人事副業 / 労務実務
労務実務で副業を始めるには|最初の1件の取り方
社内で労務を担当してきた。入社と退職の手続き、勤怠と給与の締め、社会保険の届出、社員からの相談の窓口。この経験を副業で使えないか。そう思って募集を見ると、「労務のサポート」「労務実務の代行」の案件はあるのに、自分の何を見せれば選ばれるのか、そして何を受けてよいのかが分からない。「労務の手続きができます」と書くと、受けられない範囲の案件が来るからです。結論を先に書くと、最初の1件を取るには、「労務の手続きができます」ではなく「入社から退職までの流れを一覧と手引きにし、期日と抜けを落とさない仕組みを作り、判断が要る点を見つけて専門家(社会保険労務士など)につなぎ、担当者が一人で回せる状態にした」と、一覧と仕組みと線の三つで見せます。手続きの代行と法令の判断は、資格に関わる決まりがあると一般に整理されており、受けないことを先に自分の言葉で書きます。見本は一覧の型と期日の管理の仕組みと判断が要る点の印の付け方と専門家に聞く質問の型と役割の線で作り、入口は、採用の案件の中で提案、紹介、副業のプラットフォーム、担当者を選べる窓口の四つで、最初は「一覧と手引きだけ」「期日の管理の仕組みだけ」「専門家との窓口の整理だけ」と小さく受け、受ける前に担当者と専門家の有無と受けられない範囲の同意と個人情報の扱いを確かめ、最初の1件を「一覧と仕組みと記録が残り、担当者が回せる形」で終えて2件目につなげます。受けられる範囲と案件の型は労務実務の副業案件に、1案件の流れは労務実務の副業の実務に、労務の経験を採用に活かす形は労務担当が副業でできることに書いています。ここでは「最初の1件の取り方」に絞ります。個別の判断は専門家にご確認ください。
先に決める:受けない範囲を自分の言葉で書く
労務の副業は、最初の1件を取る前に、「受けない範囲」を自分の言葉で書くところから始まります。労務の経験がある人ほど、知っているので答えられそうに見え、依頼側も「手続きも判断も任せたい」と考えます。受けない範囲を先に書いておかないと、最初の1件で線を越えます。
| 受けない範囲 | 自分の言葉で書く例 |
|---|---|
| 労働・社会保険の手続き書類の作成と提出(報酬を受けて行うこと) | 「届出の作成と提出は、御社の担当者か顧問の社会保険労務士が行います。私は、いつ何をどの書面で出すかの一覧と仕組みを作ります」 |
| 法令の解釈と判断 | 「残業や休暇や契約の扱いの判断はしません。判断が要る点を見つけて、専門家に聞く質問の形に整えます」 |
| 給与と勤怠の数字の確定 | 「計算の手順書と照合の型は作りますが、結果を確定して支払いに回すのは御社の担当者です」 |
| 社員への回答 | 「社員の方からの相談は、事実を整理して御社の担当者に渡します。私は答えません」 |
| 就業規則の作成と変更 | 「現状の把握と変えたい点の整理までで、中身の判断と作成は専門家と御社です」 |
この五つを、プロフィールと提案の最初に書きます。線の考え方は副業で法令違反をしないためにに書いています。
経験を棚卸しする:一覧・仕組み・線
依頼側が読むのは、「労務の知識」ではなく、「自社の担当者が、抜けなく期日どおりに回せる形を作れるか」です。社内の経験を三つに分けて書き出します。
| 項目 | 書き出すこと | 依頼側が読むこと |
|---|---|---|
| 一覧 | 入社から退職までの流れを、いつ・誰が・何を・どの書面で、の一覧にしたか。それで防いだ抜け | 流れを一覧で回せるか |
| 仕組み | 期日を落とさない仕組み(表、通知、確認の順)をどう作り、担当者が変わっても回ったか | 担当者が変わっても回る形を作れるか |
| 線 | 判断が要る点を、自分で答えずに専門家につないだ場面。社員の相談を事実の整理で担当者に渡した場面 | 線を守れるか |
いちばん差がつくのは三つ目です。「労務の実務を〇年」ではなく、「担当者が迷った点を、事実と該当する規定と聞きたいことの三つに整理して専門家に渡す型を作り、往復が減った」と、線を守ったことと変わったことの組で書きます。数字は会社の許可の範囲で。数字の見せ方は数字で語るに、実績の示し方は実績の示し方に書いています。
見本を作る:一覧の型・管理の仕組み・印の付け方・質問の型・役割の線
労務は、実物(社員の情報、会社の書面)を見せられません。見本は、型だけを、会社が特定できない形で作ります。
