人事副業 / 給与テーブルの設計
給与テーブルの設計で副業を始めるには|最初の1件の取り方
社内で給与テーブルを作ってきた。等級ごとの幅を決め、昇給の仕組みを組み、移行を経験し、数年回して直してきた。この経験を副業で使えないか。そう思って募集を見ると、「給与テーブルの作成」「報酬制度の設計」の案件はあり、単価も高く見えます。ただ、この仕事は、人事の副業の中で最も重く、他の案件と同じ順で始めてはいけません。社員全員の報酬に直結し、法令と就業規則の論点が正面から絡み、数字の判断は会社にしかできません。結論を先に書くと、最初の1件を取る前に、「自分が受けてよいか」を確かめます。設計から運用まで見た経験が無い、専門家と組む前提を会社が受けない、水準と数字は会社という線が通らない、会社が資金の枠を示せない、のどれかなら受けません。条件が揃う人が最初の1件を取るには、「報酬の相場に詳しい」ではなく「現状の分布を個人名を出さずに整理して逆転を構造の課題として見せ、数字を一つも入れずに構造の選択肢を出し、会社の数字で影響と移行を整理し、専門家と組んで導入した」と、分布と構造と移行の三つで見せます。入口は、評価制度や人事制度の現状の整理など手前の案件からの提案が中心で、最初は「現状の分布の整理だけ」「構造の選択肢だけ」「一年後の見直しの材料だけ」と、数字に触れない範囲で受け、受ける前に四つの条件と報酬のデータの扱いを確かめ、最初の1件を「構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形」で終えて2件目につなげます。受けてよいかの条件と案件の型は給与テーブルの設計の副業案件に、1案件の流れは給与テーブルの設計の副業の実務に、人事制度の始め方は人事制度の設計で副業を始めるにはに書いています。ここでは「最初の1件の取り方」に絞ります。
先に確かめる:自分が受けてよいか
四つの問いに、全部「はい」でなければ、給与テーブルの設計は受けません。手前の範囲から始めます。
| 問い | 「はい」の中身 | 「いいえ」なら |
|---|---|---|
| 給与テーブルを設計し、導入し、移行を経験し、数年回して直した経験があるか | 幅の形と昇給の仕組みを作り、下がる人が出る移行を専門家と設計し、運用で歪んだ箇所(上限、手当での調整)を直した | 評価制度の観点と運用、人事制度の現状の整理から始める |
| 専門家(社会保険労務士など)と組む前提を、会社に求められるか | 賃金の法令と就業規則と移行の判断を専門家に渡し、費用は会社が持つ形を、条件として言える | 給与テーブルは受けず、分布の整理に留める |
| 「水準と数字は会社が決める」で、自分は数字を一つも入れずにいられるか | 相場を語らず、参考の数字も入れず、空欄の表を渡し、会社が入れた数字で影響を整理する | 壁打ちや評価制度など、数字に触れない範囲を先に |
| 会社が資金の枠(人件費の総額、移行の原資)を示せるか | 経営者が数字で持っている。持っていないなら、テーブルの前に分布の整理から | 示せない会社では、構造を作っても導入できない |
「単価が高いから受けたい」は、四つの問いの答えを変えません。この仕事は、人事制度の設計以上に、断る判断から始まります。丸投げの見分け方は丸投げ案件をどう扱うかに、断り方は断り方に書いています。
経験を棚卸しする:分布・構造・移行
依頼側が読むのは、「報酬の相場の知識」ではなく、「自社の資金と実態に合うテーブルを、会社が自分で決められるように支え、移行で社員との関係を壊さず、回るところまで見られるか」です。社内の経験を三つに分けて書き出します。
| 項目 | 書き出すこと | 依頼側が読むこと |
|---|---|---|
| 分布 | いまの報酬の分布(役割ごとの幅、逆転、中途と生え抜きの並び、手当の使われ方)をどう整理し、個人の問題ではなく構造の課題としてどう見せたか | 個人名を出さずに、構造の課題として整理できるか |
| 構造 | 等級の段階、幅の形、昇給の仕組み、手当の位置づけのつながりをどう設計し、選択肢をどう出し、数字を会社にどう入れてもらったか | 数字を入れずに構造で設計できるか。決めさせられるか |
| 移行 | 下がる人やはみ出る人の扱いを、専門家とどう設計したか。導入後に何が歪み(上限、手当での調整)、何を直したか | 移行を専門家と組んで設計できるか。回るまで見たか |
いちばん差がつくのは三つ目です。「給与テーブルを設計しました」ではなく、「移行で幅からはみ出る人が出たので、専門家の確認を経て移行の期間を置く案を出し、経営者が決め、導入後に手当での調整が再発したのを一年後の見直しで構造に戻した」と、専門家と組んだことと直したことの組で書きます。数字は一切書きません。数字の見せ方は数字で語るに、実績の示し方は実績の示し方に書いています。
