人事副業 / 両立・スキル
分からないことの聞き方|人事の副業で依頼側に質問するなら、「自分で調べたこと・分からない一点・仮の答え・返事の期限」を一つの文面にまとめて聞く。聞かずに進めるより、聞き方を整えるほうが評価は上がる
依頼側の求人票に「経験三年以上」とあるが、それが必須なのか目安なのかが分からない。聞けば「そんなことも分からないのか」と思われそうで、自分で判断してスカウトを送ったら、後で「その層は対象外」と言われた。結論を先に書くと、分からないことは、聞かずに進めるより、聞き方を整えて聞くほうが、依頼側からの評価は上がります。聞くときは、「自分で調べたこと」「それでも分からない一点」「自分の仮の答え」「返事がほしい期限」の四つを一つの文面にまとめます。この形なら、依頼側の担当者は「調べたうえで聞いている」と分かり、仮の答えに「それでよい」と返すだけで済むことも多くなります。聞かずに進めた結果の手戻りは、聞く手間より大きく、依頼側からは「勝手に判断する人」と見られます。依頼側との連絡の型はメールの書き方と運用に、初回の打ち合わせで聞く項目は初回打ち合わせの進め方に、外部の立場で判断できる線は権限がないと動けない場面にまとめています。
聞けずに進めて起きること
聞くことをためらう理由は、「分かっていないと思われたくない」と「担当者の時間を取りたくない」の二つです。どちらも、聞かずに進めた結果のほうが重くなります。
| 聞かずに進めた場面 | 起きること |
|---|---|
| 要件の解釈を自分で決めた | 対象外の候補者にスカウトを送り、返信が来ても面接に進まない。稼働が無駄になる |
| 依頼側の運用を推測して記録を書いた | 記録の形が社内の人と違い、担当者が直す。「勝手なやり方」と映る |
| 判断の所在が分からないまま候補者に答えた | 依頼側が決めるべきこと(条件、日程の優先)を外部が答え、後で訂正が要る |
| 文面の表現を自分で決めた | 依頼側の会社の言い方と違う表現で候補者に届き、担当者が気にする |
| 締め日や請求の形式を推測した | 請求が経理で止まる |
| 「たぶんこうだろう」で数週間進めた | 気づいたときには、戻す作業が数週間分になっている |
起きることの要点は、「戻す作業の大きさは、聞かなかった期間に比例する」ことです。最初の数日で聞けば、直すのは数日分です。数週間聞かずに進めると、数週間分を直すことになり、依頼側の担当者から見れば「なぜ早く聞かなかったのか」になります。外部の立場で判断してよい範囲は外部の立場だからできることに書いています。
聞くべきことと調べるべきことの線
すべてを聞くと、担当者の時間を取り、「自分で考えない人」と見られます。聞くべきことと、自分で調べるべきことを分けます。
| 種類 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 依頼側の社内の事情 | 要件が必須か目安か、面接官の予定の優先、条件の幅、承認の流れ | 聞く。調べても分からない |
| 依頼側の運用の癖 | 記録の書き方、状態の名前の使い方、チャットの使い分け | 聞く。ただし、社内の人の記録を見て推測できる部分は先に見る |
| 判断の所在 | 何を自分で決めてよいか、何を依頼側に確認するか | 聞く。最初の打ち合わせで |
| 媒体やツールの一般的な機能 | 検索の条件の設定、送信の上限の場所、ATSの操作 | 調べる。媒体の説明やツールの案内で分かる |
| 人事の一般的な知識 | 選考の一般的な流れ、職種の一般的な要件 | 調べる。自分の経験の範囲で |
| 依頼側の過去の経緯 | 以前の担当者のやり方、過去にやめた施策 | 聞く。ただし、記録があれば先に読む |
線の要点は、「依頼側にしか分からないことは聞き、調べれば分かることは調べる」です。媒体の操作を担当者に聞くと、「それは調べてほしい」と思われます。依頼側の要件の解釈を自分で推測すると、「それは聞いてほしい」と思われます。線を間違えると、どちらも評価を下げます。依頼側の運用に合わせる部分はクライアントのツールに合わせるに、現状を把握する項目は現状把握のしかたに整理しています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「質問が多いと、能力が低いと思われる」というものです。実際には、依頼側の担当者が「能力が低い」と感じるのは、質問の数ではなく、質問の形です。「これはどうすればいいですか」と丸ごと聞かれると、担当者は一から説明することになり、「考えていない」と感じます。「〇〇と〇〇を確認したうえで、△△の点だけ分からず、私は□□だと考えていますが、それでよいですか」と聞かれると、担当者は「よい」か「違う、こう」と返すだけで済み、「考えたうえで聞いている」と感じます。
見ていて差がつくのは、質問に仮の答えを添えているかです。仮の答えがあると、担当者は判断するだけで済み、答える時間が短くなります。仮の答えが正しければ「それで」の一言で終わり、違えば担当者が正しい答えを言い、その答えは記録に残ります。エラベルでは、担当者が依頼側に質問するとき、調べたことと仮の答えを添える形をお願いしています。この形で質問する担当者は、質問が多くても、依頼側から「話が早い」と評価されています。
