人事副業 / 採用・人事の実務
採用予算を組む|金額の前に「費目・変動か固定か・見直しの周期」の構造を一枚にする型
「今期の採用予算を組むのを手伝ってほしい」と頼まれると、金額の話から始めたくなります。ただ、依頼側の予算が途中で足りなくなったり、逆に余ったりするのは、金額の見積もりが甘いからではなく、「何に、どういう性質の費用が、採用計画のどこに対応して出るか」の構造が無いからです。構造が無い予算は、去年と同じ額を置いて、途中で崩れます。結論を先に書くと、採用予算は、金額の前に、費目の分け方・固定と変動の区別・採用計画との対応の構造を一枚にし、変動費は計画の人数と経路に紐づけ、見直しの周期と費目の付け替えの判断を依頼側に置き、金額や相場は担当者が断定せず見積もりを取ってから並べ、費用対効果は測る形を先に置いて組みます。会社側から見た立て方は採用予算の立て方に、予算が無いときの順番は採用予算がない中で何から手を付けるかに、採用計画は採用計画を作るに書いています。ここでは、予算の構造の型に絞ります。
「去年と同じ額」で崩れる理由
| 組み方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 去年の総額をそのまま | 今年の採用の人数と経路が違うのに、額だけ同じ |
| 費目を分けていない | どこに使ったかが分からず、途中で「残りいくら」しか見えない |
| 固定と変動を分けていない | 採用の人数が増減したときに、どの費目が動くかが分からない |
| 採用計画と別に組む | 計画で経路を変えたのに、予算は去年の経路のまま |
| 見直しの周期が無い | 期末に足りない、または余る |
予算は、採用計画の「経路と人数」を、費用の側から見た一枚です。計画と別に組むと、計画が変わった瞬間にずれます。
金額の前に決める構造
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 費目の分け方 | 何に使うかの分類。下の型 |
| 固定と変動 | 採用の人数に関係なく出る費用(固定)と、人数や経路で動く費用(変動) |
| 採用計画との対応 | 各費目が、計画のどの経路・どの人数に対応するか |
| 見直しの周期 | 四半期か月か。誰が見て、誰が付け替えを決めるか |
| 測る形 | 費目ごとに、何を数えれば効いたかが分かるか |
金額は、構造が決まってから、各費目に見積もりを取って置きます。順番を逆にすると、金額に構造を合わせることになります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、予算で最も差がつくのは、「変動費を採用計画の人数と経路に紐づけて書けるか」です。受ける側は、費目ごとに「年間いくら」と置きます。ただ、紹介会社の費用は「紹介経由で採る人数」で動き、スカウト媒体の費用は「使う期間と送る数」で動き、面接の稼働は「面接の回数」で動きます。「紹介経由で〇人採るなら、紹介の費目はこの構造で動く」と、人数と経路に紐づけて書けば、計画が変わったときに予算も一緒に動きます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「予算の各費目は、採用計画の何人・どの経路に対応していますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、予算の一枚の各費目の横に、「対応する経路と人数」の列を作ること。空欄の費目は、固定費か、計画に無い支出です。
費目の型
| 費目 | 固定か変動か | 対応する計画の項目 | 測る形 |
|---|---|---|---|
| 求人媒体(掲載型) | 掲載の期間と枠で固定に近い | 掲載型で採る人数 | 掲載期間中の応募の数、一次に進んだ数 |
| スカウト媒体 | 期間と送信の枠で固定に近い。送る数で変動する部分も | スカウト経由で採る人数 | 返信の数、面談の数 |
| 紹介会社 | 変動。採った人数で動く | 紹介経由で採る人数 | 推薦の数、一次に進んだ数、入社の数 |
| ツール(ATS、日程調整) | 固定 | 全体 | 記録の揃い、日数の短縮 |
| 外部の担当者(副業、代行) | 契約の形で固定か変動 | 担当する工程 | 担当する工程のKPI |
| 社内の稼働 | 面接の回数で変動 | 面接の段の数と候補者の数 | 面接の回数と日数 |
| 入社後(研修、オンボーディング) | 入社の人数で変動 | 入社の人数 | 定着の節目 |
費目の分け方は依頼側の会計の区分に合わせます。上の型は考え方で、名称と区分は依頼側の決まりに従います。費用の内訳の考え方は採用代行の費用の内訳に、媒体費と代行費を分ける理由は媒体費と代行費を分けて見るべき理由に書いています。
金額と相場を担当者が断定しない
| やらないこと | やること |
|---|---|
| 「媒体の掲載は〇〇円くらい」 | 「媒体に見積もりを取ってから並べる。料金は期間と枠で変わる」 |
| 「紹介の手数料は一般に〇%」 | 「紹介会社との契約の条件を依頼側が確認する。契約ごとに違う」 |
| 「採用一人あたりの費用の相場は〇〇円」 | 「御社の去年の記録から、費目ごとの実績を出す。外部の相場は条件が違う」 |
| 総額を担当者が提案する | 費目と構造を担当者が作り、金額は見積もりと依頼側の判断で埋める |
金額の断定は、契約の段階で違っていたときに担当者の信頼を落とし、依頼側の予算の判断を誤らせます。担当者は構造と「確認する項目」を作り、金額は依頼側が見積もりを取って置きます。費用の判断は依頼側です。
費用対効果は測る形を先に
| 費目 | 効いたかを見る数字 | 見る時期 |