見本を作る:分布の見せ方・構造の一枚・選択肢の型・空欄の表・役割の線
給与テーブルの設計は、実物(テーブルの数字、分布)を見せられません。見本は、型と構造だけを、数字を一つも入れずに、会社が特定できない形で作ります。
| 見本の要素 | 作り方 | 注意 |
|---|---|---|
| 分布の見せ方の型 | 「役割ごとの幅」「入社時期ごとの幅」「逆転の箇所」を、個人名も番号も出さずに見せる図の型。数字は架空の目盛りか、目盛り無し | 実在の分布を使わない。架空と明記 |
| 構造の一枚 | 等級の段階→幅の形→昇給の仕組み→手当の位置づけのつながりを、架空の会社で一枚に。矢印で「一つを変えると他がどう動くか」 | 数字を入れない |
| 選択肢の型 | 一つの課題(例:逆転)について、二〜三の選択肢を「向く会社の段階・歪みやすい箇所・移行で問題になる箇所・専門家に確認する論点」の欄で並べた例 | 「正解」を書かない。数字を入れない |
| 会社が数字を入れる空欄の表 | 等級ごとの幅、昇給の額、手当、を会社が入れる空欄の表と、外部の水準を確かめるための案内(何を見るか。数字は書かない) | 参考の数字を入れない |
| 役割の線の一枚 | 会社が決めること(水準と数字、資金の枠、移行の決定)・専門家が確かめること(法令、就業規則、下がる人の扱い)・自分が担うこと(分布の整理、構造、影響の整理、進行) | 自分の欄に「数字」「判断」を入れない |
見本が一組あれば、依頼側は「この人は相場を売る人ではなく、会社が決めるのを支える人だ」と読みます。見本の作り方はポートフォリオの作り方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、給与テーブルの最初の1件は、「相場に詳しい人」ではなく「数字の無い見本を見せられる人」に来ます。依頼側の経営者は、報酬の話を持ち込む外の人に、「うちの報酬を勝手に決められる」「相場を押しつけられて人件費が膨らむ」「法令の問題が起きたら誰が責任を取るのか」という不安を持っています。見本に数字が一つも無く、「数字は御社が入れる」「法令は専門家」「私は構造と影響の整理」の線が一枚で示されていれば、その不安に先に答えたことになります。エラベルで担当者を選ぶ企業も、相場の知識より、「数字に触れない線を引いているか」を見ています。受ける側がその場で使える判断としては、見本を作ったら、数字を全部検索して、架空の目盛り以外の数字が残っていないかを確かめること。数字の無い見本が、この仕事の最初の信頼になります。
プロフィールに書くこと
| 書くこと | 書き方の形 | 書かないこと |
|---|---|---|
| できる範囲 | 「給与テーブルの、現状の分布の整理(個人名を出さない形)・等級と幅と昇給と手当のつながりの構造と選択肢・会社の数字での影響と移行の整理・専門家と組んだ導入の進行・運用の見直しの材料。水準と数字は会社、法令と就業規則は専門家」 | 「報酬制度の構築」「給与テーブルの作成(数字込み)」 |
| 分布 | 「逆転や幅のずれを、個人の問題ではなく構造の課題として、番号も出さずに見せる」 | 「報酬の適正化」 |
| 構造 | 「数字を一つも入れずに構造の選択肢を出し、会社が数字を入れる空欄の表を渡す」 | 「相場に基づく水準の提案」 |
| 移行 | 「下がる人やはみ出る人の扱いは、専門家の確認を前提に案を出し、決めるのは会社」 | 「スムーズな移行」 |
| 結果 | 「導入後に〇〇が歪み、〇〇を構造で直した」を二〜三組(数字は書かない) | 「〇社のテーブルを設計」だけ |
| 線 | 「水準と数字は会社。法令と就業規則は専門家。個人の報酬に入らない。他社の水準を持ち込まない。相場を語らない。報酬のデータを手元に置かない」 | 何でもやります |
止まりやすいのは、「相場に基づく水準の提案」と書くときです。相場を語る人を探す会社が来て、数字の責任が自分に来ます。プロフィールの書き方はプロフィールの書き方に書いています。
最初の1件が見つかる入口
給与テーブルの設計は、いきなり案件として取る仕事ではなく、手前の案件からの提案で取る仕事です。
| 入口 | 向く人 | 進め方 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 評価制度や人事制度の現状の整理からの提案 | すでに手前の案件を持っている | 評価の観点を作る中で「昇給の理由が説明できない」「逆転がある」が見えたとき、「報酬の分布を一度、個人名を出さずに整理しませんか」と分布の整理を提案 | 手前の範囲と混ぜない。専門家の関与と数字は会社と先に伝える |
