人事副業 / 人事制度の設計
人事制度の設計で副業を始めるには|最初の1件の取り方
社内で人事制度を作ってきた。等級を定義し、評価の基準を作り、報酬のテーブルを組み、導入して回してきた。この経験を副業で使えないか。そう思って募集を見ると、「人事制度の構築」「評価制度の設計」の案件はあり、単価も高く見えます。ただ、この仕事は、他の人事の副業と同じ順で始めてはいけません。社員全員の処遇を決め、就業規則と労務の論点が絡み、決めたことは何年も残ります。結論を先に書くと、最初の1件を取る前に、「自分が受けてよいか」を確かめます。設計から運用まで見た経験が無い、専門家と組む前提を会社が受けない、決めるのは会社という線が通らない、のどれかなら受けません。条件が揃う人が最初の1件を取るには、「制度の知識があります」ではなく「現状の『書かれていない決まり』を言葉にし、等級・評価・報酬のつながりを構造で示して選択肢を出し、専門家と組んで導入し、最初の評価の期間まで伴走して直した」と、現状の整理と構造と運用の三つで見せます。入口は、JDや評価の運用の支援など手前の案件からの提案が中心で、最初は「現状の整理と課題の一覧だけ」「評価者の目線合わせの進行だけ」「一年後の見直しの材料だけ」と小さく受け、受ける前に三つの条件と専門家の関与と個人の処遇に入らないことを確かめ、最初の1件を「構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形」で終えて2件目につなげます。受けてよいかの条件と案件の型は人事制度の設計の副業案件に、1案件の流れは人事制度の設計の副業の実務に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは「最初の1件の取り方」に絞ります。
先に確かめる:自分が受けてよいか
三つの問いに、全部「はい」でなければ、制度の設計は受けません。手前の範囲から始めます。
| 問い | 「はい」の中身 | 「いいえ」なら |
|---|---|---|
| 制度を設計し、導入し、一年以上回して、直した経験があるか | 設計だけ、運用だけ、ではなく、作ったものが現場で歪む箇所を見て直した | JDの作成、評価の運用の支援、採用要件の整理から始める |
| 専門家(社会保険労務士など)と組む前提を、会社に求められるか | 就業規則と労務の判断を専門家に渡し、費用は会社が持つ形を、条件として言える | 制度の設計は受けず、現状の整理に留める |
| 「決めるのは会社」で、待てるか | 経営者が決めるまで待ち、「こうすべき」で押さず、経営者が自分の見立てと違う選択をしても書面に残して運用で見る | 壁打ちや代行など、決定を待つ経験を積んでから |
「単価が高いから受けたい」は、三つの問いの答えを変えません。この仕事は、断る判断から始まります。丸投げの見分け方は丸投げ案件をどう扱うかに、断り方は断り方に書いています。
経験を棚卸しする:現状の整理・構造・運用
依頼側が読むのは、「制度の知識」ではなく、「自社に合う制度を、会社が自分で決められるように支え、導入して回るところまで見られるか」です。社内の経験を三つに分けて書き出します。
| 項目 | 書き出すこと | 依頼側が読むこと |
|---|---|---|
| 現状の整理 | 制度が無い、または古い状態で、いまの昇給と昇格がどう決まっているか(書かれていない決まり)をどう言葉にしたか。管理職と社員の声をどう集めたか | 他社の制度を写さず、その会社から作れるか |
| 構造 | 等級・評価・報酬のつながりをどう設計したか。選択肢をどう出し、経営者にどう決めてもらったか。専門家にどの論点を渡したか | 一つだけでなく、つながりで設計できるか。決めさせられるか |
| 運用 | 導入後、最初の評価の期間で何が歪み(評価者の甘辛、滞留、例外)、何を直したか | 作って終わりではなく、回るまで見たか |
いちばん差がつくのは三つ目です。「制度を設計しました」ではなく、「導入後の最初の評価で管理職の甘辛が出たので、目線合わせの場を回し、基準の言葉を二箇所直した」と、歪んだことと直したことの組で書きます。数字は会社の許可の範囲で。数字の見せ方は数字で語るに、実績の示し方は実績の示し方に書いています。
見本を作る:現状の整理の問い・つながりの構造の一枚・選択肢の型・目線合わせの進行