| 見本の要素 | 作り方 | 注意 |
|---|---|---|
| 一覧の型 | 入社、変更、休職、退職のそれぞれで、「いつ・誰が・何を・どの書面で・どこに」の欄。期日と要件の欄は空欄にし、「専門家の確認を経て記入」と書く | 期日と要件を自分の記憶で埋めない |
| 期日の管理の仕組み | 期日の一覧、通知の仕組み、確認の順、抜けたときの流れの図。会社の仕組み(表や共有の場所)で作る前提 | 自分のツール前提にしない |
| 判断が要る点の印の付け方 | 一覧の中で、判断が要る箇所に印を付け、「専門家に確認」とだけ書く例。中身は書かない | 自分の見解を書く例にしない |
| 専門家に聞く質問の型 | 事実(誰が、いつ、何を)・会社の決まり(該当する規定)・聞きたいこと、の三つの欄 | 質問に自分の見解を混ぜない |
| 役割の線の一枚 | 担当者がやること(手続き、数字の確定、社員への回答)・専門家がやること(判断、就業規則)・自分がやること(一覧、仕組み、伴走、橋渡し) | 自分の欄に「手続き」「判断」を入れない |
見本が一組あれば、依頼側は「この人は手続きを代わりにやる人ではなく、回る形を作る人だ」と読みます。見本の作り方はポートフォリオの作り方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、労務実務の最初の1件は、「手続きに詳しい人」ではなく「役割の線の一枚を最初に見せる人」に来ます。依頼側の経営者の多くは、「労務は社労士に頼んでいるが、社内で回す人がいない」か「社労士もいないし、社内に分かる人もいない」のどちらかで、外の人に「手続きも判断も丸ごと」を期待しています。線の一枚を最初に見せると、前者の会社は「社内で回す形を作ってくれる人」として受け入れ、後者の会社は「まず社労士と契約しないといけない」と気づきます。どちらも、線を見せなければ、手続きと判断が自分に流れてきます。エラベルで担当者を選ぶ企業も、労務の知識より、「線を引いているか」を見ています。受ける側がその場で使える判断としては、見本の中で役割の線の一枚を最初に置き、一覧の型の期日の欄を空欄のまま見せること。空欄が、線を守る人の印です。
プロフィールに書くこと
| 書くこと | 書き方の形 | 書かないこと |
|---|---|---|
| できる範囲 | 「労務の、入社から退職までの一覧と手引きの作成・期日と抜けの管理の仕組み作り・担当者の伴走と記録の整備・判断が要る点を専門家につなぐ質問の型。手続きの代行と法令の判断は行いません」 | 「労務実務の代行」「社会保険手続き」「給与計算」 |
| 一覧 | 「いつ・誰が・何を・どの書面で、の一覧にし、期日と要件は専門家の確認を経て記入する」 | 「法令に精通」 |
| 仕組み | 「期日を落とさない仕組みを会社の仕組みの中に作り、担当者が変わっても回る形にする」 | 「正確な事務処理」 |
| 線 | 「判断が要る点は答えず、事実と規定と聞きたいことに整理して専門家に渡す。社員の相談は事実の整理まで。数字の確定は担当者」 | 「労務相談に対応」 |
| 結果 | 「〇〇の仕組みで、期日の抜けが減った」「担当者が〇か月で一人で回せるようになった」を二〜三組 | 「〇〇人分の手続きを処理」だけ |
| 個人情報 | 「見る範囲を絞り、会社の管理する場所でだけ扱い、手元に残さない」 | 触れない |
止まりやすいのは、「社会保険手続き」「給与計算」「労務相談」と書くときです。受けられない範囲の案件が来て、断るか、線を越えるかになります。プロフィールの書き方はプロフィールの書き方に書いています。
最初の1件が見つかる四つの入口
| 入口 | 向く人 | 進め方 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 採用の案件の中で提案 | すでに採用の代行(日程調整、書類選考など)の案件を持っている | 内定の後の手続きで遅れや抜けが見えたとき、「内定から入社までの手続きの一覧と期日の仕組みを作りませんか」と提案 | 採用の範囲と混ぜない。手続きの実行は担当者と先に伝える |
| 元の勤務先や知人の紹介 | 前職や取引先に、社員が増えて総務が手一杯の会社を知っている | 「一覧と期日の仕組みだけ、まず」と範囲を絞って提案。専門家の有無を先に聞く | 現在の勤務先の社員の情報や書面を持ち込まない |