| 元の勤務先や知人の紹介 | 前職や取引先に、報酬の逆転で困っている経営者を知っている | 「現状の分布の整理だけ、まず」と範囲を絞って提案 | 現在の勤務先の水準やテーブルを持ち込まない |
| 副業のプラットフォーム | まず件数を見て選びたい | 「給与テーブル」「報酬制度」の募集に、数字の無い見本と役割の線を付けて、「分布の整理から、専門家と組んで、数字は御社が」の形で応募 | 「相場に基づいて」「短期間で数字まで」の案件は避ける |
| 担当者を選べる窓口への登録 | 条件が合うときだけ受けたい | 登録して、役割の線と数字の無い見本と経験の範囲を出しておく | 窓口の仕組み(誰が何を決めるか)を確かめる |
最も通るのは、いちばん上の入口です。評価制度の案件で信頼ができている会社は、「数字は会社、法令は専門家」の線を受け入れやすい。案件の探し方は案件の探し方に、紹介の頼み方は紹介を頼むに書いています。
小さく受ける:分布の整理だけ・構造の選択肢だけ・見直しの材料だけ
最初の1件は、設計の一式ではなく、数字に触れない範囲で受けます。
| 小さく受ける型 | やること | 見せられる結果 | 次につなぐ提案 |
|---|---|---|---|
| 現状の分布の整理だけ | 会社の管理する場所で、個人名を番号に置き換えたデータから、役割ごとの幅、逆転、並び、手当の使われ方を整理し、課題の一覧と優先の案を出す | 分布の図(番号も出さない形)と課題の一覧 | 「絞った課題の構造の選択肢を、数字無しで出します」→構造へ |
| 構造の選択肢だけ | 絞った課題について、つながりの構造と二〜三の選択肢と、専門家に確認する論点と、会社が数字を入れる空欄の表を出す | 構造の一枚と空欄の表 | 「御社が数字を入れたら、影響と移行を整理します。専門家の確認を前提に」→影響と移行へ |
| 一年後の見直しの材料だけ | すでにあるテーブルの運用の記録(はみ出る人、手当での調整、昇給の決まり方)を整理し、直す箇所の案(数字無し)を出す | 見直しの材料 | 「直す箇所の構造の選択肢を出します」→構造へ |
止まりやすいのは、小さく受けたのに、「参考の数字だけでも」と数字を求められるときです。「数字は御社が入れてください。外部の水準は公開情報で確かめる案内はします」と書面に残します。
受ける前に確かめること
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 自分に、設計から移行と運用まで見た経験があるか | 無いなら受けない |
| 専門家(社会保険労務士など)の関与を会社が受け入れ、費用を持つか | 賃金の法令と就業規則と移行の判断を自分でしないため。個別の判断は専門家にご確認ください |
| 水準と数字は会社が決め、外部の水準は会社が公開情報で確かめることに同意するか | 数字の責任を自分に持たないため |
| 会社が資金の枠(人件費の総額、移行の原資)を示せるか | 構造を作っても導入できない案件を避けるため |
| 報酬のデータは会社の管理する場所でだけ扱い、個人名は会社側で番号に置き換え、自分の端末に置かないことに同意するか | 最も重い個人情報を守るため |
| 個人の報酬(誰をいくらに)には入らないことに同意するか | 個人の判断に巻き込まれないため |
| 範囲を工程で分け、一括で受けないこと | 数字の決定待ちと専門家の確認の期間を稼働に含めないため |
| 説明と個人への通知は会社が行うこと | 「外から決められた」と受け取られないため |
| 本業や他の依頼側と利益相反が無いか(同業、水準の持ち込み) | 他社の水準を持ち込まない、持ち出さないため |
確かめる順は副業で法令違反をしないためにに、利益相反の見分け方は本業と利益相反になる案件に、条件のすり合わせは条件のすり合わせに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「給与テーブルは相場を知っていれば設計でき、単価が高いので受けたい」というものです。実際には、相場を当てはめたテーブルは、その会社の資金に合わず、移行で下がる人が多く出て、法令と就業規則の論点で止まり、その責任は相場を語った外の人に向きます。それは実績にならず、話せない経験になり、紹介もされません。同じ人でも、評価制度の案件で信頼を作り、「分布の整理だけ」から入り、数字を一つも入れず、専門家と組み、会社が数字を入れた影響を整理した人は、1件目の終わりに「分布の見せ方の型」「構造の一枚」「経営者の決定の書面」「移行の記録(専門家の確認付き)」が残り、それが次の会社への提案の材料になります。エラベルで給与テーブルの案件を続けている担当者は、例外なく、手前の案件から入り、数字を持たず、専門家と組んでいます。受ける側がその場で使える判断としては、1件目の提案の最初の行に「数字は御社、法令は専門家、私は構造と影響の整理」と書き、資料の中に数字が一つも無いことを納品前に確かめること。数字を持たない提案だけが、この仕事では続きます。単価の考え方は単価の相場と考え方に書いています。