制度の設計は、実物の制度を見せられません(会社の処遇に直結する情報です)。見本は、型と構造だけを、会社が特定できない形で作ります。
| 見本の要素 | 作り方 | 注意 |
|---|---|---|
| 現状の整理の問い | 経営者向け(「去年昇格した人としなかった人の違いは」「昇給を決めるとき何を見ているか」)、管理職向け、社員向けの問いの一覧。声を構造として共有する形 | 個人の処遇を聞く問いにしない |
| つながりの構造の一枚 | 等級→評価→報酬のつながりを、架空の会社で一枚に。一つを変えると他がどう動くかの矢印 | 数字を入れない。架空と明記 |
| 選択肢の型 | 一つの課題(例:評価の基準が無い)について、二〜三の選択肢を「向く会社の段階・歪みやすい箇所・専門家に確認する論点・全体の影響の見方」の欄で並べた例 | 「正解」を書かない |
| 目線合わせの進行 | 管理職が架空の人物の例で評価を話し合う場の進行表と、差が出た項目の直し方 | 実在の社員の例を使わない |
| 役割の線の一枚 | 会社が決めること・専門家が確かめること・自分が担うこと、の三つの欄 | 自分の欄に「決める」「判断する」を入れない |
見本が一組あれば、依頼側は「この人は制度を売る人ではなく、会社が決めるのを支える人だ」と読みます。見本の作り方はポートフォリオの作り方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、人事制度の最初の1件は、「立派な制度を作った人」ではなく「役割の線の一枚を見せられる人」に来ます。依頼側の経営者は、制度の話を持ち込む外の人に、「うちの処遇を勝手に決められるのではないか」「労務の問題が起きたら誰が責任を取るのか」という不安を持っています。見本に「会社が決めること・専門家が確かめること・私が担うこと」の三つの欄があれば、その不安に先に答えたことになります。エラベルで担当者を選ぶ企業も、制度の知識より、「線を引いているか」を見ています。受ける側がその場で使える判断としては、見本の中で役割の線の一枚を最初に置くこと。つながりの構造や選択肢の型より先に、線が見える提案が、経営者に受け入れられます。
プロフィールに書くこと
| 書くこと | 書き方の形 | 書かないこと |
|---|---|---|
| できる範囲 | 「人事制度の、現状の整理と課題の一覧・等級と評価と報酬のつながりの構造と選択肢・会社の決定の支援・専門家と組んだ導入の進行と説明の資料・最初の評価の期間の運用の伴走と見直しの材料。決めるのは会社、労務は専門家」 | 「人事制度の構築」「評価制度の設計・導入」 |
| 現状の整理 | 「いまの昇給と昇格の『書かれていない決まり』を経営者の言葉で残してから設計する。他社の制度は写さない」 | 「最新の制度に詳しい」 |
| 構造 | 「等級・評価・報酬のつながりを一枚にし、二〜三の選択肢と全体の影響を出す。数字は会社が入れる」 | 「最適な制度を提案」 |
| 運用 | 「導入後、最初の評価の期間まで伴走し、評価者の目線合わせを回し、歪みを直す材料を出す」 | 「導入までサポート」 |
| 結果 | 「導入後の最初の評価で〇〇が歪み、〇〇を直した」を二〜三組(許可の範囲で) | 「〇社の制度を構築」だけ |
| 線 | 「決めるのは会社。就業規則と労務は専門家。個人の処遇に入らない。他社の制度を写さない。数字を保証しない」 | 何でもやります |
止まりやすいのは、「人事制度の構築」「最適な制度を提案」と書くときです。「全部作ってくれる人」を探す会社が来て、丸投げと責任だけが残ります。プロフィールの書き方はプロフィールの書き方に書いています。
最初の1件が見つかる入口
制度の設計は、いきなり案件として取る仕事ではなく、手前の案件からの提案で取る仕事です。
| 入口 | 向く人 | 進め方 | 注意 |
|---|---|---|---|
| JDや採用要件や評価の運用の支援からの提案 | すでに手前の案件を持っている | JDを作る中で「評価が印象で決まっている」「等級が無い」が見えたとき、「制度の前に、いまの決まり方を一度整理しませんか」と現状の整理を提案 | 手前の範囲と混ぜない。専門家の関与を先に伝える |
| 元の勤務先や知人の紹介 | 前職や取引先に、社員が増えて処遇の説明に困っている経営者を知っている | 「現状の整理と課題の一覧だけ、まず」と範囲を絞って提案 | 現在の勤務先の制度や報酬の水準を持ち込まない |