質問の四つの要素
質問は、四つの要素を一つの文面に入れます。口頭でも同じ順で話します。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 一、自分で調べたこと | 何を見て、何が分かったか | 「求人票と、過去の採用者の経歴を確認しました。採用者の中には経験二年の方もいました」 |
| 二、分からない一点 | 調べても分からないことを、一つに絞る | 「『経験三年以上』は必須の条件か、目安かが分かりません」 |
| 三、自分の仮の答え | 自分ならこう判断する、という案 | 「過去の採用者を見ると、目安と考え、二年以上でスカウトの対象に含めてよいかと思っています」 |
| 四、返事の期限 | いつまでに返事がほしいか、返事が無い場合どうするか | 「〇日までにご返事いただければ、次の送信から反映します。ご返事が無い場合は、三年以上に絞って送ります」 |
四つの要点は、「四」の返事が無い場合の扱いを書くことです。担当者が忙しくて返事が遅れても、自分は止まらずに済み、担当者も「返事が無ければこうなる」と分かっているので、急ぐか任せるかを選べます。返事が無い場合の扱いは、安全な側(この例なら、条件を狭く取る)にしておきます。仮の答えは、自分の判断として書き、「〜だと思いますが」と断定を避けます。
まとめて聞く形
質問は、思いついたたびに送るのではなく、まとめて送ります。ただし、まとめ方に線があります。
| 質問の性質 | 送り方 |
|---|---|
| 進行を止める質問(答えが無いと今日の作業ができない) | すぐに送る。ただし四つの要素で。一日に何度も送らない |
| 進行を止めない質問(答えが無くても仮の答えで進められる) | まとめて、週に一度か定例で。稼働報告の「確認したいこと」の欄でも |
| 候補者に関わる質問(候補者への回答に依頼側の判断が要る) | 候補者を待たせない範囲で早く。「候補者から〇〇と聞かれています。□□と答えてよいですか。〇日までに」 |
| 契約や請求に関わる質問 | 定例か個別の打ち合わせで。チャットで流さない |
| 依頼側の社内の事情に関わる質問(人間関係、組織の変更) | 口頭で、定例の終わりに。文面に残さないほうがよいことがある |
まとめる要点は、「進行を止めるかどうか」で分けることです。止める質問はすぐ、止めない質問はまとめて。この分け方を担当者に伝えておくと、担当者は「すぐの質問が来たら急ぎ」と分かり、まとめの質問は定例で処理できます。定例の使い方は定例会の進め方に、報告の欄の使い方は稼働報告のフォーマットに書いています。
聞く相手と経路
質問は、誰に、どの経路で聞くかも決めておきます。相手を間違えると、担当者を飛び越えることになります。
| 質問の内容 | 聞く相手 | 経路 |
|---|---|---|
| 要件、条件、判断の所在 | 依頼側の担当者 | 担当者との連絡の経路(チャットかメール) |
| 面接官の予定や、面接の内容に関わること | 担当者を通して面接官に。直接聞いてよいかを担当者に確認してから | 担当者が「直接でよい」と言えば直接。言わなければ担当者経由 |
| ツールの設定、アカウント、接続 | 依頼側の情報管理の担当者。窓口を担当者に聞いておく | 担当者に紹介してもらった経路 |
| 請求、締め日、支払い | 担当者か、担当者に紹介された経理 | 担当者経由が基本 |
| 契約の内容 | 担当者。窓口を通している案件は窓口 | 定例か個別の打ち合わせ。契約の解釈は専門家に |
| 媒体の機能 | 媒体のサポート。依頼側には聞かない | 媒体の問い合わせ窓口 |
相手の要点は、「担当者を飛び越えない」ことです。面接官や経営者に直接聞くと、担当者が知らないところで話が進み、担当者の立場を悪くします。「直接聞いてよいですか」と担当者に確認し、了解があれば直接、無ければ担当者経由にします。依頼側の社内の人との接し方は現場との調整に、経営者と直接話す場面は経営者直下で動くときに整理しています。
初回の打ち合わせで聞き切る項目
質問の多くは、案件の最初にまとめて聞けます。初回で聞き切れば、途中の質問は減ります。
| 項目 | 聞くこと |
|---|---|
| 要件の解釈 | 求人票の各要件が必須か目安か。優先順位 |
| 判断の所在 | 自分で決めてよいこと(文面の表現、送る相手の絞り方)と、依頼側に確認すること(条件、合否、日程の優先) |
| 運用の癖 | 記録の書き方、状態の名前、チャットの使い分け、返信の速さの期待 |
| 依頼側の社内の人 | 面接官は誰か、直接連絡してよいか、経営者は採用にどう関わるか |
| 過去の経緯 | 以前の担当者や施策、やめた理由 |
| 事務 | 締め日、支払日、請求の形式、稼働報告の形、情報管理の窓口 |
| 質問の経路 | 進行を止める質問はどこに、まとめの質問は定例で、でよいか |