| 副業のプラットフォーム | まず件数を見て選びたい | 「労務サポート」の募集に、役割の線の一枚と一覧の型を付けて、「代行ではなく、回る形を作る支援」の形で応募 | 「手続き代行」「給与計算代行」「労務相談」の案件は、範囲を直して提案するか避ける |
| 担当者を選べる窓口への登録 | 条件が合うときだけ受けたい | 登録して、役割の線と見本を出しておく | 窓口の仕組み(誰が何を決めるか)を確かめる |
最も通るのは、いちばん上の入口です。採用の代行で信頼ができている会社は、「手続きは担当者、判断は専門家、仕組みはこの人」の線を受け入れやすい。内定後の流れの作り方は労務担当が副業でできることに、案件の探し方は案件の探し方に、紹介の頼み方は紹介を頼むに書いています。
小さく受ける:一覧と手引きだけ・期日の仕組みだけ・専門家との窓口の整理だけ
最初の1件は、伴走を含む一式ではなく、手続きにも判断にも触れない範囲で受けます。
| 小さく受ける型 | やること | 見せられる結果 | 次につなぐ提案 |
|---|---|---|---|
| 一覧と手引きだけ | 入社から退職までの流れを、いつ・誰が・何を・どの書面で、の一覧と手引きにし、判断が要る点に印を付け、専門家の確認を経て渡す | 一覧と手引き。担当者が使える状態 | 「期日を落とさない仕組みを作ります」→仕組みへ |
| 期日の管理の仕組みだけ | すでにある流れで、期日の一覧、通知、確認の順、抜けたときの流れを、会社の仕組みの中に作る | 抜けと遅れの減り方 | 「月に一度、回っているかを確認します」→伴走へ |
| 専門家との窓口の整理だけ | 会社が専門家に聞く質問の型、渡すものの一覧、回答の記録の型を作り、往復を減らす | 往復の減り方と、記録 | 「判断が要る点を毎月見つけて整えます」→伴走へ |
止まりやすいのは、小さく受けたのに、「今月の届出だけ」「この社員の相談に一言」と受けられない範囲が流れてくるときです。「手続きと回答は担当者と専門家」を書面に残します。
受ける前に確かめること
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 手続きと数字の確定を行う担当者が会社にいるか | いないなら自分が担当者の代わりになるため。担当者を置くか専門家への委託を勧める |
| 専門家(社会保険労務士など)と契約しているか。いないなら契約を勧めることに同意するか | 判断と手続きの渡し先が無いと、自分に集まるため |
| 受けない範囲(手続きの代行、法令の判断、数字の確定、社員への回答、就業規則)に同意し、書面に残せるか | 線を越えないため。個別の判断は専門家にご確認ください |
| 個人情報を見る範囲を絞り、会社の管理する場所でだけ扱い、手元に残さないことに同意するか | 最も重い個人情報を守るため |
| 一覧の期日と要件は専門家の確認を経て記入することに同意するか | 期日の誤りを自分の記憶で作らないため |
| 評価の基準(抜けと遅れの減り方、担当者が回せているか。手続きの完了数ではない) | 手続きの実行で評価されないため |
| 本業の会社の副業の規定と守秘の条件 | 労務は本業と競合しやすい。守秘の条件は専門家に確認 |
確かめる順は副業で法令違反をしないためにに、個人情報の扱いは候補者の個人情報の扱いに、条件のすり合わせは条件のすり合わせに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「労務の経験があるので、手続きも判断も含めて受けたほうが単価が高い」というものです。実際には、手続きの代行と法令の判断を含めた形は、資格に関わる決まりの論点に触れることがあると整理されており、間違いが出たときの責任を副業の人は負えず、会社にも実害が出ます。それは、単価の高い案件ではなく、受けてはいけない案件です。同じ人でも、「一覧と仕組みと線」の範囲で受け、手続きは担当者、判断は専門家、と線を引いた人は、1件目の終わりに「一覧と手引き(専門家の確認済み)」「期日の仕組み」「担当者が一人で回せた記録」が残り、それが次の会社への提案の材料になります。エラベルで労務の案件を続けている担当者は、例外なく、受けない範囲を提案の最初に書いています。受ける側がその場で使える判断としては、1件目の提案の最初の行に「手続きの代行と法令の判断は行いません」と書くこと。断りから始まる提案が、この仕事では続きます。単価の考え方は単価の相場と考え方に書いています。
