただ、それが続くなら、更新の節目で自分から話題にします。「慣れて時間が短くなったので、空いた分でこれを足しませんか」と提案すると、値下げの話ではなく範囲の話になります。逆に、何も言わずに続けて依頼側が気づくと、次の更新で一方的に下げられます。
複数の案件を月額で受けるとき、上限はどう決めますか
本業に影響が出ない範囲を先に決め、そこから逆算します。週に使える時間を出し、案件ごとの想定稼働時間を足して、その範囲に収まるかで判断します。収まらないなら、新しい案件を受けるときに既存のどれかを終える、という前提で考えます。受けられる時間の決め方は週何時間から受けられるかに書いています。