初回の要点は、「質問の経路」も最初に決めることです。「急ぎの質問はチャットに、それ以外は定例でまとめて、でよいですか」と確認しておけば、途中で「この質問はどこに送ればよいか」で迷いません。初回の打ち合わせの進め方は初回打ち合わせの進め方に、ヒアリングの型はヒアリングの進め方に書いています。
聞いた後の扱い
質問の答えは、聞いて終わりではなく、記録に残し、次から聞かなくて済む形にします。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 答えを記録する | 議事録か、自分の側の運用のメモに。「経験三年以上は目安。二年以上を対象に含めてよい(〇月〇日、担当者)」 |
| 同じ質問を二度しない | 記録があれば、二度目は記録を見る。二度聞くと「前に言った」と思われる |
| 答えが依頼側の運用に関わるなら、依頼側の共有にも残す | 「運用メモ」のような文書に足す。担当者が替わっても残る。いつ辞めても困らない状態を作る |
| 答えが自分の仮の答えと違ったら、なぜ違ったかを考える | 依頼側の事情の理解が足りなかった点を、次の仮の答えに活かす |
| 答えで判断の所在が決まったら、議事録に残す | 「〇〇は自分の判断で進めてよいと確認」。後で「勝手に決めた」と言われない。議事録の残し方 |
| 答えが無いまま進めた場合、進めた内容を報告する | 「ご返事が無かったため、〇〇で進めました」と、報告に一行 |
聞いた後の要点は、「同じ質問を二度しない」ことです。質問の数そのものより、同じことを二度聞くことが、担当者の評価を下げます。答えを記録し、次からは記録を見る。この習慣があれば、質問は案件の最初に集中し、途中は減っていきます。依頼側の情報を含む運用のメモは、案件の終了時に消します。情報の分け方は案件ごとの情報の分け方に整理しています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、依頼側から「話が早い」と評価されている人は、質問が少ないのではなく、質問の形が整っています。調べたことを示し、分からない一点に絞り、仮の答えを添え、期限と返事が無い場合の扱いを書く。担当者は判断するだけで済み、答えは記録に残り、同じ質問は二度と来ない。この形なら、質問が多くても「手がかからない」と感じられます。
順番として、初回の打ち合わせで聞き切れることを聞き切り、途中の質問は四つの要素でまとめ、進行を止める質問だけすぐ送り、答えを記録して二度聞かない。この順番で、質問は依頼側の負担ではなく、依頼側の実態を正確に把握するための手段になります。エラベルでは、担当者が依頼側に入った最初の打ち合わせで聞くべき項目を整理して渡しており、最初に聞き切った担当者ほど、その後の手戻りが少なく、依頼側からの評価も安定しています。分からないことは、隠すものではなく、整えて聞くものです。
まとめ
- 聞かずに進めるより聞き方を整えて聞くほうが評価は上がる。戻す作業の大きさは聞かなかった期間に比例する
- 依頼側にしか分からないことは聞き、調べれば分かることは調べる。線を間違えると、どちらも評価を下げる
- 質問は調べたこと・分からない一点・仮の答え・返事の期限と無い場合の扱いの四つを一つの文面に
- 進行を止める質問はすぐ、止めない質問はまとめて。候補者に関わるものは候補者を待たせない範囲で早く
- 担当者を飛び越えない。面接官や経営者には、担当者の了解を得てから
- 初回の打ち合わせで聞き切る。要件・判断の所在・運用の癖・社内の人・過去の経緯・事務・質問の経路
- 答えは記録し、同じ質問を二度しない。判断の所在は議事録に、運用は依頼側の共有にも残す
よくある質問
担当者の返事が遅く、質問しても数日返ってきません
四つ目の要素「返事が無い場合の扱い」を書いておけば、返事が遅くても止まりません。「〇日までにご返事が無い場合は□□で進めます」と書き、期限を過ぎたら、その通りに進め、報告に「ご返事が無かったため□□で進めました」と一行入れます。担当者は、自分が返事をしなかったことで進んだと分かり、次は返事が早くなるか、「その判断で任せる」となります。担当者の返事の遅さそのものは、報告のしかたに書いた形で、定例で「返事の期限の目安を決めておきたい」と相談します。
聞いたことに対して「そんなことは前に言った」と言われました
自分の記録に無かったなら、記録の抜けです。「失礼しました。記録に残しておきます」と返し、以後は記録から見るようにします。記録にあったなら、自分が見なかったことなので、同じ対応です。担当者が言った記憶と、実際に言ったかどうかが違うこともありますが、そこで争わず、「今後は記録から確認します」で終えます。議事録を当日に送っていれば、言った言わないの行き違いは減ります。
質問したいことが、担当者自身のやり方に関わることです
担当者のやり方を疑う形ではなく、運用の確認として聞きます。「記録はこの形で書いていますが、御社の社内の形に合わせたほうがよいものがあれば教えてください」のように、自分の側を直す前提で聞くと、担当者は自分のやり方を説明しやすくなります。担当者のやり方に改善の余地があると思っても、質問の段階では触れず、改善提案の伝え方の形で、時期を見て出します。