| 副業のプラットフォーム | まず件数を見て選びたい | 「人事制度構築」の募集に、役割の線の一枚を付けて、「現状の整理から、専門家と組んで」の形で応募 | 「制度の設計から導入まで一人で」「短期間で」の案件は避ける |
| 担当者を選べる窓口への登録 | 条件が合うときだけ受けたい | 登録して、役割の線と見本と経験の範囲を出しておく | 窓口の仕組み(誰が何を決めるか)を確かめる |
最も通るのは、いちばん上の入口です。手前の案件で信頼ができている会社は、「決めるのは会社、労務は専門家」の線を受け入れやすい。案件の探し方は案件の探し方に、紹介の頼み方は紹介を頼むに書いています。
小さく受ける:現状の整理だけ・目線合わせの進行だけ・見直しの材料だけ
最初の1件は、設計の一式ではなく、処遇の決定に触れない範囲で受けます。
| 小さく受ける型 | やること | 見せられる結果 | 次につなぐ提案 |
|---|---|---|---|
| 現状の整理と課題の一覧だけ | 処遇の実態(書かれていない決まり)、管理職と社員の声(構造として)、困りごとを整理し、課題の一覧と優先の案を出す | 一覧と、経営者の言葉で残した決まり | 「絞った課題の選択肢を、専門家と組んで出します」→設計へ |
| 評価者の目線合わせの進行だけ | すでにある制度で、評価の前に管理職が架空の例で話し合う場を回し、差が出た基準の言葉を直す材料を出す | 差の減り方と、直す材料 | 「一年後の見直しの材料を出します」→見直しへ |
| 一年後の見直しの材料だけ | すでにある制度の運用の記録(分布、滞留、例外、疑問)を整理し、直す箇所の案を出す(決めるのは会社) | 見直しの材料 | 「直す箇所の選択肢を、専門家と組んで出します」→設計へ |
止まりやすいのは、小さく受けたのに、「じゃあ制度も作って」と設計まで持たされるときです。「設計は、専門家の関与と決める人を決めてから、別の範囲で」と書面に残します。
受ける前に確かめること
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 自分に、設計から運用まで見た経験があるか | 無いなら受けない |
| 専門家(社会保険労務士など)の関与を会社が受け入れ、費用を持つか | 就業規則と労務の判断を自分でしないため。個別の判断は専門家にご確認ください |
| 等級・評価・報酬の中身を決めるのは経営者であることを、会社が理解しているか | 丸投げと責任だけが残るのを防ぐ |
| 個人の処遇(誰を何等級に、誰の報酬をいくらに)には入らないことに同意するか | 個人の判断に巻き込まれないため |
| 範囲を工程で分け、一括で受けないこと | 決定待ちと専門家の確認の期間を稼働に含めないため |
| 聞いた声を構造として共有し、個人が特定される形で渡さないこと | 話した社員が不利にならないため |
| 説明の場で話すのは会社の人であること | 「外から押しつけられた」と受け取られないため |
| 終わりの定義(導入の日ではなく、最初の評価の期間の終わり) | 導入で終わって運用で歪むのを防ぐ |
| 本業や他の依頼側と利益相反が無いか(同業、報酬の水準の持ち込み) | 他社の制度を持ち込まない、持ち出さないため |
確かめる順は副業で法令違反をしないためにに、利益相反の見分け方は本業と利益相反になる案件に、条件のすり合わせは条件のすり合わせに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「制度の設計は単価が高いので、経験が浅くても知識で受けたい」というものです。実際には、知識だけで設計した制度は、導入後の最初の評価で歪み、経営者が例外を作り、社員の不信が残り、その責任は外の人に向きます。それは実績ではなく、話せない経験になり、紹介もされません。同じ人でも、JDや評価の運用の支援で信頼を作り、「現状の整理だけ」から入り、専門家と組み、決めるのは会社という線で進めた人は、1件目の終わりに「書かれていない決まりの言葉」「つながりの構造の一枚」「経営者の決定の書面」「目線合わせの記録」が残り、それが次の会社への提案の材料になります。エラベルで制度の案件を続けている担当者は、例外なく、手前の案件から入り、専門家と組んでいます。受ける側がその場で使える判断としては、1件目の提案に「決めるのは御社、労務は専門家、私は材料と進行」の一行を、最初に書くこと。線を先に引いた提案だけが、この仕事では続きます。単価の考え方は単価の相場と考え方に書いています。