|---|---|---|
| 掲載型の媒体 | 応募の数、一次に進んだ数 | 掲載期間の終わり |
| スカウト媒体 | 返信の数、面談の数 | 月次 |
| 紹介会社 | 推薦の数、一次に進んだ数 | 月次 |
| ツール | 日数の短縮、記録の揃い | 四半期 |
| 外部の担当者 | 担当する工程のKPI | 月次 |
「費用対効果が見えない」のは、効果が無いからではなく、測る形が無いからです。予算の一枚に「測る形」の列を作り、期の途中で費目ごとに見られるようにします。測る形の考え方は費用対効果が見えないに、KPIはKPIを設計するに書いています。効いたかどうかの数字は件数で並べ、割合や単価で断定しません。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「予算は期の初めに決めたら、期の終わりまで固定」というものです。実際には、採用計画の経路が途中で変わり、効いていない費目と効いている費目が期の途中で分かれます。見直しの周期(四半期か月)を先に決め、「使わなかった費目を、効いている費目に回す」判断を、誰が、どの数字を見て行うかを一枚に書いておく。それが無いと、期末に「余った」「足りない」になります。付け替えの判断は依頼側で、担当者は「この費目はこの数字で効いていない、この費目は効いている」を件数で並べるまでです。受ける側がその場で使える判断としては、予算の一枚に「見直しの日」を先に三つ書いておくこと。日が書いてあれば、見直しは行われます。
予算の一枚
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 費目 | 依頼側の会計の区分に合わせた名称 |
| 固定/変動 | どちらか |
| 対応する経路と人数 | 採用計画の該当の行 |
| 金額 | 依頼側が見積もりを取って置く。担当者は空欄で渡す |
| 測る形 | 効いたかを見る数字と時期 |
| 見直しの日 | 三つ |
| 付け替えを決める人 | 依頼側の一人 |
金額の列を空欄で渡すのは、担当者が金額を断定しないためです。「構造は作りました。金額は見積もりを取ってから、この列に入れてください」と伝えます。予算の承認や会計の処理は依頼側の領域で、税務や会計の扱いに関わる点は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。
踏み込まない線
| 線 | 理由 |
|---|---|
| 金額と相場を断定しない | 条件で変わる。契約の段階で違えば信頼が落ちる |
| 総額を担当者が決めない | 費用の判断は依頼側 |
| 会計・税務の処理に関わらない | 専門家の領域 |
| 外部の相場や統計を持ち込まない | 依頼側の条件と合わない |
| 紹介会社や媒体との契約条件を担当者が交渉しない | 契約の範囲外。依頼側が行う |
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が総額だけを決めたがる | 費目と構造の一枚を先に作り、総額は費目の合計として後から見る形に |
| 金額を担当者に聞かれる | 「見積もりを取ってから」と伝え、確認する項目を並べる |
| 採用計画が無い | 予算の前に採用計画を。計画が無い予算は去年の写しになる |
| 費目が細かすぎる | 上の型の七つ前後に。細かい内訳は依頼側の会計で |
| 費用対効果を聞かれるが測る形が無い | 一枚に「測る形」の列を足す。今期は測る形を置くことが成果 |
| 期末に余った・足りない | 見直しの日を三つ書き、付け替えの判断を依頼側の一人に |
まとめ
- 「去年と同じ額」で崩れるのは、費目・固定と変動・計画との対応の構造が無いから
- 金額の前に構造の一枚。費目・固定/変動・対応する経路と人数・測る形・見直しの日・決める人
- 変動費は採用計画の人数と経路に紐づける。計画が変われば予算も動く
- 金額と相場を担当者が断定しない。金額の列は空欄で渡し、依頼側が見積もりを取って埋める
- 費用対効果は測る形を先に。件数で並べ、割合や単価で断定しない
- 見直しの周期と付け替えは依頼側の判断。担当者は効いている費目と効いていない費目を件数で並べるまで
- 会計・税務・契約の交渉に踏み込まない。個別の判断は専門家にご確認ください
よくある質問
依頼側から「この予算で何人採れるか」を聞かれました
「何人採れるか」は、経路ごとの過去の記録(応募から入社までの件数)が無ければ答えられません。記録があれば、「去年、この経路でこの費用でこの件数だった」と、依頼側の実績を並べます。記録が無ければ、「今期は費目ごとに測る形を置いて、来期に答えられるようにする」と伝えます。担当者が推測で人数を言うと、その数字が目標になり、根拠の無い責任を負うことになります。
予算が少なく、有料の経路が使えないと言われました
費用のかからない工程(求人票の見直し、日程の速さ、記録の揃い、リファラルの仕組み)から手を付ける順番を提案します。有料の経路を足す前に、いまの経路の詰まりを直すほうが、少ない費用で動くことが多い。順番の考え方は採用予算がない中で何から手を付けるかに書いています。有料の経路を足すかどうかは、詰まりが直った後に、依頼側が判断します。
副業の担当者の費用は、予算のどの費目に入りますか
「外部の担当者」の費目で、契約の形(月額、時間単価、工程ごと)によって固定か変動かが変わります。担当者自身の費用の扱いを、担当者が予算の一枚で提案することは、利益が絡むので慎重にします。「この費目の金額は、契約の条件で御社が入れてください」と、自分の費用の欄も空欄で渡します。契約の形は見積もりの出し方に、利益相反の線は本業と利益相反になる案件に書いています。