最初の1件の終わらせ方と2件目へのつなぎ方
1件目は、「一覧と仕組みと記録が残り、担当者が回せる形」で終えます。渡すものは、一覧と手引き(専門家の確認済み、更新の日付付き)、期日の管理の仕組み(会社の仕組みの中に)、判断が要る点の一覧(印だけ)、専門家に聞く質問の型と回答の記録、記録の型、担当者が一人でできた工程の記録、です。個人情報を見る権限は会社に削除してもらい、社員の情報を自分の手元に一切残さず、残していないことを確かめて伝えます。会社の許可を得て、会社が特定できない形にした「一覧の型」「仕組みの図」「質問の型」「役割の線」を、実績と見本にします。社員の情報と会社の書面は見せません。
2件目へのつなぎ方は二つです。同じ会社に、次の範囲(一覧→仕組み→伴走→専門家との窓口の整理→更新の型)を提案するか。採用の案件を持つ別の会社に、内定後の手続きの遅れが見えたとき、「一覧と期日の仕組みから」を提案するか。どちらも、「どの抜けを、どの仕組みで減らし、担当者が何か月で一人で回せたか」が具体であるほど通ります。2件目の取り方は2件目の取り方に、実績の書き方は事例の書き方に書いています。
まとめ
- 先に受けない範囲(手続きの代行・法令の判断・数字の確定・社員への回答・就業規則)を自分の言葉で書く。資格に関わる決まりがあると一般に整理されている。個別の判断は専門家にご確認ください
- 見せるのは一覧・仕組み・線の三つ。「労務の手続きができます」では受けられない範囲の案件が来る
- 見本は一覧の型(期日は空欄)・期日の管理の仕組み・判断が要る点の印・専門家に聞く質問の型・役割の線を、会社が特定できない形で作る。役割の線を最初に置く
- プロフィールに手続きの代行と法令の判断は行わない・判断は専門家に整えて渡す・数字の確定は担当者・個人情報は手元に残さないを先に書く。「社会保険手続き」「給与計算」「労務相談」と書かない
- 入口は採用の案件の中で提案・紹介・プラットフォーム・担当者を選べる窓口の四つ。採用の代行からの提案が最も通る
- 最初は一覧と手引きだけ・期日の仕組みだけ・専門家との窓口の整理だけと、手続きにも判断にも触れない範囲で受け、「手続きと回答は担当者と専門家」を書面に残す
- 受ける前に担当者の有無・専門家の有無・受けない範囲の同意・個人情報の扱い・期日は専門家の確認・評価の基準・本業の規定と守秘を確かめる
- 1件目は一覧と仕組みと記録が残り、担当者が回せる形で終え、権限を削除してもらい、社員の情報を残さない
よくある質問
社内で作った手続きの一覧や手引きを、見本にそのまま使ってよいですか
会社の許可の範囲で、会社が特定できない形にし、社員の情報と会社の固有の書面を除いてから、構造だけを使います。一覧の欄の立て方、期日の管理の仕組みの図、質問の型、という構造は自分の技能です。期日と要件の欄は空欄にし、「専門家の確認を経て記入」と書きます。許可が取れない場合は、架空の会社で型を作り直し、架空であることを明記します。現在の勤務先の社員の情報や書面の持ち込みには触れないでください。
「社労士がいるので、判断は社労士に聞く。手続きだけやってほしい」と言われました
手続きの実行は受けません。労働・社会保険の手続き書類の作成と提出を、報酬を受けて外の人が行うことには、資格に関わる決まりがあると一般に整理されています。「手続きの実行は、御社の担当者か、顧問の社労士にお願いしてください。私は、担当者が抜けなく期日どおりに出せる一覧と仕組みを作り、月に一度、回っているかを確認します」と、範囲を直します。担当者がいない会社では、社労士への委託の範囲を広げることを勧めます。個別の判断は専門家にご確認ください。
最初の1件の単価はどう決めればよいですか
「作る工程(一覧と手引き、仕組み)」は成果物で、「回す工程(伴走、窓口の整理)」は月次で、分けて見積もります。「手続きの代行」「給与計算」の言葉で見積もらないことが大事で、その言葉で受けると、受けられない範囲まで含んだ形になります。1件目は一覧と手引きか期日の仕組みから入り、2件目で伴走に広げるときに見直す、という順が現実的です。相場は範囲と会社の人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。考え方は単価の相場と考え方に書いています。