最初の1件の終わらせ方と2件目へのつなぎ方
1件目は、「構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形」で終えます。渡すものは、現状の整理(書かれていない決まりを経営者の言葉で)、課題の一覧、つながりの構造の一枚、選択肢と経営者の決定の書面、専門家に確認した論点の一覧、説明の資料、目線合わせの進行と記録(個人が特定されない形)、見直しの材料、です。社員の声と個人の処遇の情報は、自分の手元に一切残しません。会社の許可を得て、会社が特定できない形にした「つながりの構造の型」「選択肢の型」「役割の線」を、実績と見本にします。制度そのものは、会社のものなので見せません。
2件目へのつなぎ方は二つです。同じ会社に、次の工程(現状の整理→選択肢→導入→運用の定着→一年後の見直し)を、その都度、専門家と組んで提案するか。手前の案件を持つ別の会社に、処遇の説明に困っている兆しが見えたとき、「現状の整理から」を提案するか。どちらも、「書かれていない決まりを言葉にして、経営者が決めて、運用で何を直したか」が具体であるほど通ります。2件目の取り方は2件目の取り方に、実績の書き方は事例の書き方に書いています。
まとめ
- 先に自分が受けてよいかを確かめる。設計から運用まで見た経験・専門家と組む前提・決めるのは会社で待てるの三つが揃わないなら、手前の範囲から
- 見せるのは現状の整理・構造・運用の三つ。「制度の知識があります」では選ばれない
- 見本は現状の整理の問い・つながりの構造の一枚・選択肢の型・目線合わせの進行・役割の線の一枚を、会社が特定できない形で作る。役割の線を最初に置く
- プロフィールに決めるのは会社・労務は専門家・個人の処遇に入らない・他社の制度を写さない・数字を保証しないを先に書く。「人事制度の構築」と書かない
- 入口は手前の案件(JD・要件・評価の運用)からの提案が中心。「一人で短期間で設計から導入まで」の案件は避ける
- 最初は現状の整理だけ・目線合わせの進行だけ・見直しの材料だけと、処遇の決定に触れない範囲で受け、「設計は専門家と決める人を決めてから別の範囲で」を書面に残す
- 受ける前に三つの条件・専門家の関与と費用・個人の処遇に入らない・工程で分ける・声の扱い・説明の役割・終わりの定義・利益相反を確かめる
- 1件目は構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形で終え、制度そのものと社員の情報は見せず、残さない
よくある質問
社内で作った制度を、実績として見せてよいですか
制度そのもの(等級の定義、評価の基準、報酬のテーブル)は、会社の処遇に直結する情報なので、許可があっても見せません。見せるのは、会社の許可を得て、会社が特定できない形にした「つながりの構造の型」「選択肢の型」「目線合わせの進行」「役割の線」と、「導入後に何が歪み、何を直したか」の構造です。報酬の水準や個人の処遇は、一切使いません。現在の勤務先の制度や報酬の水準の持ち込みには触れないでください。
「専門家は自分たちで探すので、まず制度の案を作って」と言われました
案を先に作りません。専門家の関与が決まる前に案を作ると、就業規則や労務の論点で作り直しになり、経営者は案に引っ張られて決め方が歪みます。「専門家の関与と、決めるのは経営者ということが決まってから、選択肢をお出しします。それまでは、現状の整理と課題の一覧をやらせてください」と、順を守ります。専門家を探す時間が惜しいと言う会社には、専門家なしで制度を変えることの危うさを伝え、それでも進める会社では受けません。個別の判断は専門家にご確認ください。
最初の1件の単価はどう決めればよいですか
工程(現状の整理、材料と選択肢、導入の進行、運用の定着)ごとに分けて見積もり、一括で受けません。会社の決定を待つ期間と専門家の確認の期間は稼働に含めず、聞き取りの人数、説明の場の回数、最初の評価の期間の月数で見込みます。1件目は現状の整理だけか目線合わせの進行だけから入り、2件目以降で工程を足すときに見直す、という順が現実的です。相場は範囲と会社の人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。考え方は単価の相場と考え方に書いています。