最初の1件の終わらせ方と2件目へのつなぎ方
1件目は、「構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形」で終えます。渡すものは、分布の整理(番号も出さない形)、課題の一覧、構造の一枚、選択肢と経営者の決定の書面(数字は会社が入れたもの)、専門家に確認した論点の一覧と結果、説明の資料、運用の記録(個人が特定されない形)、見直しの材料、です。報酬のデータと計算の作業ファイルは、会社の管理のもとで削除し、自分の手元に一切残しません。会社の許可を得て、会社が特定できない形にした「分布の見せ方の型」「構造の一枚」「選択肢の型」「役割の線」を、数字を除いて、実績と見本にします。テーブルそのものと水準は見せません。
2件目へのつなぎ方は二つです。同じ会社に、次の工程(分布の整理→構造→影響と移行→導入→運用の見直し)を、その都度、専門家と組んで提案するか。評価制度や人事制度の案件を持つ別の会社に、逆転や昇給の説明の困りごとが見えたとき、「分布の整理から」を提案するか。どちらも、「分布をどう見せて、会社が何を決め、移行で何を専門家と設計し、運用で何を直したか」が具体で、数字が無いほど通ります。2件目の取り方は2件目の取り方に、実績の書き方は事例の書き方に書いています。
まとめ
- 先に自分が受けてよいかを確かめる。設計から移行と運用まで見た経験・専門家と組む前提・数字は会社で自分は入れない・会社が資金の枠を示せるの四つが揃わないなら、手前の範囲から
- 見せるのは分布・構造・移行の三つ。「相場に詳しい」では選ばれず、数字の責任が来る
- 見本は分布の見せ方の型・構造の一枚・選択肢の型・空欄の表・役割の線を、数字を一つも入れず、会社が特定できない形で作る
- プロフィールに水準と数字は会社・法令と就業規則は専門家・個人の報酬に入らない・相場を語らない・データを手元に置かないを先に書く。「相場に基づく水準の提案」と書かない
- 入口は評価制度や人事制度の現状の整理からの提案が中心。「相場に基づいて」「短期間で数字まで」の案件は避ける
- 最初は分布の整理だけ・構造の選択肢だけ・見直しの材料だけと、数字に触れない範囲で受け、「数字は御社が入れる」を書面に残す
- 受ける前に四つの条件・専門家の関与と費用・数字は会社・資金の枠・データの扱い・個人の報酬に入らない・工程で分ける・説明の役割・利益相反を確かめる
- 1件目は構造の一枚と決定の書面と運用の記録が残る形で終え、テーブルと水準とデータは見せず、残さない
よくある質問
社内で作った給与テーブルを、実績として見せてよいですか
テーブルそのもの(等級ごとの幅の数字、昇給の額)は、会社の報酬の水準そのもので、許可があっても見せません。見せるのは、会社の許可を得て、会社が特定できない形にし、数字を除いた「分布の見せ方の型」「構造の一枚」「選択肢の型」「役割の線」と、「移行で何を専門家と設計し、運用で何を直したか」の構造です。報酬の水準と分布の実数は、一切使いません。現在の勤務先の水準やテーブルの持ち込みには触れないでください。
「専門家は入れずに、まず数字の入ったたたき台を」と言われました
作りません。数字の入ったたたき台は、その数字が会社の判断の基準になり、責任が自分に来ます。専門家の関与が無いまま数字を動かすと、賃金の法令と就業規則の論点で作り直しになります。「数字は御社が入れてください。私は構造の選択肢と空欄の表と、外部の水準を確かめる案内を出します。専門家の関与が決まってから、影響と移行を整理します」と、順を守ります。それでも数字を求める会社では、受けません。個別の判断は専門家にご確認ください。
最初の1件の単価はどう決めればよいですか
工程(分布の整理、構造の選択肢、影響と移行の整理、導入の進行、運用の見直し)ごとに分けて見積もり、一括で受けません。会社が数字を入れる期間と専門家の確認の期間は稼働に含めず、人数(分布の整理と当てはめ)、課題の数、説明の場の回数、運用の記録の期間で見込みます。1件目は分布の整理だけか構造の選択肢だけから入り、2件目以降で工程を足すときに見直す、という順が現実的です。相場は範囲と会社の人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。考え方は単価の相場と考え方に書いています。